嘘つき少女は嘘をつく

庭伊 凛

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嘘つき少女は嘘をつく

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ミカには幼馴染がいる。

かっこよくて、頭がよくて、性格もいい。
そんな、完璧な幼馴染がいる。

「ねえ、ミカ 」
「んー、なあに?」
「あんたはいいよねぇー 、イケメン幼馴染とかどこのラノベだし?」
「あははは、でもそんないいもんじゃないよ 」

 よく言われるのは、そんなこと。
 よく言い訳するのは、こんなこと。

お昼に、いつものように友達と弁当を食べればいつものようにそう言われた。窓の外を見ればアイツがサッカーを楽しんでるのが見える。楽しそうだ。

「なんでー好きになったりとかしないの? 」
「んーなんていうか対象外? 」
「ええ?!勿体無い!あたしなら絶対食べてる 」
「食べてるて....言い方 あははは 」

 いつもの恋話に花を咲かせる。

でも少しだけ心にチクリってくるのは内緒。窓の外でアイツが笑ってる。いいなあって思う。

 ぺらぺらとどうでもいい友人の話を聞き流して、ミカはぼうっと空を見上げて、物思いにふける。

本当は、好きだ。

ずっと、ずっと。好きだ。

今でも、きっとこの先も。

幼馴染は皆が言うほど王子様ではないけれど、ミカはそんな彼が好きだ。

窓の外を見れば、アイツは綺麗な人と話をしていた。少し頬を染めて、楽しそうに。嬉しそうに。

でも、幼馴染には好きな人がいる。
同級生の飛びっきり綺麗な人。

「ああ、でもあんたの幼馴染、うちの学校のお姫様にぞっこんだもんねぇ。」

 あんたとは無いか。

 そんなつぶやきはざくりと心に突き刺さる。

「そそ、だから、あいつとはただの腐れ縁よ。腐った縁。 残念ながら期待にはお答えできませーん 」

でも、だから、ミカは今日も嘘をつく。
どうしょうもない嘘をつく。

「だいたいアイツ嫌いだし?タイプじゃないし?」

 どうしょうもない想いに蓋をする。
そして、願う。いつか、いつかこのことを笑って話せるようにって。


ーーーーーーーーーーーーー
 今日は4月1日。もうすぐ入学式だ。

「ああ、もうっ!誰よ!!じゃんけんで決めようとか言った奴!!むかつく 」

春休みに入る前、入学式を手伝う係を決める時にじゃんけんに負けた。そのせいで、この日ミカは入学式の準備を手伝う羽目になった。ミカは帰宅部だ。だからいつもならこんな夕暮れ時に、しかも春休みに、学校なんかにいない。

 少し乱暴に靴場を開けて支度をする。

 「もうっ!今日は遊びに出かける予定だったのに!!」

 少し、恨みごとブツブツつぶやく。そうじゃないとやってらんない。

今度あいつじゃんけんにした奴にあったら足踏んでやる。なんて、阿呆らしい考えごとをしていたら幼馴染に声をかけられた。

「ミカ? 」

振り返らなくても声だけで分かる。どきっとする。

「ん? ああユースケ どうしたの?珍しく早いね? 」
「ああ、珍しく今日は早く終わったんだ 」

幼馴染はサッカー部だ。それなりに強豪校なここのサッカー部はそれなりに厳しいらしく、春休みもいつも練習している。

 それが、早く終って、しかもミカも居残ってたなんて、なんて偶然。そう、ため息をつきたくなった。

「ああそう 」
「ま、そういうことだ。」

 会話はそれだけ。でも、一緒に帰る。だって家が隣なのだからどうしょうもない。ただ淡々と校門を通って、商店街を抜けて、河岸をてくてく歩く。

 背が高く、足が長いから歩くの速いくせにミカに合わせて歩いてくれる幼馴染が恨めしくて、嬉しくて。

 哀しい。

「なあ 」
「ん? どうしたの?」
「久しぶりだな 」

お前とかえんの。

 「そうね 」

沈黙がちょっと苦手で、でも会話も苦手で、ちょっと恐る恐る会話をする彼が好きだ。

「すき..... 」

 溢れそうになる。いや、溢れてしまう。

「え?」

好きって感情が。あいって感情が。

「ずっと、ずっと。好きだよ。ユースケ。」

どうか、この時だけは届いて欲しいなんて思ってしまった。

「え?」

立ち止まる。驚いて惚けてしまった幼馴染の顔がイケメンの癖に面白くて、ミカは笑った。

「うーそよ。ばーか 」

 笑う泣く

「なんだよそれ?一瞬本気だと思った 」
「馬鹿ね。私があんたを好きだなんて 」

そんなことがあり得るんだから。

「まあ、そうだよな 」

 そのまま何事もなかったようにミカと幼馴染は歩く。
ふと、幼馴染が立ち止まる。

 「どうしたの?」
「ああ、そういえば今日は。」

 エイプリルフールだったな。

そんな、彼の言葉にミカはくすりと笑う。

 「そういうこと。1日1嘘。それが 私のモットーよ。」
「なんだよそれ。」


嘘の嘘はなんだろうか。
ミカにとってはそれは本当なんだと思う。

だから、だから、今日だけは本当のことを言うんだ。

エイプリルフール。

だから、嘘つき少女は嘘をつく正直者になる



 
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