王様がおかしくなった~憑依? 転生? 別人格が乗り移り色々とやらかします~

へたまろ

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私がおかしくなった【独り言?そういうとこ?】(ハジャマール教会枢機卿の場合)

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 私が、詐欺師だと!
 何を馬鹿げたことを!
 無礼にも程がある。
 
 このチビマール王国の国王、デブで愚物と評判の馬鹿の前を辞去して教会に戻る馬車の中で先の謁見のことを思い出す。
 思い出すだけでも、腹立たしい。
 腹立たしいが、陛下のあの目が気になる。
 赤く光を放っておったが。
 まるで悪魔のようだ。

 まさか、悪魔が憑かれたのか?

 にしては、若干ではあるが厳かなオーラも感じられた。

 念のためにステータスの確認を行うか。
 うむ、確認のためだ。
 別にあの豚の言うことを信じたわけじゃない。

 豚とは呼べぬほどに、スリムになってはいたが。

 教会に戻ると、司祭に命じてステータス鑑定の儀を行わせた。
 勿論、他言無用。
 内容は私のみが確認できるように。

 ……愕然とした。
 肩書はハジャマール教枢機卿。
 そして、その横に詐欺師の文字が。

 私の信仰が、揺らいでいる?
 いや、確かにこの教会に勤めて40年。
 神の存在を感じ取ることは出来なかった。
 猜疑心が芽生えていたのも事実だ。

 神を信じぬものが神の存在を騙って、説法をする。
 確かに詐欺のようなものだな。

 ……初めて神託が下った。
 飲酒を咎められた。
 夢だったのだろうか。
 にしては、生々しい。

 いや飲酒を禁じられたわけじゃない。
 高い酒を毎晩、浴びるように飲んでいることを咎められた。

 しかしだなぁ……愚痴にも近い信者の悩み相談を毎日行っていたら、気がくさくさするのは仕方ないだろう。
 そういった鬱憤を晴らすためにも……

 あっ、陛下の快気を祈る儀式で、本気で祈っていなかったのも理由?
 あとは、少しでも多くのお布施を王族や信者から要求してきたことも?
 いやいや、それはハジャマール神の為を思ってこそ……その中から、酒代を出している?
 あー……えっと、必要経費と言いますか……限度がある?

 はい、申し訳ありません。

 ふむ。
 神に申し開きは出来ても、胡麻化せるはずもなし。
 確かに、おっしゃられる通りで。
 ぐうの音もでません。

 禁酒まではしなくともいいとの、有難いお言葉を頂きました。
 あー……罰当たりという言葉も、軽々しく使わないようにと。
 神はそこまで狭量ではないと。
 ばちがあるなら、真っ先に私に下すと。

 寛容な対応、誠にありがとうございます。
 
 しかし、お言葉ですが……何故、今頃になって?
 もう少し早くに神託を頂ければ、もっと信仰を深めて……はい、言い訳です。
 神の存在を感じることが出来なかった私が未熟でございます。

 えっと陛下を治されたのは……ああ、僅かばかりの助力はしたが薬の力と。
 手遅れだったが、やりようはあったと。
 そのやりようというのは?
 それは教えていただけないと。

 ただ、今の陛下は……神徒に近いと。
 本人には伝えていない?
 ということは、この国の興りにあった王権神授は? 事実?

 はへぇ……

 思わず、間抜けな声が出てしまった。
 そして、そこから疑っている私が枢機卿に選ばれている、今のハジャマール教に失望していると。
 
 ご安心を。
 先ほどから、私の信仰心は振り切れております。
 具体的には、神託を受けた時からですかね?

 本来なら神サイドから授けるのではなく、信者の方からその高みにまで登ってほしいと。
 そこまでいかれた方は、過去にいらっしゃるのでしょうか?

 ああ、それが初代法王にしてこの国の祖になった、初代国王陛下と。
 ……私がそこまで上り詰めたら、ワンチャン王になれた可能性も。
 そういった煩悩がある限り、一生無理?

 ですよね。
 
 今更、精進しても手遅れかもしれませんが、一生懸命努めさせていただきます。
 なにとぞ、見捨てないでくだ……寛容なお言葉ありがとうございます。

 あの……ちょっと、イラっとしてません?

 そんなことない?

 そういうところ?

 そういうところが、ハジャマール神様や陛下に教会指導者としての資質を疑われる原因?

 なるほど……

 ……気を付けます。
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