王様がおかしくなった~憑依? 転生? 別人格が乗り移り色々とやらかします~

へたまろ

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王様がおかしくなった【独裁者】(従者)

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 最近の陛下は、熱心に運動をされていることが多い。
 最初は何をしているのか分からなかったけど、最近ははっきりと分かる。
 
 うん、まさかあれが走り込みだったとは。
 歩いた方が速いんじゃないかと思えるような、愚鈍な動き。
 揺れるお腹のお肉。
 死にそうな呼吸と、鬼気迫る表情。

 これ……庭にたどり着いた時点での話です。
 そう、準備体操の前段階。
 いくら病み上がりとはいえ、流石に……

 いまでは、小走りで庭園を何周もしてます。
 一年間も、頑張ってますからね。

 お顔もスッキリされて、王太后様に似て来てます。
 いや、元々似ていたのです。
 お肉がそれを隠されていたのでしょう。
 
 そして、鏡の前でよく溜息を吐かれています。
 理想には届いていないのでしょう。

 鏡が気に入らない?
 いえ、鏡のせいにしてはいけませんよ。
 これでも、このサイズの銀鏡を準備するのは大変ですのに。
 それにすぐに錆びたり、曇ったりもするので手入れも大変なのです。

「いや錫を使ったガラス鏡くらい、どこかにあるだろう……」

 陛下のぼやいている声が聞こえますが、異国にはそういったものもあるかもしれません。
 ですが、ガラスを使った鏡です……ガラスなのです。
 馬車での長距離輸送には、それなり以上のリスクが付き添います。
 そして、ガラスを使った鏡は高価なのです。

 私の説明に、陛下が首を傾げてます。

「他の国に出来るなら、この国でも出来るだろう」

 はい、出ました!
 トップの方は、いとも簡単にこう言って無茶ぶりを言います。
 短絡的思考で、単純なだけです。
 それなのに、当然のように言います。
 時にはこういった、安易な発言が真言や金言として伝わることもありますが。

「そう難しく考えるなよ。何事も、シンプルに考えたらいいだろうに」

 はいはい、そうですね。
 お金が無いなら、税を上げたらいい。
 名言ですよね。
 貴方様の、お得意の。
 過去の愚王と呼ばれた方々が、みな口にしてきた言葉ですよ。

「何を考えているか、顔を見たら分かるぞ?」

 はっはっは、陛下に分かるわけがありません。
 陛下は少しだけ、おつむが残念なところがありますし。
 人の機微なんて、絶対に分からない人ですからね。

「おつむが残念で悪かったな。他人が何を考えているかなんて、俺には関係ないけどな! だって、俺はこの国の王だからな」

 全力で土下座しました。
 まさか、本当に考えていることが分かるとは。
 なんて無駄な洞察力。

「本当にそう思ってたのか……冗談だったのに」

 はめましたね!
 終わった……

 私の人生終わった。
 クビじゃなくて、首ですね。
 物理的に首だけになって、外に飾られるのでしょう。
 ああ、お父様、お母様、先立つ不孝をお赦し下さい。

「はっはっは、思っただけで処刑にしたりはしないよ。言葉に出したわけでもなし」

 ……本当ですか?
 こ……これは、弱みを握られたというやつでは?
 これをネタに、私を……

「お前……本当に、頭の中は無礼者だな」

 えっ?
 もう、何がなんだか分かりません。
 本当に心が読まれている?
 考えていることが、バレている?

「単純すぎる……」

 ま……まさか、陛下にそんな風に言われるとは。
 心外ですね。
 プンプンです。

「残念過ぎる……」

 貴方にだけは、言われたくありません。

「俺も、お前には馬鹿にされたくないな……」

 お互い様ということでしょうか?
 もしかして、私たち似ているのでしょうか?

 あっ、陛下が残念なものを見るような目で、こちらを見ております。
 残念な陛下に残念な目を向けられた私は、どれだけ残念なのでしょうか?

 
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