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父上がおかしくなった【この親にしてこの子あり】(第一王子)
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余は、ヘンリー・バルザック・アイオローニア・チビマール。
嘘です。
本当は、ヘンリー・チビマール。
ここ、チビマール王国の国王の息子です。
適当に仰々しい名前を付けてみたけど、自分だけの秘密です。
いつか、名乗る予定です。
今年で8歳になる予定ですが、今はまだ7歳です。
背伸びしたい年頃なのです。
ですので、ほぼ8歳ということにしてます。
さて、私の悩みというか、最近周りで変化が起きました。
いえ、王城に歳の近い子供たちが住み込みで働き始めたことではありません。
まあ、私とさして歳も変わらない子たちが、立派に仕事を務めていることに焦りは感じます。
ですが、そこじゃないのです。
父上が、別人のように変わられたのです。
今までは、私になんてまるで興味ももっていないような、そんな父でした。
偉大なるチビマール王国の国王陛下。
その国王陛下でありながら、教育係をはじめとした周囲の者たちは決してああなってはいけませんと……よくもまあ、王子の私に王の悪口を言えるものです。
ただ、その筆頭が母上なので、私も表立って不満を口にすることはありません。
そもそも、父のことをよく知りませんでしたから。
父の変化、その1。
用も無く、私の部屋に来ることが増えました。
面白い話や、一緒に遊んでくれるようになりました。
色々な遊びも教えてもらいました。
なんなら、家庭教師がいるときも来て、連れ出してしまいます。
先生も困ってます。
周りの者たちは、きっと私が優秀だから自分の障害にならないように邪魔をしているのだろうと。
そうでしょうか?
父上は、全力で私や妹と遊んで楽しんでおられるように見えます。
ただ単に、遊びたいだけのようにも思えます。
それから、一緒に食卓を囲む機会も増えました。
いつもは、別々の時間に食べることが多かったのですが。
というか、父は部屋で食べることが多かったので。
食堂には、あまり来られませんでした。
最近では、食堂に毎日来られます。
それから、礼儀作法についてもあれこれと教えてくれます。
侍女に食べさせてもらっていたとは思えないほど、綺麗に食事をされます。
その父が最近使い始めたカトラリーがあります。
箸というものです。
二本の棒ですね。
父はこの二本の棒を器用に使って、食事をされます。
トングと違って、お尻の部分が繋がってません。
そして、細いです。
ですが、自分の指のように使いこなしてます。
その所作は美しく、みるみるうちに火を通した魚が骨だけになるのを見て、かっこいいとすら感じました。
父は、使い方を教えてくれました。
なかなか難しいです。
ルールもたくさんあるようです。
遠い異国の地のカトラリーのようです。
この間は、執務をされている父の部屋を訪れる機会がありました。
机で険しい顔で書類を読まれてましたが、私に気付くと手を止めて微笑みかけてきました。
一緒に作業をしていた方たちも、私に気付いて手を止めて頭を下げてきます。
「父上、お邪魔でしたか?」
少し気おされてしまい遠慮がちに声を掛けてみると、父の眉間に皺が寄りました。
しまった。
執務中や、公の場では陛下と呼ばないといけないのでした。
「父上だと?」
最近は優しくなって油断してましたが、父は怒ると怖いのです。
「パパと呼びなさい! パパと!」
「えっ?」
何を言われたのか、理解できません。
周囲の方々も、唖然とした様子です。
いま……パパと呼べと言われたのでしょうか?
「へ……陛下? あっ……あの、もうしわけありません。もう一度、いいでしょうか?」
「陛下だあ? お前は俺の息子だろ? パパと呼びなさい、パパと!」
聞き間違いではなかったようです。
それから、すぐに机を飛び越えてこちらに駆け寄ると、抱きかかえられてしまいました。
「すぐに片付けちゃうから、膝の上で見てなさい」
そして、書類について説明をしながら、次々と捌いていく姿はとても出来る人のように見えました。
……周囲の人達は、こうはなるなと言ってますが。
仕事をしてる姿は普通に一国の王として、正しい姿のように見えたのですが。
ただ、パパと呼ぶのは……
駄目ですね。
キラキラと期待を込めた視線を向けられると。
父の望む答えが、分かってしまいました。
「パパ凄い!」
「そうか? パパは、凄いか? はっはっは、ヘンリーは本当に可愛いなあ」
正解だったようです。
それから頭を撫でまわされて、すぐにおやつタイムに入りました。
「今日は、サーターアンダギーを作ったからな」
よく分からない名前が出てきましたが。
ポロポロとこぼれて、机の上も父上の膝の上も凄いことになってますが。
「はっはっは、気にするな! これの難易度は、白い服でカレーうどんを食べるのより、やや簡単程度だからね」
ちょっと、何を言っているのか分かりませんが、カレーは父上が作った茶色い食べ物です。
うどんは、小麦粉を使った太いパスタですね。
うどんの入ったカレーですか?
