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58 亜衣乃の事情
霧咲は苦虫を噛み潰したような顔をして食事の手を止め「亜衣乃、」と呼んだ。
しかし亜衣乃は目の前の料理を見つめたままで霧咲と目を合わそうとしない。
仕方がないので、霧咲はそのまま話しかけた。
「違うよ、ママは」
「何も違わないよ、まこおじさん。亜衣乃はずっとまこおじさんが亜衣乃のパパになってくれたらいいのにって思ってた。まこおじさんの方がママよりずっと亜衣乃のこと考えてくれてるし、厳しくて怖いときもあるけど優しいし。ママはまこおじさんが亜衣乃の本当のパパだって言うのに……なのになんで、まこおじさんは違うって言うの?」
「……」
霧咲はその理由をまだ亜衣乃に教えることが出来ない。
自分たちが血縁上、本当の親子でないことは勿論亜衣乃だって分かっている。
しかし母親が自分に冷たい理由と、兄である霧咲のことを本当の父だと言う理由が分からないのだ。
霧咲はただ黙って姪にかける言葉を探している。
亜衣乃は続けた。
「でもまこおじさんにも恋人ができたから……亜衣乃はまこおじさんにとっても邪魔者になっちゃったね」
「亜衣乃ちゃん」
黙って聞いていた榛名が、優しい声で亜衣乃を呼んだ。
落ち着いて諭すようなその声に、亜衣乃は目線だけをちらりと榛名に寄越す。
「俺は君の家の事情はさっき聞いたばっかりで口を出せる立場でもないし、君のママの考えてることは正直分からない。けどね、おじさんは君を邪魔だなんて絶対に思ってないよ。そんな風に思ってたら、こんなに慌ただしく今夜大阪から東京まで戻ってきたりしない」
「でも、まこおじさんが亜衣乃のお守りをしてくれるのはママに頼まれたからでしょう?」
「本当に理由はそれだけだって君は思ってるの?」
「……」
榛名の指摘に、亜衣乃は罰が悪そうな顔で黙りこくった。
榛名は苦笑しながら続けた。
「まあ、それに関しては本当に俺が言えた義理じゃないんだけど……俺も今朝までは霧咲さんの気持ちを疑っていたから。冷静に考えてみたら、自分がすごく大事にされてるって分かるのにね。勝手な思い込みで暴走しちゃって……でも、ちゃんと想われてるんだって改めて分かったから」
「どうやって分かったの?」
「えっと……行動で示してくれたっていうか?」
榛名は、真っ赤になりながら言った。
霧咲は黙って榛名の言葉を聞いていたが、胸の内では感激していた。
榛名はしどろもどろになりながらも話を続ける。亜衣乃がじいっと榛名の口元を見つめているので、妙に緊張してしまう。
「だからその……なんて言ったらいいかな。おじさんは君のパパじゃないけど、自分が一番大事だって思っていいと思うんだ。それは事実なんだし、もっと自信を持っていいっていうか……」
榛名は自分の言葉の頼りなさに少し落ち込んでしまった。
ただ、霧咲は亜衣乃を本当の娘のように思っているということを伝えたいだけなのに。
(俺、大人なのに全然うまく伝えられてない気がする)
そして数秒後、亜衣乃が口を開いた。
「アキちゃんは嫌じゃないの? まこおじさんと結婚するのに亜衣乃が邪魔じゃない?」
「邪魔なわけないよ! こんな可愛い女の子を誰が邪魔者扱いするの? 自分の娘だったら将来お嫁にも出したくないくらいだよ」
榛名はにっこり笑って言った。
一生霧咲と一緒にいることを決めた榛名には子供などが出来ることはないのだが、もし自分の娘がこんな美少女だったら嫁にやるなんてもっての他で、彼氏の存在すら認めたくないんじゃないかと思う。
それにしても、霧咲と結婚するとしたら自分は母親の立場になるのだろうか。
よく分からないが、その辺りは流すことにした。
「ねえアキちゃん、まこおじさんの恋人なんてやめて亜衣乃と結婚しようよ」
「え!?」
「亜衣乃、それは俺が許さないよ……」
(そこで口挟んでくるの!?)
