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第1章:赴任

第53話:ゴブリン戦隊

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 エルハザードが気絶している間に、ジャッキーさんに相談。
 うちのゴブリン達で、この迷惑なやつを抑えられることはできないかと。

 ウエイトモードでゴブリン達のステータスを割り振っていく。
 ゴブエモン、ゴブマル、ゴブゾウ、ゴブエル、キノコマルの5人でどうにかできるらしい。
 この5人の中にキノコマルが含まれているのが、凄く複雑な気持ちにさせる。

「この5匹を紐づけることで、パーティスキルや合体技も」

 ふむふむ。
 なるほど、色々と捗る。
 なんか、戦隊ものみたいだ。
 5人というのが、特に。
 ゴブリンジャーだな。
 しかし、色が……
 ゴブエモンとゴブマル、ゴブゾウは緑色だし。
 ゴブエルは回復特化を伸ばしまくって、白っぽい緑の肌になっている。
 キノコマルは……黄色に。
 よりによって、キノコマルが真っ先に俺の肌に近い色になるとは。

 ゴブグリーン! ゴブグリーン! ゴブグリーン! ゴブパステルグリーン! ゴブイエロー!
 五人揃って、ゴブレンジャー!

 うん、無いな。
 ニチアサの枠は無理なメンバー構成だ。

 ついでの俺のステ振りも相談。
 現状でも、仮にエルハザードが第二形態とやらになったところで、そこまで問題は無かったらしい。
 どうやらアスマさんの第二形態くらいなら、抑えられるくらいに俺は強かったと。
 ということは、エルハザードの第二形態はアスマさんの第二形態よりも弱いのかな?

 とりあえずエルハザードが起きたら、キノコマルが相手をすることに。
 その間に、他の4人を集めるとのこと。

「ウチ一人でも余裕っすよ?」

 決定打に欠けるから、泥仕合は必須らしいけど。
 まあ、負けることはないとのこと。
 エルハザードの煽り耐性が低すぎるせいで。
 
「攻撃する前から、どこに来るか分かるっすからねー」

 ふふ……頼もしい。
 俺もそう思われていると思うと……腹立たしい。
 まあ、仕方ない。
 こいつは、そういうやつだ。

 見てる分には面白いから、好きだけど。

***
 ジャッキーさんに、また買い物をお願いして村の見回りに。
 今回は食料品を多めに頼んだ。
 雪で、食料がどうなるか分からなかったから。

 まずは、ゴブリンスミスの棟梁のゴブオに相談。

「お店……ですか?」

 うん、そう。
 外から来た人が、物を買って帰られるように。
 
「来ますかね……人?」

 言い方を間違えた。
 魔王さんがここに来た時に、気兼ねなく物が買って帰られるように。
 あっ、グランハザードさんのことね。
 エルハザードは元だから。

「なるほど……で、何を置くんですか?」
「おもに、食料品……かな? まあ、来たら並べる感じになりそうだが」

 現状、村の中ではお金を使ってのやりとりはないからな。
 そもそも、お金のことをよく知らない。
 ジニーに相談して、彼らのお金を見せてもらったが。
 というか、差し出されたけど。
 ここでの生活費がわりと言って。

 現状、いろいろな仕事を手伝ってもらってるから不要なんだけど。
 お前らも町に行くこともあるだろう?
 いまさら、外出制限なんかする気もないし。
 だから、やんわりと断った。
 そして、俺も連れて行ってほしい。

 たまには、外の世界に触れてみたい。

「こんな感じで」

 野菜の無人直売所の画像を、ゴブオに渡す。
 
「ちょっと一度持ち帰ってエドさんとシドさんに相談してみます」

 大げさなことにならないかな?
 あんまり使う予定の無い建物を、ドワーフに手伝ってもらうのはどうかと思うけど。
 まあ、頑丈な方が良いか。
 普段使わないから、傷みも早いだろうし。

