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第4章:魔王クラタ誕生「魔王ですか?」「いいえ、会長みたいなもんです……」

第8話:獣王リカルド

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「ふむっ、話をする前に手合わせを願おうか?」
「なんで?」

――――――

 宮殿の入り口で狼さんは鷹の獣人族に案内を引き継いで、門へと帰って行った。
 で、鷹さんの案内で謁見の間とやらに連れていかれたけど、やったら広い空間だった。
 ちょっと嫌な予感。
 
 でもって、奥の一段上がったところの椅子に座ってた。
 立派なマントした、服を着たライオン。
 どう見ても、戦闘衣装。

「久しいなイコール殿。息災そうで何より……いや、要らぬ心配であったか」
「ふふ、お久しぶりですねリカルド。貴方は少し歳を取ったのでは?」
「ぬかしおる。280年ぶりともなれば、普通は歳をとるものだ。貴公が普通じゃないのだ」
 
 普通は280年て軽く3回以上死ねると思うんだど?
 歳をとるどころか、骨になると思うけど。
 長生きなんだね、皆。

「リカルド殿はダンジョンマスターですからね。ダンジョンマスターというのは、総じて長寿ですから。彼ももうじき500歳くらいだったと思いますよ?」
「そうなんだ、じゃあ俺も長生きなのか」
「まあ、半分人ですから普通は300年生きれば良い方かと……ただ、貴方の場合は不死に近いと思いますよ? 現時点で寿命まで1000年は優に持つかと」
「やだよ……そんなに生きたら飽きそう」
「そうでも無いですよ?」

 うん、実感籠ってるね。
 貴方は色々な事を体験してきてますしね。
 まあ、でも最強を目指すのも悪くないかな?
 それから、本気で死ぬ方法を考えても遅く無いだろうし。

『マスターは死んでも死ねませんよ?』
「それ、なんて哲学?」
『事実です』

 本当にこのダンジョンマスターははずれだと思うの。
 死ねない人生って目的が見えてこないんだけど?
 なるほど……何か悟れそうな気がしてくる。

 衣食住足りて礼節をしるというが、それら全ての価値が自分の中でかなり下に落ちていきそうだもんね。
 生きているからこそ、喜びがあるのかもしれない。
 死なないとなれば、それは生きていると言えるのかな?
 なんだろう……こう人生の壮大なテーマが……

「それで、そちらの御仁は?」
「はいっ、この度私と同盟を結びました、とあるダンジョンのマスターです。実力は折り紙付きですよ?」
「ああ、初めましてクラタと申します」
「うむ、わしはリカルド……まあ、知っていると思うが」

 いいえ、さっき知ったばかりですが?
 どういった人かまでは良く知りません。

「何の用で参ったのかのう?」
「あー、ダンジョーンが死んだから、ダンジョン同士手を取り合って、勇者や人間達から共同戦線を張ってダンジョンを守っていくための同盟を結んで回ってる」

 その言葉を聞いて、目を光らせながら立ち上がるリカルド。
 何故か壁に寄る従者達。
 気が付けば、イコールとヘルも壁に寄っている。
 そして、冒頭のシーン。

「この森では力こそが発言力の強さじゃからのう……」

 脳筋か!
 うん、どう見ても脳筋だよね?
 ちょっと待って、一応念の為にセーブしとこう。
 
「どこに行っておった?」
「ちょっと、自分のダンジョンに用を足しに」

 一瞬で戻ってセーブして、一瞬で戻ってきたけど、まあ5秒くらい経ってるから怪しいわな。
 とはいえ、これで準備はバッチリだから。

「では、どこからでも掛かって来い」
「では遠慮なく」

 掛かって来いと言われたので、全力で突っ込んで殴りかかる。
 あっさり腕を掴まれて、投げ飛ばされた。

「なるほど、確かに早いし力強い……じゃが、まだまだ粗削りじゃな」

 ムッ!
 これでも、一応クラタ流格闘術の開祖なんですけど?
 よしっ、本気で泣かせちゃる!

 すぐに立ち上がって、再度距離を詰める。
 そして、目の前で柏手を打って、足を掬って投げ飛ばす。
 凄いね猫だまし。
 効果抜群だった。
 目をぱちくりとさせて固まってたから、簡単に投げ飛ばせた。

「これで、おあいこだな?」
「なんじゃ、今の攻撃は! 反応が出来なかったぞ!」

 投げられたという事より、猫だましに驚いているようだ。
 取りあえず跳び蹴りを放つが、我に返ったリカルドにその足を掴まれると一気に顔面から地面に叩きつけられる。
 両手で地面を叩いてそれを防ぎ、反動で掴まれていない左足でリカルドの顎先を蹴りに入るがこれも失敗。
 紙一重で避けられた。
 流石ライオン系の獣人。
 動体視力もかなり良いらしい。
 振り上げた足を、下ろして脳天に蹴りを叩き付けようと試みるが左手で払われてバランスを崩しかける。
 なるほど……このおっさん滅茶苦茶つえー!

