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第31話 対峙
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魔導師団……アシェルト様に憧れて入団した魔導師団。そこにアシェルト様はいなかった。恋人が死んで魔導師団を辞めてしまったアシェルト様を追いかけて弟子入りし、ラシャ様という恋人の死の原因を調べ始めた。
アシェルト様と出逢ってから今まで、一度もアシェルト様は魔導師団に赴いたことはない。私と出逢う以前も、ラシャ様が亡くなってから、魔導師団を辞めてから、たった一度も……。
そんなアシェルト様が今日私と共に魔導師団へとやって来た。
横に立つアシェルト様の顔を見上げると、緊張しているのか辛い記憶が蘇っているのか、顔も身体も強張っていた。眉間に皺を寄せ、泣きそうな、苦しそうなそんな表情。顔色も悪い。
「アシェルト様……大丈夫ですか?」
そっと声を掛けると、アシェルト様は私に振り向き、ぎこちないながらも微笑んだ。
「うん、大丈夫……」
ゆっくりと深呼吸をしたアシェルト様は意を決するように息を吐き、そして真っ直ぐに前を見据えた。
「行こう」
魔導師団の施設が並ぶ敷地内を歩いてノアと合流する。ノアは目を見開き驚いた顔をした。しかし、アシェルト様の決意を感じたのか、真剣な目で頷いた。
ノアが案内をしてくれ、そして、今日の目的だった相手へとたどり着く。
団長室へと向かう途中、団員が休憩などに使う憩いの場。食堂と演習場のちょうど中間辺りにある中庭のような場所。開けた場所には木や花が植えられベンチがある。いつもなら誰かしらベンチに座って休憩をしていたりするものだが、今日はちょうど皆仕事中なのか誰もいない。
そこに書類を持ちながら通りかかるひとりの男性の背中……
「バルト団長!」
ノアが声を掛けると、バルト団長は振り向いた。そして、私たちの姿……アシェルト様の姿を見て、目を見開いた。
「アシェルト……」
驚いた顔となったバルト団長だが、すぐさまその驚きは消え、フッと笑った。
「ようやく来たんだな。久しぶり」
「あ、あぁ……久しぶりだな……バルト……」
強張るアシェルト様とは対照的にバルト団長は笑みを浮かべている。
「ルフィルとノアはまあ分かるが、アシェルトまでやって来たということはなにか答えが見つかったのか?」
目を逸らすことなく真っ直ぐにアシェルト様を見ていたバルト団長は、チラリと私に視線を向け聞いた。
なにから話そうか、と考えていると、アシェルト様が一歩前へと踏み出した。
「バルト……あの魔導具は暴発じゃない、故意に爆発させられたんだ……」
「へぇ?」
アシェルト様が躊躇うように話し出した言葉に、バルト団長は驚くでも怪訝な顔をするでもなく、無表情でそれを聞いていた。
「魔導師は常に身体に魔力が循環している、だから微弱だが魔力が体外に溢れ出ているんだよ。あのとき魔導具は爆発しないギリギリの魔力をすでに込められていたんだと思う。そこにラシャが触れたと同時に魔力が魔導具へと自然に流れてしまった……そしてそれをきっかけに爆発した……」
「へぇ……」
「そしてそんなことが出来るのは魔導具の構造を知っていたバルト、君にしか出来ないんだよ。君があの魔導具の作製を僕に提案してきたんだから……」
「!?」
私もノアも驚いてアシェルト様の顔を見た。
「バルト団長があの魔導具の作製を提案!? バルト団長は構造を知っていたんですか!?」
「……うん……あの魔導具はバルトに提案されて、僕が作った。「お前ならこんな魔導具が作れるんじゃないか? 魔獣を討伐するときにこちら側の負傷者を減らすことが出来るかもしれない」とそう言われ、僕もそれに賛成して作製したんだ」
アシェルト様は私に視線を向けながら話したが、すぐさま再びバルト団長へと視線を戻し、話を続ける。
「それにあの魔導具を管理していた鍵を扱えるのは僕の他に副団長だけ。クナムはあのときは魔導具の構造は知らなかったはずだ……。だとすると、魔導具の構造を知っていて、さらに管理の鍵を扱えるのはバルトだけ……そのことに気付いても信じられなくて……君を疑いたくなかったから、ずっとそうじゃないと否定し続けて……他に原因があるはずだと思いたくて研究を続けていた……でももう……あの魔導具を爆発させられる人間は、君以外に考えられないんだ……」
