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第1章:赴任
第52話:歴代最強魔王らしい
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「キノコマルとやら、お前俺の部下にならないか?」
コラコラ。
目の前で、引き抜きを掛けるんじゃない。
肩で息をしていたエルハザードが、俺の横で爆笑していたキノコマルを見て固まっていたが。
しばらく、色々と自分の中で折り合いをつけたのだろう。
良い笑顔で、声を掛けてきた。
「油断させて、殴るつもりっすか?」
「いや、そうじゃない。本気だ」
エルハザードの顔は笑っているが、目が笑っていない。
本気なのだろう。
ただ、キノコマルはエルハザードを指さしてケタケタ笑っていた。
「そういうのは、ウチに勝ってから言うっすよ」
それから、キノコマルがやれやれと首を振っている。
まあ、くれと言われて、やるつもりもないが。
あっ、またエルハザードの怒気が膨れ上がった。
分かりやすいなー。
「じゃあ、お前を倒せばいんだな?」
「でも、ウチの主はロードっすからね。サトウ様を倒したら、いいっすよー」
ちょっ、馬鹿。
こっちに振るんじゃない。
なんで、いっつもお前はそうなんだ。
ナチュラルに巻き込むな、この馬鹿が。
「そうか、お前を倒したらいいのか」
エルハザードの目が光る。
いやいや、そもそもお前は何しに来たんだと。
当初の目的を見失うな。
「そうだった、アスマを倒しに来たんだった」
だったら、ご自由にどうぞ。
アスマさん曰く、エルハザードに勝てる要素が全くないんだけど。
「俺もレベルが限界突破してな。魔族から、魔人に進化して第二形態を手に入れたのだ」
へえ、それは凄い。
凄いけど……そうか。
頑張って第二形態を手に入れて、ここに乗り込んできたのか。
アスマさんを倒すために。
時を同じくしてというか……ついこのあいだ、そのアスマさんは第三形態にたどり着いたみたいだけど。
ちょっと不憫な者を見るような目になってしまったのは、仕方ないことだと思う。
で、とどのつまりどうなんだろう。
魔人に進化と、第二形態で、一気に一足飛びで強くなったのかな?
でも、ローブを脱いだ状態で前のエルハザードより強いと言ってたし。
ということはローブを脱いだ状態を第二形態とカウントしたら、アスマさん第四形態まであるってことか。
それはそうと、うさ耳のカチューシャいつまで着けているのかな?
もしかして、気付いてないとか?
面白いから、言わないけど。
「まあ、まずは前哨戦だな。ウォーミングアップがてら、お主を倒してキノコマルを手に入れる!」
「ウチのために、争わないでっすー!」
わざと負けたくなった。
キノコマルがにやにやとした笑みを浮かべて、胸の前で腕を組んでいるけど。
腹立つなー。
だめだだめだ。
これで、こいつを殴ろうとしても、一発もかすりもしないでフラストレーションがさらに溜まるだけだ。
深呼吸。
ぶはっ!
こいつ、このタイミングでハッピーマッシュの粉をぶちまけやがった。
やっぱ、殴る!
「なんか、辛そうだったから、幸せのお裾分けのつもりだったっすよ?」
いや、本気でそう思ってそうな顔してるけど。
てか、本気で思ってるというか。
基本、こいつは目の前の娯楽に、どん欲だからな。
ただ、周りが笑うことも大事にしているのは、見ていてよく分かる。
優しい奴だ。
「だが、それとこれとは別!」
結論……イライラしただけだった。
「そろそろ良いか?」
俺たちの様子を見ていたエルハザードが、やれやれといった感じで声を掛けてきた。
こいつもムカつくな。
なんで、上から目線というか、ちょっと大人なポジションに収まろうとしてるんだ?
元をただせば、お前が全部悪い!
