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3.バルト海を並び行く幽霊たち
3-17.ただ一つのあこがれだけは、どこの誰にも消せはしない 2
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3-17.ただ一つのあこがれだけは、どこの誰にも消せはしない 2
「お頭……」と、団員たちが不安そうな顔で、こちらを見ている。
「大丈夫、言ってくるわ」と言うと、「私も行きます」「なら、私も」と、次々に名乗り出てくれたが、そんな大勢で行くものではない。
伯父とアンナは私に話しがあるのだから。
「しかし、お頭、私とイリーゼは連れて行くべきです」と、エルメンヒルデが言った。
「護衛隊の隊長と副隊長ですから」
「分かった。護衛隊として来てくれ」と言うも、イライザやエマリー達が、苦い顔をしていた。
隣の部屋の扉をノックしたが、何と名乗ればよいのか?
「はい!」とアンナの声が聞えた。
「入ります」と言うと、アンナが「ヴィル?」と声をかけてきた。
ヴィルヘルミーナとして、対応しろということか?
「お頭、今日呼ばれたのはキーナ・コスペル海賊団の船長です」と、エルメンヒルデが強い口調で私に言った。
この一言は、私の胸に、ズドンと響いた。
吹っ切れた。
「オッホン。キーナ・コスペル海賊団の船長、キーナ・コスペル、入ります」と、私が言うと、エルメンヒルデは、澄んだ瞳でまっすぐに正面を見ていた。イリーゼも覚悟が出来ているようだ。
部屋に入ると、一例をして、
「本日はお招きいただきましてありがとうございます。団員も喜んでおります」と言うと、私は後ろの二人を見ると、ドレスアップしたイリーゼとエルメンヒルデが挨拶をする。
「キーナ船長の護衛隊長のイリーゼ・アインホルンです」
「同じく副隊長のエルメンヒルデです」
エルメンヒルデがフルネームを名乗らないのに、伯父とアンナは「うん?」と言う感じになった。
庶民には姓が無いというか、有っても名乗ってはいけないのが、この社会のルールなのだ。
だから、この二人はエルメンヒルデが庶民出身と思ったに違いない。
しかし、このエルメンヒルデは貴族の隠し子なので、名乗れないのだ。
なので、私は、
「エルメンヒルデは、貴族ですが、分けあって姓は名乗れないのです」
「まさか、勘当でも……」
「公爵様、詮索は不要です」
伯父は、私が“伯父”でなく、“公爵様”と言ったことに、苛立ったように見えた。
「そうか、貴族のお嬢さんとアインホルンの血統を持つ者が護衛隊とは、ヴィル。説明してもらおう」
「そうよ、ヴィル。海賊になった理由を教えて。社交界にも出ずに商売を始めたとかいうから」と、アンナが言うが、その社交界で、先日、アンナは、王妃に「幽霊を運ぶ」と、噂を広められたのではないのか?
「ヴィル、君は領地を相続する身なのだ。もしものことがあれば」
「いずれ、そうなるでしょうが、狭い貴族社会の中に閉じこもっているのは、性分に合わないのです。王妃が噂を流したことで、涙するような社会には居たくはないのです。
信じる仲間と共にありたい。欲しいものを手に入れたい」
「ヴィル、貴女の欲しい物って、なんなの?」
「この世のどこかにあるという、“赤い真珠”を探しているわ」
「ヴィル、子供じゃあるまいし、そんな理由で海賊をしているの?」
「海賊ではない。私掠船だ」
「同じよ。危ないわ」
「戦場に行く騎士も同じだ。アンナ。私は騎士の称号も得ている」
その時、言葉に詰まった三人に沈黙が訪れた。
「公爵様、よろしいでしょうか?」と言ったのはエルメンヒルデだ。
「うん? 良い、話を聞こう」と伯父は返答しエルメンヒルデは一礼をして口を開いた。
「ありがとうございます。我が船長の代弁をさせて頂きます」
なんだ!
