チュートリアルと思ったらチートリアルだった件

へたまろ

文字の大きさ
79 / 99
第5章:会長と勇者

第5話:それぞれの迎撃準備後半

しおりを挟む
 イコールのダンジョンは普通だった。
 クアザイ・ヴァルハラ……偽りの神々の座という意味らしい。
 うん、ダンジョンの名前まで謙虚。
 まあ良いや、普通だけど凶悪。
 普通の罠を上手に使ってる。

 まず転移の罠。
 これ、ちょっと違う部屋に転移するだけの罠。
 1cm浮いた状態で。
 転移した瞬間に着地、その床も転移の罠。
 違う場所に1cm浮いた状態で転移。
 そして着地、また転移。
 無限ループ……

 工夫して罠を設置したら、有効的に敵戦力を減らせると言ったけど。
 工夫の方向が違う気がする。

 類似品に落とし穴、転移、その場所の天井付近、足元は落とし穴という永遠に落ち続ける落とし穴とかもあった。
 ちょっと楽しそう。

 手が引っ付いて離れなくなるタイル壁。
 5秒で離れるタイルから、最長100年離れなくなるタイル。
 普通なら手が引っ付いて離れない罠とか腕を切り落として、回復に掛けるレベル。
 欠損を回復させられるのはかなり高位の回復魔法。
 
 でも、他の人が5秒や、一番多い5分~10分で離れたら、自分も待っとけばまあいつか離れるだろうと思って待つよね。
 しかも、ここは魔物を配置してない部屋。
 不安になった頃に離れる30分~1時間コースもある。
 諦めかけた5時間コースとか?
 そんなの小刻みに見てたら、いつか自分もと思うよね?
 集団攻略部隊用の罠らしい。
 
 狭い通路みたいな部屋に設置してあるから、つい触れてしまうレベル。
 でも、全てのタイルに罠がある訳じゃない。
 ちなみに1人が罠に掛かると、後ろの人達は必ず反対側のタイルに触れないと進めないレベルで狭い。
 で、たまに両方に罠があったりする。
 両方に掛かると、誰も進めない。

 うん……なんか、方向性がおかしい。

「色々と考えてたら楽しくなってしまいまして。小声で喋ったら声が10倍の大きさで10回程リピートされる罠とか」
「なにそれ。意味あんの?」
「自分の声って、実は聞いてみると自分で思ってたのと違って変な気分にならないですか? あと小声で喋る内容って色々ありますからね。 ちなみに魔物も罠も無さそうな見通しのいい広い正方形の部屋に設置してあるので、警戒して小声っていうより、くだらない内容度が高そうですし」

 地味な嫌がらせだな。
 うっかりその部屋で上司の悪口でも言おうもんなら……地獄だな。
 なんか、特に得られるものも無かったけど、楽しそうだったからまあ良いか。
 どっちかっていうと、悪戯っぽい罠の方が多かったわ。
 装備が前後ろ反対になる罠とか、転移を上手い事使ってるらしいけど無駄遣いだよね?
 水筒の中の水だけ頭の上に転移とか……真面目にやる気あるのか?

――――――
「はあ……罠ってこれだけなのか?」
「えっ? これで十分かと」

 でももっと酷い奴が居た。
 テューポーンのダンジョン。
 全力で力を掛けて造った罠が一つ。
 部屋単位で発動する罠。
 しかも回避不能レベルの特級の罠。
 高額ポイント商品らしい。

「ソロで挑むような冒険者相手だとあまり意味ないよな?」
「まあ……」

 確かに人間が一人でドラゴンに勝てるなんてのは、まずありえない。
 普通はね。
 でも、そういう事が出来る人も居たりもする。
 むしろそれに特化した人。
 竜専門の退治屋。
 ドラゴンスレイヤーさんだ。
 この世界に3人しか居ないらしい。
 3人居たら充分だろう。