アシェルト様は泣きそうな顔でバルト団長を見ていた。バルト団長は無表情のままアシェルト様を真っ直ぐに見据えている。その目がなんだか酷く冷たくて、怖く思ってしまった。いつもの優しく頼りがいのあるバルト団長の姿とは違う……初めてそんな目を見た気がする。
「ハッ、なぜ俺がそんなことを? 構造を知っていたにしても俺がそんなことをする必要は? なぜラシャを殺さないといけないんだ?」
バルト団長は苦笑しながら言った。それは疑われて悲しい気持ちなのか、アシェルト様の考えが被害妄想だと馬鹿にしているのか……私には分からなかった……。
「それはバルト団長……貴方がラシャ様を愛していたからなんじゃないですか?」
バルト団長を信じたい、それはこの場にいる私たち全員の想いだったと思う。しかし、もう真実は私たちの願いとは違う方向へと向かっている……。
「貴方はラシャ様と婚約するはずだったんですよね?」
ピクリと反応したバルト団長はアシェルト様から私に視線を移す。その目は不愉快さを露わにした目。眉間に皺を寄せ、私を睨むように見る。バルト団長にそんな目で見られたことはない。そのことが酷く苦しくもなるが、もう避けることは出来ない。
「なぜそんなことを知っている?」
「ラシャ様に婚約話があったと聞いて、ソルファス侯爵閣下に話を聞きに行きました……」
「ハッ、なるほどね……こそこそと俺に報告もせず探っていた訳だ。侯爵閣下も口が軽いお方だ」
嘲笑うかのように顔を歪めたバルト団長。ノアがそんなバルト団長を見ながら、苦しそうな表情で言葉にする。
「俺がバルト団長の許可をもらって聞きに来た、と言ったんです。だから侯爵閣下のせいじゃありません。俺が無理矢理聞き出したんです」
ノアはバルト団長を尊敬していた。まさかこんな話をすることになるとはきっと思っていなかっただろう。ノアを巻き込んでしまったことが私の心をさらに苦しくさせる。
きっとノアはあのときすでにバルト団長を疑っていたのかもしれない……。だからソルファス侯爵閣下から婚約者候補の名前を聞くために、あんな言い方を……。
ノアもアシェルト様もバルト団長を信じたくて……だからこそ真実を知りたくて、それを否定するように必死に調べた……。その結果がこれなんて辛すぎる……でももう後には引けない。
アシェルト様と出逢ってから今まで、一度もアシェルト様は魔導師団に赴いたことはない。私と出逢う以前も、ラシャ様が亡くなってから、魔導師団を辞めてから、たった一度も……。
そんなアシェルト様が今日私と共に魔導師団へとやって来た。
横に立つアシェルト様の顔を見上げると、緊張しているのか辛い記憶が蘇っているのか、顔も身体も強張っていた。眉間に皺を寄せ、泣きそうな、苦しそうなそんな表情。顔色も悪い。
「アシェルト様……大丈夫ですか?」
そっと声を掛けると、アシェルト様は私に振り向き、ぎこちないながらも微笑んだ。
「うん、大丈夫……」
ゆっくりと深呼吸をしたアシェルト様は意を決するように息を吐き、そして真っ直ぐに前を見据えた。
「行こう」
魔導師団の施設が並ぶ敷地内を歩いてノアと合流する。ノアは目を見開き驚いた顔をした。しかし、アシェルト様の決意を感じたのか、真剣な目で頷いた。
ノアが案内をしてくれ、そして、今日の目的だった相手へとたどり着く。
団長室へと向かう途中、団員が休憩などに使う憩いの場。食堂と演習場のちょうど中間辺りにある中庭のような場所。開けた場所には木や花が植えられベンチがある。いつもなら誰かしらベンチに座って休憩をしていたりするものだが、今日はちょうど皆仕事中なのか誰もいない。
そこに書類を持ちながら通りかかるひとりの男性の背中……
「バルト団長!」
ノアが声を掛けると、バルト団長は振り向いた。そして、私たちの姿……アシェルト様の姿を見て、目を見開いた。
「アシェルト……」
驚いた顔となったバルト団長だが、すぐさまその驚きは消え、フッと笑った。
「ようやく来たんだな。久しぶり」
「あ、あぁ……久しぶりだな……バルト……」
強張るアシェルト様とは対照的にバルト団長は笑みを浮かべている。