エルメンヒルデよ。私の代弁って?
「お頭……」と、団員たちが不安そうな顔で、こちらを見ている。
「大丈夫、言ってくるわ」と言うと、「私も行きます」「なら、私も」と、次々に名乗り出てくれたが、そんな大勢で行くものではない。
伯父とアンナは私に話しがあるのだから。
「しかし、お頭、私とイリーゼは連れて行くべきです」と、エルメンヒルデが言った。
「護衛隊の隊長と副隊長ですから」
「分かった。護衛隊として来てくれ」と言うも、イライザやエマリー達が、苦い顔をしていた。
隣の部屋の扉をノックしたが、何と名乗ればよいのか?
「はい!」とアンナの声が聞えた。
「入ります」と言うと、アンナが「ヴィル?」と声をかけてきた。
ヴィルヘルミーナとして、対応しろということか?
「お頭、今日呼ばれたのはキーナ・コスペル海賊団の船長です」と、エルメンヒルデが強い口調で私に言った。
この一言は、私の胸に、ズドンと響いた。
吹っ切れた。
「オッホン。キーナ・コスペル海賊団の船長、キーナ・コスペル、入ります」と、私が言うと、エルメンヒルデは、澄んだ瞳でまっすぐに正面を見ていた。イリーゼも覚悟が出来ているようだ。
部屋に入ると、一例をして、
「本日はお招きいただきましてありがとうございます。団員も喜んでおります」と言うと、私は後ろの二人を見ると、ドレスアップしたイリーゼとエルメンヒルデが挨拶をする。
「キーナ船長の護衛隊長のイリーゼ・アインホルンです」
「同じく副隊長のエルメンヒルデです」
エルメンヒルデがフルネームを名乗らないのに、伯父とアンナは「うん?」と言う感じになった。
庶民には姓が無いというか、有っても名乗ってはいけないのが、この社会のルールなのだ。
だから、この二人はエルメンヒルデが庶民出身と思ったに違いない。
しかし、このエルメンヒルデは貴族の隠し子なので、名乗れないのだ。
なので、私は、
「エルメンヒルデは、貴族ですが、分けあって姓は名乗れないのです」
「まさか、勘当でも……」
「公爵様、詮索は不要です」
伯父は、私が“伯父”でなく、“公爵様”と言ったことに、苛立ったように見えた。
「そうか、貴族のお嬢さんとアインホルンの血統を持つ者が護衛隊とは、ヴィル。説明してもらおう」
「そうよ、ヴィル。海賊になった理由を教えて。社交界にも出ずに商売を始めたとかいうから」と、アンナが言うが、その社交界で、先日、アンナは、王妃に「幽霊を運ぶ」と、噂を広められたのではないのか?
「ヴィル、君は領地を相続する身なのだ。もしものことがあれば」
「いずれ、そうなるでしょうが、狭い貴族社会の中に閉じこもっているのは、性分に合わないのです。王妃が噂を流したことで、涙するような社会には居たくはないのです。
信じる仲間と共にありたい。欲しいものを手に入れたい」
「ヴィル、貴女の欲しい物って、なんなの?」
「この世のどこかにあるという、“赤い真珠”を探しているわ」
「ヴィル、子供じゃあるまいし、そんな理由で海賊をしているの?」
「海賊ではない。私掠船だ」
「同じよ。危ないわ」
「戦場に行く騎士も同じだ。アンナ。私は騎士の称号も得ている」
その時、言葉に詰まった三人に沈黙が訪れた。
「公爵様、よろしいでしょうか?」と言ったのはエルメンヒルデだ。
「うん? 良い、話を聞こう」と伯父は返答しエルメンヒルデは一礼をして口を開いた。
「ありがとうございます。我が船長の代弁をさせて頂きます」
なんだ!
エルメンヒルデよ。私の代弁って?
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