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【 第十章 】 あなたが導いてくれたから
⑥ アリア先生の進路相談
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「この牢から脱出するには……」
ここまでの山賊の会話をずっと聞いていたルーンが、作戦を先導する。
「ここの見張りはひとり。下っ端が見張りを押し付けられたようです」
「ひとりならふたりで襲い掛かって……」
「でも出られなくては何も始まりませんし、一応相手は大人の男なので」
そして会話を聞いた限り、どうも賢い男ではないようだ。
「じゃあ、たらしこむとか?」
「いいですね、たらしこむ。アリーさんの魅力でですね!」
「……。残念ながらそういう意味のたらしこむは自信ないわ。うまく乗せられる口車を考えましょ」
「そうですねぇ……」
山賊の仲間が合流したら逃げ出すのは更に難しくなる。時間に余裕はなさそうだ。
「用意が何もないんですよね、僕たち」
「武器がないからね……」
「鍵を作ってたから、ナイフくらいはありますよ。戦う武器にはなりませんが」
「あ、そのナイフで私たちの手首を縛ってる縄、切れるんじゃない!?」
「腰袋に入ってるから取り出せません……。まず手を使えるようにしないと」
アリアンロッドは、ムゥ…と、いったん口を閉ざした。
「じゃあ、やっぱり見張りの男を丸めこむしか」
「あ。僕、今、ナイフだけじゃなくて、錠前と鍵を持ってるんでした!」
「うん? ここで使えるの?」
ルーンはあごを膝に乗せて考えている。
「山の民は錠なんて無縁のはずだから……。口車に乗せてみましょう。アリーさん、渡した鍵、持ってます?」
「え? ええ、私も腰袋に入れてる」
アリアンロッドも口車はわりと得意のはずだが、彼は彼女より早くひらめいた。
頬に勝気な薄笑みを浮かべたルーンは、「おーい!」と声を上げた。すると、洞穴の入り口付近に座り込んでいた見張りの男が、なんだなんだと顔を出してくる。アリアンロッドは、確かにこの男、強そうでも鋭そうでもないな、と見た。
「見張りなんて退屈じゃないですか?」
「ああ、暇でどうしようもねえな」
「きっと他のみなさん、あなたに見張り押し付けて、向こうで酒を飲んでますよ」
男はそんなこと分かってるという顔だ。
「あの。僕、この牢の扉を固く閉ざして開けられないようにする、ふしぎな道具を持ってるんです」
「ああ? なに言ってるんだおめぇ」
「それを使えばどうやっても僕たちは出られないから、あなたがここを離れても全然問題ないです」
「なぁに言ってんだか」
「使いたくないですか? その道具」
ちらりと彼を見た男は、少し興味を持ったよう。
「どこにそんなの持ってんだおめぇ」
「腰の下げ袋の中です。あなたに差し上げるので、ちょっとこの後ろ手、解いてくれませんか?」
「そんなこと言って逃げるつもりだろ、だめだだめだ」
「手が自由になったぐらいで彼女とふたり逃げられるんだとしたら、あなたの見張りなんて役立たずじゃないですか」
ルーンの予想通り、男は馬鹿にされたと立腹する。アリアンロッドはそれを隣でハラハラして見ていた。
「まぁまぁ。このふしぎな道具、頭領に差し出してあなたの手柄にしてもいいですよ。あなたの仲間内での立場が、ぐんと跳ね上がること間違いなしです」
「そこまで言うんならまぁ、見てやらんこともない」
アリアンロッドは、この人ほんとに単純だ、と口に出しそうになったが、確かに自分もふしぎな道具なんて見たくなる、とも思う。そんなわけでルーンの後ろ手はシュルシュルと解かれた。
「おい早く出せ! 道具!」
「ちょっと待ってくださいね」
言いながらルーンは袋に手を突っ込む。
「はい、どうぞ」
格子の隙間からそれを渡した。しかし当然使い方の分からない男のために、隙間から腕を伸ばし、代わりにそれを嵌めてやった。
