握力令嬢は握りつぶす。―社会のしがらみも、貴公子の掌も握りつぶす― (海賊令嬢シリーズ5)

SHOTARO

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第六章 ヴィルヘルミーナの白い海賊船

6-10.ガレオン船

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 ボートから出て、ドイツ騎士団の騎兵が突進してきた。
 岩の下にいる傭兵団に突っ込んで行く。

 その中に、プロイセン公国のヴァッテンバッハとビアンカがいるのが分かった。
 なぜ、プロイセン公国からラインラントへ?

「ビアンカの奴、腕を上げたな」
 すると、ビアンカが手を軽く振ってくれた。
 随分と余裕じゃない!

 後で聞いた話、伯父上さまが「武術の向上のため」と、各騎士団に留学をさせているようだ。
 そこで、ドイツ騎士団の本拠地:バート・メルゲントハイムに二人が留学に来ていたところ、この騒ぎだ。

 しかし、何故、ドイツ騎士団が駆けつけたのだ?

「ヴィルマ姉さまぁ。ハインデンベルク城も無事ですッ。総長様が」と、ビアンカの声が聞えた。
「ありがとう、ビアンカぁ」
 母がホッとしているのが分かった。

 しかし、あの川からの砲撃を何とかしないとイケない。

 また、大砲の音が聞えた。
 そして、上流からは、巨大な戦闘艦が出現した。

「来てくれたのか」と言ったのは父だ。
「ローレライ号だ。ガレオン船だ」

「あれが、アインス商会が手に入れた設計図を基に作ったガレオン船?」
――ローレライ号と言うのか。ラインフェルスにふさわしい名前だ。

 すると、見張台から手を振る者の姿が見えた。
「ヤスミン!」
 ヤスミンは、こちらに向けて小銃を撃った。
 いや、これは、小銃ではない。ハーケンにロープがつないである。
 このロープはヤスミンのいる見張台まで繋がっている。
 彼女の考えていることが分かった。

「お父さま、お母さま、行ってまいります」

  二人は頷いていた。
 アンの身体を借りているが、そこにいるのは、私の良く知る両親であった。
「ヴィル!」
「ヴィル!」
 私は、両親に向かって、一つ頷いた。

 そして、私は、剣を鞘に納め、鞘を使い、ロープを一気にヤスミンのところまで滑り降りた。
「お頭、間に合ったようですね」
「危なかったよ」
「下におりて、エマリーさんのところへ行ってください」
「分かった」と言うと、見張台からメインマストを下り、エマリーのところへ行った。
 ヤスミンは、大砲のところへ行ったようだ。

「エマリー、すまない」
「キーナ、まだまだピンチよ。この船は、まだ、完全武装をしていないのよ」
「えっ、そ、そうなんだ」
「使える砲塔は、前の二門しかないわ」
――二門で三隻は厳しいな……

「ただ、もう一門、とっておきがあるわ」
「とっておき?」
「ヤスミンが作った新兵器の68ポンド砲よ。試し撃ちをしたけれど、船が一撃で消し飛んだわ」
「一撃で……なら、それを使えるのなら使おう」
「なので、今、ヤスミンが68ポンド砲のところへ行ったわ」

「うん、ならば勝負だ。未来を目指す我々の運命が勝つのか。過去から来た者が勝つのか」
「やりましょう」
「ヤスミン! 68ポンド砲用意ッ」
 すると、ガレオン船の船首が動き出し、中から巨大な砲身が現れた。
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