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第2章:風の調べとゴブリンとコボルトと
第2話:予定変更ゴブリン狩り順延
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えっちらおっちら、森の中を歩く一行。
ニコは、テッドの荷物を後ろから押している。
少し持ち上げて。
「すいません」
「えらく、たくさん持ってきたね」
「えへへ」
何が入ってるんだろう。
そう小さくないテッドがすっぽりと隠れるほどの、バックパック。
見た感じ、重量は見た目ほど無さそうだが。
それでも、軽くないことは足取りから分かる。
「あっ、ニードルラビット!」
「うわぁ、可愛いね」
「いや、そうじゃなくてですね……」
「あの、狩らないのですか?」
そんな一行の前に、ハリネズミのようなウサギが飛び出してきたが。
すぐに剣を構えたリサに対して、ニコは微笑みを浮かべてそのウサギを見ている。
それに対して、リサとミーナがちょっと困った表情をしている。
本当にニコときたら。
つくづく冒険者に向いてないことが、冒険者という仕事を分かってない俺でも分かるレベルにポンコツだ。
「魔物といえども、無益な殺生は好まないというところかな?」
「流石……」
バンチョの言葉に、テッドが感心した様子でニコを見ているが。
何も考えてないからな?
ただの、能天気だからな?
結局皮がギルドで買い取ってもらえることと、肉も肉質が柔らかく脂身がしっかりとしていて甘みも強いことからリサが狩っていたが。
投擲とでかい石で。
剣ではなかなか傷が入れられないらしい。
あと接近戦だと、針が刺さる事故につながるとか。
なるほど……というか、簡単に狩れるんだな。
まあ、やや好戦的というか。
こっちに威嚇して、逃げる様子も見られなかったからな。
これなら、普通の兎の方が生存率高そうだ。
「あっ、オオキバイノシシ!」
「うわぁ、大きい牙だね!」
「いや、そうじゃなくてですね……」
「逃げないと……」
次に出てきたのは、あれだな。
牙が凄い伸びてる猪。
湾曲しながら。
これは、寿命は牙が伸びすぎて頭に刺さるときみたいな。
そんなイメージを彷彿させる猪だ。
ただ、こいつは適度に攻撃に使えそうなレベルの湾曲具合。
根本は太く、先は鋭利に尖った牙。
一本は割れているから、ぶつけたか?
それとも、他の魔物と戦った時に傷ついたか。
身体や顔に古傷があるところを見るに、かなりの経験値は持ってそうだが。
「逃げきれるの?」
「うーん、かなり速いので難しいかと」
ミーナの逃げないとという言葉に、素直に疑問を口にしていたニコだが。
ミーナから返ってきたのは、やや後ろ向きな答え。
じゃあ、戦うしかないか。
腕力強化、筋力強化、身体強化あたりで良いかな?
下半身にもバフを掛けておこう。
「僕がやろうか?」
「えっと……C級冒険者推奨の魔物なのですが?」
「それも複数人であたるのが好ましいって、うわっ!」
「やばい、くる!」
ニコがのんびりとした様子で問いかけると、リサがちょっと言いにくそうに答えてたが。
すぐにテッドとバンチョの声にかき消される。
見ればイノシシは、片方の後ろ足で地面を蹴っている。
今から突っ込みますよって合図だな。
「受け止められるかな?」
『やめとけ。牙が手に刺さって、のたうち回るのが簡単に予想できる』
「受け止めるつもりなんですか?」
俺に対して問いかけてきたニコだが、俺の言葉は他のメンバーには聞こえない。
だからかなり驚いた様子で、テッドが聞き返していた。
「ああ……できそうだけど、受け方間違えたら牙が手に刺さりそう」
「……それ、牙が無かったら受け止められるってことですか?」
「ええっと……」
『まあ、俺が強化を全部掛ければいけるだろうが……受け止めてどうするんだ?』
「受け止めたら、皆で攻撃してもらうとか……」
「そのまま抑え込むつもりだったんですか? それ……もう、C級冒険者どころじゃないですよ」
相当なパワーを持っているということか。
ニコもレベルだけなら、それなり以上だし。
いまはバフがかかってるからな。
「来たー!」
「やばい!」
『もういい、俺を抜いて鼻先めがけて斬りつけろ!』
「うん!」
「うんって、返事が軽い!」
呑気なニコに、バンチョがびっくりしているが。
そのうんは、俺に対して言ったものだからな。
狙ってニコがやってるなら、知性に関して上方修正を入れないといけないが。
たまたま感が、どうしても否めない。
そして……
「グギャアアアア!」
ニコも2度ほど足踏みをして、地面に足をしっかりと沈ませると剣を額に向けて突き刺してイノシシの突進を受け止めた。
いや、受け止めるなよ!
