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【 終章 】 希望を胸に抱いて
⑪ 新天地
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――――あれ、私……どうしたんだろう……?
アリアンロッドはおもむろに瞼を開けた。すると目の前には青く澄んだ広い空に、昇ったばかりであろう朝日。近くには生い茂る森林、その手前に透きとおる湖が広がっている。人の気配は全くなく、自身と、腕の中のアンヴァルだけが存在している。
「ここは……あの世?」
「ん…?」
アンヴァルにも意識が戻った。ふたりは視界が全く違うことに気付いたが、何も言葉にせず、改めてその場に倒れ込んだ。
そのまましばらく寝入った。
何刻か眠り、目が覚めても、しばらく寝ころんだままで呆けていたが、そのうちアンヴァルが立ち上がった。
「? どこ、に?」
「水……。あと、腹が減って、もう……。身体がなんとか動くうちに、なんでもいい、何か……食えるものを」
「私、も……!」
ふたりは少し前まで、ここはあの世だと思っていた。
しかし、ありありと感じるのだ、空腹を。
湖岸に沿って進み、森に入った。まずは落ちている実を頬張った。ひとつふたつ食べたら止まらなくなった。
その先は獣道のようであるが、何も出てこないので更に足を伸ばした。よく晴れているおかげで気持ちの良い朝の木漏れ日の中、草木をかき分け歩いていく。
あまりに気分がよく、アリアンロッドはふと、やはりここはあの世ではないかと感じた。
しかし時を置かず、現実感も襲ってくる。
ふたりの持ち物はアンヴァルが最後に握っていた剣一本だ。森の中を少し回って小動物がいるのを見かけたが、とりあえずは木の実や草をたらふく食べた。
一度森から出ると、崖に小さな洞窟を見つけた。なんとか雨風を凌げそうな奥行きであり、アンヴァルが夜はここにいようと提案した。
ふたりはその頃やっと頭が冷えてきて、大事なことに気が付いた。
それは今、自分たちには、生活のための道具がろくにないということだ。
まず火がなくては、動物や魚を狩っても食べられない。急務は火を熾すことだった。木々や葉を集め、岩を集め、これらまったく手入れのされていない自然物を普段のように使おうとも、失敗を繰り返す。日が落ちても成功しないまま、落胆の中いつの間にか眠り、次の日は昇る。そして丸一日それに時を費やし、木の実と草だけを食べ、また翌日に繰り越した。
その日太陽が真上に来た頃、なんとか火を確保できた。アリアンロッドが火を守る間、アンヴァルがそばを流れる川で転げながら、魚を一本獲った。それを炙って食べた後、ふたりは洞穴に入ると倒れるように眠った。
翌朝から、その日どれほど食物を得られるかも分からない日々が始まった。草でいいなら食べられはするが、空腹感でたまらない。
まず道具を作らねば話にならない。石を拾っては打ち割り削り、岩を砕いては擦り削る。地道な作業を繰り返し、それらを不格好な刃物にした。それを使って植物を、切って刻んでそれから編んで縄を作った。それがとりあえず斧や罠の形になったので、狩りを始めた。この頃まだふたりとも、明日は生きていられるだろうかと、いつも不安を胸に抱えていた。
それから狩りで皮が手に入るようになった。一時は大きな葉を身体に巻いて凌いだりもしていたが、やっとそれなりの貫頭衣ができた。
当初は一時の余裕もなかったが、一月か二月経つと、なんとかやっていける実感が湧いてきたのだった。それでもしばらくは食料を用意して食べて寝る、それだけの暮らしだった。
この暮らしを始めてふたりは、神隠しでこの地に誘われたと実感した。しかし、次の神の風はやって来ない。それは今までなら必ず吹いてきて、国に帰ることになったはずだが──。
ある日、アリアンロッドは口火を切った。
「口にしてもいいのか迷ってたんだけど……」
「うん?」
「根拠はないのよ……。根拠はないけれど……、感じるの。帰る途はない。国へ向かう風は吹かない……」
言葉にしたらまもなく、アリアンロッドの目に涙が滲んだ。彼女は目先を固定して微動だにしない。涙が零れ落ちるのを堪えているようだ。
「そうか。聖女がそう感じるなら、きっとそうなんだろうな……」
アンヴァルは、いけるところまで、生きていこう、と小さくつぶやいたが、彼女には聞こえなかった。
やがてふたりは、この生活はここで頭打ちではないか、と大きな不安に襲われるようになる。もし寒い季節がやってきたら、食料が採れなくなる。ふたりだけでいつまで生きていけるのだろうと、そう考えた頃、森の向こうに出て、ずっとその先へ足をのばすようになった。半日かけてどこかへ行って、また戻るのを繰り返してみた。