それを、白い服を着て食べる勇気は、私にはないです。
なんとなく、慰めてもらったのはわかったのですが。
「美味しく食べることは、何よりも優る作法だ。細かいことを気にして味が分からなくなるくらいなら、こぼしても気にせず好きにたべなさい」
「なるほど……」
「他の人が気にしない範囲でな。ちなみに、パパはヘンリーの美味しそうな顔が一番のスパイスだから、パパの前では気にしなくてもいいぞ」
それから、父が何かを考えるような素振りを見せます。
「カレーうどん屋の横に、Tシャツを販売するコインランドリーとかあったら、みんな豪快にうどんをすすれるんだがな」
それだったら、カレーうどん屋さんが、Tシャツを売ったらいいと思うのですが……
とにかく、サーターアンダギーは大変、美味しかったです。
嘘です。
本当は、ヘンリー・チビマール。
ここ、チビマール王国の国王の息子です。
適当に仰々しい名前を付けてみたけど、自分だけの秘密です。
いつか、名乗る予定です。
今年で8歳になる予定ですが、今はまだ7歳です。
背伸びしたい年頃なのです。
ですので、ほぼ8歳ということにしてます。
さて、私の悩みというか、最近周りで変化が起きました。
いえ、王城に歳の近い子供たちが住み込みで働き始めたことではありません。
まあ、私とさして歳も変わらない子たちが、立派に仕事を務めていることに焦りは感じます。
ですが、そこじゃないのです。
父上が、別人のように変わられたのです。
今までは、私になんてまるで興味ももっていないような、そんな父でした。
偉大なるチビマール王国の国王陛下。
その国王陛下でありながら、教育係をはじめとした周囲の者たちは決してああなってはいけませんと……よくもまあ、王子の私に王の悪口を言えるものです。
ただ、その筆頭が母上なので、私も表立って不満を口にすることはありません。
そもそも、父のことをよく知りませんでしたから。
父の変化、その1。
用も無く、私の部屋に来ることが増えました。
面白い話や、一緒に遊んでくれるようになりました。
色々な遊びも教えてもらいました。
なんなら、家庭教師がいるときも来て、連れ出してしまいます。
先生も困ってます。
周りの者たちは、きっと私が優秀だから自分の障害にならないように邪魔をしているのだろうと。
そうでしょうか?
父上は、全力で私や妹と遊んで楽しんでおられるように見えます。
ただ単に、遊びたいだけのようにも思えます。
それから、一緒に食卓を囲む機会も増えました。
いつもは、別々の時間に食べることが多かったのですが。
というか、父は部屋で食べることが多かったので。
食堂には、あまり来られませんでした。
最近では、食堂に毎日来られます。
それから、礼儀作法についてもあれこれと教えてくれます。
侍女に食べさせてもらっていたとは思えないほど、綺麗に食事をされます。
その父が最近使い始めたカトラリーがあります。
箸というものです。
二本の棒ですね。
父はこの二本の棒を器用に使って、食事をされます。
トングと違って、お尻の部分が繋がってません。
そして、細いです。
ですが、自分の指のように使いこなしてます。
その所作は美しく、みるみるうちに火を通した魚が骨だけになるのを見て、かっこいいとすら感じました。
父は、使い方を教えてくれました。
なかなか難しいです。
ルールもたくさんあるようです。
遠い異国の地のカトラリーのようです。
この間は、執務をされている父の部屋を訪れる機会がありました。
机で険しい顔で書類を読まれてましたが、私に気付くと手を止めて微笑みかけてきました。
一緒に作業をしていた方たちも、私に気付いて手を止めて頭を下げてきます。
「父上、お邪魔でしたか?」
少し気おされてしまい遠慮がちに声を掛けてみると、父の眉間に皺が寄りました。
しまった。
執務中や、公の場では陛下と呼ばないといけないのでした。
「父上だと?」
最近は優しくなって油断してましたが、父は怒ると怖いのです。
「パパと呼びなさい! パパと!」
「えっ?」
何を言われたのか、理解できません。
周囲の方々も、唖然とした様子です。
いま……パパと呼べと言われたのでしょうか?
「へ……陛下? あっ……あの、もうしわけありません。もう一度、いいでしょうか?」
「陛下だあ? お前は俺の息子だろ? パパと呼びなさい、パパと!」
聞き間違いではなかったようです。
それから、すぐに机を飛び越えてこちらに駆け寄ると、抱きかかえられてしまいました。
「すぐに片付けちゃうから、膝の上で見てなさい」
そして、書類について説明をしながら、次々と捌いていく姿はとても出来る人のように見えました。
……周囲の人達は、こうはなるなと言ってますが。
仕事をしてる姿は普通に一国の王として、正しい姿のように見えたのですが。
ただ、パパと呼ぶのは……
駄目ですね。
キラキラと期待を込めた視線を向けられると。
父の望む答えが、分かってしまいました。
「パパ凄い!」
「そうか? パパは、凄いか? はっはっは、ヘンリーは本当に可愛いなあ」
正解だったようです。
それから頭を撫でまわされて、すぐにおやつタイムに入りました。
「今日は、サーターアンダギーを作ったからな」
よく分からない名前が出てきましたが。
ポロポロとこぼれて、机の上も父上の膝の上も凄いことになってますが。
「はっはっは、気にするな! これの難易度は、白い服でカレーうどんを食べるのより、やや簡単程度だからね」
ちょっと、何を言っているのか分かりませんが、カレーは父上が作った茶色い食べ物です。
うどんは、小麦粉を使った太いパスタですね。
うどんの入ったカレーですか?
それを、白い服を着て食べる勇気は、私にはないです。
なんとなく、慰めてもらったのはわかったのですが。
「美味しく食べることは、何よりも優る作法だ。細かいことを気にして味が分からなくなるくらいなら、こぼしても気にせず好きにたべなさい」
「なるほど……」
「他の人が気にしない範囲でな。ちなみに、パパはヘンリーの美味しそうな顔が一番のスパイスだから、パパの前では気にしなくてもいいぞ」
それから、父が何かを考えるような素振りを見せます。
「カレーうどん屋の横に、Tシャツを販売するコインランドリーとかあったら、みんな豪快にうどんをすすれるんだがな」
それだったら、カレーうどん屋さんが、Tシャツを売ったらいいと思うのですが……
とにかく、サーターアンダギーは大変、美味しかったです。
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