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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!
2-1-3.ネーデルラント連邦共和国
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第三話
ネーデルラント連邦共和国
白いガレオン船は考えていた。
私がいないとダメなところは、先代とちっとも変わらないわね。
ふふふ。。。
***
川賊どもが、わんさかこちらへ向かってくると言うのに、私たちは何の手立ても無かった。
「ヒャッハー」と、賊が言ったかはわからないが、テンションがマックスといった感じだ。
ある者は、ぶつけられた仕返しに!
また、ある者は、女を見てやましい事でも考えているのだろうか?
こちらは、女四人なのだから。
「お嬢様、動きます。この船、動きます」
「アンナッ! ブチかませ」と、貴族令嬢らしからぬことを、私は叫んでいた。
既に、奴らは、私の横まで船を寄せて来ていたのだから。
「よし、この賊の船に体当たりだ」
そして、船は“ギギギィ”という音と共に、動き出した。
「こっちに来るんじゃねぇ」
「「「うわぁぁぁ」」」という賊たちの声が聞こえた。
すり潰すとは、こういう事なのだろう。
賊どもは、ライン川の早い流れに流されて行った。
しかし、まだまだ、賊はいるのだ。
「アンナッ、出航だ」
「はい、ミーナお嬢様」
私たちと賊のボートチェイスは、まだまだ続いた。
「クリスちぃ、武器を探すよ」
「武器?」
「賊が乗り込んで来る前に撃つ」
私は、クリスティアーネとアガーテを連れて、武器庫へ向かった。
そこには、剣の他、クロスボウ、ロングボウ、ショートボウ、マスケット銃と、ご令嬢が使う傘があった。
「なんで傘が、こんなにも沢山あるんだよ」
「さあ?」
「私にもさっぱりです」
武器か?
どれにする?
マスケット銃は、一番強力な武器だ。
しかし、こうも激流で水に濡れるとなると、火薬は使えんのではないか?
その点、火薬の要らない弓矢は濡れても使える。
なら、機械式のクロスボウか?
怪力の持ち主なら良いだろう。
普通の体力なら、立ち上がって、脚力で弦を引かないといけない。
そんな隙を見せて良いのか?
ここは、ロングボウなのでは?
場合によっては、ショートボウで格闘戦をしないとイケないかも?
「よし、まずは帯剣だな。そして、ロングボウ。ショートボウも持って来て!」
実は、アガーテの実家は、騎士なのだ。
そんな彼女は、武器の扱いはお手の物だった。
次々に賊をロングボウで仕留めていく。
何とも頼もしいではないか!
川賊を振り切った頃、私たちは、新たな問題を抱えていた。
進路である。
このまま進むと、ロッテルダムだ。
左のワール川に行くと、ロッテルダムの西側を通る。
どちらにしても、北ネーデルラントだ!
「ヤバくないか?」
「あいつら、ハプスブルクの関係者と見れば、殺しに来るぞ」
「ミーナちゃんのお祖母様はスペインのハプスブルク家と戦ったから、歓迎なのでは?」と、クリスティアーネが言うとアンナが、説明した。
「いえ、この船は旗を上げていません。その時点で重罪です。沈没させられても合法でございます。お嬢様!」
そうなのだ。
旗を掲げない船は、やましいことを考えている海賊なのだから、沈められても何も言えないのだ。
そして、今、この船には掲げる旗などなかった。
「ダメだ」と、誰もが思っていた。
特にアガーテの反応は早かった。
目を見開き、頭を抱え、下を向いてしまった。
「あぁ、アニメでよく見るやつだわ」
騎士の家のアガーテは、実は弱い立場なのだ。
騎士が弱い?
16世紀の南ドイツでは、騎士戦争という戦いがあった。
時の国王が、「国王と騎士の国をつくる」と言い出し、諸侯と戦争を起こし、負けたのだ。
それ以来、騎士はアガーテの家の様に、領主の家士となったり、中には、逆に領地を得て、男爵と同等となった者もいた。
残念なことに、アガーテが逮捕されるなどすれば、一家は騎士家でいられるかは怪しくなる。
「父上、父上、父上、わ、わ、私は、私は私は、父上」
そうなのだ!
彼女の家は兄が叙任を受けたため、騎士家は存続するはずなのだが、今、妹のアガーテが海賊で捕まることになると……
「あ、あ、兄上、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「アガーテ、落ち着いて。まだ、捕まってはないよ。
アンナ、本川と支川、どちらが良い?」
「はい、どちらも問題かと」
「うん?」
「右の支川のネーデルラントライン川はロッテルダムの街の真ん中を、この大型船が街中を通り目立ちます。また、橋も小さいです。この大型船で通れるかどうか?
左のワール川は、海軍関係施設はございますが、通行には問題ないかと」
その時、私は『船に任せるか』とも思った。
「ミーナ、ワール川にしましょう」と、クリスティアーネが言ったのだが。
すると、舵輪を握るアンナが、
「お嬢様、船が曲がりません。ネーデルラントライン川へ流されます」
「なんだって!」
そして、船はネーデルラント最大の港湾都市のひとつロッテルダムの街中へと進み、その日の市民の話題をかっさらった。
ここは北ネーデルラント!
