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榛名の少し皮肉を含んだ返しに蓉子は顔を歪めて榛名を睨みつけ、「生意気ね、おかまの癖に」と憎々しげに言った。
まったく感情を隠さない蓉子に、榛名は(ずいぶん素直な人だなぁ)という感想を抱いた。
おかまと言われたことには、腹を立てるより思わず笑ってしまいそうになったのだが。
まったく動じていない榛名の態度に安心したのか、霧咲は亜衣乃の側に行って別室に行くよう促した。
「亜衣乃、お前は寝室でテレビでも見てなさい」
「でも、ママがここにいろって……」
「お前が聞いてて楽しい話は何もしないよ。分かるだろう?」
すると、またしても蓉子が声を上げた。
「ちょっと兄さん、余計なことしないでくれる!? 亜衣乃にはここにいてちゃんと全部話を聞いていてもらいます、自分のことなんだから! それと男の癖に母親になるとか言ってる気持ち悪いこの男の化けの皮を亜衣乃の前で剥いでやるんだから、邪魔しないでよ!!」
「ば、化けの皮?」
普段あまり聞くことのない単語を耳にして、榛名の口元は少しひくついてしまった。
「そうよ!! 何笑ってんのよ」
「い、いいえ。すみません」
蓉子は榛名よりも年上のはずだが、どうにも言動が子供っぽい。
これは腹を立てた方が負けな話し合いだ、と榛名は瞬時に悟った。
「蓉子、暁哉に剥がされて痛い面の皮なんてないよ。お前みたいに厚化粧じゃないからな。亜衣乃、今でさえお前の耳に入れたくない会話なんだ。ここはおじさんの家なんだからおじさんの言うことを聞きなさい」
「わかった……」
「ちょっと!」
またしても蓉子が食いついたが、霧咲は半ば無理矢理っぽく亜衣乃を寝室へと連れていった。
リビングには蓉子と榛名の二人だけになり、蓉子は榛名を見つめながらわざとらしくため息を吐いた。
「ねえ、あたしは客なんだからコーヒーの一つでも淹れなさいよ。どうせこの部屋にはしょっちゅう入り浸ってんでしょ?」
「俺がここにお邪魔したのは今日で二回目です、普段は誠人さんが会いに来てくれるので。だから俺も一応客なんで、コーヒーは誠人さんに頼んでもらえますか?」
別にコーヒーくらいすぐに出せるのだが、霧咲に『蓉子が熱いコーヒーをかけてくるかもしれないから、出せと言われても絶対出さないように』と車内で言われていたのだ。
蓉子は憎々しげに舌打ちして、榛名をドンと肩で押しやるとソファーにどっかりと座った。
とりあえず榛名も、同じように向かいのソファーに座った。すると、蓉子は幾分か落ち着いた声で榛名に聞いた。
「あんたさ、一体どういう手であの兄さんに取り入ったわけ?」
「え?」
「あたしの元旦那、兄さんの恋人だった男はね、そりゃあもう嘘みたいに綺麗な顔をした人だったのよ。芸能人みたいな。だからあたし、兄さんはずっと面食いだと思ってたの。自分があんな顔してるしね。だからあんたみたいな平々凡々なのが恋人だなんて言われても、正直目の前で見てもピンとこないのよねー」
意地悪く笑いながら、蓉子は榛名を伺うように見る。
しかし榛名はそれを悪口だとは捉えなかった。
自分の容姿が平凡なのは、まぎれもない事実だからだ。
「そうなんですか。えっと……とあるバーで俺が誠人さんに声をかけられたのが知り合ったきっかけですね。あと俺は看護師なので、勤務先の病院で再会したんです」
「……」
「あ……あの?」
自分から質問してきた癖に、榛名が答えても蓉子の反応がない。
蓉子は榛名を訝しげな目で見ていた。
「あんたって、嫌味が通じない奴? それともわざとやってんの?」
こういう風に聞かれたら、誤魔化すわけにはいかない。
霧咲には真剣に相手にするなと言われたが、蓉子は霧咲の家族で妹だ。患者とは違う。