てか、鼻を斬れって言ったのに、なぜ突いたし。
頭蓋骨で俺が折れたらどうするつもりだったんだ?
友人をちったあ大切にしやがれ!
まあ、折れなかったことに俺自身びっくりだが。
そして猪も額に突き立てられた剣と、自身の勢いを止められたことにかなり驚いた様子。
「止まった?」
「うそっ!」
『お前まで止まるな! 動け! 斬れ! 斬って斬って斬りまくれ!』
「はいっ!」
敏捷強化も掛けて、ザックザックとイノシシを斬り始めるニコ。
あー、まだまだ動きに無駄が多い。
脇を閉めて、肘と手首の返しを上手に使えばもっと素早く連撃が放てるのに。
まあ、ゴブロウが半年以上それを指摘しても、ちょっと改善された程度。
本当に、わざとじゃないかってくらい上達しないし、アドバイスのしがいがない。
現状、俺の掛けたバフで身体能力に物を言わせた戦闘がメイン。
ふふ……呆れる。
「速い!」
「イノシシが押されてる……」
バンチョとリサが驚いているが、俯瞰の視点ということもあるのだろうが、俺から見れば遅い。
何故あれだけ強化されて、これなのかと……
小一時間問い詰めたいくらいに……
『てか、鼻ばかり狙うな! 肩とか足とかも斬れよ! 機動力を奪え!』
「だって『俺に返事を返すな!』」
多いっ切り言い訳に困りそうな返事をしそうだったので、ピシャリと黙らせる。
戦いながら頬を膨らませているが、目の前のイノシシに集中してほしい。
そして、ニコの能力を俺の中で少し上方修正。
テッド達の様子をみるに、このイノシシはかなり強いらしい。
テトの森の中心部に現れる魔物どころか、野生動物にすら劣って見えるが。
うーん、よく見たら植生もぜんぜんこっちの方が穏やかだな。
あそこじゃ、食肉植物も多く生えてたし。
魔物か植物か分からないのも。
それを食べる小鳥とか、小動物。
ゴブリン達が簡単に狩って、ニコがちょっと苦戦する程度。
だから、ニコは全然弱いと思っていたが。
あそこの生き物たちがおかしかったのかな?
そして、ゴブリンロードってのは、やっぱり強いのか。
「ニコさんが受け止めて、僕たちが攻撃するんじゃ……」
「いや、言うなリサ……ニコさんが受け止めた時に、思わず固まってしまった俺達が悪い」
しかし、こいつらの受け取り方もいちいちポジティブだよな。
ニコの評価がうなぎ上りだが、前向きに考えすぎだろう。
こいつは何も考えてない……
というか、むしろかなり上機嫌。
なんでだ?
いや、たぶんあれだ。
ゴブリン狩りのことよりも、知り合いと森に出かけられるのが嬉しいのか。
ふふ……本当に良い奴だニコは。
産まれた街であんな目にあいながら、簡単に人を信用して楽しそうに冒険出来るんだもんな。
俺なら、裏があると疑って掛かるだろうな。
俺を利用して何かするつもりじゃあないかと。
そんなことは微塵も思って無さそう。
楽しそうに笑いながらイノシシに斬りつけてるから、はたからみるとヤバイ人だ。
ルンルンで上機嫌のニコに、思わずため息。
まあ、バンチョ達は信用に足るとは思うが。
出会ったばかりの人間を、そこまで全面的に信用していいものか。
「す……凄いですね」
「でも、これ……」
「仕方ないから、持てるだけ持って帰ろう」
「ちょっと、ゴブリン狩りは明日に仕切り直しだな。こんな立派な素材を腐らせるのはニコさんに申し訳ない」
「そうだよね……ゴブリン狩るよりよっぽど、良い収入になりそうだし」
おやおや、早速予定変更ですか。
まあ、そうか。
生活のため、金のためだもんな。
このイノシシの素材を放置して、ゴブリン狩りにいくのはよほど割に合わないのだろう。
「でも、僕たちが狩ったわけじゃないから……」
「うーん、ちょっと相談してみる」
テッドがニコが狩ったイノシシを、羨ましそうに見ているが。
そんなテッドの様子を見たバンチョが、頷いてニコに近づいていく。
うん、俺も気になる。
こいつらがどういうつもりなのか。
当初の取り決め通り、5等分を要求したら……まあ、俺の中の好感度は下がるが、なかなか悪くないと思う。
逆にニコに全額譲ったら、好感度はかなり上がるが……ちょっと色々と心配だ。
お人よし過ぎて心配ってのと、本気で何か裏があるんじゃないかって心配。
「あの、ニコさん」
「ん? ああ、流石に荷物になるから邪魔にならないだけ持ってゴブリン探し続けようか」
「はっ?」
酷いなバンチョ。
何言ってんだこいつみたいな顔になってるぞ?
