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王様がおかしくなった【悪い上司】(侍女)
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今日の私の担当は、陛下のお世話係。
侍女長が休みだからだ。
そして、相方はアイシャ。
侍女としてはベテランと言っても差し支えないが、陛下の側に仕える人材としては素人だ。
新人に毛が生えた程度。
その理由は……
「胃が……」
そう、虚弱体質。
何故クビにならないのかというと、苦手な仕事以外では優秀だからだ。
そして苦手な仕事が、偉い人のお世話という致命的な欠陥品。
今回も、一ヶ月ぶりの長期休養から復帰後、一週間ほど通常業務を行ってからの陛下の側付き。
若干の悪意を感じる。
彼女と組まされたことにも。
彼女がここに配属されたことにも。
理由は明確。
「陛下! 朝だぞー!」
「おう、起きてるぞ!」
熱病から復帰して、気安い感じになった陛下……に狎れてしまった、私が悪い。
「お腹ががががが……」
そんな私の朝の声掛けを見て、アイシャがお腹を押さえている。
「なんだ、そっちのお姉さんは顔色悪いなー!」
「いえいえ、陛下! 他人行儀すぎますよ! 彼女も侍女ですよ」
陛下が早速、気を遣っている。
気遣われる立場の最上位の上に、斜め上の要求ばかりしてきたあの陛下が。
常識的に、他人に気を掛ける。
素晴らしい変化!
みんなおかしくなったと言ってるけど、普通になっただけ。
いや、普通よりよくなっただけ。
「ほれ、痛いの痛いの飛んでいけ!」
「きゃあっ!」
あっ、セクハラ!
陛下が、ご自身で広めた概念の一つを、自らやってのけるとは。
うら若き乙女のお腹を、いきなり触れるなんて。
……そこまで若くはないですが、陛下と比べたら若いんです。
アイシャは!
24歳の乙女です。
行き遅れ……では、ないです。
ただ職業柄、出会いがなくて先延ばしになってるだけです。
私は、17歳ですけどね。
「痛みが……」
顔面蒼白ですが、表情は柔らかくなってますね。
「手当てってのも大事だからね。人の手には、癒しの力があるんだ。だから人は、痛いときに痛いところを押さえるんだ」
へ……へぇ……
治癒魔法とかじゃなくてですかね?
とりあえず、王妃殿下には報告ですね。
「さてと、窓を開けて空気の入れ替えから」
「さむっ! ちょっと、着替えるまで待ってくれよ」
「一日は待ってくれませんから! できることは、さっさと済ます」
容赦なく窓を全開にして、陛下の布団を引っぺがします。
「お、お召し物の準備を」
「いい、いい! そのくらい自分でやるから」
「いや、でも私の仕事……」
それから、陛下の変化の一つ。
着替えの手伝いを嫌がる。
というか、恥ずかしがる。
私はいま手が塞がってますが、私が担当なら容赦なく服も引っぺがします。
反応が可愛くて。
「あっ……」
遠慮してたら、陛下はとっとと着替えちゃいますよ。
はにかむおっさんの貴重な映像は見れなかったですが、まあ手間が掛からなくていいですね。
そして朝食のための移動。
その間に、本日の予定を執事の男性が伝えてます。
ここから、どんどん陛下の周りに人が増えていきます。
「昨日、門番の当番の騎士が、夜居眠りをしていたようです。幸い侵入者等の形跡は見当たりませんでしたが」
おっと、執事の報告を受けて、陛下が「へぇ」と興味無さそうに返事を返してます。
そして、視線を反らしてます。
何か知っていそうですね。
「しかも、あろうことかお酒まで飲んでいたようです。殺しますか?」
「そっ、そこまでしなくても良いんじゃないかな?」
これは、執事の方も何かしら感じていますね。
「ただ、おかしなことに無いんですよ……」
「な、何がだ?」
「酒瓶が……」
「す、捨てたんじゃないか?」
「共犯者がいるはずです。お酒を差し入れた、何者かが」
だって、報告というよりも尋問に近くなってますからね。
「も……門には結界魔法も張ったし、見張りにインプを3体召喚したから良いだろう」
「本当に、魔法を覚えてからろくなことをしませんね」
執事の男性も、容赦がないですね。
少し前までなら、こんなことを言えば首かクビでしたが。
彼も、だいぶ慣れたようです。
「それに昨夜はだいぶ冷えたし、あの門番はいっつも寒い日に配属されているのはなんでだ? 何か、あるんじゃないか? いじめとか」
「普通は門番は当番制です……ですが、彼は夜が冷え込むと予想できると、いつも何かしらの小さな問題を起こして罰として門番をやらされます」
「ほ……ほう?」
「陛下が毎度、お酒を差し入れてますよね?」
なるほど……酔いつぶれて眠る騎士の方も、問題児のようですね。
「な、なんのことかな?」
「毎度のことなので、門番を見張る門番番を付けましたから」
「アホっぽいな……」
なんという経費の無駄遣い。
だったら、その門番番に門番をやらせたらいいのでは?