「おお、こいつはすげえ。扉がびくともしなくなったぞ!」
アリアンロッドもそれを見て「子どもの工作なのにすごい……」と、また声が出そうになった。
「でもよう、これ、外す時はどうやるんだ?」
ルーンはまた袋から取り出す。
「これを使います。これ以外では外せません」
この鍵の使い方は無知の者には複雑だ。相手に渡してもどうせ説明が理解されることはない。牢内からだと難しいが、これもやって見せた。
「おお! 外れた!」
「どうです? これ、欲しいですか?」
…なんて煽られたら欲しくなるに決まっている。再度かんぬきを本体に差して、ルーンは続けた。
「とりあえず僕たちを閉じ込めておいて、酒でも飲んできたらいかがですか。鍵を持っていって自慢するのもいいですが、取り上げられたらもったいないので、最初は頭領に見せるのがいいと思います」
「ああ、そうするぜ」
男はルーンの手から鍵を取り上げ、行ってしまった。
「……単純な男で助かったわね」
「下っ端の心的傾向なんてこんなものです」
「でも、どうやってここを出るの?」
「アリーさん、鍵、持ってるでしょう?」
「ああ、そうだったわ」
ルーンはナイフでアリアンロッドの手縄を解き、彼女のスペアキーで扉を開けた。
「急ぎましょう」
「うん、でも……」
洞穴を出たらそこは夜の暗闇だ。小屋みたいな建物がいくつかあるが、近くに灯りはない。
「小屋から灯りも漏れていないし、山賊は今どこにいるんでしょうね?」
「見つからないように、慎重に行かないとね。でも、山道で迷子になっちゃいそう」
「それは大丈夫です。僕についてきてください」
アリアンロッドは驚いた。暗くて辺りはよく見えないし、すぐ木々の生い茂る中に入ってろくに道もない山間だ。そこをルーンは迷いなく前進する。アリアンロッドにできるのは、ただ彼に付いていくことだけだった。
◇
「あっ。……痛ったぁ」
アリアンロッドが木の根に引っ掛かって転んだ。
「大丈夫ですか? 気を付けてください」
「灯りもなしで山の中を歩くなんて、それこそ山賊でもなきゃ……」
注意しながら徐々にだが、山を下っている。しかし彼女にはどこをどのくらい歩いてきたのか知る術もなく、確信を持って進むルーンに任せっきりだった。
「もうすぐ1時間がたちますね。でも連れてこられる時には、2時間かかっていたので、まだ半分です」
「えっ、あなた、“時”が分かるの?」
「普通に分かりますが……。頭の中で測りませんか?」
アリアンロッドは返答に詰まった。道具もなしに感覚だけで時間を測れと言われても。
「時が分かるのもすごいけど、道も分かるのね? なんで?」
「自分の足で歩いた道なら、たとえ真っ暗闇の中でも、方角とその距離はすべて把握できますし、忘れようとしなければ忘れません」
アリアンロッドはそのようなことをあっさり話す彼に唖然とした。
「でも道が全然まっすぐじゃないじゃない。あっち向かったり、こっちに曲がったり」
「進みながら頭に地図が出来ていくので。今は頭の中のそれを見ながら戻るだけです」
そこは暗いが、ルーンの表情に浮かび上がる余裕をアリアンロッドは見取った。
「……あなたは、すごく度胸のある子だと思う」
「ええ??」
その言葉には彼も反論する。彼は勇んで武器を構えても、対戦相手と向き合うと目をつむってしまう自覚がある。自分でも度胸があるだなんて思えない。
「自信のあることには、すごく大胆になれるってことじゃないかしら。その自信の有無は、あなたも心の奥底で分かってるのよ、自分の得意分野だって」
「心の奥底で……?」
「兵士よりも向いてる仕事がありそう。もちろん、あなたの夢を否定するつもりはないわ。でも思うの、度胸って戦う武官に必要なものだけど、それだけじゃない。文官にだってきっと役立つ。あなたの才能をちゃんと生かせるところを、目指すのもいいんじゃない?」
