【完結】異世界で婚約者生活!冷徹王子の婚約者に入れ替わり人生をお願いされました

樹結理(きゆり)

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本編 リディア編

第三十四話 お披露目式!? その二

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 翌朝、疲労感を残したまま目が覚めた。

「うう~ん、しんどい……」
「おはようございます、大丈夫ですか?」
「う、うん、何だろ、ゼロに乗ったせいで筋肉痛?」

 苦笑しながら身体を起こす。何やら身体の変なところが痛い。

「昨夜マッサージを行えば良かったですね、申し訳ありません」

 マニカが申し訳なさげな顔をする。

「ううん、マニカのせいじゃないし! 昨夜は特に痛くなかったもの!」

 筋肉痛なのか……、情けない……。
 でもリディアは走ったり重い物持ったりしないもんねぇ。
 ルーに早く乗馬教えてもらってたら良かったな。

「イタタ……」

 格好悪いな……、ここはやはり令嬢らしく何事も冷静に顔に出さずに、よね。

 何とか着替えを終え、朝食をいただく。痛いのにも少しずつ慣れて来たわよ。

「お嬢様、大丈夫ですか? 本日はダンスの練習が……」
「えっ!!」
「お嬢様、お顔が……」

 思わず物凄いしかめっ面でマニカを見てしまった。

「アハハ、ごめん、気にしないで」

 はぁぁあ、長い溜め息が出た。
 一息ついてからダンスのための練習に向かった。

 まあ今日のダンスはグダグダよね。
 身体が思うように動かないんですもの! 講師にはそれはもう怒られまくったわよ。でも言い訳はしない! 必死に頑張りましたよ、そこは。

 身体中痛いったらないわ。ダンスでさらに追い討ちをかけられ、もうこのまま部屋に籠りたい気分。

 でもそういう訳にも行かないので、何とかお昼の間に回復を!

「お嬢様、シェスレイト殿下にお会いする前に香油マッサージ致しましょう!」

 マニカはそう言い、全身をマッサージしてくれた。香油の良い香りで眠たくなっちゃう。
 しっかりと揉み解してくれ、身体が楽になる。

「ありがとう、マニカ」

 マニカは微笑み、そして今度は顔を引き締めた。

「さあ! 今度はドレスに着替えますよ!」
「え? ドレス? ワンピースで良いんじゃ?」
「いえ!! 最近お嬢様はシェスレイト殿下の前で手を抜き過ぎです! 今日はしっかりと仕上げますよ!」
「えぇ!? ……」

 何故かマニカの気合いが凄い……。

 しかしそこはマニカ、状況を判断し、豪華過ぎず、比較的シンプルな濃紺のドレス、しかしとても上品で大人びた雰囲気だ。ドレスとワンピースの中間といった雰囲気の衣裳だった。

「お嬢様、素敵です。シェスレイト殿下もきっとお喜びになられますよ」
「ハハ、ありがとう」

 そうかなぁ、シェスレイト殿下は私が何を着ようが一緒じゃ……、と思ったが、そこは口には出さない。

「お嬢、綺麗……」

 オルガが見惚れた顔で言った。

「フフ、ありがとう、オルガ」

 オルガはブレないなー、と笑った。

「さて、シェスレイト殿下にお願いしに行こう!」


 痛い身体はマッサージのおかげで少し楽になった。
 高いヒールはしんどいだろうと、マニカが気遣ってくれたため低いヒールで歩きやすい。

 シェスレイト殿下の執務室までは以前も行ったおかげで、今回は自分の足で向かえた。
 以前と同じように扉の前にはギル兄がいる。

「リディ、今日は大人びていて綺麗だな!」
「ギル兄ありがとう」

 お互い笑顔で挨拶を交わした。
 ギル兄は扉を叩き中へと声をかける。その声に合わせ、扉が開かれた。ディベルゼさんだった。

「リディア様、ようこそお越しくださいました。どうぞ」

 ディベルゼさんに促され中へと入る。
 前回と違いシェスレイト殿下はすでにこちらを向いて立ち上がっていた。

 シェスレイト殿下はこちらに歩み寄り、手を差し出しエスコートをしてくれる。

 ど、どうしたのかしら……、執務室で待ってたとばかりにエスコートされると、何か怖いんだけど……。

「あ、あの、シェスレイト殿下、本日はお時間をいただきありがとうございます。お忙しいのに申し訳ありません」

 椅子に促されながら言った。

「あぁ、大丈夫だ」

 シェスレイト殿下は目を合わさず、ボソッと言う。

「それで何の用件だ?」

 シェスレイト殿下も向かい側に座ると聞いて来た。

「まあまあ殿下、いきなりそんな話ではなくとも。こんなにお綺麗なリディア様がいらしてくださったんです、少しお茶でもしましょう」

 ディベルゼさんがいきなり話に割って入って来た。
 そう言いながらお茶の用意をしている。マニカもそれを手伝うが、よく見ると結構しっかりとしたお茶とお菓子のセットが用意されていた。

 ん? それは……、私が来るから用意してくださったのかしら?

