【完結】海賊令嬢と幽霊船 ―誰の心にもある“冒険への憧れ”を君に!― (海賊令嬢シリーズ4)

SHOTARO

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3.バルト海を並び行く幽霊たち

3-1.幽霊船

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3-1.幽霊船


「お頭ぁ、クッキー! クッキーは、どうなったの?」と、クライネスが、ワタクシ、ヴィルヘルミーナの周りを走りながら、この世の危機の様な声を上げている。

 そう、フェロル港を襲撃した際、奪ったバターをすべて機雷にしてしまったのだ。

 いや、まさかイリーゼとエルメンヒルデが、あのバターを全部使ってしまうとは思ってもいなかった。
 バターは貴重品だし、何と言ってもクライネスが、楽しみにしていたのは分かっていたはずだし。

「ええぇ、クライネス。クッキーよね。クッキー!」
 ワタクシの額に汗が流れる。

 すると、正面からエマリーが歩いてきた。

「あっ、エマリー。ちょっと、クライネスの話を聞いてちょうだいな」
「クライネス、どうしたんや?」
「バターが無くなったの」
「バター?」
「そうなの」
「まあ、バターではお好み焼きは焼けへんし。よろしゅうおまっ」

「えぇ。お好み焼きじゃない」
「何を言うのだい。クライネス・キンダー君。
 おっほん。
 お好み焼きは、フライパン1つで焼けるピザやでッ!」
「「……」」

 マジかよ。エマリー……


 さて、大西洋からイギリスとフランスの間にあるイギリス海峡を抜け、バルト海まで進むとヴィルヘルミーナの伯父の領地がある。

 ヴィルヘルミーナたちが、大西洋のど真ん中で、スペインと闘っていた頃、この伯父の領地では、とある噂が流れていた。

 ここでは、幽霊船が出るという話が、商人たちの間で噂になっていたのだ。
「おい、幽霊船が出たってよ」
「冗談はやめろよ、薄気味悪いぜ」

 今のところ、不気味な幽霊船が出る程度の噂だった。
 被害が出ているわけでもなく、取締りの対象になっているわけでもない。

 ところがである。

 この日の噂は、幽霊船が発砲してきたと言うではないか。
 実害が出ると、領主としては黙って見過ごすわけにはいかないが、その日は威嚇程度だったという。

「どうしたものか?」

 しかし、この狭いバルト海のどこを探しても、怪しい船は見つからなかった。

 そんなところに、我ら女海賊団は、伯父のいるケーニヒスベルクに到着した。


「ローズ、ローズマリーッ。伯父上のところに行く。ドレスアップを頼む」
「はい、お頭。ワタクシめにお任せください。お頭を完璧な貴族令嬢にさせて頂きます」
「よろしく頼む」

 私は着替えを済ませ、護衛隊長のイリーゼと副隊長のエルメンヒルデたちを伴って、公爵邸へ向かった。
 当然、イリーゼたちも貴族に拝謁できる護衛隊の制服なる物を作っていた。
 海賊の姿では、貴族に拝謁は出来ない。
 しかし、このヴィルヘルミーナは、貴族令嬢なのである。
 ブランデンブルク選帝侯の血を引くものなのだ。

 その一族の娘の護衛となると、それなりの衣装も必要となる。

 そして、「お買い上げありがとうございます」と言ったのはエマリーだ。

 エマリーは、私の実家と取引のある大商人の娘。
 この海賊団のすべての装備は、エマリーの実家のアインス商会が用意している。

 さて、屋敷では。
「あら、ヴィルヘルミーナ。お久しぶりね」と、声をかけてきたのは、長女のアンナだ。
「アンナ、お久しぶりね」
「父も待っているわ。さあ、どうぞ」
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