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第1章:赴任
第55話:イッヌの帰還
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「なんじゃ、そんなに心配なのか?」
特に何かするわけでもなく、リビングでぼーっとしていたらアスマさんに声を掛けられた。
いや、まあ。
ゴブエモン達がイッヌと村を出て2週間。
まだ、戻ってこない。
「いや、カマセ領までここから、どんなに急いでも徒歩なら片道5日は掛かるぞ?」
そうなのか?
出る前に、どのくらいで戻るか聞いてなかった俺が悪いんだけど。
うまくいってればいいなと、願わないはずもない。
ストリングは別として、唯一のこの村での人間とゴブリンの純粋なカップル。
ストリング?
あれは、ちょっと違うかなー……
3人のゴブリンを娶ったというか、3人のゴブリンに飼われているいるというか。
村にとって、役に立ってないわけではないから良いけど。
「色々と手土産も持たせておったろう? あれの価値が分からぬものはおらぬ。貴族なら、なおのことじゃ」
そういうアスマさんも、2人に何か渡していた。
なんだかんだで、彼も気になったのだろう。
「そういう時は、運動して汗を流すといいぞ!」
そこに、エルハザードが割って入ってくる。
結局、この人もこの村に住み着いた。
アスマさんの家に。
まあ部屋は余っているし、アスマさんは俺の家にいることが多いから。
ただ困るのは、ちょいちょい俺に手合わせをさせようとしてくるところ。
今まで、一度も受けたことは無いけど。
おかげで俺は、彼の中では腕力だけの弱いやつだと思われている。
まあ、それでいいんだけど。
戦闘技術なんて皆無だし、ほとんどステータスとスキル頼みの戦い方しかできないだろうし。
「じゃあ、ちょっと外を走ってこようかな?」
「むう」
ちなみに、全力で走ったところで大して疲れることもない。
体力のステータスもしっかり上げてしまったせいで、体力お化けにもなってしまっている。
たぶん、フルマラソンをランニング感覚で完走できる程度には。
「我と手合わせを「腕相撲で俺に勝てたら、一週間は誘わないって言ってたのはどこの誰かな?」」
俺の言葉に、エルハザードが顔を背けている。
ちなみに、アスマさんは一回だけ手合わせしていた。
第二形態を披露したくてたまらないエルハザードと、その第二形態をあっさりと倒してドヤりたいアスマさんの思惑が合致した結果だ。
結論だけ言うと、第二形態アスマさんの圧勝だった。
それで興が乗ったのか、アスマさんが俺にも手合わせを挑んできたが。
普通に断った。
「お主の世界では、強敵と書いてともと呼ぶのだろう?」
うん、どこの世紀末主人公かな?
友人に一子相伝の暗殺拳を放つような人間は、俺とは決して相容れない存在だと思う。
どちらかというと心友として、お互いを理解しあってる関係の方が憧れるかな?
勿論、アスマさんは分かってくれるよね? と言ったら、照れていた。
ちなみにエルハザードは、村で子供達やゴブリン達に武術を教えている。
基本的に武器全般を扱えて、格闘技も超一流と優秀だった。
しかも、教えるのも上手かったので、村にいる間の仕事として割り当てた。
生産系の仕事は、全く不向きだったからというのもあるが。
「元魔王に斧を持たせるのは、お前ぐらいだ」
一振りで木が折れて、凄い勢いでゴブサクの方に倒れていったのを見て諦めた。
その後の展開が、なぜか手に取るように分かってしまったからというのもある。
ちなみにゴブサクは倒れてきた木を、片手で受け止めていた。
前は少し慌てて避けていたのに、成長したなー。
それから2日ほどで、ゴブエモンが帰ってきた。
イッヌ達を連れて。
ゴブリナもゴブエルもロイもイッヌも元気そうだ。
なぜか数人の人間が同行しているけど。
「ただいま戻りました。サトウ様」
いや、かしこまらなくてもいいから。
よくよく考えたら、俺村長でもなんでもないし。
ロードではあるけど、ゴブリンの話であって。
ゴブリン以外の村の住人は、村長のゲソチが直接の担当じゃないかな?
