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王様がおかしくなった【シノビー】(近衛兵)
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最近の陛下は、おかしい。
あれほどまでに運動が嫌いであったにも関わらず、最近はよく身体を動かしている。
……うん、言い過ぎた。
運動が嫌いというレベルじゃない。
動くのが嫌いというレベルだ。
全てのことを面倒くさがる。
起きたら、まず第一声。
「目を開けるのも、面倒くさいな」
……そのまま、永眠されても誰も困りませんが。
ああ、第一王子であらせられるヘンリー殿下が、困るでしょう。
ですが、そこはそれ。
優秀な家臣たちが支え、育てていくので問題ありません。
起きたら起きたで、寝るときには……
「ああ、寝るの面倒くさい。ベッドが遠い。どうせ、ベッドで寝るなら出なくてもよかったんじゃないか? 無駄なことをさせおって」
そうですね。
ずっと、そこに目を閉じて横たわってもらってても、一向に構いませんが?
護衛も、楽でいいですし。
護衛とは名ばかりの、雑用係ですしね。
従者に用向きを言って、その場から離れさせてしまうと……彼がやっていたことを、護衛の近衛の当番の者がやらないといけなくなりますから。
騎士団長が騎士の訓練課程を終えた時に、エリート街道である近衛の入隊を断った理由がよくわかります。
そんな陛下が熱病を患い、寝たきりになったあと……
念願の寝たきり生活を終えると、途端に精力的に活動するようになりました。
活発とかってレベルじゃなく、ガチなやつです。
ガチなトレーニングです。
最初は、何をやっているのか分かりませんでしたが……
そんな日々を過ごされて一年、庭園の一角になにやら木や金属で作られた不思議な施設が。
壁も天井も無い場所が多いですね。
柱だけ。
それも、変わった形のものが多くあります。
罠……ですかね?
丸太が上から転がって来たり、細い棒を渡っているときに振り子のついた丸太が横から襲って来たり。
周りは空堀になっていて、水が入っているので落ちれば助かりますが。
床が無くて上に二本の棒が渡してあって、等間隔に横に棒が差し込んであるものとか。
壁が斜めになってて、床も天井も無い場所とか。
指しか掛からないような角材が付けられた、板とか。
ああ、それらの仕掛けを駆使して、ここをグルグルと回るのですね。
ロープに括られた棒に抱き着いて移動するのは、楽しかったですね。
ええ、私も使わせてもらいました。
……次の日、身体のあちこちが痛くなりました。
変なところばかり。
「普段使ってない筋肉の場所だな。この施設を一周することで、全身をくまなく鍛えられる。一周したら5分休憩してもう一周。これを三回繰り返したらバランスのいい身体になると思うぞ」
その根拠はどこから来るのでしょうか?
陛下の知識に、あまり期待がもてないのですが。
他国から得た情報を、誰かに聞いたとかなら……
でも、これ陛下がおひとりで指示して、作らせてましたよね?
まあ、有用性は理解できました。
「毎日じゃなくて、一日おきか、二日おきが良いぞ」
毎日鍛えた方が、効果があると思うのですが。
こんなにきついものを毎日やるのは、たしかに面倒ですね。
陛下が一番最後まで一周するのに時間が掛かったけど、近衛も陛下も三周できるようになった。
一週間、その施設が閉鎖された。
そして明けて翌日……
陛下いわく雲梯なる、梯子を天井にした場所。
その横の棒の間隔が倍になっていた。
斜めの壁は、角度が急になっていた。
指を掛ける角材が狭くなって、しかも途中で歩幅分くらいカットされていた。
こ……ここは? 左手を先端に掛けて身体を振って右手の指先を掛ける……陛下が真っ逆さまに空堀に落ちていきました。
言いたいことは分かりました……
一発で成功したのは二人だけでした。
私じゃないですけどね。
他にも色々と……うん、難易度が上がったというやつですね。
そして、距離も。
ちなみに陛下はこの施設を、ハンゾウと呼んでました。
大昔の凄腕のレンジャーらしいです。
闇ギルド系の……
シーフとレンジャーとアサシンの三つをマスターしていた人?
聞いたことないですが、そうですか。
これを極めると、シーフとレンジャーとアサシンとスパイの素質が伸びると。
私は、ナイトですが?