「いやいやいや! これ、みんなで持てるだけ持って帰ったら、ゴブリンの間引きの報酬どころじゃないですよ?」
「えっ? でも、みんなはゴブリンを間引くのが目的なんだよね? 森に入る人の安全のために」
「……」
おっと、思わぬニコの発言に、バンチョが早々に大ダメ―ジを喰らっている。
おい、へこたれるな!
どういった交渉をするつもりだったのか、気になるだろう!
頑張れ。
「あー……でも、これ流石に放置するのにはもったいないですし、そもそもこれ1匹で、へたしたらゴブリン10匹より危険ですから……」
「そうなの? 確かにそれなら、ある意味安全確保って目的は達成してるけど……」
バンチョの説明に、ニコが思案顔だ。
「それにせっかくの収入を、僕たちのせいで不意にするのも気が引けますし」
「そっか、みんな駆け出しだから、お金はあった方がいいもんね」
「えっ?」
「5等分で良いかな?」
「いやいやいや! ダメです! 絶対にダメ!」
「ええ、だめなの? てか、5等分以外にどう分けるのさ?」
ニコの中では5等分が前提なのだろうが、バンチョはそうじゃないらしい。
ちょっと安心。
「だって、俺たち何もしてないですよ?」
「はは、僕が張り切りすぎちゃったからかな? なんか、前居たところのイノシシより小さかったからつい」
「あれ、小さいんですか? どこに住んでたんですか?」
「テトの森に1年くらい」
「森に……でも、人が住めるようなところじゃ、そんな大型種なんて」
『ペラペラ余計なこと喋るな』
このままニコに喋らせたら、ゴブリンのことまで言い出しそうだったのでストップをかける。
というかバンチョの交渉の続きが気になるのに、盛大に脱線しそうだったから。
「まあまあ、で……どう分けるの?」
「えっと、僕たちが持てるだけ運んだ分の1割で良いです」
「ええ、僕も運ぶの手伝うよ」
「いや、手伝うって表現って……おかしい。だって、ニコさんのだし……」
「ていうか運ぶの手伝ってもらって1割とか、申し訳なさすぎるよ。僕のせいで予定も変更するわけだし」
「いやいや、そもそもニコさんいなかったら、下手したら全滅してましたからね俺たち」
「またまた、大げさな」
なるほど、バンチョとしては運んだ分の1割を請求するつもりだったのか。
ポーター代わりってことかな?
ポーターって職があるのかも分からないし、相場も分からないけど。
「いいよ、いまは一緒に行動してるんだから! じゃあ、半分こね」
「うぅ……分かりました! これ以上は譲ってもらえなさそうなので、おれたちは運んだ分の半分を貰います」
「うん、それでいいよ」
それからバンチョが他のメンバーに結果を伝えに行ってたけど。
かなり、驚いた様子だったことから破格の待遇だったのだろう。
バンチョとミーナはかなり申し訳なさそうな顔をしてたけど、リサは満面の笑みだった。
臨時収入ラッキーとかって思ってそうだな。
そして、テッドはそれ以上に皺を作って笑っていた。
あれは……むしろ憧れの表情か。
俯瞰の視点越しでも、憧憬の念が伝わってくる。
そして、バンチョが頑張って前足を2本。
テッドは後ろ足と、一部の内臓を包んで持っている。
リサとミーナは牙を一本ずつ。
それでも、ちょっと辛そうだ。
で、残った素材をニコが1人で担いだ。
強化マシマシだから、正直大きな板にでも乗せて引きずればばらさなくても行けたけど。
全員が唖然としてたけど、ニコは首を傾げるだけ。
うーん……森の中心部と、ゴブリン達が判断基準になってたけど。
ちょっと、俺もニコもこの世界の常識を見つめ直した方が良いかもしれない。
ニコは、テッドの荷物を後ろから押している。
少し持ち上げて。
「すいません」
「えらく、たくさん持ってきたね」
「えへへ」
何が入ってるんだろう。
そう小さくないテッドがすっぽりと隠れるほどの、バックパック。
見た感じ、重量は見た目ほど無さそうだが。
それでも、軽くないことは足取りから分かる。
「あっ、ニードルラビット!」
「うわぁ、可愛いね」
「いや、そうじゃなくてですね……」
「あの、狩らないのですか?」
そんな一行の前に、ハリネズミのようなウサギが飛び出してきたが。
すぐに剣を構えたリサに対して、ニコは微笑みを浮かべてそのウサギを見ている。
それに対して、リサとミーナがちょっと困った表情をしている。
本当にニコときたら。
つくづく冒険者に向いてないことが、冒険者という仕事を分かってない俺でも分かるレベルにポンコツだ。
「魔物といえども、無益な殺生は好まないというところかな?」
「流石……」
バンチョの言葉に、テッドが感心した様子でニコを見ているが。
何も考えてないからな?
