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【 第七章 】 永遠に君のそばにいる
③ 即位式にて
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官長は考えた。戦場に出ることのない文官であるなら、そのようなことは絶対に許さないだろう。争いが確実に終わり、すべての敵兵が去ったのを確信した後、万全な手立てで聖女をこの場から退かせるだろう。
しかし彼は、聖女自ら見たいと言っているものを断る道理はないのではないか、と考える性分だ。
本国はかつてこういった戦いの末に成り立った。流れた血の重みを、王となる者が知らずにいるよりは……と。
彼は部下らにもう一度、戦況を念入りに確認させた。どうやら終わったと言って差し支えないようだ。
「僅かの間だけです。必ず私の後ろにおいでください」
アリアンロッドが立ち上がり歩み始めた時、本営内前衛の兵士らがひどくざわめいた。
官長も何事かと訝しむと、ちょうど前方から兵が通達にやってきた。
その内容は、儀式の装束を纏う大聖女が王を携え、壮麗な白馬に跨り、ここへ駆けてきたという事実だ。
「お母様が……!?」
それを耳にしたアリアンロッドは脇目も振らず表に出ていった。陣営の前衛で、ちょうど大聖女が軽やかに馬から飛び降り、姿を現したアリアンロッドの元へと走り寄る。
「どうしてここへ……?」
大聖女がアリアンロッドを真っ向から抱きしめた。
母の抱擁は温かいものなのに、アリアンロッドの心は内側から凍り付いていき、全身が急激に冷えゆくのだった。
そこに、近くに倒れていた、死んだと思われていた敵兵の撃ち放った矢が飛んできた。
兵士らの驚愕の叫び声が続々と上がる。アリアンロッドの視界には、矢の羽しか存在しない。
「なん、で……」
継母に正面から覆われたアリアンロッドは、その場で膝から崩れ落ちる。が、すぐに意識を取り戻し、力を失いつつある継母を両手で強く抱きしめ、震える声を零した。
「誰か、医師を……誰か!! 誰か……」
血の臭いにむせ返る戦場で、その身を切り刻まれたかのような、痛烈な悲鳴が響き渡る。
「助けて──────!!!」
継母にはすべて視えていた。継母を庇うつもりで戦場に向かうという継娘を受容して。
継娘がどこにいても矢の飛んでくることも、それを自らが庇い死ぬことも、運命をすべて予知して。
────お母様は私なんかとは違う。聖女としての力量がてんで違うの。きっと、いくつもいくつも可能性(みらい)を視ていた。その上で選んだ────国と私、両方を生かす道を……。
大聖女の遺体は宮殿でもっとも空気の冷たい地下室に安置され、アリアンロッドはその傍らで涙を流し続けた。どうして気付けなかったのだろう、どうすれば良かったのだろう、とそればかり。
王陛下を一度責めた、どうして大聖女を戦場に出したのかと。すると彼も大粒の涙を流しながら、「神が大聖女に憑依していた。ただの人である私が、どうして神に抗えようか」と悔いるのだった。誰よりも彼女の近くにいたのは彼なのだ、これ以上何が言えよう。
戦場から引き上げるにも日を要したので、早く亡骸を埋葬せねばならない。その前にいち早く大聖女即位式を行うと、アリアンロッドはこの日、ディオニソスから伝えられる。
「即位、葬儀、と両方の儀を明日執り行うことになった。このたびはこういう事情だ、即位式は最低限のものとなる。即位したばかりになる君は、しきたりにより葬儀への出席を控えねばならない」
「…………」
「辛いだろう、しかし今夜はどうにか、眠るように」
涙も枯れ果てた頃、ディオニソスに付き添われ自室に戻る。それからは久しぶりに、深い眠りへと沈んでいったのだった。
朝早いうちから、アリアンロッドは侍女らの手により神聖で特別な聖女の儀礼的衣装に着せ替えられ、化粧も念入りに施された。そこにディオニソスがやってくる。
「非常に美しい。まるで女神だ」
「ディオ様」
彼は綺麗に着飾られても肩を落としたままの、アリアンロッドの手を取った。
「そんなお世辞……」
「世辞ではない」
「じゃあ、馬子にも衣装?」