あれほどまでに運動が嫌いであったにも関わらず、最近はよく身体を動かしている。
……うん、言い過ぎた。
運動が嫌いというレベルじゃない。
動くのが嫌いというレベルだ。
全てのことを面倒くさがる。
起きたら、まず第一声。
「目を開けるのも、面倒くさいな」
……そのまま、永眠されても誰も困りませんが。
ああ、第一王子であらせられるヘンリー殿下が、困るでしょう。
ですが、そこはそれ。
優秀な家臣たちが支え、育てていくので問題ありません。
起きたら起きたで、寝るときには……
「ああ、寝るの面倒くさい。ベッドが遠い。どうせ、ベッドで寝るなら出なくてもよかったんじゃないか? 無駄なことをさせおって」
そうですね。
ずっと、そこに目を閉じて横たわってもらってても、一向に構いませんが?
護衛も、楽でいいですし。
護衛とは名ばかりの、雑用係ですしね。
従者に用向きを言って、その場から離れさせてしまうと……彼がやっていたことを、護衛の近衛の当番の者がやらないといけなくなりますから。
騎士団長が騎士の訓練課程を終えた時に、エリート街道である近衛の入隊を断った理由がよくわかります。
そんな陛下が熱病を患い、寝たきりになったあと……
念願の寝たきり生活を終えると、途端に精力的に活動するようになりました。
活発とかってレベルじゃなく、ガチなやつです。
ガチなトレーニングです。
最初は、何をやっているのか分かりませんでしたが……
そんな日々を過ごされて一年、庭園の一角になにやら木や金属で作られた不思議な施設が。
壁も天井も無い場所が多いですね。
柱だけ。
それも、変わった形のものが多くあります。
罠……ですかね?
丸太が上から転がって来たり、細い棒を渡っているときに振り子のついた丸太が横から襲って来たり。
周りは空堀になっていて、水が入っているので落ちれば助かりますが。
床が無くて上に二本の棒が渡してあって、等間隔に横に棒が差し込んであるものとか。
壁が斜めになってて、床も天井も無い場所とか。
指しか掛からないような角材が付けられた、板とか。
ああ、それらの仕掛けを駆使して、ここをグルグルと回るのですね。
ロープに括られた棒に抱き着いて移動するのは、楽しかったですね。
ええ、私も使わせてもらいました。
……次の日、身体のあちこちが痛くなりました。
変なところばかり。
「普段使ってない筋肉の場所だな。この施設を一周することで、全身をくまなく鍛えられる。一周したら5分休憩してもう一周。これを三回繰り返したらバランスのいい身体になると思うぞ」
その根拠はどこから来るのでしょうか?
陛下の知識に、あまり期待がもてないのですが。
他国から得た情報を、誰かに聞いたとかなら……
でも、これ陛下がおひとりで指示して、作らせてましたよね?
まあ、有用性は理解できました。
「毎日じゃなくて、一日おきか、二日おきが良いぞ」
毎日鍛えた方が、効果があると思うのですが。
こんなにきついものを毎日やるのは、たしかに面倒ですね。
陛下が一番最後まで一周するのに時間が掛かったけど、近衛も陛下も三周できるようになった。
一週間、その施設が閉鎖された。
そして明けて翌日……
陛下いわく雲梯なる、梯子を天井にした場所。
その横の棒の間隔が倍になっていた。
斜めの壁は、角度が急になっていた。
指を掛ける角材が狭くなって、しかも途中で歩幅分くらいカットされていた。
こ……ここは? 左手を先端に掛けて身体を振って右手の指先を掛ける……陛下が真っ逆さまに空堀に落ちていきました。
言いたいことは分かりました……
一発で成功したのは二人だけでした。
私じゃないですけどね。
他にも色々と……うん、難易度が上がったというやつですね。
そして、距離も。
ちなみに陛下はこの施設を、ハンゾウと呼んでました。
大昔の凄腕のレンジャーらしいです。
闇ギルド系の……
シーフとレンジャーとアサシンの三つをマスターしていた人?
聞いたことないですが、そうですか。
これを極めると、シーフとレンジャーとアサシンとスパイの素質が伸びると。
私は、ナイトですが?
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