その日、朝早く出かけて、森を突き抜けて彷徨ったふたりの目に留まったのは、生活の香り漂う住居だった。
「ヴァル、人がいる……!?」
「ああ、探してみよう」
ふっとアンヴァルが周囲を見渡すと、その先の林から数人の人影が現れる。
「おや、見ない顔だな?」
その人々は家族らしき集団だ。みな農耕の道具を抱えている。
「あなたたちは本島から? それとも外から?」
「罪人じゃないでしょうね?」
怪しむ若者たちに、ふたりは慌てて否定し、遠くからの移住者だと話した。
案外友好的な態度で語りかけられたので、こちらの事情を打ち明け、この地域についてじっくり聞いてみると──
ここは島国で、王の暮らす本島の近くに散らばる、幾つかの小島のうちのひとつだ。多くの者が昔からの住人だが、遥か遠くの大陸から移住してきた者もいるのだという。
「この群島は海流に守られていて、ここからその外に出ることはいまだ誰も成功していない。移住してきた者らもここを目指してやってきたということもないらしい。完全なる孤島だよ。外の大陸については移住者らが語ってくれるのだけどね」
「ということは、帰れない……?」
アリアンロッドは表情なく聞き返した。
「ああ。どうしても船が戻ってきてしまうんだ。他の大陸と交易することもなく、本島と離島でひとつの国となってから、皆この内だけで協力して暮らしているのさ」
人口10万人程度の国のようだが、すべて国内で生業をまかない、民は平穏に過ごしているのだという。
アリアンロッドは情報を一通り聞いて安堵したのか、ぽろぽろと涙をこぼした。そんな彼女を子どもたちがじろじろ見たり、おろおろしたりしている。
アンヴァルはこの住民らに、自分らもここらの集落に定住したいと話した。
住民らは、和を乱すような人間でない限り、移住者は歓迎したいと言う。村民らに紹介しようという話になり、人々が集い始めた。
「あら? あのお方は、まさか……」
そのとき集まった人の中に、アリアンロッドを知る娘がいた。
彼女は人の輪の奥からアリアンロッドの顔を見て非常に驚き、その場では話しかけず、慌てて自宅へ走った。
「アリアンロッド様!」
「!?」
突然、久方ぶりにアンヴァル以外の人間に名を呼ばれて、アリアンロッドは息をのんだ。
「再びお会いできるなんて……」
その女性が震える足で、アリアンロッドのもとに歩み寄る。
「……エルヴィラ!? あなた、エルヴィラね!?」
アリアンロッドはおもむろに瞼を開けた。すると目の前には青く澄んだ広い空に、昇ったばかりであろう朝日。近くには生い茂る森林、その手前に透きとおる湖が広がっている。人の気配は全くなく、自身と、腕の中のアンヴァルだけが存在している。
「ここは……あの世?」
「ん…?」
アンヴァルにも意識が戻った。ふたりは視界が全く違うことに気付いたが、何も言葉にせず、改めてその場に倒れ込んだ。
そのまましばらく寝入った。
何刻か眠り、目が覚めても、しばらく寝ころんだままで呆けていたが、そのうちアンヴァルが立ち上がった。
「? どこ、に?」
「水……。あと、腹が減って、もう……。身体がなんとか動くうちに、なんでもいい、何か……食えるものを」
「私、も……!」
ふたりは少し前まで、ここはあの世だと思っていた。
しかし、ありありと感じるのだ、空腹を。
湖岸に沿って進み、森に入った。まずは落ちている実を頬張った。ひとつふたつ食べたら止まらなくなった。
その先は獣道のようであるが、何も出てこないので更に足を伸ばした。よく晴れているおかげで気持ちの良い朝の木漏れ日の中、草木をかき分け歩いていく。
あまりに気分がよく、アリアンロッドはふと、やはりここはあの世ではないかと感じた。
しかし時を置かず、現実感も襲ってくる。
ふたりの持ち物はアンヴァルが最後に握っていた剣一本だ。森の中を少し回って小動物がいるのを見かけたが、とりあえずは木の実や草をたらふく食べた。
一度森から出ると、崖に小さな洞窟を見つけた。なんとか雨風を凌げそうな奥行きであり、アンヴァルが夜はここにいようと提案した。
ふたりはその頃やっと頭が冷えてきて、大事なことに気が付いた。
それは今、自分たちには、生活のための道具がろくにないということだ。
まず火がなくては、動物や魚を狩っても食べられない。急務は火を熾すことだった。木々や葉を集め、岩を集め、これらまったく手入れのされていない自然物を普段のように使おうとも、失敗を繰り返す。日が落ちても成功しないまま、落胆の中いつの間にか眠り、次の日は昇る。そして丸一日それに時を費やし、木の実と草だけを食べ、また翌日に繰り越した。
