運命のひと~生真面目な看護師は意地悪イケメン医師に溺愛される~

すずなりたま

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112 榛名と亜衣乃、親切にされる


 亜衣乃は表情を歪め、泣きそうな声で「……亜衣乃は、余計なことをしたの?」と言った。

「亜衣乃ちゃん」
「亜衣乃は、大好きなアキちゃんがあんなふうに言われて我慢できなかったの。アキちゃんは他人だけど、他人じゃないもの! 亜衣乃のママになってくれるって言ってくれたから……だから亜衣乃は、まこおじさんが居ないからこそアキちゃんを守ろうと思ったのに!」

 亜衣乃は下唇を噛み、必死で涙が出ないように耐えていたようだが結局涙は零れ落ちた。
 榛名はバッグの中からハンカチを取り出し、亜衣乃の目を軽く抑えてやりながら言った。

「余計だなんて……亜衣乃ちゃんの気持ちはすごく嬉しいよ。嬉しいけど……俺は、俺のせいで亜衣乃ちゃんが怪我をしたり、悪く思われるのは嫌だよ」
「亜衣乃だって同じだもん! 亜衣乃がいるせいでアキちゃんがいちいちあんな風に誰かに疑われるのは嫌なんだもん! 我慢なんか、できない!」
「……っ」

 そこまでキッパリと言われたら、もうどう伝えたらいいのか榛名には分からない。
 分からないが、きっと榛名の気持ちは亜衣乃にも伝わっただろうと信じたい。
 榛名はとりあえず、慰めるようにギュッと亜衣乃を抱きしめた。

「亜衣乃ちゃんの気持ちは本当に嬉しいんだよ。だけど、自分を危険に晒すような真似はもう二度としないって約束してほしい。じゃないと俺の心臓、幾つあっても足りないよ」
「……」
「じゃあせめて、俺か誠人さんがいる時だけにして……お願い」

 返事がないので、もう一度言った。
 すると、亜衣乃は観念したような声でぼそりを返事をした。

「……分かった」
「うん」

 身体を離すと、亜衣乃はぐすっと一度洟をすすって顔を上げた。

「じゃあアキちゃんも、早くまこおじさんと結婚して。そしたら亜衣乃だって堂々とアキちゃんは亜衣乃のママなんだって言えるから」
「うん、分かった」

 堂々とそう言われるのも少し困るのだが(それに籍を入れたら、榛名は亜衣乃の母じゃなくて兄になる)それでも榛名は亜衣乃の言葉が嬉しかったので、コクンと頷いたのだった。
 そして亜衣乃が泣きやむまで待ち、再びバス停まで行こうとしたら。

「あ、あの……私達、良かったらホテルまでご一緒しましょうか?」

 先ほどの女性二人が榛名にそう言ってきた。
 榛名はロクにお礼も言ってないことを思い出して、慌てて二人にも頭を下げた。

「先ほどは助けて頂いて有難うございました! すみません、お礼言うのが遅くなってしまって!」
「いえいえ、それは全然いいですよ! それより私達、さっきの救急車の騒ぎの時から実はずっと見てて……何もお役に立てなくてすみませんでした」
「あなたまだ小さいのに、AEDとか持ってこれるなんてすごいわね」

 一人が亜衣乃に感心したように話しかけた。
 亜衣乃は目と顔を赤くしたまま、「前にも一度まこおじさんと居た時に、こういう場面に遭遇したことがあるの」と少し照れくさそうに言った。

「あの、それで……どうでしょうか。また警察に声を掛けられたらその子も嫌でしょうし……」
「グループでいたら怪しまれることも無いですよ」
「で、でも見ず知らずの方にそんなご迷惑をかけるわけには……」

 正直言ってもの凄く有難いのだが、だからと言って見ず知らずの人に簡単に甘えるわけにはいかない。

「行くのは宮ノ下ですよね? 私たちの取ってるホテルも宮ノ下ですし、全然気にしないでください」
「そうですよ! いいもの見せてもらったお礼っていうか」
「いいもの?」
「あっいえ! 何でもないですこっちの話!!」

 榛名はよく分からなかったが、とりあえず愛想笑いした。

「アキちゃん、このお姉ちゃん達に一緒にホテルまで行ってもらおうよ……亜衣乃、また警察にアキちゃんが捕まるの、やだ」
「つ、捕まってはいないんだけどね」

 彼女らの言うとおり、また職務質問をされたら一番嫌なのは亜衣乃だろうと思った。
 なので榛名は申し訳ないと思いながらも、「……じゃあ、よろしくお願いします」と、もう一度頭を下げたのだった。
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