すぐ腹ペコになるのが龍の弱点

やおよろずの

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第四話 最高位冒険者

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▼前回のあらすじ▼
 ポールトネメアに帰りクエスト報酬を待つファフたちに声をかけてきたのは、チナという魔術師の少女。
 ファフの持つ魔結晶を用いれば、開発した”転移”の術が完成するという。
 「実物を見せるからついてきて!」と強引にギルドの外へと連れていかれるのだった。



 ポールトネメア船着き場。

チナ「あ、来ましたね!」

ファフ「すみません、チナさん。ちょっと遅れちゃって」

 全部ロムラスのせいです。
 ポールトネメアから、ドワーフの国ムースヘイムまでは船で2日。
 その間、ロムラスは飯を食えない。
 理由は簡単、ロムラスの存在がバレると非常にまずいので、人目の付くところでは変身できないからだ。
 「2日はムリ! 飛んで行こ!」と駄々をこねるロムラスをなんとか説得し、今朝に死ぬほど食いだめすることで合意したのだった。
 ……まさか3店食べつくすとは思わなかったが。
 今はお腹いっぱいでぐっすり眠っている。

チナ「大丈夫ですよ! それと、敬語はやめてくださいって言ったじゃないですか!」

 何故、急にムースヘイムに行くことになったのか。
 昨日のことを思い出す。

~~~

 連れてこられた先は、緑の三角屋根が印象的な一軒家。
 中は魔術具やらメモ用紙やらで散らかっていた。
 
チナ「あ、この魔術具はですねぇ、光魔術具の改造品で――」

 チナは自作の魔術具を手に取り、説明を始める。
 さっきからずっとこの調子だ。
 
チナ「――見ててくださいよ、それ!」

ファフ「うぁッ」

 眩しい!目を開けられない!
 
チナ「どうですか!? 何も見えないですよね! 私もです!」

ファフ「それじゃ使えないでしょ!?」

 目を腕で押さえつけながら、やっとの思いでツッコむ。
 やっと光が落ち着いてきた。
 まだ少しクラッとするが。

チナ「そうなんです……セツナにもそう言われました……」

 セツナ、初めて聞く名前だ。
 そういえば、”友人の頼みで”転移の魔術具を作ってるとか言ってたな。
 その友人だろうか。

チナ「あ、これも見てください!風魔法で自分を移動させる魔術具なんですけど、吹き飛ばす制御が出来ないのが難点なんです!」

ファフ「えぇ……」

チナ「それでこれが――」

 それからしばらくチナの魔術具紹介が続き、やっと転移の魔術具の紹介が始まった。

チナ「じゃん! これです!」

 チナが取り出したのは、青色の宝石が付いたブレスレット型魔術具。

チナ「この通り、最もレアな宝石の一つである”ブラックオパール”を用いてはいるんですが……。とりあえず使ってみてください。魔力は補充してありますので」

 転移魔術具を手渡される。
 リング部分はメタルスライムの生体鉱物が用いられているようで、腕に付けると勝手にサイズが調整された。
 
チナ「ブレスレットのリング部分に小さな突起があるのがわかりますか? そこがスイッチです。――あ、まだ押したらダメですよ!」

 そう言って俺から距離を離していく。

チナ「いいですか、スイッチを押したら私の方に歩いてきてください。それで10秒ほど経ったら、もう一度スイッチを押してください」

 なにがなんだかわからないが、言われたとおりにする。

チナ「じゃあ、どうぞ!」

 スイッチを押す。
 ブラックオパールが少し光り、起動したことを知らせる。
 そして、チナの方へと歩いていく。

チナ「――7、8、9」

 もうチナが目の前、というところまできた。

ファフ「10!――どうぞ、押してみてください!」

 ポチッとな!
 ヒュン。
 ――お、おぉ。一回目にスイッチを押したところだ。

チナ「パンパカパーン! どうですか、初めての瞬間移動は?」

 ……正直、地味だ。
 ”好きなところにワープ”ではなく、”一瞬で戻れる”だけ。

ファフ「いや、すごいと思いますけど……ちなみにこれどのくらいの距離までいけるんですか?」

チナ「これは”距離”じゃなくて”時間”です。最初にスイッチを押してから次に押すまでの間中、魔力を消費します」

ファフ「……それで、その時間は?」

チナ「10秒です」

 うん、使えないですね。
 
チナ「ちょっと! いま『使えないなコレ』って思いませんでしたか?」

ファフ「い、いやぁ……」

~~~

 あれ、これじゃあ何のためにムースヘイムに行くのかわからんぞ。
 転移の魔術具を使えばダンジョンから一瞬で戻ってこれると力説されて……。
 ダンジョンの最奥に着いた者は願いが叶うとかなんとか言われて……。
 そうだ、メッキ―。
 メッキ―をこっちの世界に連れてくる。そのためにも。

「――チナ。」

チナ「あ、セツナにエイリ! 見送りに来てくれたんだ!」

セツナ「うん。私達もこれから出発。」

チナ「ホントごめんね! 突然イザヴェル会議欠席させてくれ、なんて言って…… でも、一刻も早く転移魔術具を完成させたくて」

エイリ「ホント、チナの魔術具狂いは昔から変わんないねー。ま、転移魔術具が楽しみなのは私もだけど」

セツナ「……それで、魔結晶は?」

チナ「それなら、こちらのファフさんが持って――あ、ごめんなさい! 紹介がまだでしたね、彼女たちはセツナとエイリ。私のパーティメンバーなんです」

 あ、チナは冒険者だったのか。

エイリ「そう! 私がかの有名なζ級冒険者パーティ”ゲリュイオン”が一員、雷と闇の双剣使いエイリ!」

 エイリが左手を赤い右目の前にかざし、ポーズをとる。
 ……ちょっとアレな人なのか?

セツナ「……ファフくん、初めまして。話はチナから聞いてる。私はセツナ。氷魔法使い。」

ファフ「あ、通りで厚着なんですね。やっぱり氷魔法使うと寒いからなんですか」

セツナ「……厚着の方が氷の魔法使いっぽいかな、って。」

 ……そうなのか。
 
チナ「実は私たち、首都イザヴェルの会議に招集されてたんです」

セツナ「……最近、ζランクの魔物の目撃情報が増えてて。それについての会議。」

エイリ「こういう会議にも出なきゃいけないのが、”ζ級”のツラいところ、なんだよねー!」

 またよくわからないポーズをとるエイリ。

セツナ「……チナ。私たちそろそろ出ないと飛空船に間に合わないから。」

チナ「あ、そうだね! セツナ、エイリ! ぜっったい、完成させてくるからね!」

セツナ「……うん。じゃ、バイバイ。」

エイリ「じゃーね、チナ」

 二人は去っていった。

ファフ「――チナさんって冒険者だったんですね、しかもζ級の」

チナ「あれ、言ってませんでしたっけ? ていうか、敬語やめてください! 前も言いましたけど、私の方が5つも年下なんですから!」

ファフ「いやでも、α級冒険者がζ級冒険者にタメ口って言うのは……」

チナ「何言ってんですか! 魔結晶持ってるんですから、実質ζ級みたいなものですよ!」

 その理屈はおかしい。
 まぁ相手がタメ口でいいというのだから、ここは素直に従っておくとするか。

チナ「それじゃ、定期船に乗りましょ! 身分晶は持ってきてますか?」

ファフ「いや、持ってないけど」

チナ「あー! お家に忘れちゃったんですか? まだ時間的に間に合うので、取ってきて――」

ファフ「いや、そもそも持ってないけど、その”身分晶”?ってやつ」

チナ「――え」

チナ「えぇえええ!?!?」
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