その日太陽が真上に来た頃、なんとか火を確保できた。アリアンロッドが火を守る間、アンヴァルがそばを流れる川で転げながら、魚を一本獲った。それを炙って食べた後、ふたりは洞穴に入ると倒れるように眠った。
翌朝から、その日どれほど食物を得られるかも分からない日々が始まった。草でいいなら食べられはするが、空腹感でたまらない。
まず道具を作らねば話にならない。石を拾っては打ち割り削り、岩を砕いては擦り削る。地道な作業を繰り返し、それらを不格好な刃物にした。それを使って植物を、切って刻んでそれから編んで縄を作った。それがとりあえず斧や罠の形になったので、狩りを始めた。この頃まだふたりとも、明日は生きていられるだろうかと、いつも不安を胸に抱えていた。
それから狩りで皮が手に入るようになった。一時は大きな葉を身体に巻いて凌いだりもしていたが、やっとそれなりの貫頭衣ができた。
当初は一時の余裕もなかったが、一月か二月経つと、なんとかやっていける実感が湧いてきたのだった。それでもしばらくは食料を用意して食べて寝る、それだけの暮らしだった。
この暮らしを始めてふたりは、神隠しでこの地に誘われたと実感した。しかし、次の神の風はやって来ない。それは今までなら必ず吹いてきて、国に帰ることになったはずだが──。
ある日、アリアンロッドは口火を切った。
「口にしてもいいのか迷ってたんだけど……」
「うん?」
「根拠はないのよ……。根拠はないけれど……、感じるの。帰る途はない。国へ向かう風は吹かない……」
言葉にしたらまもなく、アリアンロッドの目に涙が滲んだ。彼女は目先を固定して微動だにしない。涙が零れ落ちるのを堪えているようだ。
「そうか。聖女がそう感じるなら、きっとそうなんだろうな……」
アンヴァルは、いけるところまで、生きていこう、と小さくつぶやいたが、彼女には聞こえなかった。
やがてふたりは、この生活はここで頭打ちではないか、と大きな不安に襲われるようになる。もし寒い季節がやってきたら、食料が採れなくなる。ふたりだけでいつまで生きていけるのだろうと、そう考えた頃、森の向こうに出て、ずっとその先へ足をのばすようになった。半日かけてどこかへ行って、また戻るのを繰り返してみた。
その日、朝早く出かけて、森を突き抜けて彷徨ったふたりの目に留まったのは、生活の香り漂う住居だった。
「ヴァル、人がいる……!?」
「ああ、探してみよう」
ふっとアンヴァルが周囲を見渡すと、その先の林から数人の人影が現れる。
「おや、見ない顔だな?」
その人々は家族らしき集団だ。みな農耕の道具を抱えている。
「あなたたちは本島から? それとも外から?」
「罪人じゃないでしょうね?」
怪しむ若者たちに、ふたりは慌てて否定し、遠くからの移住者だと話した。
案外友好的な態度で語りかけられたので、こちらの事情を打ち明け、この地域についてじっくり聞いてみると──
ここは島国で、王の暮らす本島の近くに散らばる、幾つかの小島のうちのひとつだ。多くの者が昔からの住人だが、遥か遠くの大陸から移住してきた者もいるのだという。
「この群島は海流に守られていて、ここからその外に出ることはいまだ誰も成功していない。移住してきた者らもここを目指してやってきたということもないらしい。完全なる孤島だよ。外の大陸については移住者らが語ってくれるのだけどね」
「ということは、帰れない……?」
アリアンロッドは表情なく聞き返した。
「ああ。どうしても船が戻ってきてしまうんだ。他の大陸と交易することもなく、本島と離島でひとつの国となってから、皆この内だけで協力して暮らしているのさ」
人口10万人程度の国のようだが、すべて国内で生業をまかない、民は平穏に過ごしているのだという。
アリアンロッドは情報を一通り聞いて安堵したのか、ぽろぽろと涙をこぼした。そんな彼女を子どもたちがじろじろ見たり、おろおろしたりしている。
アンヴァルはこの住民らに、自分らもここらの集落に定住したいと話した。
住民らは、和を乱すような人間でない限り、移住者は歓迎したいと言う。村民らに紹介しようという話になり、人々が集い始めた。
「あら? あのお方は、まさか……」
そのとき集まった人の中に、アリアンロッドを知る娘がいた。
彼女は人の輪の奥からアリアンロッドの顔を見て非常に驚き、その場では話しかけず、慌てて自宅へ走った。
「アリアンロッド様!」
「!?」
突然、久方ぶりにアンヴァル以外の人間に名を呼ばれて、アリアンロッドは息をのんだ。
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