王様がおかしくなった~憑依? 転生? 別人格が乗り移り色々とやらかします~

へたまろ

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この孤児たちおかしい【阿形吽形】(近衛兵)

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「うわあ、やられたー」

 騎士団の訓練場で、陛下が倒れている。
 斬り付けたのは、二人の童子だ。
 双子の子。
 歳は、4つか5つ。
 名を、フウとライという。
 元々名前が無かった孤児だが、陛下が名を授けた。
 二人は、いま騎士団預かりで剣の修練をさせている。
 高名な剣術道場の指南役も招いて、指導をしている。
 それほどまでに、才気あふれる子たちだった。

 その特訓の成果を見たいと陛下がおっしゃられた。
 そして、二対一での決闘となった。

 いや、その子たち二人そろうと手が付けられないのですが? 
 騎士団の新兵程度なら、手も足も出ずにのされるほどに。
 近衛の私ですら、手心を加えるのを躊躇うレベルで。

「フウ! ライ! よく励んでいるな」

 陛下が、起き上がって二人の頭を優しく撫でる。
 二人とも無言で頷いていたが、とても嬉しそうなのは分かる。
 というか、立ち直り早くないですか?
 木剣で、割と強めにいかれてたと思うのですが。

「見事なものですな……斬られる瞬間に、剣速よりも気持ち遅めの速度で斬撃の進行方向に身体を流すとは。身体の軸がしっかりとされており、柔軟性にも優れておられるようで」

 剣術道場から呼んだ指南役が、顎髭をさすりながら感心したように頷いている。
 そうか……全然、分からなかった。

「二人とも俺より強いから、俺の護衛にいつでもなれるな!」

 陛下の言葉に、二人が頷く。

父様ちちさまは、ボクたちが守る」

 そして、二人が同時に呟いた。
 いや、声が小さいから呟いたように聞こえただけかもしれないけど。
 てか、喋ることできたんだ。

「はっはっは、頼りにしているぞ」

 陛下も、嬉しそうだ。
 
 ……この王城には、多くの才気溢れる子たちがいる。
 全員が孤児出身だ。
 陛下が後見し、名前のない者には名を授けている。
 そして、皆が陛下を父と呼んでいる。
 陛下が満更じゃなさそうだから、誰も何も言わない。
 言わないだけで、不満が無いわけでもない。
 こんな素性も定かでない者たちに、父と呼ばせるなど。
 
 一昔前の陛下なら、考えられないことだが。
 本当に、お優しくなった。

 本当に二人を連れて、街に出かけられた。
 慌ててついていく。
 本日の護衛役は、私の仕事だ。
 陛下の前を、二人の幼子が歩いているが。
 真剣な目で周囲を伺っている。
 本当に護衛のつもりらしい。

 微笑ましいし、可愛らしい。
 腕前は可愛らしくないが。

 いや、私の仕事……

「気にするな。やる気があるのだ。今が、伸びるときだろう」
「は、はあ」

 思わず、気の抜けた返事をしてしまった。
 陛下の気安い声掛けに。
 本当に変わったのかどうか半信半疑の者たちは、気安い陛下への返答に頭を悩ませている。
 素直に受け取って、下手なことを言った時……果たして、本当に許してもらえるのかと。
 それほどまでに、信用が無い。
 以前の陛下をよく知る者からすれば。

 しかし、身なりの良い子供たちが歩いていると、良からぬことを考えるものも現れるわけで。
 そんなわけないか。
 誘拐犯のような者たちがいるとはいえ、近衛の格好をした私がすぐそばを歩いているわけだし。
 この街の奴隷商は、まっとうなところ以外は全て潰れた。
 
 いわゆる違法奴隷を扱っている連中。
 犯罪奴隷は国の管轄で、国指定の奴隷商が扱う。
 借金奴隷は、商会経由だ。
 ただし、契約書の監査が抜き打ちで入る。
 勿論、借用書も含めて。
 そこで、違法性が認められたら……商会の責任者が犯罪奴隷落ちすることもあるようになった。
 
 借金奴隷がかなり減ったのは……そういうことだったのだろう。
 必然、治安もよくなった。
 人攫いをしたところで、商品として扱えないわけだ。
 遠くに売りに行こうにも、何故か見つかってしまうらしいし。

 なので、野盗が馬車を襲っても、人は殺されるか見逃されるかになった。
 稀に、野盗のために人が攫われる程度、
 人買いに売る目的での誘拐は無くなった。

 その野盗も減っている。
 街道整備の仕事の人夫に混じっているとか。
 まあ、まっとうな手段でお金が得られるなら、そちらを選ぶか。

 それからしばらくして、おかしな噂が流れ始めた。
 犯罪組織の拠点が、片っ端から潰されていってるらしい。
 小さな子供を二人連れた、割とガッシリとした謎の男性の手によって。
 その男の腕も尋常じゃないが、子供二人が人並み外れているらしい。

 まさかね……
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