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【 第八章 】 同じ思いを抱いている
⑥ 離れても、どうも引き合うエトセトラ
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翌朝、先に目覚めたのはアリアンロッドだった。隣でまだ眠っている彼の上着の裾から、何か小さい板のようなものが転がり落ちているのを見つけた。
「なんだろう…?」
手に取ってみると、それは鉱石のようだ。
「ちょっと重みあるし、この触感は……」
色は鉄と変わらないが、それではない鉱物だ。アリアンロッドは書籍で学習した程度で鉱物に詳しくないが、「これ、なんか見覚えある」と感じた。
「あっ、方位針!」
まだ隣の彼が寝ているので、気を遣って小声を上げた。
「医師のところで、使わせてもらったあれの針と、同じ色・質感だわ」
これを少し高く掲げて見上げたら、なにやら持つ手が引き付けられる。その力に反発せず任せてみると、板は鍬の刃にくっついた。
「??」
離そうとすれば離れる。しかしどうも謎の力で引き寄せられる。
「でもこの鍬だけ? これは鉄?」
周りの他の農具は木でできていた。そんなところで彼が目を覚ました。
「おはよう。ねぇ、これ、あなたの袖から落ちたんだけど、何?」
彼は寝ぼけ眼で答える。
「ん~~……。ああ、それ昨日もらったんだ」
「もらった?」
「俺のところには珍しい物が集まってくるからな。欲しけりゃやるよ」
あくびをしながら言った。さほど大事なものでもないらしい。
アリアンロッドは、「ああ商人だからか」と、もらっておくことにした。
背伸びをしてようやく頭が冴えたらしい男は、立ち上がりアリアンロッドにさくっと告げる。
「じゃ、俺が先に出て囮になるから、お前はしばらく潜んでいろ」
「え? 一緒に行っちゃだめ?」
アリアンロッドは、「ヴァルだったら“絶対俺から離れるな”って言うのに」と考えてしまった。彼に気を許したのも大きい。
「一緒に行く利点がないだろう?」
「そうだけど……」
「囮になって、どこかへ逃げながら敵を捲く。お前はしばらくここで待ってから、日が高くなった頃に帰れ」
「……待ち合わせは?」
その問いにアリアンロッドの心細さが混じり、それをしっかり見通している彼はまたニヤける。
「お前、また俺と会いたいのか?」
「こ、こんなふうに別れたら、むずむずするでしょう?」
「なら夕方までに、あの特設舞台があった周辺の民家か小屋で落ち合おう。入り口に目印として布を巻くってことで。同時にやったら互いに待ちぼうけになるけどな」
「それでいいわ。ところで囮といっても、ひとりで出るんじゃ」
「ふたりでいるように偽装する」
そこで小屋にある農具や折れ木、布類を使って、彼が人を負ぶっているように見せかけることにした。少々小さいが、素早く動いていたら誤魔化せるだろう。
「じゃあ行く。また会えたらいいな」
「え、ええ」
彼は疾風のように行ってしまった。
やはりひとりでいると心細くなる。アリアンロッドはしばらくその倉庫で、早くアンヴァルのところへ帰れるようにと祈っていた。
それから体感1時間ほど待った後、アリアンロッドは外に出た。人々が畑で作業を進めている。
倉庫の物を勝手に拝借してしまった負い目もあり、そこで働く者に、自分はここらの新参者で親しくなりたいので、少しの間手伝わせてほしいと申し出た。彼らはアリアンロッドの良い身なりを見て不思議に思ったが、手伝いたいというものを断る理由もなし、そこでの作業を説明した。
しばらく手伝いに精を出していたら、農民から噂話が聞こえてきた。なにやらユング王の重臣がこの地に入ったというのだ。アリアンロッドはその人物について尋ねてみたが、それを一般の民がよく知るわけもない。
統率者を決める催しが明日あるから、その関係者かと彼女は考えた。あまり為政者についての話をしたいとも思わなかった。
