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3 南條先生
しおりを挟む今は化学室にて化学の授業中だ。実は俺、雨宮卯月は結構お勉強が得意系男子だったりする、特に理数系。なのでテスト前はりっちゃん達に勉強を教えてあげたりしている。毎回原稿を手伝ってもらっているお礼も兼ねてだ。
中でも一番得意な教科は化学。なぜかというと……
「えープロパンが完全燃焼したときの化学反応式を……吉村、前に出て書け」
「えっ!? は、はい……」
化学教師の南條志信先生が、めちゃくちゃイケメンだからぁぁ!!
27歳くらいかなぁ? 化学教師なのに全然根暗っぽくないし(ド偏見)、本当に男前なんだなーコレが。なんでこんなイケメンがこんなところで教師とかしてるんだろう。もっと他に天職あったでしょ? ゲイノージンとかモデルとかミュージシャンとかカリスマ美容師とか、イケメンにだけ許された爆イケな職業がさあ……いや、公立高校の化学教師でも全然いいけど。
そんなイケ散らかしてる南條先生の授業は、まったく面白くないし分からないと生徒たちから評判だ。けど、ちゃーんと授業を真面目に聞いてたら分かりやすく説明しているのだと分かる。(りっちゃん達が言うにはそんなの俺だけらしいけど。そんな馬鹿なっ!)
南條先生はハンパなく顔がいいためさぞかし生徒にモテると思いきや、あまりにもとっつきにくいため実際はそうでもない。少々ブサイクでも面白い先生の方が生徒には人気なのだ。たとえば社会の小川先生とか。
まー俺は断然南條先生派だけどね!! イケメンは正義!!
南條先生は顔もカッコイイけど、俺が一番好きなのはその声だ。教室の隅々までよく通る爆イケバリトンヴォイスで、アノ超人気声優ですか!? ってたまに勘違いする。(ご自由に想像してください)
目を瞑って授業を受けると、まるでBLCDを聴いてるみたいな気すらしてきて……嗚呼、耳が幸せだ。
ちなみにさっき当てられてた吉村君は、俺の中でクラスの受け男子ランキング不動のナンバーワンを誇る美少年だ。猫のような大きな瞳に、陽に透けるサラサラの髪、桜色のくちびる……溜め息が出ちゃう~。
勉強はあんまり得意じゃないみたいだけど、そこがまたイイ! 豚に真珠、美少年に欠点……このたとえが合ってるのかどうかはワカリマセン。(国語がちょっぴり苦手なエリート腐男子)
吉村くんは当てられて前に出たはいいけど、全く問題が解けなくてさっきからホワイトボードの前でアワアワしている……かーわーいーいー!
そんな吉村君をジッと見つめてる南條先生。きっと今『あぁ、困ってる顔も可愛すぎる、俺の吉村……』とか思ってるんだろうなー! 南條先生×吉村君カプマジでおいしい。でも吉村君は総受けだから、相手は南條先生だけじゃないんだな~、残念だけど!
そんでもって、そんな南條先生と吉村君のやり取りをやきもきしながら見てるクラスの男子たち。それぞれが『吉村は俺のだぞ! 抜け駆けすんな!』って思ってる絶対。あ~化学の授業ってなんて楽しいんだろう、妄想が捗る!
「解けないのか? じゃあ、……雨宮」
ウフフ……南條先生カッコイイなぁ……今描いてる漫画の攻めもモデルは南條先生なんだ。実物観察しまくって再現度上げたい。
……あれ? 南條先生、なんか俺を見てないか?
「うっちゃん、当てられてるよ!」
「え?」
隣からりっちゃんに小突かれて、俺はぱちぱちと数回、瞬きをした。
「雨宮。前に出て吉村の代わりに解いてみろ」
「は、はいっ!!」
俺はガタッと派手な音を立てて慌てて丸椅子から立ち上がった。
やっべー、マジびびったぁ~!! 俺当てられてたのか、妄想に入り込み過ぎて気付かなかった! ていうか南條先生が『雨宮』って! 俺の名前をイケボで呼んだよ! うわああ録音したかったぁぁ――!!
「ごめん雨宮……俺、全然分からなくって」
「ううん、気にしないで!」
自分が解けなかったせいで俺も当てられたのを、吉村君は申し訳なさそうに謝ってくれた。性格もいい美少年とか最高かよ~。
俺はホワイトボードマーカーを吉村君から受け取り、キュポンと蓋を外した。頭の中で考えながら、きゅっきゅっとアルファベットを綴っていく。
「えっと……答えはC3H8+5O2→3CO2+4H2Oです」
「正解。席に戻っていいぞ雨宮。――吉村も」
ふふふ、妄想しててもこんな問題、俺にとっては朝飯前よ。席に戻るとりっちゃんが小さく拍手してくれた。
(うっちゃん、さすがだね~)
(へへっ、ありがとー)
「……雨宮」
「は、はい!?」
りっちゃんと小声で話してたらまた南條先生ボイスで『雨宮』頂きましたァ!! 耳が天国です!!
「昼休み、化学準備室に来なさい」
「へ?」
な……なんで呼び出し!? 俺、正解したのに……!
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