雨宮卯月は腐男子である

すずなりたま

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 あいちんとかなやんはクラスが違うので(俺とりっちゃんは同じ)、いつも昼休みは美術室に集合してお弁当を食べている。
 美術室には俺達以外にもいくつかのグループが集まって、お昼休みを過ごしている。オタクばっかりだからとても居心地がいい。縦の繋がりも薄いから、上下関係もそんなにうるさくないし。
 そんな天国のような美術室で、俺は盛大なため息をついていた。

「はあああ……俺、いったい何したんだろー……」
「うっちゃん、妄想をついうっかり口に出してたんじゃないの~?」

 ニヤニヤと楽しそうなあいちんの鋭い指摘に(俺がこんなに悩んでいるのにひどい)りっちゃんが答えた。

「ありえすぎるけど違うよあいちん、私うっちゃんの横だから、それならまず私に聞こえてるはずだもん」
「ていうか、聞こえてたら周りの男子がドン引きだよ……」
「うっちゃんてばどんな妄想してたの?」

 南條先生と吉村君を楽しく掛け合わせてましたが何か!? ――しかし、問題を解けなかった吉村君が呼び出されるならまだ分かるよ。むしろ何でそこで吉村君を呼び出さないの!? 呼び出してエッチとかすればいいじゃんか! そして俺はそれを陰で見ていたいよぉ! あ、もしかして俺そのために呼ばれた? そんなわけないか……。

「雨宮氏、早く行かないと南條先生は怒ると多分恐いでござるよ」

 他のグループで飯を食べていた、アニオタの永田氏が俺に話しかけてきた。俺の数少ない男子の友達である。同じクラスじゃないけど話が聞こえてたみたいで、なかなか腰をあげない俺にイライラしているっぽい。

「じゃあ行ってくる、骨は拾ってくれ、永田氏……」
「まかせろ」

 ああ、気が重い。美形は遠くから見つめてるのが一番いいのになぁ……無敵の美形攻め様とそこらへんにいるモブ男子の俺が一対一で話すとかマジ無理ゲーすぎる。いったい前世で何やらかしたんだ、俺。

 もしかしてあれか? 俺が問題解いたあと吉村くんにこっそりお礼を言われたからか? 『俺の吉村がちょっと優しくしたからって調子に乗るなよ雨宮……!』とか言われちゃうのかな?
 ううう、俺は敵じゃなーい! むしろ応援してますよぉ!!

「別に怒られるって決まったわけじゃないんだから、がんばれうっちゃん!」
「そうそう! それにうっちゃん南條先生のこと大好きなんだし、考えようによってはラッキーだよねー」
「あはは……まあ、攻めとしての好き、だけど」

 そして俺はりっちゃん達に見送られて、化学準備室へと向かった。







「しっつれーしまーす……」

 軽くノックをしてドアを開けると、白衣を着た南條先生がコーヒーを飲みながらタバコを吸っていた。
 南條先生、タバコ吸うんだぁ……大人って感じ。いや大人だけどさ。マンガでもタバコ吸うキャラにしよーっと。タバコの煙は苦手だけど萌える。

「わざわざ呼び出して悪かったな、雨宮。……あ、タバコのことは黙っておいてくれないか?」
「えっ?」
「一応ここ、禁煙だからな」

 南條先生は人差し指を唇に当てて、シィ、という二次元のイケメンにしか許されないジェスチャーをした。

 ぐはッ!!(心中吐血)
 美形がその仕草は、は、反則でしょぉおおおお!?

「あ、雨宮、大丈夫か? なんか顔が赤いぞ」
「なっなんでもありません……! もうお腹いっぱいです!!」

 これ以上俺を萌えさせないでくださぁぁい!! ああ、今ここにいるのが俺じゃなかったらいいのになぁー!! くっそぉ、吉村君外でモブキャラとサッカーなんかしてないで今すぐ化学準備室に来いよぉぉッッ!! いや、来てくださいぃぃ!!

「えーと腹いっぱいなのか? 昼メシもう食べたんだな。食後のコーヒーでも飲むか?」
「へぁっ!? い、いただきます」
「なんだ、へぁって」

 クスクスと可笑しそうに笑いながら、南條先生は俺にコーヒーを淹れてくれた。ちゃんと砂糖とミルクも入れて混ぜてくれる。ちなみにコーヒーはインスタントで、お湯はビーカーとアルコールランプで沸かしていた。化学室って便利だなぁ……。

 ていうか南條先生、なんか普通に優しいな?
 誰だよ、『南條って顔はメチャいいけど、とっつきにくいしマジ最悪!』とかいう根も葉もない噂を流した当て馬系女子はよぉ……。
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