ただの、能天気だからな?
結局皮がギルドで買い取ってもらえることと、肉も肉質が柔らかく脂身がしっかりとしていて甘みも強いことからリサが狩っていたが。
投擲とでかい石で。
剣ではなかなか傷が入れられないらしい。
あと接近戦だと、針が刺さる事故につながるとか。
なるほど……というか、簡単に狩れるんだな。
まあ、やや好戦的というか。
こっちに威嚇して、逃げる様子も見られなかったからな。
これなら、普通の兎の方が生存率高そうだ。
「あっ、オオキバイノシシ!」
「うわぁ、大きい牙だね!」
「いや、そうじゃなくてですね……」
「逃げないと……」
次に出てきたのは、あれだな。
牙が凄い伸びてる猪。
湾曲しながら。
これは、寿命は牙が伸びすぎて頭に刺さるときみたいな。
そんなイメージを彷彿させる猪だ。
ただ、こいつは適度に攻撃に使えそうなレベルの湾曲具合。
根本は太く、先は鋭利に尖った牙。
一本は割れているから、ぶつけたか?
それとも、他の魔物と戦った時に傷ついたか。
身体や顔に古傷があるところを見るに、かなりの経験値は持ってそうだが。
「逃げきれるの?」
「うーん、かなり速いので難しいかと」
ミーナの逃げないとという言葉に、素直に疑問を口にしていたニコだが。
ミーナから返ってきたのは、やや後ろ向きな答え。
じゃあ、戦うしかないか。
腕力強化、筋力強化、身体強化あたりで良いかな?
下半身にもバフを掛けておこう。
「僕がやろうか?」
「えっと……C級冒険者推奨の魔物なのですが?」
「それも複数人であたるのが好ましいって、うわっ!」
「やばい、くる!」
ニコがのんびりとした様子で問いかけると、リサがちょっと言いにくそうに答えてたが。
すぐにテッドとバンチョの声にかき消される。
見ればイノシシは、片方の後ろ足で地面を蹴っている。
今から突っ込みますよって合図だな。
「受け止められるかな?」
『やめとけ。牙が手に刺さって、のたうち回るのが簡単に予想できる』
「受け止めるつもりなんですか?」
俺に対して問いかけてきたニコだが、俺の言葉は他のメンバーには聞こえない。
だからかなり驚いた様子で、テッドが聞き返していた。
「ああ……できそうだけど、受け方間違えたら牙が手に刺さりそう」
「……それ、牙が無かったら受け止められるってことですか?」
「ええっと……」
『まあ、俺が強化を全部掛ければいけるだろうが……受け止めてどうするんだ?』
「受け止めたら、皆で攻撃してもらうとか……」
「そのまま抑え込むつもりだったんですか? それ……もう、C級冒険者どころじゃないですよ」
相当なパワーを持っているということか。
ニコもレベルだけなら、それなり以上だし。
いまはバフがかかってるからな。
「来たー!」
「やばい!」
『もういい、俺を抜いて鼻先めがけて斬りつけろ!』
「うん!」
「うんって、返事が軽い!」
呑気なニコに、バンチョがびっくりしているが。
そのうんは、俺に対して言ったものだからな。
狙ってニコがやってるなら、知性に関して上方修正を入れないといけないが。
たまたま感が、どうしても否めない。
そして……
「グギャアアアア!」
ニコも2度ほど足踏みをして、地面に足をしっかりと沈ませると剣を額に向けて突き刺してイノシシの突進を受け止めた。
いや、受け止めるなよ!