正式には、ネーデルラント連邦共和国。
今のオランダ王国に当たる地域で、スペインのハプスブルク家の領地であったが、オランダ独立戦争にて独立。
なお、南ネーデルラントは、今のベルギーに当たる。
つまり、ここからは、ハプスブルクの敵地であり、帝国皇帝もハプスブルク家なのだ。
その帝国領から大型船が流れてきたのなら、やることは決まっている。
「警備隊、発進せよ」
次回の女海賊団は、投降します。
ネーデルラント連邦共和国
白いガレオン船は考えていた。
私がいないとダメなところは、先代とちっとも変わらないわね。
ふふふ。。。
***
川賊どもが、わんさかこちらへ向かってくると言うのに、私たちは何の手立ても無かった。
「ヒャッハー」と、賊が言ったかはわからないが、テンションがマックスといった感じだ。
ある者は、ぶつけられた仕返しに!
また、ある者は、女を見てやましい事でも考えているのだろうか?
こちらは、女四人なのだから。
「お嬢様、動きます。この船、動きます」
「アンナッ! ブチかませ」と、貴族令嬢らしからぬことを、私は叫んでいた。
既に、奴らは、私の横まで船を寄せて来ていたのだから。
「よし、この賊の船に体当たりだ」
そして、船は“ギギギィ”という音と共に、動き出した。
「こっちに来るんじゃねぇ」
「「「うわぁぁぁ」」」という賊たちの声が聞こえた。
すり潰すとは、こういう事なのだろう。
賊どもは、ライン川の早い流れに流されて行った。
しかし、まだまだ、賊はいるのだ。
「アンナッ、出航だ」
「はい、ミーナお嬢様」
私たちと賊のボートチェイスは、まだまだ続いた。
「クリスちぃ、武器を探すよ」
「武器?」
「賊が乗り込んで来る前に撃つ」
私は、クリスティアーネとアガーテを連れて、武器庫へ向かった。
そこには、剣の他、クロスボウ、ロングボウ、ショートボウ、マスケット銃と、ご令嬢が使う傘があった。
「なんで傘が、こんなにも沢山あるんだよ」
「さあ?」
「私にもさっぱりです」
武器か?
どれにする?
マスケット銃は、一番強力な武器だ。
しかし、こうも激流で水に濡れるとなると、火薬は使えんのではないか?
その点、火薬の要らない弓矢は濡れても使える。
なら、機械式のクロスボウか?
怪力の持ち主なら良いだろう。
普通の体力なら、立ち上がって、脚力で弦を引かないといけない。
そんな隙を見せて良いのか?
ここは、ロングボウなのでは?
場合によっては、ショートボウで格闘戦をしないとイケないかも?
「よし、まずは帯剣だな。そして、ロングボウ。ショートボウも持って来て!」
実は、アガーテの実家は、騎士なのだ。
そんな彼女は、武器の扱いはお手の物だった。
次々に賊をロングボウで仕留めていく。
何とも頼もしいではないか!
川賊を振り切った頃、私たちは、新たな問題を抱えていた。
進路である。
このまま進むと、ロッテルダムだ。
左のワール川に行くと、ロッテルダムの西側を通る。
どちらにしても、北ネーデルラントだ!
「ヤバくないか?」
「あいつら、ハプスブルクの関係者と見れば、殺しに来るぞ」
「ミーナちゃんのお祖母様はスペインのハプスブルク家と戦ったから、歓迎なのでは?」と、クリスティアーネが言うとアンナが、説明した。
「いえ、この船は旗を上げていません。その時点で重罪です。沈没させられても合法でございます。お嬢様!」
そうなのだ。
旗を掲げない船は、やましいことを考えている海賊なのだから、沈められても何も言えないのだ。
そして、今、この船には掲げる旗などなかった。
「ダメだ」と、誰もが思っていた。
特にアガーテの反応は早かった。
目を見開き、頭を抱え、下を向いてしまった。
「あぁ、アニメでよく見るやつだわ」
騎士の家のアガーテは、実は弱い立場なのだ。
騎士が弱い?
16世紀の南ドイツでは、騎士戦争という戦いがあった。
時の国王が、「国王と騎士の国をつくる」と言い出し、諸侯と戦争を起こし、負けたのだ。
それ以来、騎士はアガーテの家の様に、領主の家士となったり、中には、逆に領地を得て、男爵と同等となった者もいた。
残念なことに、アガーテが逮捕されるなどすれば、一家は騎士家でいられるかは怪しくなる。
「父上、父上、父上、わ、わ、私は、私は私は、父上」
そうなのだ!
彼女の家は兄が叙任を受けたため、騎士家は存続するはずなのだが、今、妹のアガーテが海賊で捕まることになると……
「あ、あ、兄上、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「アガーテ、落ち着いて。まだ、捕まってはないよ。
アンナ、本川と支川、どちらが良い?」
「はい、どちらも問題かと」
「うん?」
「右の支川のネーデルラントライン川はロッテルダムの街の真ん中を、この大型船が街中を通り目立ちます。また、橋も小さいです。この大型船で通れるかどうか?
左のワール川は、海軍関係施設はございますが、通行には問題ないかと」
その時、私は『船に任せるか』とも思った。
「ミーナ、ワール川にしましょう」と、クリスティアーネが言ったのだが。
すると、舵輪を握るアンナが、
「お嬢様、船が曲がりません。ネーデルラントライン川へ流されます」
「なんだって!」
そして、船はネーデルラント最大の港湾都市のひとつロッテルダムの街中へと進み、その日の市民の話題をかっさらった。
ここは北ネーデルラント!
正式には、ネーデルラント連邦共和国。
今のオランダ王国に当たる地域で、スペインのハプスブルク家の領地であったが、オランダ独立戦争にて独立。
なお、南ネーデルラントは、今のベルギーに当たる。
つまり、ここからは、ハプスブルクの敵地であり、帝国皇帝もハプスブルク家なのだ。
その帝国領から大型船が流れてきたのなら、やることは決まっている。
「警備隊、発進せよ」
次回の女海賊団は、投降します。
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