(ここはもう私たちがいなくなった世界だもの……。この地の民が変わらず暮らせているならそれでいいわ)
作業の後、アリアンロッドは約束の場に向かった。
街に入ったら、農婦から渡された汗拭き布を頭から被り、例の特設会場周辺を、こそこそと回っていた。
その時、さっと前を横切る、長く綺麗な髪の紳士が、アリアンロッドの目に留まる。彼女はその後ろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。
通行人など普段は気に留めるものでもないが、なぜか気にかかった。その男性は、白髪の混じる髪から若者には見えなかったが、去りゆく足取りが颯爽としていて、目を引いたのである。
そこでふと、戸口に布切れの結んである家屋が目に飛び込んできた。あの男が待っていると期待して走った。
注意深く戸を開いてみたら、期待どおり、そこの居間のテーブルにて彼がくつろいでいる。コップで飲み干しているのは酒だろうか。
「失礼するわ」
「おお。うまく出てこれたようだな」
「おかげさまで……」
「こちらは、さっきこの辺で輩が待ち伏せていて、また追ってきたんだ。まだ近くにいるかもしれねえな」
アリアンロッドは不毛な揉め事に疲れを感じ、うつむいた。
「あと少し日が落ちたら出るか」
「ここに居座っていいの?」
「これは空き家だ。追い立てられることもない」
促され、彼女もそこに落ち着いたら、リンゴを1個まるごと渡される。
「ずっと倉庫に隠れていたのか?」
「少し農家の人たちの手伝いをしたわ。勝手に頂いた物の分を返せたとは思わないけど」
「そうか」
彼がそばにいると、つい甘えたくなる自分がいる。アリアンロッドは、何でもいいから話をしていたくなった。
「明日の、統率者選出のためかしら。ユング王の配下がこの街に入ったっていう噂を聞いたのだけど、どうして王本人がここまで来て、対面して決めないのかな」
「代理で済むなら、それでいいんじゃねえか」
「とても大事なことじゃない。一地域とはいえ、権限を持つ人を決めるのよ?」
「今は動乱の時だからな。上に立つ者はてんやわんやだ。なすべきことが多くあるなら、より重要なことを自身の手足で実行する。下にやらせて済むことは下にやらせておく、理にかなってるぞ」
彼はなかなか知った風な言い方をする。
(ああ、王というものは忙しい存在だったわね)
国では、大聖女はあくまで国の象徴で、男系の王族と官僚が主となり政を執り行うので、多忙とは無縁なアリアンロッドである。
「じゃあユング王は今どんな重要なことをしているのかしら?」
「なんでお前がそんなこと考えるんだよ。変な女だな」
「案外自分は王宮でふんぞり返っていて、ちっとも動いていなかったりして」
アリアンロッドは両てのひらを上にして、やれやれといった仕草をした。
「それじゃうまいとこ取りできないだろ」
意外にも彼は、彼女の軽口に乗ってきた。
「うまいとこ取り?」
「たとえばさ、普段は下を使っていても、何かを成し遂げる瞬間や、築いた建設物の完成する瞬間は、自分の目に収めたいだろ? そこに一番乗りしたくないか?」
「したい!」
「したいよなぁ。いち早く乗り込むと、思わぬ拾い物をしたりするんだよ」
「拾い物?」
その辺りで彼は、四方山話も小娘相手に乗り過ぎたと気付き、喋りの調子を落とした。
「まぁ王は案外、地道な仕事を人知れず繰り返してるかもしれないぜ」
「ええ? 大胆なのか慎重なのかどっちよ」
アリアンロッドは案外この男と話しているのが楽しかった。飄々として掴みどころのないところも、年長ならではの寛容さも気に入ったのだ。
「そろそろ外に出るか」
うなずいて彼女は彼に付いていく。夕暮れ時になり、家路につく人々の群れに紛れ、注意深く見渡しながら滞在先に戻ることにした。人のいない場では建物の陰に隠れつつ進んでみたが、とりあえず追っ手の気配はない。