「ぐあっ」
あっ……
キノコマルと違って、この人は避けないんだった。
つい、キノコマルばっかり攻撃してたから、当然避けるもんだと思ってたが。
キノコマルが腹を抱えて笑っている。
「すまん。つい、避けるかと思って」
「普段なら怒るところだが、あいつがさんざん躱すのを見た後だからな……これはもう、避けられなかった俺が悪いとしか言えんだろう」
あっ、なんか思ったより本当に大人だった。
短絡的なところはあるけど。
……そんなことを思うと同時に、上空から鐘の音が鳴って光が降り注ぐ。
いろいろなこと、やってくるなー……
毎度毎度、演出にこだわってきてるなー。
「なんだ、この音は!」
エルハザードがキョロキョロと周囲を見渡しているけど。
そして、目の前に黒い炎が巻き起こる。
「黒炎……いや、魔炎か!」
そして、現れるテンション高めな狼。
「ジャジャーン! 今回は、天使っぽく降臨してみました」
いや、降臨というか。
炎と一緒に、地面から生えてきたよね?
毎度のことだけど。
降臨っていうと、やっぱり空から降ってくるイメージが。
「まあまあ、細かいことは気にしないでください」
ジャッキーさんが呼ばれてないのに来る理由はただ一つ。
今日が月末だからだ。
「はい、給与明細をお持ちしましたよ。それと、人間の貴族を捕虜にしたり、軍を追い払ったりの報酬も」
わぁ……今回は、封筒が分厚い。
中を見ると、帯付きの束が3つ。
やばっ……
「なーんてね。よく見てください」
まあ、諭吉さんじゃなくて、五郎さんでもなく英世さんだったけどね。
そんな予感はしてたから、別に気にしない。
過去の臨時ボーナスと比べても、バハムル達の襲撃がそこまでとは思わなかったし。
うん、妥当な金額だと思う。
「あれ? ガッカリしたりしないんですね」
「最初から、期待してなかったんで」
ジャッキーさんがガッカリしてた。
しかし、こんなおちゃめなことをしでかしてくるってことは……
「また、合コンだめだったんですね」
合コンが失敗だったからって、俺にくだらない悪戯を仕掛けてこないでほしい。
こっちは、四六時中頑張って仕事してるのに。
「私よりリア充な生活を送っているのに、鈍感な振りしているのちょっと腹立って」
私情が絡みすぎだと思う。
「な……なんだ、この犬ッコロは! 気に入った!」
ジャッキーさんが来てから、ずっと大人しかったエルハザードが急に大声出すからビビった。
キノコマルも耳を抑えて、エルハザードを睨んでいるけど。
「犬ッコロって、私のことですかね?」
「喋る犬! しかもでかくて強そうだ! ぜひ、俺のペットにしてやろう!」
あちゃーと思ったけど、まあいいか。
「うん、その人というか狼が、俺の上司だから」
この際、全力で矛先をジャッキーさんに。
「たかが魔人風情が面白いこと言いますね。気に入りました」
気に入ったのか。
自己紹介とか、はじめちゃうのかな?
「身の程をわからせてあげましょう」
あらやだ、ジャッキーさんの方が好戦的だった。
まさかのボスムーブに思わず、期待してしまう。
「……」
うん、秒で終わった。
ジャッキーさんが体高4mくらいになったかと思うと、前足でエルハザードを踏みつぶしていた。
てか、あれよりもさらに大きくなれるんだ。
てっきりいつもいる、体高2m弱くらいが普通のサイズだと思ってたけど。
「はは曾祖父は巨人族ですからね。曾祖母もですし、祖父は顎が天まで届くような大狼神ですよ」
そうだった、フェンリルがおじいちゃんなら納得のサイズ感。
いや、小さいくらいかな。
でもだったら……確か、フェンリルといったら、やっぱりチー……
「いやいや、祖父のフェンリルの育ての親はチュール(テュール)様ですよ? 確かに祖父も、チュール様の腕食いちぎっちゃったりしてましたけど……その孫の私がチールを食べるのは、鉄板のネタ? 合コンで絶対にウケる?」
冗談で言ったら、本気で考え込んでて笑える。
いや、その姿はまったく笑えないほど凶悪だけど。
「神話ギャグ……いや、悪くないかもしれませんね」
うん、本気で考え込んでるところ悪いけど、その足の下の人大丈夫?
だんだん、埋まっていってるけど。
一応保護対象だったりとか……
「魔族は亜人枠ですから。魔物とは違いますよ?」
あっ、別に普通の人間だけが敵ってわけじゃなくて、亜人も含めてなのかな?
