チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

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第5章:会長と勇者

第3話:ピンク

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「という事があってさ、全然人の言ってる事理解してなくてゲンナリ」
「それは、大変でしたね……というか、なんでここに?」
「だって、皆忙しそうなんだもん」
「いや、私もこれから会議が……」

 いま、魔王ゴアルガさんのダンジョンに来てる。
 同盟の他の人達は、いま目下ダンジョンの強化作業に忙しそうだし。
 あれから、勇者が全然来なくて暇だから直接転移でここに来た。

「じゃあ、会議終わるまでここに居て良い?」
「いや、それは構いませんが……3時間くらいは掛かると思いますので、転移ですぐに行き来出来るなら出直してこられた方が」
「そう? じゃあ一旦戻ろうかな?」
「終わったら、連絡しますよ。この魔石をお持ちください。私がこっちの石に魔力を通すと赤く光りますので」
「光るだけ?」
「はい。光るだけです」

 便利なんだか、そうじゃないんだか。
 せめてメッセージが送れるくらいの機能は付けとけば良いのに。
 まあ良いや、呼んでくれるみたいだし。
 一旦戻るか。

――――――
「なんじゃ、もう戻って来たのか?」
「戻っちゃだめなの?」

 カーミラたん、いきなりご挨拶だね。
 というか、ここ俺の家だし。

「なんかゴアルガさん忙しそうだったし」
「そりゃそうじゃろう。個性の強い魔族を取り仕切るってのは大変じゃからのう」

 そうですか、そうですか。
 カーミラたんは魔王の味方するんですね。

「俺に頼めば、全員言う事聞かせる自信がある。そうだ、ちょっとその会議に殴り込みに」
「いや、普通にゴアルガ様に迷惑じゃから! 恐怖政治なんて望んでないから忙しいんじゃろう。主が行ってしまったら全てが台無しじゃ」

 酷い言われようだ。
 ちょっと、筋力を解放すれば簡単に理解してくれると思うのに。

「力でなんでも解決出来るというものでも無いからのう」
「そうか……そうだよね。うん……」

 なんだろう……鍛えすぎて頭まで筋肉の脳筋になってきたのかも。
 ちょっと、反省。
 することも無いし、魔王の会議終わるまでちょっと昼寝するかな?
 チラッ。

「なんじゃ、眠いのか?妾は今から自分のダンジョンの強化をしなければならんから、少しの間しか膝枕はしてやれんぞ」
「それで、十分だから!」

 よしっ、そのまま抱き着いて満足するまで離さないようにしよう。
 じゃあ、おやす「クラタさん!」

 ……
 と思ったら、ノックしない人が入ってきた。

「ああ、カオルちゃんどうしたの?」
「時間が出来たので遊びに来ました」

 そうですか。
 まあ、可愛いから許しちゃうけどね。

「なんじゃカオル殿か。主は今から仮眠を取るところじゃ……妾の膝で」
「えっ? そうだったんですか?」

 カーミラさん?
 一応、その子俺の客人なんですけど?

『自業自得です』

 石ころがなんか言ってる。
 自業自得って、別になんにも悪い事してないのに。

「じゃあ、帰ります」
「あー、折角来たんだしゆっくりしていきなよ。俺も特にすること無いから寝ようと思っただけで」
「そうか……」
 
 いや、カーミラたんもそんなガッカリした表情しないで。
 全く、モテる男は辛いぜ。

「あっ、カオルちゃんも来てたんだ」
「アウーン!」

 ノックしない人達がさらに来た。
 なんだろう……
 俺、このダンジョンで一番偉い人のはずなのに。
 誰も入室するときにノックしない。
 やっぱり、威厳が足りないのかな?

「本当ですか? 凄く見たいです」
「ねっ、一緒に行こうよ! カーミラもほらっ!」
「そうじゃのう……まだ少し時間もあるし」

 えっ?何が?
 なんか考え事してる間に、話がまとまったみたいで3人と1匹が部屋から出ようとする。
 何があったの?

「どこ行くんだ?」
「52階層でデスウルフが子供を産んだらしい」
「ちっちゃい狼さんですよね? 凄く可愛いらしいですよ」
「彼等頭良いからファング連れて行ったら、赤ちゃん抱かせてくれるから」
「ワンッ! ワンッ!」
「カオルちゃん、背中に乗って良いって」
「本当? じゃあ失礼します」

 カオルがファングの背中に跨る。
 その後ろにヘルが座る。
 ファング、羨ましいぜ。
 カーミラは……普通に蝙蝠の羽が生えてた。

「じゃあ、ちょっと行ってきます」
「妾はそのまま、自分のダンジョンに一旦戻るから、また明日じゃの」
「旦那様も今日は一人でゆっくり出来るね」
「アウーン!」

 4人が凄い勢いで消えてった。

『プッ』

 誰か一人くらい、俺を誘っても良いんやで?

『二兎を追う者は一兎をも得ずですね』

 そんな事を言いつつも、ずっとそばに居てくれるのはこいつだけだしな。
 うんうん、たまには磨いてやろう。
 寝室に戻って、磨き布を手にセーブポイントに近づく。
 ゴシゴシゴシ。

『重症ですね……少し気持ち悪いですよ?』

 口ではこんなことを言いながらも、結構喜んでるはずだ。
 だって、セーブポイントがめっちゃ光ってるし。

『あの……恥ずかしいんですけど』

 無機物だし、性別無いのに何を言ってるんだ?
 まあ、大分綺麗になった……と言いたいところだけど、元々汚れて無いから分からん。

「まあ、色々と感謝してる部分もあるしな」
『あの、えっとその……もう大丈夫ですよ?』

 ゴシゴシゴシゴシ
 こういう作業してると、無心になれるよね。

『ハアハア……あの、もう本当にだいじょうっ……ハアハア、大丈夫ですから。感謝つっ、伝わりましたから』
「遠慮すんなって。汚れてないかもしれないけど、埃とかは付くだろ?」

 なんか、いつもは青白い光が若干ピンクっぽくなってるけど、実はこいつピンクなのか?
 まあいいや、もう少しだけ……

『うう……もうお嫁にいけません』
「何を言ってるんだ? 石ころのお前が元からお嫁になんて行ける訳無いだろ?」
『責任取って下さいね』
「責任も何も、これからもずっと一緒に居るんだし責任の意味が分からん」
『これからもずっと一緒……ずっと……一緒……』

 なんか、一生懸命2時間くらい磨いたら、セーブポイントがおかしくなった。
 やべっ?
 壊れたかも……
 次死んだときにデロデロデロデロデ~ロとか流れないよね?
 おーい! 
 セーブポイントさんやーい!
 戻ってこーい!
 バベルのダンジョンに連れてってくれー!
 結局、この日はバベルのダンジョンには行けなかった。
 一応、ベルゼバブに頼んで喋れる蠅を借りてお断りの連絡を頼んどいた。
 
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