マイダーリン、この世の全ての怖いものから俺を守ってくれ!!!

すずなりたま

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6 再会

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   ドアを開けた途端、ふわりと漂う白檀の香り。

「あ……」

   そこに居たのは、今朝礼二郎をナンパから助けてくれたべっ甲の眼鏡をした男だった。

   今朝はオシャレな服装だったが、今は部屋着なのかTシャツでラフな格好をしている。
   そして正面からマジマジと顔を見ると、彼は自分に劣らなくもない、かなりのイケメンな部類なのが分かった。

「どうしたの?   そんなに泣いて……」

   彼はスッと手を上げると、親指で優しく礼二郎の涙を拭ってくれた。
   その優しい手つきに一瞬心臓が跳ねたが、今はそれどころではない。

「ご、ゴキが出て……っ!   殺虫剤の中身もなくて……ていうか、こわくてっ! お、おねがい、助け──」
「ゴキ?   ああ……何か叩くものある?」
「え……?」

   彼は礼二郎の様子を察してか、突っ掛けを脱ぐとズカズカと部屋に入り込んで来た。
   こんな状況じゃなかったら礼二郎も『何勝手に人んちに上がり込んでんだよ!』と突っ込むところだが、むしろ今は勝手に上がってくれてありがたいしかない。それに男なので、部屋に霊が入る心配もない。

「どこらへんにいたの?」
「べ、ベランダの近く……」
「あ、いた。部屋綺麗だし、外から来たのかな」
「多分そうだと思う……」
「要らない雑誌とかスリッパとかあったら貸して。怖いなら避難しててもいいよ」
「あ、ありがとう。あの、名前……」 
「柴だよ。柴京介しばきょうすけ
「しば、くん……」

   礼二郎は柴のお言葉に甘えて、玄関に避難した。すぐにバシッバシッと雑誌で思い切り叩く音が何度かして、どうやらGはアッサリと天に召されたようだ。ただ、礼二郎には死骸処理も無理だった。

「槐君、トイレットペーパー貸してくれる?」
「は、はいっ!」

   礼二郎はなるべくGの死骸を見ないようにして、ストック分のトイレットペーパーを一つ丸ごと手早く柴に手渡した。
   Gは既に死んでいるのに、まだ怖がっている礼二郎に思わず柴の口角は上がった。

   柴はトイレットペーパーで死んだGをサッと包み、トイレに流した。その後、アルコールティッシュで床を綺麗に拭きあげ、大捕物は無事終了したのだった。

「あー、死ぬかと思った……。柴君、今朝から二度も助けてくれてどうもありがとう。まさかお隣さんだったとは、だから俺の名前知ってたの?」
「うん。――それに槐君、違う学部だけど入学当初から目立ってたし」
「え、そうなのか?」
「うん」

   礼二郎は、今度はまじまじと柴を観察した。少し長めの黒髪とメガネで隠されているが、やはり顔が整っている。それに今朝は気付かなかったが、黒い宝石のようなピアスと数珠のブレスレットをしていた。
   家にいるのにオシャレかよ!   と心の中で軽くツッコんだ。

「?   どうしたの」

   礼二郎のジロジロと値踏みするような視線に気付いたのか、柴が尋ねた。

「あ、ごめん。柴君イケメンだなって思って……」
「え、槐君の方がイケメンだよ?」
「!?   あ、ありがとう……」

   自分でも心からそう思っているが、最近は友人達に『ハイハイ、イケメンイケメン』と軽く流されまくっているせいで、久々にマジトーンで褒められて礼二郎は照れた。

「……でも」
「む?」

(で、でも何だ? イケメン調子乗んなよって!? でも事実だし、柴君だって俺の事イケメンって言ったじゃん!!!)

「可愛いな、とも思うよ」
「へ?」
「泣いてるとこばっか見てるからかな」 

 柴はクスクス笑いながらそう言い、礼二郎はそんな柴をぽかんと見つめた。
   たしかにさっき助けを求めて目の前でボロボロ泣いてしまったが、それ以外に最近泣いた事なんて……

「……もしかして、今朝電車で泣いたところも、見られてた?」
「うん」
「うわ、恥ずかし……」

   恥ずかしさはあるものの、礼二郎は昔からわりと躊躇わずに泣く。男のくせに、などと思ったことはあまりない。
   何故なら幽霊もGも当たり前に怖いので、怖いものを素直に怖がることを別に恥とは思って無いからだ。

「今朝、どうして泣いてたの?」
「え?」
「何か、ヘンなものを見たとか?」
「へ、変なものって……」         

   正直に言えるわけがない。走行中の電車の車窓に、血まみれの女性の霊が視えたんだ──なんて。しかもほぼ初対面の相手に。
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