チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

文字の大きさ
69 / 99
第4章:魔王クラタ誕生「魔王ですか?」「いいえ、会長みたいなもんです……」

第8話:獣王リカルド

しおりを挟む
「ふむっ、話をする前に手合わせを願おうか?」
「なんで?」

――――――

 宮殿の入り口で狼さんは鷹の獣人族に案内を引き継いで、門へと帰って行った。
 で、鷹さんの案内で謁見の間とやらに連れていかれたけど、やったら広い空間だった。
 ちょっと嫌な予感。
 
 でもって、奥の一段上がったところの椅子に座ってた。
 立派なマントした、服を着たライオン。
 どう見ても、戦闘衣装。

「久しいなイコール殿。息災そうで何より……いや、要らぬ心配であったか」
「ふふ、お久しぶりですねリカルド。貴方は少し歳を取ったのでは?」
「ぬかしおる。280年ぶりともなれば、普通は歳をとるものだ。貴公が普通じゃないのだ」
 
 普通は280年て軽く3回以上死ねると思うんだど?
 歳をとるどころか、骨になると思うけど。
 長生きなんだね、皆。

「リカルド殿はダンジョンマスターですからね。ダンジョンマスターというのは、総じて長寿ですから。彼ももうじき500歳くらいだったと思いますよ?」
「そうなんだ、じゃあ俺も長生きなのか」
「まあ、半分人ですから普通は300年生きれば良い方かと……ただ、貴方の場合は不死に近いと思いますよ? 現時点で寿命まで1000年は優に持つかと」
「やだよ……そんなに生きたら飽きそう」
「そうでも無いですよ?」

 うん、実感籠ってるね。
 貴方は色々な事を体験してきてますしね。
 まあ、でも最強を目指すのも悪くないかな?
 それから、本気で死ぬ方法を考えても遅く無いだろうし。

『マスターは死んでも死ねませんよ?』
「それ、なんて哲学?」
『事実です』

 本当にこのダンジョンマスターははずれだと思うの。
 死ねない人生って目的が見えてこないんだけど?
 なるほど……何か悟れそうな気がしてくる。

 衣食住足りて礼節をしるというが、それら全ての価値が自分の中でかなり下に落ちていきそうだもんね。
 生きているからこそ、喜びがあるのかもしれない。
 死なないとなれば、それは生きていると言えるのかな?
 なんだろう……こう人生の壮大なテーマが……

「それで、そちらの御仁は?」
「はいっ、この度私と同盟を結びました、とあるダンジョンのマスターです。実力は折り紙付きですよ?」
「ああ、初めましてクラタと申します」
「うむ、わしはリカルド……まあ、知っていると思うが」

 いいえ、さっき知ったばかりですが?
 どういった人かまでは良く知りません。

「何の用で参ったのかのう?」
「あー、ダンジョーンが死んだから、ダンジョン同士手を取り合って、勇者や人間達から共同戦線を張ってダンジョンを守っていくための同盟を結んで回ってる」

 その言葉を聞いて、目を光らせながら立ち上がるリカルド。
 何故か壁に寄る従者達。
 気が付けば、イコールとヘルも壁に寄っている。
 そして、冒頭のシーン。

「この森では力こそが発言力の強さじゃからのう……」

 脳筋か!
 うん、どう見ても脳筋だよね?
 ちょっと待って、一応念の為にセーブしとこう。
 
「どこに行っておった?」
「ちょっと、自分のダンジョンに用を足しに」

 一瞬で戻ってセーブして、一瞬で戻ってきたけど、まあ5秒くらい経ってるから怪しいわな。
 とはいえ、これで準備はバッチリだから。

「では、どこからでも掛かって来い」
「では遠慮なく」

 掛かって来いと言われたので、全力で突っ込んで殴りかかる。
 あっさり腕を掴まれて、投げ飛ばされた。

「なるほど、確かに早いし力強い……じゃが、まだまだ粗削りじゃな」

 ムッ!
 これでも、一応クラタ流格闘術の開祖なんですけど?
 よしっ、本気で泣かせちゃる!

 すぐに立ち上がって、再度距離を詰める。
 そして、目の前で柏手を打って、足を掬って投げ飛ばす。
 凄いね猫だまし。
 効果抜群だった。
 目をぱちくりとさせて固まってたから、簡単に投げ飛ばせた。

「これで、おあいこだな?」
「なんじゃ、今の攻撃は! 反応が出来なかったぞ!」

 投げられたという事より、猫だましに驚いているようだ。
 取りあえず跳び蹴りを放つが、我に返ったリカルドにその足を掴まれると一気に顔面から地面に叩きつけられる。
 両手で地面を叩いてそれを防ぎ、反動で掴まれていない左足でリカルドの顎先を蹴りに入るがこれも失敗。
 紙一重で避けられた。
 流石ライオン系の獣人。
 動体視力もかなり良いらしい。
 振り上げた足を、下ろして脳天に蹴りを叩き付けようと試みるが左手で払われてバランスを崩しかける。
 なるほど……このおっさん滅茶苦茶つえー!

