ガマンできない小鶴は今日も甘くとろける蜜を吸う

松ノ木るな

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もうがまんできない

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 山の向こうに日が沈みゆく。カーブの山道をぐんぐん上り峠に差し掛かる頃、男は無舗装の平地に車を留めた。里梨様もそろそろ座りっぱなしの状態に飽きた様子を見せていたが──
「もうちょっと先の尾根に出ると、夕焼けがきれいに見えるよ」
「行きたい!」
 男はしめしめと心中で舌なめずりをし、後部座席に用意してあったリュックを右肩に背負ったら、弾む足取りの里梨様の後ろをのそりとついていく。

 ──アト少シダ……モウ少シガマン……

「あ、おじさん! 小屋がある」
 子どもならではの冒険心。洞窟でも溝でも、鬱蒼とした藪であっても入り口があれば、その境界線を越えてみたくなるのが小学生であり、そんなおさなさに悶える人間と彼女はいま一緒だ。
「気を付けなよ」
 男はリュックから取り出した懐中電灯のスイッチを入れ、戸に向けた。

 ──ココニ追イ込モウ──

「暗いなぁ。なんのための小屋だろう?」
 今の男には彼女の声音が可愛い小鳥のさえずりに聴こえている。
 男も追って小屋に入ったら、外をいったん見回してから戸を閉めた。光は朽ちた壁から漏れる陽の光と、懐中電灯による一筋のみ。
「閉めちゃったらよく見えないよ」
 よし、今ここでガキの自由を奪ってやろう。そう男は、包み隠していた欲望を開放した。

「……っ? !!」
 肘で腹に不意打ちされ、
「うぐっ!」
 里梨様から呻き声がこぼれた。

「げほっ、うぅっ……」
 その場に膝から崩れ落ちたら、即座にのしかかってきた巨体に押し込められ、後ろ頭を地面に殴打した彼女の目から火花が散った。

「ああ゛っ」
「これ以上殴られたくなかったら大人しくしろあァ」
 理性を手放し叫ぶ男が彼女のワンピースを思いきり破り裂く。その間、上半身を両腕で守ろうとする彼女をついに自分の玩具だと確信し、その両手首を力の限り握りしめた。
「痛ァッ!」
「うっひひゃ……」
 ここまでもったいぶるようにジワジワ期待感を上げていたが、ついに一足飛びに奮い上がった。目の前のご馳走は今まさに、震える瞳に涙の粒がにじみ、頬が気色きしょくをじわじわ失っていくのに対し、花びらようの唇は艶めき紅潮していく。

「いいぞォ……」

 ──アア、オイシソウダ……

 もはや食われるのを待つだけの小動物を前に、中枢への刺激は一層強まり、男の唾液がだらりだらりと零れ落ちる。衝動のままにもう一度、バシン! と顔面をひっぱたいてみた。もう止まらない。
「あ゛ぁっ……」
 彼女が怯んだ隙にリュックから縄を引っ張り出した。それでわし掴む細い手首を雑に縛り上げ──

 ──モウ、ガマンガデキナイ──

 けだものと化した男はこのか細い身体に、一心不乱にかぶりつき、唾液まみれにして臭いを擦り付ける。汚せば汚すほど脳が支配欲の奮起で焦げ付いて──

 ──モット、ミセテ、眼ヲ……

 ひとまずこの胸の高鳴りを彼女の腹に放出しようと、水平になっていた上半身を持ち上げた。
 その瞬間──

「ソノ眼、チョウ、ダイ……」

 彼女は括られた両腕を振りかぶり勢いをつけ、男の肩に額を突き出した。そしてグイッと後ろ頭からのけぞったら──

 大きな大きな口を開き、上の歯肉からそびえる鋭利な牙をむき出しにした。

 今、正体かのじょをあらわすおぼろげな影は、すいぶん大形おおぎょうな、人の形を成さぬ何か──

「自戒シテおるのよ、口を人前で開くコトは。でも……もう」

 この闇に紛れて剥いた牙は、

「ガマンならぬのじゃ♡」

 真珠のごとく白妙に輝く、≪毒牙≫なのだ──……

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