それから、イッヌから軽く報告を受ける。
本当に軽く。
詳細は後程と言ってミレーネとバハムルの居場所を俺に確認して、すぐに会いにいった。
2人とも、俺の家にいるけどね。
バハムルは、迎賓館はお気に召さなかったというか。
妹と一緒にいたがったというか。
ミレーネはかなり嫌そうだったけど。
血のつながった兄が側にいれば、ミレーネも変な行動はしないかなと。
あんまり意味なかったけど。
それから手紙のようなものをもって、すぐに連れてきた騎士っぽい人に渡していた。
どうしたどうした?
何かあったのか?
どうやら、ランスロットさんが投獄されてしまったらしい。
バハムルを見捨てたとかなんとかで。
いや、どちらかというとバハムルが、厄介払いしたような感じだったんだけど。
「くっ、廃嫡されてミスト王国の国民でなくなっていたら、殴ってでもバハムル殿下を帰還させたのに」
どうやら、出奔計画は失敗したらしい。
「予想外に、ゴブリナが家族に受け入れられてしまって」
いいことだと思うんだけど。
「弟が成人するまで、継承権は保留にされてしまいました」
イッヌが顔を歪ませているけど。
何が問題なのか、さっぱり分からない。
「できれば、戻ってきてほしいと言われました。というか、ゴブリナを嫁として迎え入れたいというか……子供が出来たら、ゴブリナとその子だけ戻ってきてもいいとも……」
そう言って、イッヌが遠くを見ていた。
どこか、物悲しそうな表情に何も言えず、肩を叩くしことしかできなかったけど。
ゴブリナは何をしたんだ?
「ロードの手土産と、アスマ様の手土産を渡しただけです。あとは滞在中に料理や、掃除、洗濯等をメイドに混ぜってやらせてもらっていたくらいですかね?」
ゴブリナが簡単に説明してくれた。
「家事スキルとこの村の調理技術や、アスマ様の魔法訓練の結果です。料理は王都でもなかなか食べられない美味なもの。掃除をすれば、テキパキと効率的に屋敷が綺麗になり……衣類や絨毯、カーテン等の布類についた染みに至っては、魔法で簡単に除去したりしてましたので」
優秀な嫁として認められたってことか。
それにしても、染みを消す魔法か……
俺の家のリビングのカーペットにコーヒーをこぼしたときに、アスマさんが開発した魔法だな。
「手土産の化粧品類も母を虜にしてましたし、それを入れてあった箱も弟や妹たちが取り合ってました」
子供って箱とか好きだもんな。
物を入れるだけじゃなくて、切ったりなんかして好きなものを作ったりとか。
「アスマ様の用意された書物も大変好評というか……色々と物議を醸しそうですが、王都の専門機関に送られることになりましたので」
そんな大層な書き物なのかな?
「ダンジョンの構造に関する仮説から、これまでの常識を覆すような魔道具理論が載ってますから」
そんなものを。
というか、骸骨というか書いたの人じゃないけど良いのかな?
「書物に罪はありませんから。かといって、アスマ様に何かしらの罪が……そういえば、国を一つ滅ぼしてますので大罪人ではありますが、人の法で裁ける方でもありませんし。そもそもが、希代の知恵者としても有名で様々な分野の第一人者でもありますし」
脳ミソ無いけど、希代の知恵者か……
アスマさんの方を見るが、エルハザードにチェスで圧勝してドヤりたおしていた。
肉体派相手に、大人げない知恵者だな。
他にもゴブエモンを剣の指導者として迎え入れたいという提案があったりと、彼の親もいろいろと柔軟に対応してくれたようだ。
良い人もいるもんだな。
「いえ、流石に色々と普通じゃないので、考えることを放棄しているよう見えましたが」
イッヌが疲れた笑みを浮かべていた。
それはそうと、お前の連れてきた騎士の半分は手紙をもって馬に乗って急いで行ってたけど。
まだ、半分残っているのは?
「えっと……母が、化粧品関連を買い求めておりまして」
ふと騎士たちの方を見ると、そのうちのひとりが鍵付きの木でできた箱を大事そうに持っていた。
中を開けてくれる。
金貨がびっしりと入っていた。
「これで、買えるだけとのことです」
うーん……魔王グランハザードさんの為に、食品関係の値付けはアスマさんやジニー達人間組と相談して大体終わっていたけど。
化粧品のことまでは、検討してなかった。
少し時間をもらいたい。
誰に相談しよう……
特に何かするわけでもなく、リビングでぼーっとしていたらアスマさんに声を掛けられた。
いや、まあ。
ゴブエモン達がイッヌと村を出て2週間。
まだ、戻ってこない。
「いや、カマセ領までここから、どんなに急いでも徒歩なら片道5日は掛かるぞ?」
そうなのか?