「グホッ!」

 浸透勁なるものを喰らってしまった。
 俺が牛男に使ったなんちゃってじゃなくて、気の力的な何か。
 勁力的なあれ。
 功夫?

 しかし、確かに凄いなこれは。
 表面にダメージを与えることなく、内臓にダイレクトに衝撃が来た。
 ははっ……これは、欲しい!

 取りあえず死ぬまで浸透勁を喰らってみようと思う。
 暫く喰らい続けてたら、リカルドが大げさに溜息を吐いて構えを解く。
 どうした?

「もう良いじゃろう? お主が頑丈なのは分かった。そして、わしの攻撃を避ける気が無い事も」

 良くないぞ?
 きっちり殺してくれないと、耐性が上がらないではないか。

「折角楽しくなってきたのに」
「わしは、不気味になってきたんじゃけど?」
「良いから良いから! どんどん来いって」
「その効いてるのか効いてないのか分からない笑顔が、不気味なんじゃよ!」

 そう言いながらも、思いっきり本気の一撃を放つリカルド。
 良いぞ!
 どんどん来いよ!

「あっ!」
「ふふっ、よくやった」

 おお! 
 なんか、ボスキャラっぽい科白セリフが自然と出てきた。
 口から出た血をを腕で拭ったあとで、後ろに大の字に倒れこんでの一言。
 やられ役ここに、極まれりって感じか。

 当の獣王は、めっちゃ焦ってる感じだけど。

「いや、すまん……イコール殿どうしよう? 回復頼んでも良い?」
「はい、良いですよ! じゃあ「いや、不要だ」」
「めっちゃ口から血出てるし! 耳と目からも! 死ぬぞ? 無理せず治療魔法掛けて貰え」

 リカルドに滅茶苦茶心配されてる。
 でも安心して良いよ?
 死んだら、全部治るから。

『相変わらず、考えがおかしいですね』
「合理的と言ってくれ」

 そして、意識が……

「完全復活! いざ、再戦だな!」
『さっきまで死にかけの人が、どうしてここまで元気なのか理解に苦しみます』

 ふふ、そういう仕様にしたダンジョーンに言ってくれ。
 壊れてないぞ?
 死に戻れることを加味して、冷静に判断して行動してるからね。

『冷静に死ぬことを考える人は、末期だと思います』

 相変わらず、失礼な石ころ秘書だ。
 まあ、気分が良いから許してやろう。

 勁力に対する耐性が微増したのが分かる。
 早速、再戦だ 。

 殴りに行って、掴まれる瞬間に手を引き戻し素早くジャブで鼻っ柱を殴る。

「ふうっ、先手を取られたのはいつぶりじゃろうのう。攻撃は軽いが中々にやりおる」

 うーん、軽くは無いと思うけど。
 普通にデコピンでコボルトの頭を吹き飛ばす、俺のジャブだよ?
 これって、攻撃が軽いんじゃなくてあんたが硬いんだよ!
 そんな事を思いながら、1回目の反省を生かした攻撃を繰り返すと結構当たる。
 でも咄嗟の判断で、反撃も普通に喰らう。

 割と色々と隠してた。
 絶対貫通を自前の爪でやるとか。
 牙にも絶対貫通が付いてたし。
 あと、風魔法まで使ってきた。
 残念、吸収出来るから。
 取りあえず、回復すると死ねないので全力で回避する。

「ふむっ、お主は風属性が弱点か?」
「違うぞ? 属性系の攻撃は、のきなみ吸収できるからな? 風魔法を喰らうと回復するから避けただけだけど?」
「下手なはったりじゃのう」

 思いっきり勘違いされた。
 もし勘違いさせる為に言ったのなら、俺はかなりの役者だと思う。
 
――――――
 89回目

「なっ! お主風魔法が弱点では無かったのか?」
「悪いな……最初に言ったが、弱点じゃなくて大好物だ」

 お互いが死力を尽くして、ヘトヘトの状態だった。
 そこで、わざと足を滑らせたふりをすると、リカルドがチャンスとばかりに首に【風刃ウィンドカッター】を放ってきたので、思いっきり美味しく頂く。
 お陰で、殆どの怪我が治った。

「お主、策士じゃな! ハッハッハ、わしはもう見ての通り疲れ切っておるが、お主は完全に回復したのか……負けじゃ、負けじゃ! 話を聞いてやろう」

 うん、まだ早いから。
 石ころ、猛毒寄越せ!

『はあ……本当に死ぬのがお好きですね』
「違うぞ? 耐性やらステータスを上げるのが好きなだけだ」

 取りあえず、あと200回くらい死ねば勁力吸収までいけるかな?
 自分でも、使えるようになりたいけど……まあ、そこらへんは話が終わってから習えるか聞いてみよう。

「石ころ、猛毒」
『マネージャー! 水! みたいなノリで要求しないでください』

 そうか……確かにお前はマネージャーみたいなもんだが。
 決して女子マネとは思ってないからな?
 だから、くだらないこと言って無いでさっさと毒寄越せ。

 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...