暁の秘薬と森の乙女

もちもち

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第七話「秘めたる誓い」

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 香の煙は、なおも部屋の中に漂っていた。

 夜は深く、音はなかった。だが、それゆえに――肌の熱と、心臓の音だけが、二人の間に濃く満ちていた。

 カナンは、寝台に横たわるシリウスを見下ろしていた。

 彼の頬は上気し、額には汗が浮かび、唇は薄く開いて荒い息を吐いている。

 「……カナン……」

 彼女の名を呼ぶ声は、どこか甘えた熱を孕んでいた。
 これまで威厳を纏っていた王弟の声とは、まるで別人のよう。

 (こんな声も、出すんだ……)

 男の身体。
 若さに満ち、鍛えられた筋肉と柔らかい皮膚の境界。
 そしてその中心にある、今はまだ衣に隠された“性”の存在。

 カナンは、震える手で彼の外套に触れた。

 「……脱がせても、いいですか……?」

 尋ねる声は静かだった。だがその内側には、明らかな昂ぶりがあった。

 シリウスは、うっすらと目を開けてうなずいた。
 その瞳は、潤みと熱に満ち、彼女を真っすぐに見つめていた。

 ひとつ、ふたつと衣の紐をほどいていく。
 肩から滑り落ちた上衣の下に現れたのは、若い男の胸。
 白く、薄く汗ばんだ肌に、うっすらと走る血管。鍛えられながらも細身で、繊細な線を描いていた。

 (……こんなに、熱そうに脈打ってる……)

 胸元を指でツツとなぞれば、シリウスがびくりと背を浮かせる。

 「ッ……あ、あぁ……」

 小さな喘ぎ。

 思わずカナンは息を止めた。
 彼の声が、思った以上に甘く、そして無防備だったから。

 その反応に導かれるように、指先はさらに下へ。

 腹部。
 柔らかな皮膚の下で躍動する命の証。そこから下、布の内側に隠された“中心”へと近づいていく。

 彼の腰布に手をかける。
 一瞬、カナンの指が止まる。
 見てはいけないものを見るような――けれど、どうしても知りたい、という気持ちが、内から押し上げてくる。

 (私が……彼に触れて、いいの……?)

 その葛藤を乗り越えたのは、彼の声だった。

 「……カナン、……」

 切れ切れの声に、布がゆっくりと滑り落ちる。

 そこに現れたのは、先ほど自らの手で導いたものよりも、さらに硬く昂ぶった彼の“性”。

 熱そうに脈打ち、皮膚が張り詰め、透明な滴を滴らせている。

 「……こんなに、……大きいっ……」

 思わず呟くカナンの目の奥で、羞恥と興奮がせめぎ合っていた。

 シリウスのものは、若く、勢いをもち腹につくほどそそり立っていた。
 目を逸らしたいのに、目が離せない。
 指先が震え、無意識に伸びていく。

 そっと、熱い根元に触れる。
 皮膚が跳ねるように動き、彼の喉から甘い声が漏れた。

 「っ……く……は、あぁん……」

 その反応に、カナンの胸がきゅうっと締めつけられる。

 (これが、彼の……“命”の場所……)

 恥ずかしさと好奇心が入り混じる中、彼の中心を掌で包む。

 手のひらに広がる熱。
 固さと重み、鼓動。
 それをそっと上下に擦ると、シリウスの身体がたまらず反応した。

 「く、ッ……カナン、……ダメだ、それ以上は……っ」

 必死に耐えるような声。
 だが、身体は正直だった。腰がわずかに浮き、彼女の手に自らを委ねてくる。

 「大丈夫……ちゃんと、受けとめますから……」

 囁くように言い、彼のものに口づけを落とす。
 その瞬間、シリウスは大きく背を反らせた。

 「……ああッ、カナン……や、……」

 指を絡め、窪みを舌先で舐め、彼の熱を味わうように優しく唇で愛撫する。

 熱い吐息が耳元にかかり、彼の手が彼女の肩に縋りつく。

 「…はぁっ…カナン……挿れたい……」

 彼が、彼女の肩を抱きしめ、寝台にそっと押し倒す。

 カナンもまた、すでに衣を脱ぎ、素肌を彼に委ねる覚悟を固めていた。

 見つめ合うふたり。
 香に惑わされただけじゃない、確かな欲と、ふたりの決意。

 「……いくよ……?」

 「……ええ。今夜は……あなたのものになります」

 その言葉を最後に、ふたりは重なった。
 繋がるまでのわずかな瞬間、身体は戸惑い、熱をためらい、そして――

 ひとつになる痛みと悦びの中で、夜は深く静かに溶けていった。
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