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第6話 好きになった理由
しおりを挟むあれから温泉はラキシス様が休暇のときにはお泊りをしにいく保養所と化した。あの日二人で何度となくキスを繰り返し、息が荒くなった私たちはそのままベッドで……とはならなかった。そこはとても真面目なラキシス様。真っ赤な顔で「そういうことは婚儀のあとに……」ともごもごしながら呟いている姿もまた可愛かったわ、フフ。
ラキシス様は私があまりに金色の瞳を褒めるものだから、とうとう観念して前髪を切って整えた。綺麗に切りそろえられ、前髪も整えられたお顔はもう神のように美しかった。
「ラキシス様……素敵すぎます……あぁ、どうしましょう」
「?」
「だってこれだけ素敵なお顔が皆に知れ渡ってしまったら、ラキシス様がモテモテになってしまうではないですか! 私がお顔を出して欲しいと言った手前、女性にモテてしまっても文句が言えないではないですかぁ……」
冗談ではないほど真剣にそう訴えた。しかし本当に文句を言える立場ではない。あぁ、本当にモテたらどうしよう……。
「そんなことを気にしていたのか。私はロザリア以外愛せない。私は貴女を初めて見たときから好きだった」
「え? 初めてとはいつですか? この城に私がやって来たときではないのですか?」
「もうだいぶと前のことだ……」
それからぽつりぽつりとラキシス様は照れながらも話してくれた。
あれはまだ私がロベルト様の婚約者だったころ、夜会が行われ、それにロベルト様の婚約者として参加していたときだった。
夜会が苦手なラキシス様は今まで一度も参加したことがなかったらしく、その日は陛下から強制的に参加するようにと命令があったそうだ。
そしてそのとき私の姿を見かけたらしい。
「私はすでにそのとき『悪魔閣下』と呼ばれ、人々から恐れられていた。女性などは特に近付きもしなかった。でも貴女は違った。会場に居づらい私はバルコニーで一人休んでいたが、そこに貴女は現れた。そして『貴方様も居づらいのですか? 同じですね』そう言って微笑んだんだ。
私のことを誰か知らないようだったが、私のことを知らない人間でも、皆、魔力と体格に恐れを抱き近寄らないのに、貴女はそんなこと気もしないような素振りだった」
そう言って私の手を握った。
「それがどれだけ嬉しかったか貴女には分からないだろうね」
少し寂し気な、しかし愛し気な表情で見詰める。
「でも貴女は王太子の婚約者だった。だからこの気持ちは誰にも知られないように、胸の奥深くに閉じ込めた。それなのに……」
握り締める手に力が籠った。苦悶の表情を浮かべる。
「それなのに、褒章式のために王都へ向かうとそこで色々な噂話を聞いた」
「あ……」
「王太子ロベルト殿下がどうやら男爵令嬢と最近親密な関係らしい、と。腸が煮えくり返る想いだったよ。調べてみたら、どうやら本当らしいし、婚約を破棄するかもしれないとまで聞いた」
あぁ、私が知るよりも早くにラキシス様は今回の件を知ってらしたのね。
「だから私は褒賞に貴女を望んだんだ。あんな王太子に貴女を傷付けられたくなかった! ……でも、すまない、結局は私が貴女を傷付けた……」
そう言ったラキシス様はシュンとしてしまった。フフ、やっぱり可愛い方だわ。そんなこともう全く気にしていないのに。
「フフ、私はラキシス様に傷付けられたなんて、これっぽっちも思っておりません。それよりも私を王都から救い出してくれたことに感謝いたします。そして、私を愛してくださり、私に愛を教えてくださったのですもの。私はとても幸せですわ」
そう言って、ラキシス様にしがみついた。大きな身体のくせにこんなことで固まるラキシス様が可愛くて仕方がない。
「ラキシス様、一緒に幸せになりましょうね」
抱き付いたまま見上げたラキシス様のお顔は真っ赤だったが、嬉しそうな顔で微笑み「あぁ」とだけ言葉にした。
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