「ルフィルとノアはまあ分かるが、アシェルトまでやって来たということはなにか答えが見つかったのか?」
目を逸らすことなく真っ直ぐにアシェルト様を見ていたバルト団長は、チラリと私に視線を向け聞いた。
なにから話そうか、と考えていると、アシェルト様が一歩前へと踏み出した。
「バルト……あの魔導具は暴発じゃない、故意に爆発させられたんだ……」
「へぇ?」
アシェルト様が躊躇うように話し出した言葉に、バルト団長は驚くでも怪訝な顔をするでもなく、無表情でそれを聞いていた。
「魔導師は常に身体に魔力が循環している、だから微弱だが魔力が体外に溢れ出ているんだよ。あのとき魔導具は爆発しないギリギリの魔力をすでに込められていたんだと思う。そこにラシャが触れたと同時に魔力が魔導具へと自然に流れてしまった……そしてそれをきっかけに爆発した……」
「へぇ……」
「そしてそんなことが出来るのは魔導具の構造を知っていたバルト、君にしか出来ないんだよ。君があの魔導具の作製を僕に提案してきたんだから……」
「!?」
私もノアも驚いてアシェルト様の顔を見た。
「バルト団長があの魔導具の作製を提案!? バルト団長は構造を知っていたんですか!?」
「……うん……あの魔導具はバルトに提案されて、僕が作った。「お前ならこんな魔導具が作れるんじゃないか? 魔獣を討伐するときにこちら側の負傷者を減らすことが出来るかもしれない」とそう言われ、僕もそれに賛成して作製したんだ」
アシェルト様は私に視線を向けながら話したが、すぐさま再びバルト団長へと視線を戻し、話を続ける。
「それにあの魔導具を管理していた鍵を扱えるのは僕の他に副団長だけ。クナムはあのときは魔導具の構造は知らなかったはずだ……。だとすると、魔導具の構造を知っていて、さらに管理の鍵を扱えるのはバルトだけ……そのことに気付いても信じられなくて……君を疑いたくなかったから、ずっとそうじゃないと否定し続けて……他に原因があるはずだと思いたくて研究を続けていた……でももう……あの魔導具を爆発させられる人間は、君以外に考えられないんだ……」
アシェルト様は泣きそうな顔でバルト団長を見ていた。バルト団長は無表情のままアシェルト様を真っ直ぐに見据えている。その目がなんだか酷く冷たくて、怖く思ってしまった。いつもの優しく頼りがいのあるバルト団長の姿とは違う……初めてそんな目を見た気がする。
「ハッ、なぜ俺がそんなことを? 構造を知っていたにしても俺がそんなことをする必要は? なぜラシャを殺さないといけないんだ?」
バルト団長は苦笑しながら言った。それは疑われて悲しい気持ちなのか、アシェルト様の考えが被害妄想だと馬鹿にしているのか……私には分からなかった……。
「それはバルト団長……貴方がラシャ様を愛していたからなんじゃないですか?」
バルト団長を信じたい、それはこの場にいる私たち全員の想いだったと思う。しかし、もう真実は私たちの願いとは違う方向へと向かっている……。
「貴方はラシャ様と婚約するはずだったんですよね?」
ピクリと反応したバルト団長はアシェルト様から私に視線を移す。その目は不愉快さを露わにした目。眉間に皺を寄せ、私を睨むように見る。バルト団長にそんな目で見られたことはない。そのことが酷く苦しくもなるが、もう避けることは出来ない。
「なぜそんなことを知っている?」
「ラシャ様に婚約話があったと聞いて、ソルファス侯爵閣下に話を聞きに行きました……」
「ハッ、なるほどね……こそこそと俺に報告もせず探っていた訳だ。侯爵閣下も口が軽いお方だ」
嘲笑うかのように顔を歪めたバルト団長。ノアがそんなバルト団長を見ながら、苦しそうな表情で言葉にする。
「俺がバルト団長の許可をもらって聞きに来た、と言ったんです。だから侯爵閣下のせいじゃありません。俺が無理矢理聞き出したんです」
ノアはバルト団長を尊敬していた。まさかこんな話をすることになるとはきっと思っていなかっただろう。ノアを巻き込んでしまったことが私の心をさらに苦しくさせる。
きっとノアはあのときすでにバルト団長を疑っていたのかもしれない……。だからソルファス侯爵閣下から婚約者候補の名前を聞くために、あんな言い方を……。
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