侍女長が休みだからだ。
そして、相方はアイシャ。
侍女としてはベテランと言っても差し支えないが、陛下の側に仕える人材としては素人だ。
新人に毛が生えた程度。
その理由は……
「胃が……」
そう、虚弱体質。
何故クビにならないのかというと、苦手な仕事以外では優秀だからだ。
そして苦手な仕事が、偉い人のお世話という致命的な欠陥品。
今回も、一ヶ月ぶりの長期休養から復帰後、一週間ほど通常業務を行ってからの陛下の側付き。
若干の悪意を感じる。
彼女と組まされたことにも。
彼女がここに配属されたことにも。
理由は明確。
「陛下! 朝だぞー!」
「おう、起きてるぞ!」
熱病から復帰して、気安い感じになった陛下……に狎れてしまった、私が悪い。
「お腹ががががが……」
そんな私の朝の声掛けを見て、アイシャがお腹を押さえている。
「なんだ、そっちのお姉さんは顔色悪いなー!」
「いえいえ、陛下! 他人行儀すぎますよ! 彼女も侍女ですよ」
陛下が早速、気を遣っている。
気遣われる立場の最上位の上に、斜め上の要求ばかりしてきたあの陛下が。
常識的に、他人に気を掛ける。
素晴らしい変化!
みんなおかしくなったと言ってるけど、普通になっただけ。
いや、普通よりよくなっただけ。
「ほれ、痛いの痛いの飛んでいけ!」
「きゃあっ!」
あっ、セクハラ!
陛下が、ご自身で広めた概念の一つを、自らやってのけるとは。
うら若き乙女のお腹を、いきなり触れるなんて。
……そこまで若くはないですが、陛下と比べたら若いんです。
アイシャは!
24歳の乙女です。
行き遅れ……では、ないです。
ただ職業柄、出会いがなくて先延ばしになってるだけです。
私は、17歳ですけどね。
「痛みが……」
顔面蒼白ですが、表情は柔らかくなってますね。
「手当てってのも大事だからね。人の手には、癒しの力があるんだ。だから人は、痛いときに痛いところを押さえるんだ」
へ……へぇ……
治癒魔法とかじゃなくてですかね?
とりあえず、王妃殿下には報告ですね。
「さてと、窓を開けて空気の入れ替えから」
「さむっ! ちょっと、着替えるまで待ってくれよ」
「一日は待ってくれませんから! できることは、さっさと済ます」
容赦なく窓を全開にして、陛下の布団を引っぺがします。
「お、お召し物の準備を」
「いい、いい! そのくらい自分でやるから」
「いや、でも私の仕事……」
それから、陛下の変化の一つ。
着替えの手伝いを嫌がる。
というか、恥ずかしがる。
私はいま手が塞がってますが、私が担当なら容赦なく服も引っぺがします。
反応が可愛くて。
「あっ……」
遠慮してたら、陛下はとっとと着替えちゃいますよ。
はにかむおっさんの貴重な映像は見れなかったですが、まあ手間が掛からなくていいですね。
そして朝食のための移動。
その間に、本日の予定を執事の男性が伝えてます。
ここから、どんどん陛下の周りに人が増えていきます。
「昨日、門番の当番の騎士が、夜居眠りをしていたようです。幸い侵入者等の形跡は見当たりませんでしたが」
おっと、執事の報告を受けて、陛下が「へぇ」と興味無さそうに返事を返してます。
そして、視線を反らしてます。
何か知っていそうですね。
「しかも、あろうことかお酒まで飲んでいたようです。殺しますか?」
「そっ、そこまでしなくても良いんじゃないかな?」
これは、執事の方も何かしら感じていますね。
「ただ、おかしなことに無いんですよ……」
「な、何がだ?」
「酒瓶が……」
「す、捨てたんじゃないか?」
「共犯者がいるはずです。お酒を差し入れた、何者かが」
だって、報告というよりも尋問に近くなってますからね。
「も……門には結界魔法も張ったし、見張りにインプを3体召喚したから良いだろう」
「本当に、魔法を覚えてからろくなことをしませんね」
執事の男性も、容赦がないですね。
少し前までなら、こんなことを言えば首かクビでしたが。
彼も、だいぶ慣れたようです。
「それに昨夜はだいぶ冷えたし、あの門番はいっつも寒い日に配属されているのはなんでだ? 何か、あるんじゃないか? いじめとか」
「普通は門番は当番制です……ですが、彼は夜が冷え込むと予想できると、いつも何かしらの小さな問題を起こして罰として門番をやらされます」
「ほ……ほう?」
「陛下が毎度、お酒を差し入れてますよね?」
なるほど……酔いつぶれて眠る騎士の方も、問題児のようですね。
「な、なんのことかな?」
「毎度のことなので、門番を見張る門番番を付けましたから」
「アホっぽいな……」
なんという経費の無駄遣い。
だったら、その門番番に門番をやらせたらいいのでは?
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