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陛下がおかしくなった【神塩対応】(教会庁職員)
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「この度はご快復おめでとうございまする」
目の前で優し気な笑みを浮かべた男性が、陛下に謁見し頭を下げて祝辞を述べている。
それを受けている陛下は、どこか鼻白んだ様子でそっぽを向いている。
玉座の肘置きに肘を立てて、掌で顎を抑えつつ。
まったく興味がありませんってポーズだ。
いいのかな?
わざわざ、国内最大の宗教派閥のハージャマル教の枢機卿がお見舞いに来てくれたのに。
ハージャマル教は、この国の守護神ハージャマル様を祀る宗教だ。
そしてこのハージャマル様こそ、この国の国王の祖にあたるとされている。
初代国王陛下を死後、天の国で養子として迎え入れる代わりにこの地を与えたと。
そして、代々の国王は生きている間はただの人だが、死後はハージャマル様の系譜の末端に名を連ねることになるという伝承が残っている。
だから、少々残念な王様でもみんな我慢している。
神の系譜の中には、負の概念を司る神もいる。
そういった神に派遣する人材として、悪しき王もまた正しい存在として認められているとか。
都合の良い解釈だと思ったけど、過去この国でクーデターが成功したことが無いことを考えると……神掛かった守護があってもおかしくない。
神様って残酷だなと思ったけど、神様もいちいち人間一人一人を気にしていられないか。
「偏に、我らの祈りが天に通じ、ハージャマル様の元に思いが届いたゆえに「違うな。王家専属の医師が昼夜を問わず、必死に処置をしたからだ……それに、俺は死んだぞ? お前たちの思いが神に通じたなら、何かしらの神託が俺にあってもおかしくないと思うが? ハージャマルとやらは、何もしてくれなかったと記憶しているが?」」
陛下の言葉に、枢機卿が面食らった表情を浮かべている。
そして、口をあわあわさせている。
「な……なんと、罰当たりな! ハージャマル様を呼び捨てるとは!」
「そういうお前は無礼だな」
うーん、どっちもどっち。
でも、陛下の方が少し有利かな?
「そもそも、俺の先祖はみなハージャマル様の眷属になってるんだけどさ? たかだか、信仰してるだけの奴が偉そうに、俺のルーツともいえる神様を利用して好き勝手してるのって……気に入らないなぁ」
まあ、確かに。
うちの部署にも、ハージャマル教の不満は多く届いている。
匿名で。
だって、実名で届けたら間違いなく断罪されるからね。
王族と、教会から。
今の陛下は……気にしないのか。
「大体おまえらさぁ、国家予算で運営成り立ってるのに、お布施まで取るとかどうなの? それこそ、罰当たりじゃね?」
「なんとも嘆かわしい。それが、王族の言葉遣いでしょうか」
「ばあやみたいなことを言うんだなお前は。まあ、お前に俺の教育を心配される謂れもないが」
何やら、陛下は気分がすぐれないのでしょうか?
八つ当たりのようにも、思えるけど。
「少しでも多くの供物を、神の御許に届けるためにも「物じゃなくて、祈りを届けろよ! 俺の病気も治せなかったくせに」」
あっ、普通に薬と睡眠で、例の謎の高熱は治ったと陛下は信じているようですが。
もしかしたら、祈りの効果も。
「お前……ステータスに詐欺師って出てるからな? 神にも見放されたぞ」
「なんと、心無い言葉を! 言って良い事と、悪いことがありますぞ」
陛下……それは、無理がありますよ。
ステータスは、専門家が専用の道具を使って行わないと見られないものですよ。
パッと見で……目が赤く光っててそれっぽいですけど、パッと見で分かるものじゃありません。
なんか、ハッタリとしては効きそうな目ですね。
「まあ、俺もあの熱の後から色々と変わったのさ。一度、死んだからな。そうそう、医師が用意してくれた薬にはきちんと解熱作用があったし、薬膳も栄養面としては100点満点中65点はあったぞ? あながち、民間療法も捨てたもんじゃないな」
100点満点中の65点は高いのでしょうか?
「栄養学が発展してないこの世界じゃ、かなり優秀だと思うぞ? 必要な栄養素の七割弱を得られたんだから」
あれ? 私の心の声を読まれました?
いや、ウィンクで胡麻化されませんよ。
……もしかして、一度死んだというのは事実なのでしょうか?
そして、死んだということはすでにハジャマール神の系譜に名前が載った?
となれば、枢機卿に対するこの態度も頷けますね。
「教会庁のこれからの仕事はあれだ、全ての宗教に平等に接することだな。信教の自由を認めるから、それも広く発布しろ! あと、宗教が政治に絡むことは許さん! 政教分離を徹底しろ! そもそも、神様がそんな俗っぽいわけないだろ! 富だのなんだの、求めるわけもなし。金銭を要求する時点でおかしいわ! いや、確かに金もいるが……基本は、物だろう!」
神の系譜に名を連ねて、宗教が嫌いになるってあるのかな?
もしかして、一時的に死んだときに神様と何かあったのかな?
詳しい話が気になるけど、聞くのが怖い。
あと、枢機卿?
そこで、ボーっとしてるけど、もう帰った方が良いと思う。
以前と比べて、かなり寛容にはなってるけど。
元は、あの首切り陛下だよ。
いや、八割がたクビだけど。
二割は物理的な首だった陛下だからね?
下手したら、枢機卿でも身体は置いてくことになるかもしれないから。
ささ、早く。
「いや、そんなことしないから。お前も、大概無礼だな」
また、心を読まれた?