「てんで諦めそうにない奴らだったし、これはお前の目的地の前で待ち伏せしてやがるな」
「そういうことね。無事に帰らないと……」
昨夜帰らなかったせいで、館の主ダリスは心配しているだろう。
(約束したのに歌い手がいなくなって、落胆しているかもしれない……)
「なんだろう…?」
手に取ってみると、それは鉱石のようだ。
「ちょっと重みあるし、この触感は……」
色は鉄と変わらないが、それではない鉱物だ。アリアンロッドは書籍で学習した程度で鉱物に詳しくないが、「これ、なんか見覚えある」と感じた。
「あっ、方位針!」
まだ隣の彼が寝ているので、気を遣って小声を上げた。
「医師のところで、使わせてもらったあれの針と、同じ色・質感だわ」
これを少し高く掲げて見上げたら、なにやら持つ手が引き付けられる。その力に反発せず任せてみると、板は鍬の刃にくっついた。
「??」
離そうとすれば離れる。しかしどうも謎の力で引き寄せられる。
「でもこの鍬だけ? これは鉄?」
周りの他の農具は木でできていた。そんなところで彼が目を覚ました。
「おはよう。ねぇ、これ、あなたの袖から落ちたんだけど、何?」
彼は寝ぼけ眼で答える。
「ん~~……。ああ、それ昨日もらったんだ」
「もらった?」
「俺のところには珍しい物が集まってくるからな。欲しけりゃやるよ」
あくびをしながら言った。さほど大事なものでもないらしい。
アリアンロッドは、「ああ商人だからか」と、もらっておくことにした。
背伸びをしてようやく頭が冴えたらしい男は、立ち上がりアリアンロッドにさくっと告げる。
「じゃ、俺が先に出て囮になるから、お前はしばらく潜んでいろ」
「え? 一緒に行っちゃだめ?」
アリアンロッドは、「ヴァルだったら“絶対俺から離れるな”って言うのに」と考えてしまった。彼に気を許したのも大きい。
「一緒に行く利点がないだろう?」
「そうだけど……」
「囮になって、どこかへ逃げながら敵を捲く。お前はしばらくここで待ってから、日が高くなった頃に帰れ」
「……待ち合わせは?」
その問いにアリアンロッドの心細さが混じり、それをしっかり見通している彼はまたニヤける。
「お前、また俺と会いたいのか?」
「こ、こんなふうに別れたら、むずむずするでしょう?」
「なら夕方までに、あの特設舞台があった周辺の民家か小屋で落ち合おう。入り口に目印として布を巻くってことで。同時にやったら互いに待ちぼうけになるけどな」
「それでいいわ。ところで囮といっても、ひとりで出るんじゃ」
「ふたりでいるように偽装する」
そこで小屋にある農具や折れ木、布類を使って、彼が人を負ぶっているように見せかけることにした。少々小さいが、素早く動いていたら誤魔化せるだろう。
「じゃあ行く。また会えたらいいな」
「え、ええ」
彼は疾風のように行ってしまった。
やはりひとりでいると心細くなる。アリアンロッドはしばらくその倉庫で、早くアンヴァルのところへ帰れるようにと祈っていた。
それから体感1時間ほど待った後、アリアンロッドは外に出た。人々が畑で作業を進めている。
倉庫の物を勝手に拝借してしまった負い目もあり、そこで働く者に、自分はここらの新参者で親しくなりたいので、少しの間手伝わせてほしいと申し出た。彼らはアリアンロッドの良い身なりを見て不思議に思ったが、手伝いたいというものを断る理由もなし、そこでの作業を説明した。
しばらく手伝いに精を出していたら、農民から噂話が聞こえてきた。なにやらユング王の重臣がこの地に入ったというのだ。アリアンロッドはその人物について尋ねてみたが、それを一般の民がよく知るわけもない。
統率者を決める催しが明日あるから、その関係者かと彼女は考えた。あまり為政者についての話をしたいとも思わなかった。
(ここはもう私たちがいなくなった世界だもの……。この地の民が変わらず暮らせているならそれでいいわ)
作業の後、アリアンロッドは約束の場に向かった。