ルーンは一時目を伏して思案して、それから少々縋るような瞳をアリアンロッドに寄せた。
「そうすれば、明るい未来が待ってますか?」
ここまでの山賊の会話をずっと聞いていたルーンが、作戦を先導する。
「ここの見張りはひとり。下っ端が見張りを押し付けられたようです」
「ひとりならふたりで襲い掛かって……」
「でも出られなくては何も始まりませんし、一応相手は大人の男なので」
そして会話を聞いた限り、どうも賢い男ではないようだ。
「じゃあ、たらしこむとか?」
「いいですね、たらしこむ。アリーさんの魅力でですね!」
「……。残念ながらそういう意味のたらしこむは自信ないわ。うまく乗せられる口車を考えましょ」
「そうですねぇ……」
山賊の仲間が合流したら逃げ出すのは更に難しくなる。時間に余裕はなさそうだ。
「用意が何もないんですよね、僕たち」
「武器がないからね……」
「鍵を作ってたから、ナイフくらいはありますよ。戦う武器にはなりませんが」
「あ、そのナイフで私たちの手首を縛ってる縄、切れるんじゃない!?」
「腰袋に入ってるから取り出せません……。まず手を使えるようにしないと」
アリアンロッドは、ムゥ…と、いったん口を閉ざした。
「じゃあ、やっぱり見張りの男を丸めこむしか」
「あ。僕、今、ナイフだけじゃなくて、錠前と鍵を持ってるんでした!」
「うん? ここで使えるの?」
ルーンはあごを膝に乗せて考えている。
「山の民は錠なんて無縁のはずだから……。口車に乗せてみましょう。アリーさん、渡した鍵、持ってます?」
「え? ええ、私も腰袋に入れてる」
アリアンロッドも口車はわりと得意のはずだが、彼は彼女より早くひらめいた。
頬に勝気な薄笑みを浮かべたルーンは、「おーい!」と声を上げた。すると、洞穴の入り口付近に座り込んでいた見張りの男が、なんだなんだと顔を出してくる。アリアンロッドは、確かにこの男、強そうでも鋭そうでもないな、と見た。
「見張りなんて退屈じゃないですか?」
「ああ、暇でどうしようもねえな」
「きっと他のみなさん、あなたに見張り押し付けて、向こうで酒を飲んでますよ」
男はそんなこと分かってるという顔だ。
「あの。僕、この牢の扉を固く閉ざして開けられないようにする、ふしぎな道具を持ってるんです」
「ああ? なに言ってるんだおめぇ」
「それを使えばどうやっても僕たちは出られないから、あなたがここを離れても全然問題ないです」
「なぁに言ってんだか」
「使いたくないですか? その道具」
ちらりと彼を見た男は、少し興味を持ったよう。
「どこにそんなの持ってんだおめぇ」
「腰の下げ袋の中です。あなたに差し上げるので、ちょっとこの後ろ手、解いてくれませんか?」
「そんなこと言って逃げるつもりだろ、だめだだめだ」
「手が自由になったぐらいで彼女とふたり逃げられるんだとしたら、あなたの見張りなんて役立たずじゃないですか」
ルーンの予想通り、男は馬鹿にされたと立腹する。アリアンロッドはそれを隣でハラハラして見ていた。
「まぁまぁ。このふしぎな道具、頭領に差し出してあなたの手柄にしてもいいですよ。あなたの仲間内での立場が、ぐんと跳ね上がること間違いなしです」
「そこまで言うんならまぁ、見てやらんこともない」
アリアンロッドは、この人ほんとに単純だ、と口に出しそうになったが、確かに自分もふしぎな道具なんて見たくなる、とも思う。そんなわけでルーンの後ろ手はシュルシュルと解かれた。
「おい早く出せ! 道具!」
「ちょっと待ってくださいね」
言いながらルーンは袋に手を突っ込む。
「はい、どうぞ」
格子の隙間からそれを渡した。しかし当然使い方の分からない男のために、隙間から腕を伸ばし、代わりにそれを嵌めてやった。
「おお、こいつはすげえ。扉がびくともしなくなったぞ!」
アリアンロッドもそれを見て「子どもの工作なのにすごい……」と、また声が出そうになった。