「いや敵とか味方とかじゃなくて、保護対象じゃないだけです」
意外と、ドライだった。
とりあえず、話が聞きたいからと足をどけてもらったけど。
当分起きそうにはなかった。
コラコラ。
目の前で、引き抜きを掛けるんじゃない。
肩で息をしていたエルハザードが、俺の横で爆笑していたキノコマルを見て固まっていたが。
しばらく、色々と自分の中で折り合いをつけたのだろう。
良い笑顔で、声を掛けてきた。
「油断させて、殴るつもりっすか?」
「いや、そうじゃない。本気だ」
エルハザードの顔は笑っているが、目が笑っていない。
本気なのだろう。
ただ、キノコマルはエルハザードを指さしてケタケタ笑っていた。
「そういうのは、ウチに勝ってから言うっすよ」
それから、キノコマルがやれやれと首を振っている。
まあ、くれと言われて、やるつもりもないが。
あっ、またエルハザードの怒気が膨れ上がった。
分かりやすいなー。
「じゃあ、お前を倒せばいんだな?」
「でも、ウチの主はロードっすからね。サトウ様を倒したら、いいっすよー」
ちょっ、馬鹿。
こっちに振るんじゃない。
なんで、いっつもお前はそうなんだ。
ナチュラルに巻き込むな、この馬鹿が。
「そうか、お前を倒したらいいのか」
エルハザードの目が光る。
いやいや、そもそもお前は何しに来たんだと。
当初の目的を見失うな。
「そうだった、アスマを倒しに来たんだった」
だったら、ご自由にどうぞ。
アスマさん曰く、エルハザードに勝てる要素が全くないんだけど。
「俺もレベルが限界突破してな。魔族から、魔人に進化して第二形態を手に入れたのだ」
へえ、それは凄い。
凄いけど……そうか。
頑張って第二形態を手に入れて、ここに乗り込んできたのか。
アスマさんを倒すために。
時を同じくしてというか……ついこのあいだ、そのアスマさんは第三形態にたどり着いたみたいだけど。
ちょっと不憫な者を見るような目になってしまったのは、仕方ないことだと思う。
で、とどのつまりどうなんだろう。
魔人に進化と、第二形態で、一気に一足飛びで強くなったのかな?
でも、ローブを脱いだ状態で前のエルハザードより強いと言ってたし。
ということはローブを脱いだ状態を第二形態とカウントしたら、アスマさん第四形態まであるってことか。
それはそうと、うさ耳のカチューシャいつまで着けているのかな?
もしかして、気付いてないとか?
面白いから、言わないけど。
「まあ、まずは前哨戦だな。ウォーミングアップがてら、お主を倒してキノコマルを手に入れる!」
「ウチのために、争わないでっすー!」
わざと負けたくなった。
キノコマルがにやにやとした笑みを浮かべて、胸の前で腕を組んでいるけど。
腹立つなー。
だめだだめだ。
これで、こいつを殴ろうとしても、一発もかすりもしないでフラストレーションがさらに溜まるだけだ。
深呼吸。
ぶはっ!
こいつ、このタイミングでハッピーマッシュの粉をぶちまけやがった。
やっぱ、殴る!
「なんか、辛そうだったから、幸せのお裾分けのつもりだったっすよ?」
いや、本気でそう思ってそうな顔してるけど。
てか、本気で思ってるというか。
基本、こいつは目の前の娯楽に、どん欲だからな。
ただ、周りが笑うことも大事にしているのは、見ていてよく分かる。
優しい奴だ。
「だが、それとこれとは別!」
結論……イライラしただけだった。
「そろそろ良いか?」
俺たちの様子を見ていたエルハザードが、やれやれといった感じで声を掛けてきた。
こいつもムカつくな。
なんで、上から目線というか、ちょっと大人なポジションに収まろうとしてるんだ?
元をただせば、お前が全部悪い!
