握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

SHOTARO

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第三章 プロイセン公国へ(失われた栄光のために)

3-13.紅白戦 その1

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 私は、その騎士。いや一般兵二人のあとについて行った。
 どうやら、紅白戦をやるようだ。
 騎兵と歩兵だけの単純な構成だった。

 馬がない私は、先の二人と歩兵に回された。

 そして、こちらは白組だ。
 紅組の指揮官を見ると、キルヒナー団長だ!
「あそこまで行ってやるわ」と、なんだかやる気が湧いてきた。

 しかし、歩兵がいくら集まっても、騎兵に敵わない。
 よほど上手くやらないと、歩兵で騎兵を抜けない。
 どうするよ?

 さて、紅白戦が始まった。

 まず、歩兵同士の探り合いだ。
 三人一組でぶつかり合う。

 騎士の中に入ると、私の長身も普通になるので、心地よい。
 誰も、デカ女とは呼ばんからね。

 私の剣術は、一撃必殺だ!
 だから、構えもvom Tagの構えだ。
 日本の剣術で言えば、示現流のトンボと同じになり、大上段からの袈裟斬りが必殺の技になる。
 まさに豪快な技だ!

 こちゃこちゃしたことは、性格的に合わない。
 しかし、剣術とは、長引くと、蹴りや足払い。テイクダウンを狙う崩し技、まあ、簡単な投げだ。
 そんなこともする。

 すると、体力のある方が勝つことが多くなる。
 見た目も汚いので、好きではないが、その中でも、蹴りは使うことが多い。

 蹴りと言っても、キックではない。
 股間や股関節辺りを蹴り飛ばすと、相手の腰が引けるから、頭が前に出てくる訳だな。
 そこを叩くと!

 だから、左足で蹴り、左足を引く反動で頭を叩く。
 両手剣の特徴を上手く利用した闘い方だと思っている。

 これの応用として、左足を前に出し、相手が、それにつられて、反撃しようと前に出たところを、足を引き上段を叩く。
 左右の足を入れ替えて戦う西洋剣術・ドイツ剣術の技だ。
 この辺りはイタリア辺りのフェンシングとは、かなり違う。
 
 さて、このケーニヒスベルクの騎士の実力は如何に?
 最初の相手は、ブランディングという技を仕掛けてきた。

 まあ、初級の技だ。

 つまり、左の盾で右の剣を隠す戦法だ。初心者相手には、かなり有効な手だ!
 だが、盾を強く叩かれ、弾かれると、攻防すべてが停止する弱点があるんだよな。
 なので、盾をぶっ叩いた。

「これで、三人抜きだ」

「あんた、スゲーな」
「それほどでも」と、答えるも騎兵戦は、まだだ。

 馬が来たら、どうするよ!
 すると、紅組の騎兵が進んできた。

 まずい、騎兵のランスは、まともにくらうわけにはイカないぞ!
 すると、我が白組も騎兵が上がってきた。

 騎兵戦が始まる。
 歩兵の居場所がなくなり、右往左往してしまった。

 すると、負けた騎兵のランスが転がっている。
「これは!」と思い、借用する。

 馬って、難しいところがあって、尖った物が嫌いらしい。
 このランスで、ツンツンするように馬めがけて走ると、馬が硬直している。

 そこを抜けて、キルヒナー団長目掛けて駆け抜ける。

「おい、なんだあの歩兵は?」
「騎兵の間をすり抜けているぞ」

 そして、団長のもとへ走るも、他の騎兵に囲まれてしまい、動けなくなった。

「チクショウ。ここまでか」

 ということで、その日はここまでとなった。
 後片付けの際、私は、うまく紛れて部屋に戻ったが、この日の騎士団は、命知らずのすごい歩兵がいた話題で盛り上がっていた。
「あいつの名前は?」
「さあ?」


 そして、次の日もプレートアーマーを装着して、騎士団の紅白戦に参加した。

 やはり、馬がない私は歩兵だ!
 歩兵で大将のところまで行くのには、無理が多い。
 馬が欲しいわ!

 そう願っていると、やはり、神の使いがやって来るものだよ。
 地面の上で戦っていると、騎兵が上から降ってきた。

 つまり、落とされたのだ。
 なので、馬は主をなくし、右往左往している。
 そして!
 私と目が合うのだ!

 お互い気持ちが通じた!
「おい、そこの君、僕の背にのらないかい?」って、言ったわ!
 きっと、言ったわ!

 だから、
「ぜひ、お願いするわ」と、回答するのだ!

「目標は団長よ」と言うと、二人は駆け出した。

 ランスがない。
 なので、
「ここはヤスミンの剣を使うわ」
 鉛をも切り裂く、折れない、曲がらない、欠けることのない剣。

 騎士の盾も鎧も、この剣の一撃を食らうと、ボロボロなのだ!

「さあ、団長のところまで、駆けて頂戴な」


 
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