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12 好みの話
しおりを挟む柴は焦っている礼二郎の頭を撫でくり回しながら言った。
「ごめん、警戒させちゃった? でも大丈夫だよ、好みだからっていきなり襲ったりしないから。こう見えて紳士です」
「え? 好みって……誰が?」
「槐君だけど?」
「え。俺って柴君の好みなのか? 顔が?」
「うん」
「そうなのか……男にも好かれる俺の魅力、凄いな……」
「そうだね(笑)」
礼二郎は柴の言葉に混乱して、他人事のような他人事ではないような、なんだかよく分からないことになっていた。
「外見も好みだけど、話してみて性格も好きだなあって思ったよ」
「俺の?」
「うん、槐君の。可愛くて飽きない」
「まあ俺、顔も性格も良いし運動も家事も出来るパーフェクトヒューマンだから……正直飽きはこないと思う」
「そうなんだ(笑)」
柴は、自分のことを良いように淡々と話す礼二郎が面白すぎて、箸が止まって笑いを堪えきれなかった。
(なんで柴君は俺の言うことにいちいち笑っているんだ? 俺は大真面目なんだが??)
解せぬ、と礼二郎は思った。
「で、どうする? 俺たち付き合っちゃう?」
「付き合……えぇ!?」
「そういう流れだったんじゃないの?」
「な、流れとは?」
柴の言ってる意味が分からず、礼二郎は思わず聞き返した。
「だから、槐君はさっき俺の事を口説いたでしょ? で、俺も槐君の顔と性格が好みだから付き合ってもいいよってこと」
「なるほどそういう流れか……って、俺口説いてないからぁぁ!! 柴君は男の子だよな!? 俺もそうだぞ!?」
「俺はどっちもイケるってさっき言ったじゃん」
「えっあれってそういうこと!? 男も女もオッケーってことか!?」
「え、今? ……さっきはどういうことだと思ってたの?」
よく分からなかったが、『イケる』を『行ける』と勝手に脳内変換して……
「電車かバスかどっちでも行けるみたいな……?」
「んふっww」
ついに柴は腹を抱えて大笑いした。『槐君、最高』と全力で草を生やしながら。
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