「ぐあっ」
あっ……
キノコマルと違って、この人は避けないんだった。
つい、キノコマルばっかり攻撃してたから、当然避けるもんだと思ってたが。
キノコマルが腹を抱えて笑っている。
「すまん。つい、避けるかと思って」
「普段なら怒るところだが、あいつがさんざん躱すのを見た後だからな……これはもう、避けられなかった俺が悪いとしか言えんだろう」
あっ、なんか思ったより本当に大人だった。
短絡的なところはあるけど。
……そんなことを思うと同時に、上空から鐘の音が鳴って光が降り注ぐ。
いろいろなこと、やってくるなー……
毎度毎度、演出にこだわってきてるなー。
「なんだ、この音は!」
エルハザードがキョロキョロと周囲を見渡しているけど。
そして、目の前に黒い炎が巻き起こる。
「黒炎……いや、魔炎か!」
そして、現れるテンション高めな狼。
「ジャジャーン! 今回は、天使っぽく降臨してみました」
いや、降臨というか。
炎と一緒に、地面から生えてきたよね?
毎度のことだけど。
降臨っていうと、やっぱり空から降ってくるイメージが。
「まあまあ、細かいことは気にしないでください」
ジャッキーさんが呼ばれてないのに来る理由はただ一つ。
今日が月末だからだ。
「はい、給与明細をお持ちしましたよ。それと、人間の貴族を捕虜にしたり、軍を追い払ったりの報酬も」
わぁ……今回は、封筒が分厚い。
中を見ると、帯付きの束が3つ。
やばっ……
「なーんてね。よく見てください」
まあ、諭吉さんじゃなくて、五郎さんでもなく英世さんだったけどね。
そんな予感はしてたから、別に気にしない。
過去の臨時ボーナスと比べても、バハムル達の襲撃がそこまでとは思わなかったし。
うん、妥当な金額だと思う。
「あれ? ガッカリしたりしないんですね」
「最初から、期待してなかったんで」
ジャッキーさんがガッカリしてた。
しかし、こんなおちゃめなことをしでかしてくるってことは……
「また、合コンだめだったんですね」
合コンが失敗だったからって、俺にくだらない悪戯を仕掛けてこないでほしい。
こっちは、四六時中頑張って仕事してるのに。
「私よりリア充な生活を送っているのに、鈍感な振りしているのちょっと腹立って」
私情が絡みすぎだと思う。
「な……なんだ、この犬ッコロは! 気に入った!」
ジャッキーさんが来てから、ずっと大人しかったエルハザードが急に大声出すからビビった。
キノコマルも耳を抑えて、エルハザードを睨んでいるけど。
「犬ッコロって、私のことですかね?」
「喋る犬! しかもでかくて強そうだ! ぜひ、俺のペットにしてやろう!」
あちゃーと思ったけど、まあいいか。
「うん、その人というか狼が、俺の上司だから」
この際、全力で矛先をジャッキーさんに。
「たかが魔人風情が面白いこと言いますね。気に入りました」
気に入ったのか。
自己紹介とか、はじめちゃうのかな?
「身の程をわからせてあげましょう」
あらやだ、ジャッキーさんの方が好戦的だった。
まさかのボスムーブに思わず、期待してしまう。
「……」
うん、秒で終わった。
ジャッキーさんが体高4mくらいになったかと思うと、前足でエルハザードを踏みつぶしていた。
てか、あれよりもさらに大きくなれるんだ。
てっきりいつもいる、体高2m弱くらいが普通のサイズだと思ってたけど。
「はは曾祖父は巨人族ですからね。曾祖母もですし、祖父は顎が天まで届くような大狼神ですよ」
そうだった、フェンリルがおじいちゃんなら納得のサイズ感。
いや、小さいくらいかな。
でもだったら……確か、フェンリルといったら、やっぱりチー……
「いやいや、祖父のフェンリルの育ての親はチュール(テュール)様ですよ? 確かに祖父も、チュール様の腕食いちぎっちゃったりしてましたけど……その孫の私がチールを食べるのは、鉄板のネタ? 合コンで絶対にウケる?」
冗談で言ったら、本気で考え込んでて笑える。
いや、その姿はまったく笑えないほど凶悪だけど。
「神話ギャグ……いや、悪くないかもしれませんね」
うん、本気で考え込んでるところ悪いけど、その足の下の人大丈夫?
だんだん、埋まっていってるけど。
一応保護対象だったりとか……
「魔族は亜人枠ですから。魔物とは違いますよ?」
あっ、別に普通の人間だけが敵ってわけじゃなくて、亜人も含めてなのかな?
「いや敵とか味方とかじゃなくて、保護対象じゃないだけです」
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