看護師としての対応を望まれているわけでもない。
だから榛名は正直に答えた。
「……まあ、わざとです」
「そう、それ聞いて安心したわ。ちゃんと傷ついてんのね」
(この人は、まるで考えなしで発言しているのではないのかも……)
そう思った榛名は、ぎゅっと手を握り締めて本題に入った。
「あの、俺に話があるんですよね? 誠人さんから貴方が俺に会いたがってると聞きました。一体なんのお話でしょうか?」
「別に折り入って大事な話があるわけじゃないわよ。兄さんの新しい恋人で、何の血の繋がりもない亜衣乃の母親面をしたがってる男がどーいう顔してんのか見たかっただけ」
「……じゃあ、もう話は終わりですね?」
自分の顔を見に来ただけというのなら、榛名が蓉子と話す必要はもうない。
亜衣乃への接し方について言いたいことは山ほどあるが、霧咲が言ってると思うので他人の自分がわざわざ話題にして触れることでもないだろう。
すると蓉子は、組んだ足に頬杖を突いた姿勢で、榛名を上目使いで見ながら言った。
「ねえ、あんたタバコ吸わないの?」
「え?」
「兄さんが吸わないからこの部屋には灰皿がないけど、あんたが吸うなら用意するだろうと思って。看護師って喫煙率高いんでしょ?」
それは世間一般的によく言われている事実だ。しかし。
「うちのスタッフはほとんど吸いませんよ。特に女性スタッフの喫煙者はゼロです。最近はどこの病院も全館禁煙ですから、これを機に辞めてる人も多いんです」
「ふーん。で、あんたはどーなのよ?」
「吸ったことありません」
「はッ、つまんない男」
煙草を吸えば面白い男になれるとでもいうのだろうか。
奥本や二宮は喫煙者だが、特に蓉子が求めているような男性像ではないと思う。
それにしても、霧咲がなかなか戻ってこないのは意図的に榛名と蓉子を二人にしているのだろうか。
普通の(?)会話を始めたので、邪魔をしないように入ってこないのかもしれない。
それならそれでいい。
亜衣乃を一人ぼっちにしておく方が、榛名には心配だからだ。
まったく感情を隠さない蓉子に、榛名は(ずいぶん素直な人だなぁ)という感想を抱いた。
おかまと言われたことには、腹を立てるより思わず笑ってしまいそうになったのだが。
まったく動じていない榛名の態度に安心したのか、霧咲は亜衣乃の側に行って別室に行くよう促した。
「亜衣乃、お前は寝室でテレビでも見てなさい」
「でも、ママがここにいろって……」
「お前が聞いてて楽しい話は何もしないよ。分かるだろう?」
すると、またしても蓉子が声を上げた。
「ちょっと兄さん、余計なことしないでくれる!? 亜衣乃にはここにいてちゃんと全部話を聞いていてもらいます、自分のことなんだから! それと男の癖に母親になるとか言ってる気持ち悪いこの男の化けの皮を亜衣乃の前で剥いでやるんだから、邪魔しないでよ!!」
「ば、化けの皮?」
普段あまり聞くことのない単語を耳にして、榛名の口元は少しひくついてしまった。
「そうよ!! 何笑ってんのよ」
「い、いいえ。すみません」
蓉子は榛名よりも年上のはずだが、どうにも言動が子供っぽい。
これは腹を立てた方が負けな話し合いだ、と榛名は瞬時に悟った。
「蓉子、暁哉に剥がされて痛い面の皮なんてないよ。お前みたいに厚化粧じゃないからな。亜衣乃、今でさえお前の耳に入れたくない会話なんだ。ここはおじさんの家なんだからおじさんの言うことを聞きなさい」
「わかった……」
「ちょっと!」
またしても蓉子が食いついたが、霧咲は半ば無理矢理っぽく亜衣乃を寝室へと連れていった。
リビングには蓉子と榛名の二人だけになり、蓉子は榛名を見つめながらわざとらしくため息を吐いた。
「ねえ、あたしは客なんだからコーヒーの一つでも淹れなさいよ。どうせこの部屋にはしょっちゅう入り浸ってんでしょ?」