出る前に、どのくらいで戻るか聞いてなかった俺が悪いんだけど。
うまくいってればいいなと、願わないはずもない。
ストリングは別として、唯一のこの村での人間とゴブリンの純粋なカップル。
ストリング?
あれは、ちょっと違うかなー……
3人のゴブリンを娶ったというか、3人のゴブリンに飼われているいるというか。
村にとって、役に立ってないわけではないから良いけど。
「色々と手土産も持たせておったろう? あれの価値が分からぬものはおらぬ。貴族なら、なおのことじゃ」
そういうアスマさんも、2人に何か渡していた。
なんだかんだで、彼も気になったのだろう。
「そういう時は、運動して汗を流すといいぞ!」
そこに、エルハザードが割って入ってくる。
結局、この人もこの村に住み着いた。
アスマさんの家に。
まあ部屋は余っているし、アスマさんは俺の家にいることが多いから。
ただ困るのは、ちょいちょい俺に手合わせをさせようとしてくるところ。
今まで、一度も受けたことは無いけど。
おかげで俺は、彼の中では腕力だけの弱いやつだと思われている。
まあ、それでいいんだけど。
戦闘技術なんて皆無だし、ほとんどステータスとスキル頼みの戦い方しかできないだろうし。
「じゃあ、ちょっと外を走ってこようかな?」
「むう」
ちなみに、全力で走ったところで大して疲れることもない。
体力のステータスもしっかり上げてしまったせいで、体力お化けにもなってしまっている。
たぶん、フルマラソンをランニング感覚で完走できる程度には。
「我と手合わせを「腕相撲で俺に勝てたら、一週間は誘わないって言ってたのはどこの誰かな?」」
俺の言葉に、エルハザードが顔を背けている。
ちなみに、アスマさんは一回だけ手合わせしていた。
第二形態を披露したくてたまらないエルハザードと、その第二形態をあっさりと倒してドヤりたいアスマさんの思惑が合致した結果だ。
結論だけ言うと、第二形態アスマさんの圧勝だった。
それで興が乗ったのか、アスマさんが俺にも手合わせを挑んできたが。
普通に断った。
「お主の世界では、強敵と書いてともと呼ぶのだろう?」
うん、どこの世紀末主人公かな?
友人に一子相伝の暗殺拳を放つような人間は、俺とは決して相容れない存在だと思う。
どちらかというと心友として、お互いを理解しあってる関係の方が憧れるかな?
勿論、アスマさんは分かってくれるよね? と言ったら、照れていた。
ちなみにエルハザードは、村で子供達やゴブリン達に武術を教えている。
基本的に武器全般を扱えて、格闘技も超一流と優秀だった。
しかも、教えるのも上手かったので、村にいる間の仕事として割り当てた。
生産系の仕事は、全く不向きだったからというのもあるが。
「元魔王に斧を持たせるのは、お前ぐらいだ」
一振りで木が折れて、凄い勢いでゴブサクの方に倒れていったのを見て諦めた。
その後の展開が、なぜか手に取るように分かってしまったからというのもある。
ちなみにゴブサクは倒れてきた木を、片手で受け止めていた。
前は少し慌てて避けていたのに、成長したなー。
それから2日ほどで、ゴブエモンが帰ってきた。
イッヌ達を連れて。
ゴブリナもゴブエルもロイもイッヌも元気そうだ。
なぜか数人の人間が同行しているけど。
「ただいま戻りました。サトウ様」
いや、かしこまらなくてもいいから。
よくよく考えたら、俺村長でもなんでもないし。
ロードではあるけど、ゴブリンの話であって。
ゴブリン以外の村の住人は、村長のゲソチが直接の担当じゃないかな?