「グホッ!」

 浸透勁なるものを喰らってしまった。
 俺が牛男に使ったなんちゃってじゃなくて、気の力的な何か。
 勁力的なあれ。
 功夫?

 しかし、確かに凄いなこれは。
 表面にダメージを与えることなく、内臓にダイレクトに衝撃が来た。
 ははっ……これは、欲しい!

 取りあえず死ぬまで浸透勁を喰らってみようと思う。
 暫く喰らい続けてたら、リカルドが大げさに溜息を吐いて構えを解く。
 どうした?

「もう良いじゃろう? お主が頑丈なのは分かった。そして、わしの攻撃を避ける気が無い事も」

 良くないぞ?
 きっちり殺してくれないと、耐性が上がらないではないか。

「折角楽しくなってきたのに」
「わしは、不気味になってきたんじゃけど?」
「良いから良いから! どんどん来いって」
「その効いてるのか効いてないのか分からない笑顔が、不気味なんじゃよ!」

 そう言いながらも、思いっきり本気の一撃を放つリカルド。
 良いぞ!
 どんどん来いよ!

「あっ!」
「ふふっ、よくやった」

 おお! 
 なんか、ボスキャラっぽい科白セリフが自然と出てきた。
 口から出た血をを腕で拭ったあとで、後ろに大の字に倒れこんでの一言。
 やられ役ここに、極まれりって感じか。

 当の獣王は、めっちゃ焦ってる感じだけど。

「いや、すまん……イコール殿どうしよう? 回復頼んでも良い?」
「はい、良いですよ! じゃあ「いや、不要だ」」
「めっちゃ口から血出てるし! 耳と目からも! 死ぬぞ? 無理せず治療魔法掛けて貰え」

 リカルドに滅茶苦茶心配されてる。
 でも安心して良いよ?
 死んだら、全部治るから。

『相変わらず、考えがおかしいですね』
「合理的と言ってくれ」

 そして、意識が……

「完全復活! いざ、再戦だな!」
『さっきまで死にかけの人が、どうしてここまで元気なのか理解に苦しみます』

 ふふ、そういう仕様にしたダンジョーンに言ってくれ。
 壊れてないぞ?
 死に戻れることを加味して、冷静に判断して行動してるからね。

『冷静に死ぬことを考える人は、末期だと思います』

 相変わらず、失礼な石ころ秘書だ。
 まあ、気分が良いから許してやろう。

 勁力に対する耐性が微増したのが分かる。
 早速、再戦だ 。

 殴りに行って、掴まれる瞬間に手を引き戻し素早くジャブで鼻っ柱を殴る。

「ふうっ、先手を取られたのはいつぶりじゃろうのう。攻撃は軽いが中々にやりおる」

 うーん、軽くは無いと思うけど。
 普通にデコピンでコボルトの頭を吹き飛ばす、俺のジャブだよ?
 これって、攻撃が軽いんじゃなくてあんたが硬いんだよ!
 そんな事を思いながら、1回目の反省を生かした攻撃を繰り返すと結構当たる。
 でも咄嗟の判断で、反撃も普通に喰らう。

 割と色々と隠してた。
 絶対貫通を自前の爪でやるとか。
 牙にも絶対貫通が付いてたし。
 あと、風魔法まで使ってきた。
 残念、吸収出来るから。
 取りあえず、回復すると死ねないので全力で回避する。

「ふむっ、お主は風属性が弱点か?」
「違うぞ? 属性系の攻撃は、のきなみ吸収できるからな? 風魔法を喰らうと回復するから避けただけだけど?」
「下手なはったりじゃのう」

 思いっきり勘違いされた。
 もし勘違いさせる為に言ったのなら、俺はかなりの役者だと思う。
 
――――――
 89回目

「なっ! お主風魔法が弱点では無かったのか?」
「悪いな……最初に言ったが、弱点じゃなくて大好物だ」

 お互いが死力を尽くして、ヘトヘトの状態だった。
 そこで、わざと足を滑らせたふりをすると、リカルドがチャンスとばかりに首に【風刃ウィンドカッター】を放ってきたので、思いっきり美味しく頂く。
 お陰で、殆どの怪我が治った。

「お主、策士じゃな! ハッハッハ、わしはもう見ての通り疲れ切っておるが、お主は完全に回復したのか……負けじゃ、負けじゃ! 話を聞いてやろう」

 うん、まだ早いから。
 石ころ、猛毒寄越せ!

『はあ……本当に死ぬのがお好きですね』
「違うぞ? 耐性やらステータスを上げるのが好きなだけだ」

 取りあえず、あと200回くらい死ねば勁力吸収までいけるかな?
 自分でも、使えるようになりたいけど……まあ、そこらへんは話が終わってから習えるか聞いてみよう。

「石ころ、猛毒」
『マネージャー! 水! みたいなノリで要求しないでください』

 そうか……確かにお前はマネージャーみたいなもんだが。
 決して女子マネとは思ってないからな?
 だから、くだらないこと言って無いでさっさと毒寄越せ。

 
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