街に入ったら、農婦から渡された汗拭き布を頭から被り、例の特設会場周辺を、こそこそと回っていた。
その時、さっと前を横切る、長く綺麗な髪の紳士が、アリアンロッドの目に留まる。彼女はその後ろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。
通行人など普段は気に留めるものでもないが、なぜか気にかかった。その男性は、白髪の混じる髪から若者には見えなかったが、去りゆく足取りが颯爽としていて、目を引いたのである。
そこでふと、戸口に布切れの結んである家屋が目に飛び込んできた。あの男が待っていると期待して走った。
注意深く戸を開いてみたら、期待どおり、そこの居間のテーブルにて彼がくつろいでいる。コップで飲み干しているのは酒だろうか。
「失礼するわ」
「おお。うまく出てこれたようだな」
「おかげさまで……」
「こちらは、さっきこの辺で輩が待ち伏せていて、また追ってきたんだ。まだ近くにいるかもしれねえな」
アリアンロッドは不毛な揉め事に疲れを感じ、うつむいた。
「あと少し日が落ちたら出るか」
「ここに居座っていいの?」
「これは空き家だ。追い立てられることもない」
促され、彼女もそこに落ち着いたら、リンゴを1個まるごと渡される。
「ずっと倉庫に隠れていたのか?」
「少し農家の人たちの手伝いをしたわ。勝手に頂いた物の分を返せたとは思わないけど」
「そうか」
彼がそばにいると、つい甘えたくなる自分がいる。アリアンロッドは、何でもいいから話をしていたくなった。
「明日の、統率者選出のためかしら。ユング王の配下がこの街に入ったっていう噂を聞いたのだけど、どうして王本人がここまで来て、対面して決めないのかな」
「代理で済むなら、それでいいんじゃねえか」
「とても大事なことじゃない。一地域とはいえ、権限を持つ人を決めるのよ?」
「今は動乱の時だからな。上に立つ者はてんやわんやだ。なすべきことが多くあるなら、より重要なことを自身の手足で実行する。下にやらせて済むことは下にやらせておく、理にかなってるぞ」
彼はなかなか知った風な言い方をする。
(ああ、王というものは忙しい存在だったわね)
国では、大聖女はあくまで国の象徴で、男系の王族と官僚が主となり政を執り行うので、多忙とは無縁なアリアンロッドである。
「じゃあユング王は今どんな重要なことをしているのかしら?」
「なんでお前がそんなこと考えるんだよ。変な女だな」
「案外自分は王宮でふんぞり返っていて、ちっとも動いていなかったりして」
アリアンロッドは両てのひらを上にして、やれやれといった仕草をした。
「それじゃうまいとこ取りできないだろ」
意外にも彼は、彼女の軽口に乗ってきた。
「うまいとこ取り?」
「たとえばさ、普段は下を使っていても、何かを成し遂げる瞬間や、築いた建設物の完成する瞬間は、自分の目に収めたいだろ? そこに一番乗りしたくないか?」
「したい!」
「したいよなぁ。いち早く乗り込むと、思わぬ拾い物をしたりするんだよ」
「拾い物?」
その辺りで彼は、四方山話も小娘相手に乗り過ぎたと気付き、喋りの調子を落とした。
「まぁ王は案外、地道な仕事を人知れず繰り返してるかもしれないぜ」
「ええ? 大胆なのか慎重なのかどっちよ」
アリアンロッドは案外この男と話しているのが楽しかった。飄々として掴みどころのないところも、年長ならではの寛容さも気に入ったのだ。
「そろそろ外に出るか」
うなずいて彼女は彼に付いていく。夕暮れ時になり、家路につく人々の群れに紛れ、注意深く見渡しながら滞在先に戻ることにした。人のいない場では建物の陰に隠れつつ進んでみたが、とりあえず追っ手の気配はない。
「てんで諦めそうにない奴らだったし、これはお前の目的地の前で待ち伏せしてやがるな」
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