いや、ウィンクされても、なんのフォローにもなりませんって。
目の前で優し気な笑みを浮かべた男性が、陛下に謁見し頭を下げて祝辞を述べている。
それを受けている陛下は、どこか鼻白んだ様子でそっぽを向いている。
玉座の肘置きに肘を立てて、掌で顎を抑えつつ。
まったく興味がありませんってポーズだ。
いいのかな?
わざわざ、国内最大の宗教派閥のハージャマル教の枢機卿がお見舞いに来てくれたのに。
ハージャマル教は、この国の守護神ハージャマル様を祀る宗教だ。
そしてこのハージャマル様こそ、この国の国王の祖にあたるとされている。
初代国王陛下を死後、天の国で養子として迎え入れる代わりにこの地を与えたと。
そして、代々の国王は生きている間はただの人だが、死後はハージャマル様の系譜の末端に名を連ねることになるという伝承が残っている。
だから、少々残念な王様でもみんな我慢している。
神の系譜の中には、負の概念を司る神もいる。
そういった神に派遣する人材として、悪しき王もまた正しい存在として認められているとか。
都合の良い解釈だと思ったけど、過去この国でクーデターが成功したことが無いことを考えると……神掛かった守護があってもおかしくない。
神様って残酷だなと思ったけど、神様もいちいち人間一人一人を気にしていられないか。
「偏に、我らの祈りが天に通じ、ハージャマル様の元に思いが届いたゆえに「違うな。王家専属の医師が昼夜を問わず、必死に処置をしたからだ……それに、俺は死んだぞ? お前たちの思いが神に通じたなら、何かしらの神託が俺にあってもおかしくないと思うが? ハージャマルとやらは、何もしてくれなかったと記憶しているが?」」
陛下の言葉に、枢機卿が面食らった表情を浮かべている。
そして、口をあわあわさせている。
「な……なんと、罰当たりな! ハージャマル様を呼び捨てるとは!」
「そういうお前は無礼だな」
うーん、どっちもどっち。
でも、陛下の方が少し有利かな?
「そもそも、俺の先祖はみなハージャマル様の眷属になってるんだけどさ? たかだか、信仰してるだけの奴が偉そうに、俺のルーツともいえる神様を利用して好き勝手してるのって……気に入らないなぁ」
まあ、確かに。
うちの部署にも、ハージャマル教の不満は多く届いている。
匿名で。
だって、実名で届けたら間違いなく断罪されるからね。
王族と、教会から。
今の陛下は……気にしないのか。
「大体おまえらさぁ、国家予算で運営成り立ってるのに、お布施まで取るとかどうなの? それこそ、罰当たりじゃね?」
「なんとも嘆かわしい。それが、王族の言葉遣いでしょうか」
「ばあやみたいなことを言うんだなお前は。まあ、お前に俺の教育を心配される謂れもないが」
何やら、陛下は気分がすぐれないのでしょうか?
八つ当たりのようにも、思えるけど。
「少しでも多くの供物を、神の御許に届けるためにも「物じゃなくて、祈りを届けろよ! 俺の病気も治せなかったくせに」」
あっ、普通に薬と睡眠で、例の謎の高熱は治ったと陛下は信じているようですが。
もしかしたら、祈りの効果も。
「お前……ステータスに詐欺師って出てるからな? 神にも見放されたぞ」
「なんと、心無い言葉を! 言って良い事と、悪いことがありますぞ」
陛下……それは、無理がありますよ。
ステータスは、専門家が専用の道具を使って行わないと見られないものですよ。
パッと見で……目が赤く光っててそれっぽいですけど、パッと見で分かるものじゃありません。
なんか、ハッタリとしては効きそうな目ですね。
「まあ、俺もあの熱の後から色々と変わったのさ。一度、死んだからな。そうそう、医師が用意してくれた薬にはきちんと解熱作用があったし、薬膳も栄養面としては100点満点中65点はあったぞ? あながち、民間療法も捨てたもんじゃないな」
100点満点中の65点は高いのでしょうか?
「栄養学が発展してないこの世界じゃ、かなり優秀だと思うぞ? 必要な栄養素の七割弱を得られたんだから」
あれ? 私の心の声を読まれました?
いや、ウィンクで胡麻化されませんよ。
……もしかして、一度死んだというのは事実なのでしょうか?
そして、死んだということはすでにハジャマール神の系譜に名前が載った?
となれば、枢機卿に対するこの態度も頷けますね。
「教会庁のこれからの仕事はあれだ、全ての宗教に平等に接することだな。信教の自由を認めるから、それも広く発布しろ! あと、宗教が政治に絡むことは許さん! 政教分離を徹底しろ! そもそも、神様がそんな俗っぽいわけないだろ! 富だのなんだの、求めるわけもなし。金銭を要求する時点でおかしいわ! いや、確かに金もいるが……基本は、物だろう!」
神の系譜に名を連ねて、宗教が嫌いになるってあるのかな?
もしかして、一時的に死んだときに神様と何かあったのかな?
詳しい話が気になるけど、聞くのが怖い。
あと、枢機卿?
そこで、ボーっとしてるけど、もう帰った方が良いと思う。
以前と比べて、かなり寛容にはなってるけど。
元は、あの首切り陛下だよ。
いや、八割がたクビだけど。
二割は物理的な首だった陛下だからね?
下手したら、枢機卿でも身体は置いてくことになるかもしれないから。
ささ、早く。
「いや、そんなことしないから。お前も、大概無礼だな」
また、心を読まれた?
いや、ウィンクされても、なんのフォローにもなりませんって。
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