てか、鼻を斬れって言ったのに、なぜ突いたし。
頭蓋骨で俺が折れたらどうするつもりだったんだ?
友人をちったあ大切にしやがれ!
まあ、折れなかったことに俺自身びっくりだが。
そして猪も額に突き立てられた剣と、自身の勢いを止められたことにかなり驚いた様子。
「止まった?」
「うそっ!」
『お前まで止まるな! 動け! 斬れ! 斬って斬って斬りまくれ!』
「はいっ!」
敏捷強化も掛けて、ザックザックとイノシシを斬り始めるニコ。
あー、まだまだ動きに無駄が多い。
脇を閉めて、肘と手首の返しを上手に使えばもっと素早く連撃が放てるのに。
まあ、ゴブロウが半年以上それを指摘しても、ちょっと改善された程度。
本当に、わざとじゃないかってくらい上達しないし、アドバイスのしがいがない。
現状、俺の掛けたバフで身体能力に物を言わせた戦闘がメイン。
ふふ……呆れる。
「速い!」
「イノシシが押されてる……」
バンチョとリサが驚いているが、俯瞰の視点ということもあるのだろうが、俺から見れば遅い。
何故あれだけ強化されて、これなのかと……
小一時間問い詰めたいくらいに……
『てか、鼻ばかり狙うな! 肩とか足とかも斬れよ! 機動力を奪え!』
「だって『俺に返事を返すな!』」
多いっ切り言い訳に困りそうな返事をしそうだったので、ピシャリと黙らせる。
戦いながら頬を膨らませているが、目の前のイノシシに集中してほしい。
そして、ニコの能力を俺の中で少し上方修正。
テッド達の様子をみるに、このイノシシはかなり強いらしい。
テトの森の中心部に現れる魔物どころか、野生動物にすら劣って見えるが。
うーん、よく見たら植生もぜんぜんこっちの方が穏やかだな。
あそこじゃ、食肉植物も多く生えてたし。
魔物か植物か分からないのも。
それを食べる小鳥とか、小動物。
ゴブリン達が簡単に狩って、ニコがちょっと苦戦する程度。
だから、ニコは全然弱いと思っていたが。
あそこの生き物たちがおかしかったのかな?
そして、ゴブリンロードってのは、やっぱり強いのか。
「ニコさんが受け止めて、僕たちが攻撃するんじゃ……」
「いや、言うなリサ……ニコさんが受け止めた時に、思わず固まってしまった俺達が悪い」
しかし、こいつらの受け取り方もいちいちポジティブだよな。
ニコの評価がうなぎ上りだが、前向きに考えすぎだろう。
こいつは何も考えてない……
というか、むしろかなり上機嫌。
なんでだ?
いや、たぶんあれだ。
ゴブリン狩りのことよりも、知り合いと森に出かけられるのが嬉しいのか。
ふふ……本当に良い奴だニコは。
産まれた街であんな目にあいながら、簡単に人を信用して楽しそうに冒険出来るんだもんな。
俺なら、裏があると疑って掛かるだろうな。
俺を利用して何かするつもりじゃあないかと。
そんなことは微塵も思って無さそう。
楽しそうに笑いながらイノシシに斬りつけてるから、はたからみるとヤバイ人だ。
ルンルンで上機嫌のニコに、思わずため息。
まあ、バンチョ達は信用に足るとは思うが。
出会ったばかりの人間を、そこまで全面的に信用していいものか。
「す……凄いですね」
「でも、これ……」
「仕方ないから、持てるだけ持って帰ろう」
「ちょっと、ゴブリン狩りは明日に仕切り直しだな。こんな立派な素材を腐らせるのはニコさんに申し訳ない」
「そうだよね……ゴブリン狩るよりよっぽど、良い収入になりそうだし」
おやおや、早速予定変更ですか。
まあ、そうか。
生活のため、金のためだもんな。
このイノシシの素材を放置して、ゴブリン狩りにいくのはよほど割に合わないのだろう。
「でも、僕たちが狩ったわけじゃないから……」
「うーん、ちょっと相談してみる」
テッドがニコが狩ったイノシシを、羨ましそうに見ているが。
そんなテッドの様子を見たバンチョが、頷いてニコに近づいていく。
うん、俺も気になる。
こいつらがどういうつもりなのか。
当初の取り決め通り、5等分を要求したら……まあ、俺の中の好感度は下がるが、なかなか悪くないと思う。
逆にニコに全額譲ったら、好感度はかなり上がるが……ちょっと色々と心配だ。
お人よし過ぎて心配ってのと、本気で何か裏があるんじゃないかって心配。
「あの、ニコさん」
「ん? ああ、流石に荷物になるから邪魔にならないだけ持ってゴブリン探し続けようか」
「はっ?」
酷いなバンチョ。
何言ってんだこいつみたいな顔になってるぞ?