「だってアキちゃん、まこおじさんより優しいんだもん。顔もかわいいし」
亜衣乃は唇を尖らせて言った。
どうやら叔父姪ともに榛名の顔は好みらしい。
「この短時間で暁哉の可愛さが分かるなんてさすがは俺の姪だな、と褒めてやりたいところだが……暁哉、あんまり亜衣乃を甘やかさないでいいからな。こいつはすぐに調子に乗るから」
霧咲は大真面目な顔で榛名に言う。
「ハハ……それは無理です。亜衣乃ちゃん、可愛いですもん」
それでも自分の拙い言葉で亜衣乃も霧咲もさっきよりも柔らかい雰囲気になったので、榛名はほっと薄い胸を撫で下ろした。
しかし亜衣乃は目の前の料理を見つめたままで霧咲と目を合わそうとしない。
仕方がないので、霧咲はそのまま話しかけた。
「違うよ、ママは」
「何も違わないよ、まこおじさん。亜衣乃はずっとまこおじさんが亜衣乃のパパになってくれたらいいのにって思ってた。まこおじさんの方がママよりずっと亜衣乃のこと考えてくれてるし、厳しくて怖いときもあるけど優しいし。ママはまこおじさんが亜衣乃の本当のパパだって言うのに……なのになんで、まこおじさんは違うって言うの?」
「……」
霧咲はその理由をまだ亜衣乃に教えることが出来ない。
自分たちが血縁上、本当の親子でないことは勿論亜衣乃だって分かっている。
しかし母親が自分に冷たい理由と、兄である霧咲のことを本当の父だと言う理由が分からないのだ。
霧咲はただ黙って姪にかける言葉を探している。
亜衣乃は続けた。
「でもまこおじさんにも恋人ができたから……亜衣乃はまこおじさんにとっても邪魔者になっちゃったね」
「亜衣乃ちゃん」
黙って聞いていた榛名が、優しい声で亜衣乃を呼んだ。
落ち着いて諭すようなその声に、亜衣乃は目線だけをちらりと榛名に寄越す。
「俺は君の家の事情はさっき聞いたばっかりで口を出せる立場でもないし、君のママの考えてることは正直分からない。けどね、おじさんは君を邪魔だなんて絶対に思ってないよ。そんな風に思ってたら、こんなに慌ただしく今夜大阪から東京まで戻ってきたりしない」
「でも、まこおじさんが亜衣乃のお守りをしてくれるのはママに頼まれたからでしょう?」
「本当に理由はそれだけだって君は思ってるの?」
「……」
榛名の指摘に、亜衣乃は罰が悪そうな顔で黙りこくった。
榛名は苦笑しながら続けた。
「まあ、それに関しては本当に俺が言えた義理じゃないんだけど……俺も今朝までは霧咲さんの気持ちを疑っていたから。冷静に考えてみたら、自分がすごく大事にされてるって分かるのにね。勝手な思い込みで暴走しちゃって……でも、ちゃんと想われてるんだって改めて分かったから」
「どうやって分かったの?」
「えっと……行動で示してくれたっていうか?」
榛名は、真っ赤になりながら言った。
霧咲は黙って榛名の言葉を聞いていたが、胸の内では感激していた。
榛名はしどろもどろになりながらも話を続ける。亜衣乃がじいっと榛名の口元を見つめているので、妙に緊張してしまう。
「だからその……なんて言ったらいいかな。おじさんは君のパパじゃないけど、自分が一番大事だって思っていいと思うんだ。それは事実なんだし、もっと自信を持っていいっていうか……」
榛名は自分の言葉の頼りなさに少し落ち込んでしまった。
ただ、霧咲は亜衣乃を本当の娘のように思っているということを伝えたいだけなのに。
(俺、大人なのに全然うまく伝えられてない気がする)
そして数秒後、亜衣乃が口を開いた。
「アキちゃんは嫌じゃないの? まこおじさんと結婚するのに亜衣乃が邪魔じゃない?」
「邪魔なわけないよ! こんな可愛い女の子を誰が邪魔者扱いするの? 自分の娘だったら将来お嫁にも出したくないくらいだよ」
榛名はにっこり笑って言った。
一生霧咲と一緒にいることを決めた榛名には子供などが出来ることはないのだが、もし自分の娘がこんな美少女だったら嫁にやるなんてもっての他で、彼氏の存在すら認めたくないんじゃないかと思う。
それにしても、霧咲と結婚するとしたら自分は母親の立場になるのだろうか。
よく分からないが、その辺りは流すことにした。
「ねえアキちゃん、まこおじさんの恋人なんてやめて亜衣乃と結婚しようよ」
「え!?」
「亜衣乃、それは俺が許さないよ……」
(そこで口挟んでくるの!?)
「だってアキちゃん、まこおじさんより優しいんだもん。顔もかわいいし」
亜衣乃は唇を尖らせて言った。
どうやら叔父姪ともに榛名の顔は好みらしい。
「この短時間で暁哉の可愛さが分かるなんてさすがは俺の姪だな、と褒めてやりたいところだが……暁哉、あんまり亜衣乃を甘やかさないでいいからな。こいつはすぐに調子に乗るから」
霧咲は大真面目な顔で榛名に言う。
「ハハ……それは無理です。亜衣乃ちゃん、可愛いですもん」
それでも自分の拙い言葉で亜衣乃も霧咲もさっきよりも柔らかい雰囲気になったので、榛名はほっと薄い胸を撫で下ろした。
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