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第四章 ヴィルヘルミーナ、海へ!
4-5.人工魔女製造
しおりを挟む両陣営に、「なんだ?」と言う空気が流れる。
「ヴィルヘルミーナ嬢、貴女なら、私と共に海賊を」と言うバスティアーン様をさえぎり、「何故、バスティアーン様が海賊稼業をしているのです」と尋ねた。
「ご存じの通り、我が祖国は戦争中なのです。戦費も必要。また、旧教徒国と取引のある船を襲えば、スペインも衰退する。一石二鳥なのです。このことは他の貴族には言えませんが」
まあ、それは一理あるが、だからと言って、この私を襲うなど、許し難いというものだ。
「どうです。ヴィルヘルミーナ嬢。私と共に来てくれませんか」
両陣営、固唾をのんで見守る中、エマリーが怒り出す。
「ダメよ。こんな男に騙されては!」
「エマリー……」
「今、スペインやフランスと事を構える時期ではないわ。貴女には次期領主になってもらい、統治してもらわないと、皆が困るの。新しい領主が着て、好き放題されては領民が困るの。今の領主さまのやり方が良いの」
「わかった。エマリー! だから、この話は断らせて頂きます」と言うと、私とバスティアーン様はしばらくは目をそらさずにいた。
「そうか。残念だ。なら、商品は頂いて行く」
商品?
この時代、人間も商品だよね。アインス商会の船乗りがさらわれるのだろうか?
すると、遠方から砲撃の音が聞えた。リトアニアの海軍だ。
「イカン、撤収だ!」
「撤収!」と、バスティアーン様は引き上げて行った。
その後、海軍と彼らがどうなったのかは知らない。
「ミーナちゃん?」
「エマリー。マリーを連れてこなくて良かったわ。あの貴公子が裏で海賊をしていたとは、あの子には教えたくないわ」
「そう、でも、海賊を雇っている貴族なんて、当たり前なのだから、難しく考えなくてもね」と、エマリーがなだめてくれた。
そう、エマリーの言う通りなのだが、あのいつも笑っていた楽しい姿しか知らない私たちには、海賊稼業で略奪をしている姿は、想像も出来なかった。
まあ、売り飛ばされることなく、無事で良かったわ。
今日は、暑くて、ドロワーズを履いてなかったので、海賊に船を乗っ取られると、貞操のピンチだったかもしれないわね。
おほほ!
***
「クレマンティーヌ様、この女など、なかなかの素材かと思います」と、言ったのは『賢い女たち』の医師だ。
「そうだな。魔女らしい魔女だ。次のクレマンティーヌの候補者の一人として実験体に出来そうだ。準男爵家の娘か」
「では、記憶の操作から」
「分かった」
なんと、魔女狩り集団:『賢い女たち』は、魔女狩りと言いながら魔女を生み出す作業も行っていたのだ。
催眠術で記憶の改ざんを行い、魔女としての記憶を植え付ける。
そして、薬学、錬金術など、一般人の知らない余計な知識を与えておく。
時折、無意識で興奮剤を飲み、笑い叫ぶようにする。
すると!
自己嫌悪でつぶれる者、魔女として密告される者、魔女として覚醒する者、そして、次代のクレマンティーヌとなる者が……
「次の候補者ですが、この女など如何でしょうか?」
「この小娘か?」
「実は、ヴィルヘルミーナの使用人をしたことがあり、非常にヴィルヘルミーナを嫌悪しております」
「ほう、嫌悪するほどなのか」
「なんでも、尻を捲られ、ペンチでつねられたとか……」
「マジか、あの女そんな性癖でもあったのか。わからんものだ」
「えぇ、スカート捲ってつねったそうです。『今日は、ドロワーズを履いてないわ』とか言いながら」
「私も嫌悪するわ」
かくして、ステラ・キルヒナーの運命は如何に?
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