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王様がおかしくなった【山へ行こう!】(近衛兵)ソロキャン中編
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早朝に出発したからか、目的地の山に到達したが昼までは時間がありそうだ。
目の前では、陛下が軽い足取りで山を登っている。
大きな荷物を背負って。
あれは、本当に陛下なのだろうか?
いつの間にか、魔物に化かされているということはないだろうか?
そういった伝承は、各地にある。
いつの間にか王や、領主、姫や王子が魔族や魔物に成り代わっていたという話。
現実に起こりえるかは別として、少し前の陛下とは同一人物とは思えない。
「なんだ、不思議そうな顔をして」
「いえ、随分と体力と力がお付きになりましたね。足腰もしっかりとしておりますし」
「ああ、少しズルをしてるからな」
ズル……ですか。
あー……話半分で聞いていたあれですか。
魔力による身体強化も出来るようになったとかって。
本当なのだろうか……目の前の陛下から、まったく疲労の色が見えないことから一概に嘘とも言えない。
本当に、魔族と入れ替わったりしてないですよね?
「とりあえず、ここが目的の場所だ」
さほど登った場所ではない。
中腹とまではいかないだろう。
だが、綺麗な川が流れている。
それなりに、大きいな。
「ここなら、美味い魚が釣れそうだと思ってな。それから、簡単な燻製肉なんかも作ろうかと思ってな」
そう言って、陛下が荷物を広げる。
何やら丸い板のようなものが、同じサイズの袋から出てきた。
その袋自体も、そこまで大きくない。
背負っている鞄と背中の間に収まるサイズで、薄い。
ちなみに、私も同じものを同じように持たされていた。
そして、陛下がをそれを宙に放った……えっ?
「ポップアップテントだよ。簡単に設置できて便利だろ」
私も同じように、袋から取り出して放り投げてみる。
というか、袋から出した時点で広がるような力が、抵抗として手に加わっていたが。
簡単に、テントが……
出入口は……陛下が最近広められた、ファスナーなるものか。
しかし……えっ?
「驚いただろう? でもな……畳むのが、少し面倒なんだ。ちなみに大きいサイズのものもあるが、重くは無いがあれと荷物を持つのは面倒だからな」
なるほど……元の形に、畳める自身がないのですが。
「ああ、面倒というのは……少しコツがいるというだけだ。あと、綺麗に畳めないから神経質なやつには、向かないかもな……生地の皺が気になりだしたり、微妙に残った空気が気になりだしたら延々にやり直す羽目になる……そして、諦める。無駄な時間を過ごすことになるな」
それから、陛下がジャケットの胸ポケットから、短めの筒を取り出した。
キャップを取って振ると、筒が一気に伸びる。
さらにポケットから、何か変わった形のものが。
円柱のゴテゴテした何かに、金床のような形をした突起が側面についている。
台座部分を外側にした感じの。
それを筒の横に……台座っぽい部分をつける。
その金床っぽい何かを引っ付けた部分の上下にある部品をスライドさせると、固定が出来ると。
へえ、これで台座部分の両サイドを覆う形で固定するのか。
円柱部分からスルスルと糸が伸びてきた。
それを伸ばした棒に一定間隔で付いている輪っかに通して……
さらには、横が開いてこれまた突起物が増えた。
クランクのような形。
ハンドル?
糸の先に針をつけて、その上に鉛の小さな塊。
糸の上の方に、カラフルな凄く細長い木の棒。
鞄から取り出した、食べ物らしきものを針に付けて。
ええ、分かりますよ。
ここまで見たら、理解できます。
陛下は、釣りがしたかったのですね。
そして、振り子のように何度か振って勢いをつけて、ちょうど大きな岩の側に針が落ちました。
「ナイスキャストだな」
ナイスキャスト?
「良い位置に、針が落とせたってことさ。ほら、お前もやってみろ」
そう言って、竿をもう一本渡されました。
なんだかんだで、面倒を掛けてるなぁ……
「おかしくないですか?」
「経験の差だよ」
「いや、陛下が釣りをなさるなんて話は、聞いたことが無いというか……外に出る事すら、滅多になかったではないですか」
陛下が用意した入れ物に、魚がたくさん。
陛下の方に。
私の方は、ほとんど入っていない。
いや、3匹ほど。
昼と夜と、明日の朝に一匹ずつと考えたら、十分だ。
ちなみに魚を入れている入れ物。
これも最初は、丸い板だった。
陛下が引っ張ると、筒になった。
で、水を入れて魚を入れるように。
しかし、陛下の入れ物に入っている魚は12匹。
どれも、元気いっぱい。
私の方は、最初に釣った一匹は、腹を上にして浮いている。
口を動かしているから、死んではいない。
針を取るのに、手こずった結果だ。
魚が針を飲んでしまったからだ。
どうせ殺して食べるとはいえ、可哀そうな気分になった。
「さてと、これだけ釣れば十分だな。10匹は燻製にして、残りは焼いて昼に食うか……夜は肉が食べたいから、鳥か兎だな」
何やら食事に思いを馳せているみたいですが、そもそも調理は……そういえば、出来るんでしたね。
料理長が言ってましたから。
それなりの腕前だって。
鳥もすぐに、陛下は捕まえてしまいました。
両端に錘を付けたロープを使って。
それを頭の上で振り回して投げると、鳥の首にクルクルと絡まって……
どこで、そんな技術を?
それ、背後からなら人相手でも使える凶器というか、技術では?
