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第五章 アイルランドの女海賊と海賊団結成
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しおりを挟むロンドンに向かっていた小型船も戻ってきた。
そこには、イリーゼがいた。
どうやら、ロンドンにいたようだ。
なんと、恐ろしい13歳。いや、もう14歳になっているだろう。
海外出張をする14歳か……
「エマ姉さん! お嬢さまが船に乗っているって聞いたのですけれど、本当なの」
「ええ、本当よ」
その時、私は、日課をこなしていた。
この頃の私は、閉じ込められた海兵を、午前中掛けて、あらゆる手段でいじめるのが日課だった。
そして、売ってしまう連中に、「食事は無駄な経費」ということで、死なない程度に食事を抜いていた。
塩と水があれば良し!
むしろ、貴重な水を分けてやっているのだ。有難いと思え!
そう、基本的に、腐りやすい真水は保存がきかないのだ。
なので、ビールやラム酒など腐りにくい酒で保存する。
ラム酒1に対し、水を4の割合。
これがイギリス海軍の配合なのだな。
そして、シッカリ食事をして体力を付けられても、あつかいに困る。
適度にくたばってもらわないといけない。
いつも、だるくてしんどい位が適度と言うものだ。
「お~い、海兵の皆さん。お、お、オートミールだわ。美味くはないが腹の足しにはなりますわ。おほほ」と、彼らの前で食す。
海兵は下を向いてばかりで、相手にしてもらえないのだ。
明日は、どうやって虐めてやりましょうかね?
バラストの中にいる黒いカサカサを集めて、部屋に放り込んでみましょうか?
そして、あの黒いカサカサって人の皮膚も食すので、よろしくないのですわ。※1
さて、日課も終わり、甲板に上がると、イリーゼが駆けてきた。
「お嬢さま」
「おお、イリーゼ。ウィーンの一件以来だね。あの時は助かったよ」
話を聞くと、会計のことでロンドン支店に来ていたようだ。
大陸と英国では会計の仕方が違うらしい。
「ふ~ん、聞いてもわからないわ」
さて、本船は、エディンバラまで三日程度で到着する。
その間、貞子としては、海兵とどう遊ぼうかしらね。
本船がエディンバラに着く頃には、海兵の相手は飽きてしまい、日課をこなすことが無かった。
そして、今日は陸に上がるので、貞子スタイルでなく、令嬢として正装をしていた。
とはいえ、使用人がいないので、あまりうまく着れたとは言えないですね。
うむうむ。
さて、船がエディンバラに近づくと、出港する船、入港する船が数隻見えてきた。
彼らがどこへ行くのだろうかと思うと、何故か楽しく感じてきたわ。
その船と船の間を、信じられないスピードで移動しているセーリングヨットを発見した。
「エマリー!」
「えっ、え、え、えぇぇ」
「危なくないの?」と、イリーゼが言うように、余程、訓練したものであろうことは一目瞭然だった。
そして、そのヨットを操っているのが、普段着の女だ!
「街でお買い物ついでに海に来ました」とでも言おうか……
「ヤスミン、あの娘は商船に花を売っているわ」
「売れるのでしょうか?」
「さあ……」と、皆が首をかしげている。
そのヨットの娘というと!
「花の使い道は色々あります。保水力の高い種は、腐らない水として、もし、事故があった場合は、ご遺体と水葬にも使えます」などと説明をしている。
そして、売れた……
花が魅力的なのだろうか?
いや、この娘が若くて可愛いから、男たちが買ったのだろう。
そういうことはよくあることだ。
そう、よくあることだ!
「私は、ローズマリー! 城壁の外で花屋をしていますので、良かったら来てくださいね」と、言って次の船へと移動する。
「あッ、エマ姉さん。こっちに来るわ!」
「ほんまや、どうする?」
そう、可愛い美少女が、ニッコリ笑って大きく手を振っている。
これは、男なら悪い気はしないわな。
それは、周りの水夫たちを見ればわかるわ。
※1 ふなむしは、人の皮膚を食べますので、海岸で寝ないように。
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