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14 声
しおりを挟む《ユル、サナイ……》
「!?」
駅に着いた途端に突然、今朝夢で聴いた(と思っている)女性の声が脳内に響き、礼二郎はピタリと足を止めた。
「槐君、どうしたの?」
「あ、いや……一瞬忘れ物したかと思ったけど、違った」
(え、何何……ま、まさか幽霊!? でも声が聴こえるなんて初めてだぞ)
礼二郎は内心焦りまくり、背中にダラダラと冷や汗をかいていたが笑って誤魔化した。
霊の声が聴こえるとかおかしなことを言って、新しい友人――しかも自分を痴漢とゴキから守ってくれる親切なイケメン――を早々に失いたくないからだ。
電車はあと数分で来る予定だ。通勤ラッシュの時間帯は過ぎているが、人はまだそこそこ多い。
礼二郎と柴は一番人の少ない列に加わり、再び話し始めた。
「でも本当にいいの? 隣に住んでるってだけでご馳走になって……もちろん食べた分の食費は出すからね」
「え、別にいいよ。一人分も二人分もそんなに変わらないし」
「そういうわけにはいかないよ。……ていうか、槐君は俺と違って友達も多そうだし、呼んだら誰か来るんじゃないの?」
礼二郎は霊の声のことはなるべく考えないようにして、柴から目を逸らしながらしどろもどろに答えた。
「あー……実は友達、部屋に呼んだことないんだ。狭いってバカにされそうだし、なんか生活圏を侵されるみたいで嫌っていうか……俺、少し潔癖症ぽいところがあるから」
大学の友人達は決して不潔なわけではないが、部屋へ呼ぶほど心を許していないというか、招きたくないのは事実だった。
若干線を引いておきたい、というか。
「……俺は来てもいいの?」
「え? そりゃあ柴君は(Gを倒してくれた)命の恩人だし! それになんかいい匂いするし、イケメンだし、一緒にいて安心するから全然いい!」
そこまで言って、礼二郎はハッとした。さすがに今の発言は友人として行き過ぎていたことに自分で気付いたからだ。
「……やっぱり俺、口説かれてるよね?」
「口説いてなーい!!」
顔を真っ赤にして否定するのはむしろ逆効果なのだが、柴はくすくす笑うだけでそれ以上突っ込んでこなかった。
《ユルサナイ……あの男……》
電車に乗り込んだ途端、また声が聴こえた。
「っ……!」
「槐君?」
「ごめ、ちょっと気分悪いかも……」
礼二郎は頭痛がしてきて、頭を抱えた。電車の中は混んでいて、座れる場所など無い。
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