「俺がここにお邪魔したのは今日で二回目です、普段は誠人さんが会いに来てくれるので。だから俺も一応客なんで、コーヒーは誠人さんに頼んでもらえますか?」
別にコーヒーくらいすぐに出せるのだが、霧咲に『蓉子が熱いコーヒーをかけてくるかもしれないから、出せと言われても絶対出さないように』と車内で言われていたのだ。
蓉子は憎々しげに舌打ちして、榛名をドンと肩で押しやるとソファーにどっかりと座った。
とりあえず榛名も、同じように向かいのソファーに座った。すると、蓉子は幾分か落ち着いた声で榛名に聞いた。
「あんたさ、一体どういう手であの兄さんに取り入ったわけ?」
「え?」
「あたしの元旦那、兄さんの恋人だった男はね、そりゃあもう嘘みたいに綺麗な顔をした人だったのよ。芸能人みたいな。だからあたし、兄さんはずっと面食いだと思ってたの。自分があんな顔してるしね。だからあんたみたいな平々凡々なのが恋人だなんて言われても、正直目の前で見てもピンとこないのよねー」
意地悪く笑いながら、蓉子は榛名を伺うように見る。
しかし榛名はそれを悪口だとは捉えなかった。
自分の容姿が平凡なのは、まぎれもない事実だからだ。
「そうなんですか。えっと……とあるバーで俺が誠人さんに声をかけられたのが知り合ったきっかけですね。あと俺は看護師なので、勤務先の病院で再会したんです」
「……」
「あ……あの?」
自分から質問してきた癖に、榛名が答えても蓉子の反応がない。
蓉子は榛名を訝しげな目で見ていた。
「あんたって、嫌味が通じない奴? それともわざとやってんの?」
こういう風に聞かれたら、誤魔化すわけにはいかない。
霧咲には真剣に相手にするなと言われたが、蓉子は霧咲の家族で妹だ。患者とは違う。
看護師としての対応を望まれているわけでもない。
だから榛名は正直に答えた。
「……まあ、わざとです」
「そう、それ聞いて安心したわ。ちゃんと傷ついてんのね」
(この人は、まるで考えなしで発言しているのではないのかも……)
そう思った榛名は、ぎゅっと手を握り締めて本題に入った。
「あの、俺に話があるんですよね? 誠人さんから貴方が俺に会いたがってると聞きました。一体なんのお話でしょうか?」
「別に折り入って大事な話があるわけじゃないわよ。兄さんの新しい恋人で、何の血の繋がりもない亜衣乃の母親面をしたがってる男がどーいう顔してんのか見たかっただけ」
「……じゃあ、もう話は終わりですね?」
自分の顔を見に来ただけというのなら、榛名が蓉子と話す必要はもうない。
亜衣乃への接し方について言いたいことは山ほどあるが、霧咲が言ってると思うので他人の自分がわざわざ話題にして触れることでもないだろう。
すると蓉子は、組んだ足に頬杖を突いた姿勢で、榛名を上目使いで見ながら言った。
「ねえ、あんたタバコ吸わないの?」
「え?」
「兄さんが吸わないからこの部屋には灰皿がないけど、あんたが吸うなら用意するだろうと思って。看護師って喫煙率高いんでしょ?」
それは世間一般的によく言われている事実だ。しかし。
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「ふーん。で、あんたはどーなのよ?」
「吸ったことありません」
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煙草を吸えば面白い男になれるとでもいうのだろうか。
奥本や二宮は喫煙者だが、特に蓉子が求めているような男性像ではないと思う。
それにしても、霧咲がなかなか戻ってこないのは意図的に榛名と蓉子を二人にしているのだろうか。
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