それから、イッヌから軽く報告を受ける。
本当に軽く。
詳細は後程と言ってミレーネとバハムルの居場所を俺に確認して、すぐに会いにいった。
2人とも、俺の家にいるけどね。
バハムルは、迎賓館はお気に召さなかったというか。
妹と一緒にいたがったというか。
ミレーネはかなり嫌そうだったけど。
血のつながった兄が側にいれば、ミレーネも変な行動はしないかなと。
あんまり意味なかったけど。
それから手紙のようなものをもって、すぐに連れてきた騎士っぽい人に渡していた。
どうしたどうした?
何かあったのか?
どうやら、ランスロットさんが投獄されてしまったらしい。
バハムルを見捨てたとかなんとかで。
いや、どちらかというとバハムルが、厄介払いしたような感じだったんだけど。
「くっ、廃嫡されてミスト王国の国民でなくなっていたら、殴ってでもバハムル殿下を帰還させたのに」
どうやら、出奔計画は失敗したらしい。
「予想外に、ゴブリナが家族に受け入れられてしまって」
いいことだと思うんだけど。
「弟が成人するまで、継承権は保留にされてしまいました」
イッヌが顔を歪ませているけど。
何が問題なのか、さっぱり分からない。
「できれば、戻ってきてほしいと言われました。というか、ゴブリナを嫁として迎え入れたいというか……子供が出来たら、ゴブリナとその子だけ戻ってきてもいいとも……」
そう言って、イッヌが遠くを見ていた。
どこか、物悲しそうな表情に何も言えず、肩を叩くしことしかできなかったけど。
ゴブリナは何をしたんだ?
「ロードの手土産と、アスマ様の手土産を渡しただけです。あとは滞在中に料理や、掃除、洗濯等をメイドに混ぜってやらせてもらっていたくらいですかね?」
ゴブリナが簡単に説明してくれた。
「家事スキルとこの村の調理技術や、アスマ様の魔法訓練の結果です。料理は王都でもなかなか食べられない美味なもの。掃除をすれば、テキパキと効率的に屋敷が綺麗になり……衣類や絨毯、カーテン等の布類についた染みに至っては、魔法で簡単に除去したりしてましたので」
優秀な嫁として認められたってことか。
それにしても、染みを消す魔法か……
俺の家のリビングのカーペットにコーヒーをこぼしたときに、アスマさんが開発した魔法だな。
「手土産の化粧品類も母を虜にしてましたし、それを入れてあった箱も弟や妹たちが取り合ってました」
子供って箱とか好きだもんな。
物を入れるだけじゃなくて、切ったりなんかして好きなものを作ったりとか。
「アスマ様の用意された書物も大変好評というか……色々と物議を醸しそうですが、王都の専門機関に送られることになりましたので」
そんな大層な書き物なのかな?
「ダンジョンの構造に関する仮説から、これまでの常識を覆すような魔道具理論が載ってますから」
そんなものを。
というか、骸骨というか書いたの人じゃないけど良いのかな?
「書物に罪はありませんから。かといって、アスマ様に何かしらの罪が……そういえば、国を一つ滅ぼしてますので大罪人ではありますが、人の法で裁ける方でもありませんし。そもそもが、希代の知恵者としても有名で様々な分野の第一人者でもありますし」
脳ミソ無いけど、希代の知恵者か……
アスマさんの方を見るが、エルハザードにチェスで圧勝してドヤりたおしていた。
肉体派相手に、大人げない知恵者だな。
他にもゴブエモンを剣の指導者として迎え入れたいという提案があったりと、彼の親もいろいろと柔軟に対応してくれたようだ。
良い人もいるもんだな。
「いえ、流石に色々と普通じゃないので、考えることを放棄しているよう見えましたが」
イッヌが疲れた笑みを浮かべていた。
それはそうと、お前の連れてきた騎士の半分は手紙をもって馬に乗って急いで行ってたけど。
まだ、半分残っているのは?
「えっと……母が、化粧品関連を買い求めておりまして」
ふと騎士たちの方を見ると、そのうちのひとりが鍵付きの木でできた箱を大事そうに持っていた。
中を開けてくれる。
金貨がびっしりと入っていた。
「これで、買えるだけとのことです」
うーん……魔王グランハザードさんの為に、食品関係の値付けはアスマさんやジニー達人間組と相談して大体終わっていたけど。
化粧品のことまでは、検討してなかった。
少し時間をもらいたい。
誰に相談しよう……
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