 テューポーンや上位種をソロ討伐は無理でも、並以下のドラゴンならソロでも狩れるらしい。
 上位種でも準備をしっかりしてれば、可能性はあるとか。
 なのに、ここの罠は1種類。
 入ったものを一人ずつ個別で、順番にドラゴンが待機する部屋に飛ばす。
 待機しているドラゴンは1000体。
 だから、1000人までなら1対1になるらしい。
 入った瞬間に転移するから、2人目以降は用心するだろうね。
 その部屋を通らないと次にはいけないらしいから、必ず通らないといけない場所だけどさ……
 俺も普通に全然知らないドラゴンの部屋に飛ばされた。
 ここでドラゴンと戦うのも、目的と違うし。
 そもそも、転移先に魔物を普通に用意してるだけどか……
 仕方が無いから変化を解いて話しかける。
 
「テューポーン居る?」
「えっと……無理……」

 20%状態の俺に対して、目の前の若い地竜が頭を地面に付ける。

「あー、違う。俺クラタだから。お前んとこの主と同盟組んでてって聞いてない?」
「はっ! 会長様でしたか。テューポーン様なら、こことは全然違う場所に居ます。一応ご案内致しますが、40分くらい掛かります」
「この罠は?」
「はっ、1対1なら人間相手にまず負ける事は無いだろうと、入り口に入った瞬間に飛ばすようセットした罠です。部屋自体が罠なので回避不能です……何か、お気に召しませんでしたでしょうか?」

 地竜が不安そうにこっちを見上げる。
 お気に召さないというか……全然俺の言った事を理解してなかったようだ。
 いや、それとも理解したうえで誤魔化しにきたのか?
 
「入った奴等は全員この部屋に来るのか?」
「いえ、2人目は隣の部屋、3人目はさらに隣と1000人まで対応しております」
「はあ……有難う、もう転移で行くから良いよ」

 セーブポイントに頼んで、テューポーンの部屋まで転移で連れて行ってもらった。

「取りあえず、やり直しな?」

――――――
 まあ、ある意味で有意義な視察だったわ。
 特に優秀だったのは、メガララか?
 イコールのは何ていうか……まあ、本人が楽しいなら良いや。
 罠としては、割と凶悪だしね。

『あの……ブラムスのところには行かなくても良いのですか?』
「様付けなくなったのね」
『もはや、マスターよりだいぶ格下になりましたので、わざわざ敬意を払う必要も無いかと』
「そう? てか、ブラムスとなんか約束してたっけ?」
『えっ? 会議の後、物凄く張り切って罠を作りに戻ってましたが?』

 ああ、そういう事か。
 そう言えば、一応ブラムスも同盟参加者だったわ。
 視察か……
 取りあえず行くか。

「まあ、良いんじゃ無いかな? 一つ言えるのは、普通過ぎて面白くない」
「えっ? 面白いっていうのは指示に無かったのですが?」
「あー、そこは個性出してねって意味。別に面白いは必須じゃないからいいけどさ」

 ガッチリ無難に固めてきやがった。
 文句の付けどころは無いし、褒めるポイントもある。
 でも、光る部分は全くない。
 普通にふるいに掛けるだけで、抜ける奴は抜けるだろうね。
 65点

「それは、良いのでしょうか?悪いのでしょうか?」
「あー、テューポーンのダンジョンの罠が20点だと思えば」
「有難うございます!」

 おお、めっちゃ喜んでる。
 でも、マッチョなイケメンおっさんなんだよねコイツ。
 全然可愛くない。
 もう帰ろっと。

――――――
『ここの罠も増やしました』
「ほう……どんな?」
『ダンジョンに入ったら転移の罠が発動します』

 テューポーンと同レベルだったわ。

『マスターが入り口に自動で飛ばされます』
「ちょっ! お前が楽したいだけじゃねーか! しかもテューポーンよりひでえ!」

 あいつらはまだ部下に戦わせてるけど、こっちはいきなりマスターが飛んでくるとか……
 なんだ、通常運行だったわ。
 いや、そうじゃねー!
 今までは、わざわざセーブポイントが関知して、転移で飛ばしてたのをオートメーション化しただけとか。

『一番被害の少ない形です』

 反論出来ねーよ!
 ちくしょう!

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...