「いやいやいや! これ、みんなで持てるだけ持って帰ったら、ゴブリンの間引きの報酬どころじゃないですよ?」
「えっ? でも、みんなはゴブリンを間引くのが目的なんだよね? 森に入る人の安全のために」
「……」
おっと、思わぬニコの発言に、バンチョが早々に大ダメ―ジを喰らっている。
おい、へこたれるな!
どういった交渉をするつもりだったのか、気になるだろう!
頑張れ。
「あー……でも、これ流石に放置するのにはもったいないですし、そもそもこれ1匹で、へたしたらゴブリン10匹より危険ですから……」
「そうなの? 確かにそれなら、ある意味安全確保って目的は達成してるけど……」
バンチョの説明に、ニコが思案顔だ。
「それにせっかくの収入を、僕たちのせいで不意にするのも気が引けますし」
「そっか、みんな駆け出しだから、お金はあった方がいいもんね」
「えっ?」
「5等分で良いかな?」
「いやいやいや! ダメです! 絶対にダメ!」
「ええ、だめなの? てか、5等分以外にどう分けるのさ?」
ニコの中では5等分が前提なのだろうが、バンチョはそうじゃないらしい。
ちょっと安心。
「だって、俺たち何もしてないですよ?」
「はは、僕が張り切りすぎちゃったからかな? なんか、前居たところのイノシシより小さかったからつい」
「あれ、小さいんですか? どこに住んでたんですか?」
「テトの森に1年くらい」
「森に……でも、人が住めるようなところじゃ、そんな大型種なんて」
『ペラペラ余計なこと喋るな』
このままニコに喋らせたら、ゴブリンのことまで言い出しそうだったのでストップをかける。
というかバンチョの交渉の続きが気になるのに、盛大に脱線しそうだったから。
「まあまあ、で……どう分けるの?」
「えっと、僕たちが持てるだけ運んだ分の1割で良いです」
「ええ、僕も運ぶの手伝うよ」
「いや、手伝うって表現って……おかしい。だって、ニコさんのだし……」
「ていうか運ぶの手伝ってもらって1割とか、申し訳なさすぎるよ。僕のせいで予定も変更するわけだし」
「いやいや、そもそもニコさんいなかったら、下手したら全滅してましたからね俺たち」
「またまた、大げさな」
なるほど、バンチョとしては運んだ分の1割を請求するつもりだったのか。
ポーター代わりってことかな?
ポーターって職があるのかも分からないし、相場も分からないけど。
「いいよ、いまは一緒に行動してるんだから! じゃあ、半分こね」
「うぅ……分かりました! これ以上は譲ってもらえなさそうなので、おれたちは運んだ分の半分を貰います」
「うん、それでいいよ」
それからバンチョが他のメンバーに結果を伝えに行ってたけど。
かなり、驚いた様子だったことから破格の待遇だったのだろう。
バンチョとミーナはかなり申し訳なさそうな顔をしてたけど、リサは満面の笑みだった。
臨時収入ラッキーとかって思ってそうだな。
そして、テッドはそれ以上に皺を作って笑っていた。
あれは……むしろ憧れの表情か。
俯瞰の視点越しでも、憧憬の念が伝わってくる。
そして、バンチョが頑張って前足を2本。
テッドは後ろ足と、一部の内臓を包んで持っている。
リサとミーナは牙を一本ずつ。
それでも、ちょっと辛そうだ。
で、残った素材をニコが1人で担いだ。
強化マシマシだから、正直大きな板にでも乗せて引きずればばらさなくても行けたけど。
全員が唖然としてたけど、ニコは首を傾げるだけ。
うーん……森の中心部と、ゴブリン達が判断基準になってたけど。
ちょっと、俺もニコもこの世界の常識を見つめ直した方が良いかもしれない。
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“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
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