マイダーリン、この世の全ての怖いものから俺を守ってくれ!!!

すずなりたま

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 ──しかし。

「……そんな事ないよ」
「え」
「被害者が男とか女とか関係ない。痴漢はれっきとした犯罪だし、好きでも無い相手に触られるなんて不快だし、怖かったよね?」
「……」

   怖い、とは思わなかった。めちゃくちゃ不快ではあったが。
   ただラッシュで身動きが取れなかったし、それに後から痴漢は隣の女性ではなく、最初から礼二郎を狙っていたと分かった。『ハァハァ、綺麗なお兄ちゃん、いいオシリしてるね……』と耳元で気色悪い声に囁かれたからだ。だから……

「少しこわかった……かも……」

   礼二郎はポツリと、初めてその時の正直な気持ちを漏らした。
   今まで友達にも家族にも、誰にも言えなかったのに。
   電車通からバス通に変えた本当の理由は、痴漢のせいではないけど。

   柴は少し放心気味の礼二郎の両肩をそっと掴み、優しく言った。

「明日から一緒に電車に乗ろう。これからは俺が居ない時だけバスに乗ったらいいよ」
「え?   でも、」
「俺に槐君を守らせて欲しい」
「……」

    もし自分が女の子だったとして、彼氏に『君を守りたい』と言われたら『何から?』と冷たく聞き返す自信があった。
   柴は彼氏じゃないし、自分も女の子じゃない。それなのに守らせて欲しい、と言った。

   何から?

   痴漢から。 

   あと、ゴ〇ブリから。

「……っっ!!」

   理解した途端、礼二郎の顔がぶわっと目に見えて赤くなった。色素が薄いせいか、余計に目立つ。

「いい?」
「う、う、ウン……」
「槐君は美人だし、今朝もオッサンからナンパされたんだから、男だからって油断しないでもっと警戒した方がいいよ」
「わ、わ、ワカッタ……」

 カッコイイとかイケメンとかはよく言われるが、美人とは。それは男にはあまり使うことの無い形容詞じゃないだろうか。たとえ事実でも。

「明日の講義は何コマから?」
「2コマ目……」
「じゃあ一緒に行こう。電車の時間調べとくからLineのID教えて?」
「す、スマホもってくる……!」

   礼二郎がスマホを持ってきて、無事に柴と連絡先の交換が出来た。
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