「とんでもない。そうだ、君はもう18なのだね。強く美しい、大人の女性だ」
彼に至近距離で見つめられ、彼女の虚ろな瞳に小粒の光が差した。
アリアンロッドはディオニソスのエスコートで、礼拝堂手前の控えの間へ。そこで父王に彼女を引き渡したディオニソスは、堂の中へ入って行った。
王は彼女に言い聞かせる。即位礼が始まり、大聖女は神に祝詞を奏上する。そして王の手より戴冠。後は参列者に顔を見せれば、みな各々大聖女の即位を惜しみない拍手で寿ぐので、その喝采を浴びたら随時退場する、と。
アリアンロッドは無言で頷き、王と共に礼拝堂へと向かうのだった。
新たな大聖女の即位式が始まろうとしている。
そこは実に厳かな場だ。式堂の中には数百名の諸侯、宮廷人らが。ステンドグラスから多角的に差す光の間を、物音ひとつない静けさが漂う。
大勢が見守る中、今、冠がアリアンロッドの頭に乗せられた。
王陛下から告げられたようにアリアンロッドは立ち上がり、みなに顔を見せると、堂内外の男たちは一斉に敬礼する。
ディオニソスも、アンヴァルも、軍事官長も。国を牛耳る男たちが一様に首を垂れる様を、アリアンロッドは前方の壇上から眺めた。
この胸のすくような景色を目にしたことで、彼女は己の立場を改めて自覚しただろう。
自身が大きく見えるようとっさに手を高く、未来を掴むかのごとく前方へ伸ばすと、彼らは定例どおり、大きな拍手を送った。
そこでアリアンロッドは挙げた手を降ろし胸元に寄せ、深呼吸した。その様子にいくらかの者が気付き、手を止める。
「みなさま! 本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます!!」
ここで、まずは高座に腰掛けて退場の支度を待てと説き伏せておいた新大聖女が、何やら改めて大音声で述べ出し、王陛下は固まった。
「またこれから葬儀に参列されることでしょう。みなさま実にご苦労様です!」
このように定型文で労ったアリアンロッドは、また一呼吸置く。男たちのざわめきもすべて止み、水を打ったようにその場は静まり返る。
「私には神の声が聴こえます。ここで貴方がたに初めて私からの、神の言葉を伝えたいと思います」
自分でも声が少し震えていると分かる。しかし声をもっと張り上げれば、きっとばれないだろう、ばれないで欲しい、そう願いつつ、アリアンロッドは思いを決した。
しかし彼は、聖女自ら見たいと言っているものを断る道理はないのではないか、と考える性分だ。
本国はかつてこういった戦いの末に成り立った。流れた血の重みを、王となる者が知らずにいるよりは……と。
彼は部下らにもう一度、戦況を念入りに確認させた。どうやら終わったと言って差し支えないようだ。
「僅かの間だけです。必ず私の後ろにおいでください」
アリアンロッドが立ち上がり歩み始めた時、本営内前衛の兵士らがひどくざわめいた。
官長も何事かと訝しむと、ちょうど前方から兵が通達にやってきた。
その内容は、儀式の装束を纏う大聖女が王を携え、壮麗な白馬に跨り、ここへ駆けてきたという事実だ。
「お母様が……!?」
それを耳にしたアリアンロッドは脇目も振らず表に出ていった。陣営の前衛で、ちょうど大聖女が軽やかに馬から飛び降り、姿を現したアリアンロッドの元へと走り寄る。
「どうしてここへ……?」
大聖女がアリアンロッドを真っ向から抱きしめた。
母の抱擁は温かいものなのに、アリアンロッドの心は内側から凍り付いていき、全身が急激に冷えゆくのだった。
そこに、近くに倒れていた、死んだと思われていた敵兵の撃ち放った矢が飛んできた。
兵士らの驚愕の叫び声が続々と上がる。アリアンロッドの視界には、矢の羽しか存在しない。
「なん、で……」
継母に正面から覆われたアリアンロッドは、その場で膝から崩れ落ちる。が、すぐに意識を取り戻し、力を失いつつある継母を両手で強く抱きしめ、震える声を零した。
「誰か、医師を……誰か!! 誰か……」
血の臭いにむせ返る戦場で、その身を切り刻まれたかのような、痛烈な悲鳴が響き渡る。
「助けて──────!!!」
継母にはすべて視えていた。継母を庇うつもりで戦場に向かうという継娘を受容して。
