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王様がおかしくなった【どぇれーことになった】(大臣)
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「なあ、大臣」
「なんでしょうか?」
「この国の、奴隷事情ってどうなってんの?」
唐突に国王陛下に声を掛けられ、そんな問いかけをされた。
どういうことだ?
まさか、奴隷でも購入して何か良からぬことを。
だいぶ、為人が改善されたとはいえ、やはり根底は愚王のまままか?
いや、もしかしたら他の目的があるかもしれない。
せっかく信じられるようになったんだ。
事情を聴いてからにしよう。
「質問の意図を図りかねますが」
その前に、陛下の望む答えの方向性だけでも、すり合わせておかねば。
「ああ、そのままの意味だよ。こないだ、侍女との話の中に出てきたんだが、どうも酷いことになってるんじゃないかとね」
「えっ? ああ、まあ……奴隷ですから」
「そうか……基本的な人権として守られている部分は、どの程度なのだ?」
「どの程度? いえ、決まったものはなく、購入者の裁量によりますな」
私の返答に、陛下が顎をさすりながら顔を顰める。
もしかして、奴隷に恩赦を与えようとしているのか?
分かりやすい支持を得られるが、奴隷からの支持だぞ?
対して、役に立とうものもなし。
「衣食住の保証くらいは与えるだろう?」
「まあ、施し程度ですな。それこそ主の度量と経済力によるとしか」
「全ての奴隷がか?」
「借金奴隷は住み込みの労働者的な立ち位置に近いものはありますが、それよりも扱いは下ですね。ただ、犯罪奴隷や違法奴隷であれば……」
「犯罪奴隷はいい、その違法奴隷というのは?」
「国が許可していない事業者による、奴隷売買で取引された奴隷ですね。まあ、誘拐や詐欺まがいの方法で集められた者が多いですね。他種族も、多く集まります」
「多く集まったらだめだろう……」
あっ、陛下が眉間を抑えて首を振っている。
お気に召さなかったらしい。
どのように答えるべきだったのだろうか。
「違法奴隷に関しては、販売側だけでなく購入側も取り締まれ。奴隷は保護、購入者には奴隷を財産とみなし、脱税で摘発して追徴課税を払わせておけ」
「つ……追徴?」
「胡麻化した分を計算して、そこに一定の利息を上乗せして請求しろってことだ」
「家を取り潰して、当主を百叩き……もしくは処刑するのでは?」
あっ、陛下が肘をついて両手を組むと、そこに額を乗せて深いため息を吐いている。
呆れた感じかな?
「一罰百戒なんてのは、噂で流してけばいいんだよ。情報操作でいくらでも同等の効果を出せるだろう? 本当にその程度で処刑だの家の取り潰しをやったら、そこから得られるものが無くなるだろう」
「い……いちばつ? じょうほうそうさ?」
「プロパガンダなど、珍しくも無かろう。この時代なら」
プロパガンダ?
陛下の口から、何やら賢そうな単語がいくつも飛び出しているが。
意味が分かっているのだろうか?
なんとなく字面で、理解はできるが。
「まあ、違法奴隷商は取り潰して、処刑でいいけどな。どうせ、変わった種族とか、他所の土地とかからも連れて来てるんだろ? 戦争の口実にされかねん。そもそも非道な行いであるし、それを見逃すのは人道的ではないだろう?」
よく分からないけど、そういうことなのだろう……
「明日から「今すぐだ」」
忙しくなってきた。
仕事で……
ちゃんとした仕事で。
久しぶりかも
「なんでしょうか?」
「この国の、奴隷事情ってどうなってんの?」
唐突に国王陛下に声を掛けられ、そんな問いかけをされた。
どういうことだ?
まさか、奴隷でも購入して何か良からぬことを。
だいぶ、為人が改善されたとはいえ、やはり根底は愚王のまままか?
いや、もしかしたら他の目的があるかもしれない。
せっかく信じられるようになったんだ。
事情を聴いてからにしよう。
「質問の意図を図りかねますが」
その前に、陛下の望む答えの方向性だけでも、すり合わせておかねば。
「ああ、そのままの意味だよ。こないだ、侍女との話の中に出てきたんだが、どうも酷いことになってるんじゃないかとね」
「えっ? ああ、まあ……奴隷ですから」
「そうか……基本的な人権として守られている部分は、どの程度なのだ?」
「どの程度? いえ、決まったものはなく、購入者の裁量によりますな」
私の返答に、陛下が顎をさすりながら顔を顰める。
もしかして、奴隷に恩赦を与えようとしているのか?
分かりやすい支持を得られるが、奴隷からの支持だぞ?
対して、役に立とうものもなし。
「衣食住の保証くらいは与えるだろう?」
「まあ、施し程度ですな。それこそ主の度量と経済力によるとしか」
「全ての奴隷がか?」
「借金奴隷は住み込みの労働者的な立ち位置に近いものはありますが、それよりも扱いは下ですね。ただ、犯罪奴隷や違法奴隷であれば……」
「犯罪奴隷はいい、その違法奴隷というのは?」
「国が許可していない事業者による、奴隷売買で取引された奴隷ですね。まあ、誘拐や詐欺まがいの方法で集められた者が多いですね。他種族も、多く集まります」
「多く集まったらだめだろう……」
あっ、陛下が眉間を抑えて首を振っている。
お気に召さなかったらしい。
どのように答えるべきだったのだろうか。
「違法奴隷に関しては、販売側だけでなく購入側も取り締まれ。奴隷は保護、購入者には奴隷を財産とみなし、脱税で摘発して追徴課税を払わせておけ」
「つ……追徴?」
「胡麻化した分を計算して、そこに一定の利息を上乗せして請求しろってことだ」
「家を取り潰して、当主を百叩き……もしくは処刑するのでは?」
あっ、陛下が肘をついて両手を組むと、そこに額を乗せて深いため息を吐いている。
呆れた感じかな?
「一罰百戒なんてのは、噂で流してけばいいんだよ。情報操作でいくらでも同等の効果を出せるだろう? 本当にその程度で処刑だの家の取り潰しをやったら、そこから得られるものが無くなるだろう」
「い……いちばつ? じょうほうそうさ?」
「プロパガンダなど、珍しくも無かろう。この時代なら」
プロパガンダ?
陛下の口から、何やら賢そうな単語がいくつも飛び出しているが。
意味が分かっているのだろうか?
なんとなく字面で、理解はできるが。
「まあ、違法奴隷商は取り潰して、処刑でいいけどな。どうせ、変わった種族とか、他所の土地とかからも連れて来てるんだろ? 戦争の口実にされかねん。そもそも非道な行いであるし、それを見逃すのは人道的ではないだろう?」
よく分からないけど、そういうことなのだろう……
「明日から「今すぐだ」」
忙しくなってきた。
仕事で……
ちゃんとした仕事で。
久しぶりかも
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