「お前は、恐ろしいことを考えるな」
「出来ないとは言わないんですね」
私の言葉に、鼻で笑って火を起こし始めました。
……陛下には、背中を見せないようにしよう。
目の前では、陛下が軽い足取りで山を登っている。
大きな荷物を背負って。
あれは、本当に陛下なのだろうか?
いつの間にか、魔物に化かされているということはないだろうか?
そういった伝承は、各地にある。
いつの間にか王や、領主、姫や王子が魔族や魔物に成り代わっていたという話。
現実に起こりえるかは別として、少し前の陛下とは同一人物とは思えない。
「なんだ、不思議そうな顔をして」
「いえ、随分と体力と力がお付きになりましたね。足腰もしっかりとしておりますし」
「ああ、少しズルをしてるからな」
ズル……ですか。
あー……話半分で聞いていたあれですか。
魔力による身体強化も出来るようになったとかって。
本当なのだろうか……目の前の陛下から、まったく疲労の色が見えないことから一概に嘘とも言えない。
本当に、魔族と入れ替わったりしてないですよね?
「とりあえず、ここが目的の場所だ」
さほど登った場所ではない。
中腹とまではいかないだろう。
だが、綺麗な川が流れている。
それなりに、大きいな。
「ここなら、美味い魚が釣れそうだと思ってな。それから、簡単な燻製肉なんかも作ろうかと思ってな」
そう言って、陛下が荷物を広げる。
何やら丸い板のようなものが、同じサイズの袋から出てきた。
その袋自体も、そこまで大きくない。
背負っている鞄と背中の間に収まるサイズで、薄い。
ちなみに、私も同じものを同じように持たされていた。
そして、陛下がをそれを宙に放った……えっ?
「ポップアップテントだよ。簡単に設置できて便利だろ」
私も同じように、袋から取り出して放り投げてみる。
というか、袋から出した時点で広がるような力が、抵抗として手に加わっていたが。
簡単に、テントが……
出入口は……陛下が最近広められた、ファスナーなるものか。
しかし……えっ?
「驚いただろう? でもな……畳むのが、少し面倒なんだ。ちなみに大きいサイズのものもあるが、重くは無いがあれと荷物を持つのは面倒だからな」
なるほど……元の形に、畳める自身がないのですが。
「ああ、面倒というのは……少しコツがいるというだけだ。あと、綺麗に畳めないから神経質なやつには、向かないかもな……生地の皺が気になりだしたり、微妙に残った空気が気になりだしたら延々にやり直す羽目になる……そして、諦める。無駄な時間を過ごすことになるな」
それから、陛下がジャケットの胸ポケットから、短めの筒を取り出した。
キャップを取って振ると、筒が一気に伸びる。
さらにポケットから、何か変わった形のものが。
円柱のゴテゴテした何かに、金床のような形をした突起が側面についている。
台座部分を外側にした感じの。
それを筒の横に……台座っぽい部分をつける。
その金床っぽい何かを引っ付けた部分の上下にある部品をスライドさせると、固定が出来ると。
へえ、これで台座部分の両サイドを覆う形で固定するのか。
円柱部分からスルスルと糸が伸びてきた。
それを伸ばした棒に一定間隔で付いている輪っかに通して……
さらには、横が開いてこれまた突起物が増えた。
クランクのような形。
ハンドル?
糸の先に針をつけて、その上に鉛の小さな塊。
糸の上の方に、カラフルな凄く細長い木の棒。
鞄から取り出した、食べ物らしきものを針に付けて。
ええ、分かりますよ。
ここまで見たら、理解できます。
陛下は、釣りがしたかったのですね。
そして、振り子のように何度か振って勢いをつけて、ちょうど大きな岩の側に針が落ちました。
「ナイスキャストだな」
ナイスキャスト?
「良い位置に、針が落とせたってことさ。ほら、お前もやってみろ」
そう言って、竿をもう一本渡されました。
なんだかんだで、面倒を掛けてるなぁ……
「おかしくないですか?」
「経験の差だよ」
「いや、陛下が釣りをなさるなんて話は、聞いたことが無いというか……外に出る事すら、滅多になかったではないですか」
陛下が用意した入れ物に、魚がたくさん。
陛下の方に。
私の方は、ほとんど入っていない。
いや、3匹ほど。
昼と夜と、明日の朝に一匹ずつと考えたら、十分だ。
ちなみに魚を入れている入れ物。
これも最初は、丸い板だった。
陛下が引っ張ると、筒になった。
で、水を入れて魚を入れるように。
しかし、陛下の入れ物に入っている魚は12匹。
どれも、元気いっぱい。
私の方は、最初に釣った一匹は、腹を上にして浮いている。
口を動かしているから、死んではいない。
針を取るのに、手こずった結果だ。
魚が針を飲んでしまったからだ。
どうせ殺して食べるとはいえ、可哀そうな気分になった。
「さてと、これだけ釣れば十分だな。10匹は燻製にして、残りは焼いて昼に食うか……夜は肉が食べたいから、鳥か兎だな」
何やら食事に思いを馳せているみたいですが、そもそも調理は……そういえば、出来るんでしたね。
料理長が言ってましたから。
それなりの腕前だって。
鳥もすぐに、陛下は捕まえてしまいました。
両端に錘を付けたロープを使って。
それを頭の上で振り回して投げると、鳥の首にクルクルと絡まって……
どこで、そんな技術を?
それ、背後からなら人相手でも使える凶器というか、技術では?
「お前は、恐ろしいことを考えるな」
「出来ないとは言わないんですね」
私の言葉に、鼻で笑って火を起こし始めました。
……陛下には、背中を見せないようにしよう。
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