継娘がどこにいても矢の飛んでくることも、それを自らが庇い死ぬことも、運命をすべて予知して。
────お母様は私なんかとは違う。聖女としての力量がてんで違うの。きっと、いくつもいくつも可能性(みらい)を視ていた。その上で選んだ────国と私、両方を生かす道を……。
大聖女の遺体は宮殿でもっとも空気の冷たい地下室に安置され、アリアンロッドはその傍らで涙を流し続けた。どうして気付けなかったのだろう、どうすれば良かったのだろう、とそればかり。
王陛下を一度責めた、どうして大聖女を戦場に出したのかと。すると彼も大粒の涙を流しながら、「神が大聖女に憑依していた。ただの人である私が、どうして神に抗えようか」と悔いるのだった。誰よりも彼女の近くにいたのは彼なのだ、これ以上何が言えよう。
戦場から引き上げるにも日を要したので、早く亡骸を埋葬せねばならない。その前にいち早く大聖女即位式を行うと、アリアンロッドはこの日、ディオニソスから伝えられる。
「即位、葬儀、と両方の儀を明日執り行うことになった。このたびはこういう事情だ、即位式は最低限のものとなる。即位したばかりになる君は、しきたりにより葬儀への出席を控えねばならない」
「…………」
「辛いだろう、しかし今夜はどうにか、眠るように」
涙も枯れ果てた頃、ディオニソスに付き添われ自室に戻る。それからは久しぶりに、深い眠りへと沈んでいったのだった。
朝早いうちから、アリアンロッドは侍女らの手により神聖で特別な聖女の儀礼的衣装に着せ替えられ、化粧も念入りに施された。そこにディオニソスがやってくる。
「非常に美しい。まるで女神だ」
「ディオ様」
彼は綺麗に着飾られても肩を落としたままの、アリアンロッドの手を取った。
「そんなお世辞……」
「世辞ではない」
「じゃあ、馬子にも衣装?」
「とんでもない。そうだ、君はもう18なのだね。強く美しい、大人の女性だ」
彼に至近距離で見つめられ、彼女の虚ろな瞳に小粒の光が差した。
アリアンロッドはディオニソスのエスコートで、礼拝堂手前の控えの間へ。そこで父王に彼女を引き渡したディオニソスは、堂の中へ入って行った。
王は彼女に言い聞かせる。即位礼が始まり、大聖女は神に祝詞を奏上する。そして王の手より戴冠。後は参列者に顔を見せれば、みな各々大聖女の即位を惜しみない拍手で寿ぐので、その喝采を浴びたら随時退場する、と。
アリアンロッドは無言で頷き、王と共に礼拝堂へと向かうのだった。
新たな大聖女の即位式が始まろうとしている。
そこは実に厳かな場だ。式堂の中には数百名の諸侯、宮廷人らが。ステンドグラスから多角的に差す光の間を、物音ひとつない静けさが漂う。
大勢が見守る中、今、冠がアリアンロッドの頭に乗せられた。
王陛下から告げられたようにアリアンロッドは立ち上がり、みなに顔を見せると、堂内外の男たちは一斉に敬礼する。
ディオニソスも、アンヴァルも、軍事官長も。国を牛耳る男たちが一様に首を垂れる様を、アリアンロッドは前方の壇上から眺めた。
この胸のすくような景色を目にしたことで、彼女は己の立場を改めて自覚しただろう。
自身が大きく見えるようとっさに手を高く、未来を掴むかのごとく前方へ伸ばすと、彼らは定例どおり、大きな拍手を送った。
そこでアリアンロッドは挙げた手を降ろし胸元に寄せ、深呼吸した。その様子にいくらかの者が気付き、手を止める。
「みなさま! 本日はお忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます!!」
ここで、まずは高座に腰掛けて退場の支度を待てと説き伏せておいた新大聖女が、何やら改めて大音声で述べ出し、王陛下は固まった。
「またこれから葬儀に参列されることでしょう。みなさま実にご苦労様です!」
このように定型文で労ったアリアンロッドは、また一呼吸置く。男たちのざわめきもすべて止み、水を打ったようにその場は静まり返る。
「私には神の声が聴こえます。ここで貴方がたに初めて私からの、神の言葉を伝えたいと思います」
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