 それから、帰ってアスマさんにあれこれ質問。

「ふむ……ご都合主義と思われるかもしれんが、分かりやすいぞ?」

 貨幣について尋ねると、アスマさんが複雑そうな表情。
 というか、ご都合主義とかって言葉も普通に使いこなすのか。
 
「お主の立場と地球のこと、それからこの世界の貨幣の仕組みを照らし合わせるとじゃ……お主にとっても分かりやすい内容じゃなと思ってな」

 まあ、お金の単位なんてさほど変わらないだろう。

「お主の世界では当たり前のように10ごとに単位が上がるし、0の概念もあるが……この世界も10ごとに単位が上がる」

 なるほど。
 それって普通じゃないのかな?
 数字が10になったら桁が繰り上がることなんて、誰でも知ってる。

「普通なら、わざわざ10進法なんて言葉は生まれんだろう」

 ん? 
 言われてみたらそうかもしれない。

「手の指が10本あるから10進法が多いだけじゃ。くしくもこの世界でもな。じゃが、世界によっては指が6本の世界もあるかもしれん。そしたら6進法や12進法が当たり前になる」

 言われてみたらそうかもしれない。
 でも12進法って言葉自体が、すでに10進法を元に表されているけど。
 突っ込まない。
 なんか、話が複雑になりそうだから。

「地球ですら古代メソポタミアでは人差し指から小指までの指と関節を使った、12進法を主としておったろう」

 いや、当然のように話されても。
 知らないんだけど?
 もうあれだ……とうとう、アスマさんに地球の知識ですら負け始めてる。

「さらに別の手の指5本を合わせることで60進法として、時間を表したことで時間の基礎が……もっと、励め」

 呆れられてしまった。
 いや、アスマさんがすごすぎるだけだと思うけど。

「まあ、かくいうわしもこのことを知るまで、10進法を基準で考えていたが。実験によっては確かに12進法や、5進法を使っていた。進法という概念は素晴らしいものだと思うぞ」

 だいぶ話が脱線してるけど、俺の質問覚えてる?

「まあいい。この世界、時間はお主らで言う50進法になるが、貨幣は一部を除いて10進法で運用されておる」

 ふんふん。

「鉄貨10枚で銅貨1枚。同様に銅貨10枚で大銅貨1枚。大銅貨10枚で銀貨1枚といったふうにな」

 なるほど。

「で、鉄貨は1円、銅貨は10円、大銅貨は100円、といった感じかのう? まあ、鉄貨はコストの問題でかなり小さいしあまり使われることもない」

 なるほど。
 それで金貨が10万円になるのね。

「ちなみに、紙のお金はないのか?」
「無いな。そこまでの信用をおける機関がない」

 日本銀行みたいなってことかな?
 じゃあ、国が発行したりとか。

「信用が無いと意味がなかろう。金貨に価値があるのは金じゃからじゃ。銀も銅も同様じゃ……でも、紙切れに何の価値がある? お主の世界でそれが通用するのは、長い年月を掛けて紙幣が信用を勝ち得たからじゃな」

 もういいや。
 なんか、学校の授業みたいで頭が痛い。
 
「おぬし、勉強は嫌いなのか?」

 嫌いというか、今じゃないというか。
 今でしょ! って声が聞こえてきそうだけど、その知識は今いるものじゃない。
 今いるのは、この世界の貨幣の価値だ。
 不要な情報が入ってくると、勘違いが起こるかもしれないし。

「ふむ、一理あるな。まあ、この辺りの会話は、この世界の経済学者とでもするのが良いじゃろう……その分野も、まだまだ発展途上ではあるがな」
  
 アスマさんが賢いことを再認識しつつ、今度はお茶とかの値段設定にミレーネやジニー達に相談に行かないとと話を打ち切る。
 それからお礼を言って、家から……出る必要はないんだった。
 冬になってからジニー達も、なぜか俺の家に寝泊まりしてるし。
 とりあえず居候なんだから、色々と相談させてもらおう。
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