 目の前に置かれたのはお茶とクッキーの添えられたケーキ。
 しかもお茶はいつも良く飲むハーブの香りがする。

「あ、あの、これはわざわざ私のためにご準備くださったのですか?」

 シェスレイト殿下の顔を見ながら聞く。シェスレイト殿下はこちらをチラッと見ると目が合い、すぐに逸らされた。

「…………」

 無言て。うーん、今までのパターンからすると、これは肯定と受け取って良いのかしら。

「殿下がリディア様のためにご用意されたのですよ」

 見かねたディベルゼさんがニコリとしながら言った。
 シェスレイト殿下を見ると逸らした顔がほんのり赤みを帯びて来る。

「フフ、ありがとうございます、殿下」

 何だかその姿は可愛く見えた。いつも睨んでばかりの顔よりずっと良い。

「いただきますね」

 そう言いお茶を一口いただいた。
 あぁ、いつもの大好きなお茶だ。マニカが嬉しそうな顔をしている。そうか、私の好きなお茶をマニカが伝えたのね。それを用意してくださったんだ。

 何だか今日はシェスレイト殿下がとても優しく見え、いつになく楽しい気分になれた。

 ケーキも私好みの果物がたっぷりと乗ったタルトだ。
 ウキウキしながら一口食べる。

「うぅん、美味しいー!」

 思わず素で喋ってしまい、ハッとし口元を隠した。

「し、失礼しました」
「何故謝る? 美味そうに食べているのは可愛い……」

 そう言いかけて、シェスレイト殿下はハッとし、急に口ごもる。
 こちらを見ていた顔がまた逸らされ、先程のほのかな赤みではなく、急速に真っ赤になった。

 可愛い? 可愛いって言った!? え!? シェスレイト殿下が!?
 そんなことを言われ、顔を真っ赤にされると、こちらも釣られて赤くなる!

 何だか恥ずかしくなってしまい俯いた。

「おやおや、お二人共初々しいのはよろしいのですが、見ているこちらが恥ずかしくなるので、お話を進めてくださいね?」

 ディベルゼさんが厳しい……。ディベルゼさん以外は皆苦笑しているし。余計にこっちが恥ずかしいよ!
 あー、もう! 本題に入る前に気合い入れたかったのに!
 破れかぶれに話し始めた。

「あ、あの! シェスレイト殿下にお願いがあって、今日は来ました」

 顔はまだ火照るが、この際勢いで言ってしまえ!

「お願い?」

 シェスレイト殿下もまだ赤いし! でも少し怪訝な顔になってしまった。

「はい……。あの、騎獣のことなんですが……」
「騎獣のこと?」
「あの、騎獣を実現化するために、騎士団と陛下の前で魔獣に騎乗してお披露目式を行うらしいのです」

「あぁ、そのような話が出てきたらしいですね」

 ディベルゼさんがその話に反応した。シェスレイト殿下も頷き、

「何となくだが私もそのような話は聞いている」
「そうなのですね。それでその…………」
「何だ?」

 い、言い辛い!!
 シェスレイト殿下は怪訝な顔をする。意を決して話し出す。

「そのお披露目式で魔獣に騎乗するのを私がお願いされまして!!」
「!?」

 シェスレイト殿下にディベルゼさん、ギル兄も皆驚愕した。
 アハハ、やっぱり驚くよね……。

「どういうことだ!?」

 シェスレイト殿下の顔が怖い! せっかくのさっきまでの和やかな雰囲気が……。

 魔獣研究所でゼロに騎乗した話から、控えの間でレニードさんに頼まれた経緯までを全て話した。

 シェスレイト殿下たちは唖然としていた。まあそうなるよね。ごめんなさい。

「なるほど……な……」

 シェスレイト殿下は言葉がない、といった感じだ。

「ハ、ハハ、リディア様は本当に意表を突く方ですね」

 ディベルゼさんですら、驚いて声が出ないといった感じだった。

「私がお披露目式に出ることになるのですが、その……、大丈夫でしょうか?」

 シェスレイト殿下は考え込んだ。しばらく沈黙が流れる。
 居心地が悪い。早くこの場から逃げ出したい! そう思っても逃げ出せないのが現実なのよねぇ、と溜め息を吐きそうだった。

「君にしか出来ないのだろう?」
「え、あ、えぇ、恐らく……」
「ならやるしかないのではないか?」
「え、良いのですか!?」
「良いも悪いも、君にしか出来ないのならやるしかないだろう。魔獣を騎獣にしたいのなら」

「は、はい! ありがとうございます!」

 シェスレイト殿下の強い心持ちに勇気がもらえた気がした。
 嬉しいな。強い味方が出来た気分だ。

 そういえばシェスレイト殿下は私のすることに、いつも否定せず、味方になってくれる。
 お菓子作りのときもそうだった。
 国営病院も実現化させようとしてくれている。
 今回もそうだ。

 私は今までシェスレイト殿下を誤解していたのかしら。冷徹王子と呼ばれる殿下をただ怖いというだけで、本人を見ようとしていなかったかもしれない。
 関わりたくないからと言って、この人を知ろうとしなかった。

 私はこの人に酷いことをしていたのかもしれない。

 何だか目の前にかかっていた靄が晴れた気がした。
 これから私はシェスレイト殿下を関わらないようにと避けるのはやめよう。好きになってしまうのは怖い。でもそうやって避けることはもう出来ない。

 シェスレイト殿下を真っ直ぐに見詰め微笑んだ。

「ありがとうございます、シェスレイト殿下」
「あ、あぁ」

 シェスレイト殿下はぎこちないながらも、少し微笑んだように見えた。
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