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47 親切は難しい
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京介と部屋の前で別れて、礼二郎はマンションを出た。
(大丈夫、昨日が特別に色々あっただけだ! 今日は一人でも平気。だって今の俺に霊は憑いていないんだから……!)
礼二郎がそう自分に言い聞かせながら最寄りのバス停に向かっていると、目の前で老婆が横断歩道のない場所で無謀に道路を横断しようとしていた。
「ああっ!! ちょ、おばーちゃんっ!! 車来てるから危ないって!!」
礼二郎が慌てて駆け寄り老婆の腕を引こうとしたら──
スカッ
「は?」
(腕が通り抜けた? ってことは……)
顔を上げたら、そこには誰もいなかった。
「ひ~~っ!?」
通りかかった女子高生二人組が、礼二郎を見てクスクス笑っていた。独り言とリアクションが大きいイケメン(ほぼ変人)だと思われたのだろう。
──バスの中でも、似たようなことが起きた。
(ちょ、ちょっ!? 今、飛び出してきた子ども、バスに轢かれなかったか!?)
窓の外をぼんやりと眺めていたら、小学生の子どもが飛び出して轢かれたのが見えて、慌てて立ち上がってしまった。
しかしそれもまた霊だったようで、視えていない他の乗客は無反応だった。
礼二郎は運転手にアナウンスで『お客様、危険ですので走行中は席を立たないで下さい』とほぼ名指しで注意され、他の乗客にプークスクスと笑われてしまった。
(ああもう、なんなんだ……昨日よりもハッキリ視えすぎだろ……)
「お兄さん、大学生? 毎日勉強のし過ぎで少しノイローゼ気味になってるんじゃないのぉ? 大丈夫?」
頭を抱えていると、礼二郎の隣に座っていた上品な婦人に心配された。
「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます……」
ハッ
(俺の隣、さっきまでは誰も座ってなかったぞ……!?)
瞬きをした次の瞬間、女性の姿は綺麗に消えていた。
(ま……マジか……!?)
驚きすぎて、もはや叫び声すら出ない。驚愕が恐怖を越えた瞬間だった。
ヒソヒソ
「ちょ、あの人一人言ヤバくない……?」
「イケメンなのに、怖いんだけど……」
もう車内で礼二郎のことを笑う乗客は一人もおらず、代わりに恐ろしいほどシン……と静まり返り、まるでこれから礼二郎がバスジャックでも起こすのでは無いかというようなピリついた空気が漂い始めた。
さすがに居心地が悪くて、まだ目的駅に着いていないのに礼二郎は降車ボタンを押した。礼二郎の一挙一動に他の乗客がビクついているのが分かる。
(うう……なんでこんなことに……)
降りたバスを見送りながら、礼二郎は深く溜息を吐いた。
昨日からなんとなく気付いていたが、霊が生きている人間と同じように視える。
よぉぉく目を凝らさないと、見分けが付かないくらいに。だから前よりは若干怖くないものの、普通に困る。
(京介はどうやって瞬時に霊と人間を見分けているんだろう。やっぱりS級霊媒体質だから、俺とは違って視えるのかな……)
「あ、礼二郎君だ。おはよう」
「!? お、おはよう……」
急に後ろから声を掛けてきたのは、礼二郎と同じ経済学部の女子だった。
名前は覚えていないが、経済学部の女子なことには違いない。(2回言った)
(大丈夫、昨日が特別に色々あっただけだ! 今日は一人でも平気。だって今の俺に霊は憑いていないんだから……!)
礼二郎がそう自分に言い聞かせながら最寄りのバス停に向かっていると、目の前で老婆が横断歩道のない場所で無謀に道路を横断しようとしていた。
「ああっ!! ちょ、おばーちゃんっ!! 車来てるから危ないって!!」
礼二郎が慌てて駆け寄り老婆の腕を引こうとしたら──
スカッ
「は?」
(腕が通り抜けた? ってことは……)
顔を上げたら、そこには誰もいなかった。
「ひ~~っ!?」
通りかかった女子高生二人組が、礼二郎を見てクスクス笑っていた。独り言とリアクションが大きいイケメン(ほぼ変人)だと思われたのだろう。
──バスの中でも、似たようなことが起きた。
(ちょ、ちょっ!? 今、飛び出してきた子ども、バスに轢かれなかったか!?)
窓の外をぼんやりと眺めていたら、小学生の子どもが飛び出して轢かれたのが見えて、慌てて立ち上がってしまった。
しかしそれもまた霊だったようで、視えていない他の乗客は無反応だった。
礼二郎は運転手にアナウンスで『お客様、危険ですので走行中は席を立たないで下さい』とほぼ名指しで注意され、他の乗客にプークスクスと笑われてしまった。
(ああもう、なんなんだ……昨日よりもハッキリ視えすぎだろ……)
「お兄さん、大学生? 毎日勉強のし過ぎで少しノイローゼ気味になってるんじゃないのぉ? 大丈夫?」
頭を抱えていると、礼二郎の隣に座っていた上品な婦人に心配された。
「いえ、大丈夫です。ご心配ありがとうございます……」
ハッ
(俺の隣、さっきまでは誰も座ってなかったぞ……!?)
瞬きをした次の瞬間、女性の姿は綺麗に消えていた。
(ま……マジか……!?)
驚きすぎて、もはや叫び声すら出ない。驚愕が恐怖を越えた瞬間だった。
ヒソヒソ
「ちょ、あの人一人言ヤバくない……?」
「イケメンなのに、怖いんだけど……」
もう車内で礼二郎のことを笑う乗客は一人もおらず、代わりに恐ろしいほどシン……と静まり返り、まるでこれから礼二郎がバスジャックでも起こすのでは無いかというようなピリついた空気が漂い始めた。
さすがに居心地が悪くて、まだ目的駅に着いていないのに礼二郎は降車ボタンを押した。礼二郎の一挙一動に他の乗客がビクついているのが分かる。
(うう……なんでこんなことに……)
降りたバスを見送りながら、礼二郎は深く溜息を吐いた。
昨日からなんとなく気付いていたが、霊が生きている人間と同じように視える。
よぉぉく目を凝らさないと、見分けが付かないくらいに。だから前よりは若干怖くないものの、普通に困る。
(京介はどうやって瞬時に霊と人間を見分けているんだろう。やっぱりS級霊媒体質だから、俺とは違って視えるのかな……)
「あ、礼二郎君だ。おはよう」
「!? お、おはよう……」
急に後ろから声を掛けてきたのは、礼二郎と同じ経済学部の女子だった。
名前は覚えていないが、経済学部の女子なことには違いない。(2回言った)
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