「でもよう、これ、外す時はどうやるんだ?」
ルーンはまた袋から取り出す。
「これを使います。これ以外では外せません」
この鍵の使い方は無知の者には複雑だ。相手に渡してもどうせ説明が理解されることはない。牢内からだと難しいが、これもやって見せた。
「おお! 外れた!」
「どうです? これ、欲しいですか?」
…なんて煽られたら欲しくなるに決まっている。再度かんぬきを本体に差して、ルーンは続けた。
「とりあえず僕たちを閉じ込めておいて、酒でも飲んできたらいかがですか。鍵を持っていって自慢するのもいいですが、取り上げられたらもったいないので、最初は頭領に見せるのがいいと思います」
「ああ、そうするぜ」
男はルーンの手から鍵を取り上げ、行ってしまった。
「……単純な男で助かったわね」
「下っ端の心的傾向なんてこんなものです」
「でも、どうやってここを出るの?」
「アリーさん、鍵、持ってるでしょう?」
「ああ、そうだったわ」
ルーンはナイフでアリアンロッドの手縄を解き、彼女のスペアキーで扉を開けた。
「急ぎましょう」
「うん、でも……」
洞穴を出たらそこは夜の暗闇だ。小屋みたいな建物がいくつかあるが、近くに灯りはない。
「小屋から灯りも漏れていないし、山賊は今どこにいるんでしょうね?」
「見つからないように、慎重に行かないとね。でも、山道で迷子になっちゃいそう」
「それは大丈夫です。僕についてきてください」
アリアンロッドは驚いた。暗くて辺りはよく見えないし、すぐ木々の生い茂る中に入ってろくに道もない山間だ。そこをルーンは迷いなく前進する。アリアンロッドにできるのは、ただ彼に付いていくことだけだった。
◇
「あっ。……痛ったぁ」
アリアンロッドが木の根に引っ掛かって転んだ。
「大丈夫ですか? 気を付けてください」
「灯りもなしで山の中を歩くなんて、それこそ山賊でもなきゃ……」
注意しながら徐々にだが、山を下っている。しかし彼女にはどこをどのくらい歩いてきたのか知る術もなく、確信を持って進むルーンに任せっきりだった。
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「普通に分かりますが……。頭の中で測りませんか?」
アリアンロッドは返答に詰まった。道具もなしに感覚だけで時間を測れと言われても。
「時が分かるのもすごいけど、道も分かるのね? なんで?」
「自分の足で歩いた道なら、たとえ真っ暗闇の中でも、方角とその距離はすべて把握できますし、忘れようとしなければ忘れません」
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「でも道が全然まっすぐじゃないじゃない。あっち向かったり、こっちに曲がったり」
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そこは暗いが、ルーンの表情に浮かび上がる余裕をアリアンロッドは見取った。
「……あなたは、すごく度胸のある子だと思う」
「ええ??」
その言葉には彼も反論する。彼は勇んで武器を構えても、対戦相手と向き合うと目をつむってしまう自覚がある。自分でも度胸があるだなんて思えない。
「自信のあることには、すごく大胆になれるってことじゃないかしら。その自信の有無は、あなたも心の奥底で分かってるのよ、自分の得意分野だって」
「心の奥底で……?」
「兵士よりも向いてる仕事がありそう。もちろん、あなたの夢を否定するつもりはないわ。でも思うの、度胸って戦う武官に必要なものだけど、それだけじゃない。文官にだってきっと役立つ。あなたの才能をちゃんと生かせるところを、目指すのもいいんじゃない?」
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