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48 メガネ女子
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「め、珍しいね、こんな微妙な場所を一人で歩いてるなんて……。バス、途中で降りちゃったの?」
「そ、そうなんだ。えーっと……」
(困った、なんて説明すれば……!)
「もしかして朝の運動? えらいね」
「そう、それだよ」
礼二郎はまるっと彼女の作り出してくれた理由をパクった。無駄にキメ顔をしながら。
「ていうかごめんね、親しくもないのにいきなり話しかけちゃって。図々しく下の名前で呼んでるし……」
「いや、全然いいよ」
(この子は生きてる人間だしな!)
最初はまた霊ではないか、とビクビクしてしまったが。
「みんな礼二郎君のこと名前で呼ぶから、名字忘れちゃったんだ。たしか珍しい名字じゃなかった?」
「槐だよ。槐礼二郎。まあ珍しいといえばそうかな?」
礼二郎は、自分が下の名前でばかり呼ばれる理由が分かった気がした。
「そうそう、槐君だ! ……でも礼二郎君って呼んでもいい? あ、私は中西だよ。フルネームは中西姫子……よろしく」
「もちろんいいよ、こちらこそよろしく。えーと、姫ちゃん」
下の名前で呼ばれたので当然下の名前で呼び返したのだが──中西はギョッとした顔をした。
「え、あの、だめだった?」
女子は男子を下の名前で呼んでもいいが、逆はルール違反なのだろうか。それとも勝手に短縮したのが不味かったか。
(でも、池永も女子のことを『ちえりちゃん』って名前+ちゃん付けで呼んでるしなぁ……)
「う、ううん! 意外とフレンドリーで驚いたっていうか。男子は大体みんな私の事、中西さんって呼ぶからさ」
「え、俺ってフレンドリーじゃないように見える?」
礼二郎は自分を指さしながら聞いた。
中西──姫子は慌てて両手を自分の前で振りながら言い訳した。
「ううん、違うの! ほら、私ってどう見ても姫って顔じゃないからさぁ! 自分でも分かってるしね」
そう言われて、礼二郎は姫子の顔と全身をまじまじと見た。
黒髪のボブに、黒縁メガネ。小柄だが、平均より少しぽっちゃりしているかもしれない。化粧っ気のない顔は童顔で、顔見知りじゃ無ければ高校生、もしくは中学生に間違われるかもしれない。
服装は極力目立たないというか、地味だ。でも別に名前は関係ないんじゃないか、と思った。
「……姫ちゃんは、姫ちゃんにしか見えないけどなぁ」
「あ、ありがとう。礼二郎君ってわりと女子にも優しいんだね。男子とはよく話してるけど、女子には素っ気ない態度っていうか……ごめんね、変な誤解してて」
「!?」
礼二郎が素っ気なくするのは、合コンで人が食べている最中にしつこく話しかけてくる失礼な(?)女性のみだ。
他の女性にはそんな失礼な態度は取っていない、と思っていたし、何より……
(たしかに俺には女性の友人はほぼいないが、俺の美しさが女性を遠ざけていたわけではなかったのか……!?)
そんなふうに思われていたとは、普通にショックだった。
「実を言うと礼二郎君のこと、ちょっとだけ怖くて。……それなら話しかけんなって感じなんだけど、在学中に一度くらい話してみたかったんだ。一人で歩いてるとこなんてあまり見ないし、これはチャンスかなって」
「ふうん、俺一人でいることわりと多いけどな……何にせよ、話しかけてくれてありがとう。今朝は一人で大学に行くのが怖かったから、本当に助かったよ」
(この子と話すことに集中していれば、もう霊だか人間だかに遭遇しても驚かないぞ。全員無視だ、無視っ!!)
「大学に行くのが、怖い……?」
(あっ)
ついポロッと本音を漏らしてしまったことに、今更気がついた。
「そ、そうなんだ。えーっと……」
(困った、なんて説明すれば……!)
「もしかして朝の運動? えらいね」
「そう、それだよ」
礼二郎はまるっと彼女の作り出してくれた理由をパクった。無駄にキメ顔をしながら。
「ていうかごめんね、親しくもないのにいきなり話しかけちゃって。図々しく下の名前で呼んでるし……」
「いや、全然いいよ」
(この子は生きてる人間だしな!)
最初はまた霊ではないか、とビクビクしてしまったが。
「みんな礼二郎君のこと名前で呼ぶから、名字忘れちゃったんだ。たしか珍しい名字じゃなかった?」
「槐だよ。槐礼二郎。まあ珍しいといえばそうかな?」
礼二郎は、自分が下の名前でばかり呼ばれる理由が分かった気がした。
「そうそう、槐君だ! ……でも礼二郎君って呼んでもいい? あ、私は中西だよ。フルネームは中西姫子……よろしく」
「もちろんいいよ、こちらこそよろしく。えーと、姫ちゃん」
下の名前で呼ばれたので当然下の名前で呼び返したのだが──中西はギョッとした顔をした。
「え、あの、だめだった?」
女子は男子を下の名前で呼んでもいいが、逆はルール違反なのだろうか。それとも勝手に短縮したのが不味かったか。
(でも、池永も女子のことを『ちえりちゃん』って名前+ちゃん付けで呼んでるしなぁ……)
「う、ううん! 意外とフレンドリーで驚いたっていうか。男子は大体みんな私の事、中西さんって呼ぶからさ」
「え、俺ってフレンドリーじゃないように見える?」
礼二郎は自分を指さしながら聞いた。
中西──姫子は慌てて両手を自分の前で振りながら言い訳した。
「ううん、違うの! ほら、私ってどう見ても姫って顔じゃないからさぁ! 自分でも分かってるしね」
そう言われて、礼二郎は姫子の顔と全身をまじまじと見た。
黒髪のボブに、黒縁メガネ。小柄だが、平均より少しぽっちゃりしているかもしれない。化粧っ気のない顔は童顔で、顔見知りじゃ無ければ高校生、もしくは中学生に間違われるかもしれない。
服装は極力目立たないというか、地味だ。でも別に名前は関係ないんじゃないか、と思った。
「……姫ちゃんは、姫ちゃんにしか見えないけどなぁ」
「あ、ありがとう。礼二郎君ってわりと女子にも優しいんだね。男子とはよく話してるけど、女子には素っ気ない態度っていうか……ごめんね、変な誤解してて」
「!?」
礼二郎が素っ気なくするのは、合コンで人が食べている最中にしつこく話しかけてくる失礼な(?)女性のみだ。
他の女性にはそんな失礼な態度は取っていない、と思っていたし、何より……
(たしかに俺には女性の友人はほぼいないが、俺の美しさが女性を遠ざけていたわけではなかったのか……!?)
そんなふうに思われていたとは、普通にショックだった。
「実を言うと礼二郎君のこと、ちょっとだけ怖くて。……それなら話しかけんなって感じなんだけど、在学中に一度くらい話してみたかったんだ。一人で歩いてるとこなんてあまり見ないし、これはチャンスかなって」
「ふうん、俺一人でいることわりと多いけどな……何にせよ、話しかけてくれてありがとう。今朝は一人で大学に行くのが怖かったから、本当に助かったよ」
(この子と話すことに集中していれば、もう霊だか人間だかに遭遇しても驚かないぞ。全員無視だ、無視っ!!)
「大学に行くのが、怖い……?」
(あっ)
ついポロッと本音を漏らしてしまったことに、今更気がついた。
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