異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~

第20話:20階層~あれっ?あれっ?~

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 それから20階層まで、僕頑張った! 
 超頑張った! 
 だって、全部の戦闘を一人でこなしてきたからね? 
 というのは嘘でして……

「ちょっと飽きて来たし、急ごうか?」

 カナタさんはそう言って、絨毯のようなものを広げだした。
 超高級そうな、凝った刺繍の入った毛足の長い絨毯でこれ1枚で、どれだけの価値があるか想像も付かない。

「さっ、座って」

 そしてカナタさんは僕とレイドに対して、とっととそれに乗るように促す。
 言ってる意味が分からないのですが? 
 僕が馬鹿なのでしょうか? 
 なんで、ダンジョンで絨毯に座らないといけないのでしょうか? 
 こんなところでゆっくりくつろぐ準備しながら、急ごうかとはこれいかに? 
 なんて事を思っていたのだが。

「はい! 先生!」

 レイドがそんな言葉を口にしながら、絨毯にチョコンと座る。
 先生? 
 WHO? 
 カナタさんが? 
 レイド! カムバーック! 
 そっちは行ったらあかん! 
 帰ってこれんことなるで! 
 僕の心の声は虚しく、カナタさんの冷徹なる瞳によって拒否権というものが抹消された。
 そして、レイドの横に同じようにチョコンと座る。

「よしっ! 行け! 絨毯11号!」

 カナタさんのそんな合図とともに、絨毯がフワリと浮いたかと思うと……
 バシュンという音とともに凄い速さで移動を始める。

「ちょっ! 速いって! 落ちるって! うわばばばばば!」

 恐怖の余り、叫ぶ事しかできない。
 轟音を響かせながら狭い通路を飛び回り、通路の角をインサイドギリギリで回りあっという間に階段に着いたかと思うと……

「んのおーーーーー! ちょっ! 下り怖い! 階段怖い!」

 僕の叫びを無視しながら、そのままの速度で一気に駆け下りていく。
 幸いカナタさんの背中か、カナタさんが何かしているのか風を受ける事は無いが、それでも凄い速さで壁がスライドしていく景色は戦慄以外のなにものでもない。
 そんな中、ふと横のレイドに目を向けると。
 薄く目を開け、前の一点だけを見据えて一言も発する事なく微動だにせずに座って居た。
 おおっ! こいつすげーな! 
 そんな事を思いながらふと、レイドの顔の前で手を振ってみる。
 全く視線が動くことが無い。

「あの、レイドさん?」

 ………………

「レイド?」

 ………………

「レイドォォォォォォ!」
「うるせえ!」

 カナタさんに怒鳴られた。
 っていうか、この娘気絶してるわ。
 これ、アカン奴やん! 
 そして永遠とも思える時間を感じつつも、一瞬で19階層まで辿り着いた時に眼前に巨大な扉現れる。

「ちょっ! カナタさんこれ、止まるんですか?」
「フフッ! てーい!」

 カナタさんに単純な疑問をぶつけると、レイドもろとも蹴り落とされた。
 ちょっ! この速度で落下と、マジ洒落になってないって! 
 てか、移動中の乗り物でふざけちゃ駄目だって、子供でも知ってるでしょ! 
 オワタ……
 短い生涯を嘆きつつ、人生何度目かの走馬灯を眺めているとフワリとした風に包まれて、ゆっくりと地面に
 降ろされる。
 見ると、カナタさんも普通に飛び降りてた。
 っていうか、その身体能力は身体操作レベルがいくつになれば得られるのでしょうか? 
 直後、ビターンという音が正面の扉から聞こえてくる。

「さようなら絨毯11号……短い付き合いだったけど、君の事は忘れないよ」

 ふふふ……生きてる。
 地面って素晴らしいね……僕の親友……それは地面……ふふふ。
 っていうか、絨毯11号は扉にぶつかって見るも無残な姿になっている。
 あれじゃ、もう再生は不可能だよね? 
 めっちゃ高級仕様の伝説級アイテム、空飛ぶ絨毯を簡単に使い捨てるカナタさんの資産予測に上方修正を入れつつ気になった事を聞いてみる。
 うん、聞かなきゃよかった……

「あの……ちなみに1号から10号は?」
「漏れなく壁の染みか、空のお星さまになったよ?」

 あっさりと、恐ろしい事を言ってのける。
 毎回、空飛ぶ絨毯に無茶な飛行をさせて使い潰しているのか。
 馬鹿だこの人……てか、これ10枚売ったら国が買えるんじゃね? 

「おい、レイド起きろ!」

 カナタさんがレイドを優しく? 起こすと、レイドがハッと目を見開く。
 そして周囲をキョロキョロと伺っている。

「こ……ここは?」
「うん、20階層への階段の入り口だ」

 そう言えば、あんたこのダンジョンの内部把握してましたよね? 
 っていうことは、ここに扉があるのも分かってた訳で……知ってて高級絨毯突っ込ませたの? 
 馬鹿なの? 本気で馬鹿なの? 

「褒めるな! 照れるじゃないか」
「いや、褒めてませんからね!」

 とうとう、心の声を読んでいることを隠そうともしなくなったよこの人。
 もはや、僕の人権やプライバシーというものは風前の灯火のようだ。

 ―――――――――
 そして、地下20階層……
 ここからは敵のランクも一段と高くなる。
 とはいえ、僕もめっちゃ強くなったもんね。
 どんとこいだ! 
 そう思ってた時期がありました……

 ガキンッ! 
 バキンッ! 
 ブォンッ! 

 お分かりいただけただろうか? 
 正面、僕の視界の中央にご注目頂きたい。
 そこに立ってハルバードを振るう、白金で出来たリビングアーマー……
 彼のその虚空の兜の中は、何を考えているのだろう……
 いや、そうじゃなくて、攻撃が全然通用しないから。
 筋力も上がってて、剣術も進歩してるのに全ての攻撃が盾で弾かれる。
 そして、たまに振るわれるハルバードによる一撃。
 見切りがあっても、掠りそうな速さだ。
 自分の限界速度を越えた攻撃は、いかに見切れたとしても躱す事が難しい。

 っていうかさ……さっき16階層でめっちゃ頑張ったよ? 
 レベルもステータスも上がったよ? 
 敵強すぎじゃね? 
 っていうか、ここをDランクの上位のパーティや、Cランクの人たちは抜けていったの? 
 ってことは僕って……まだDランクに届いてないのかな? 

「はあ……まだまだか……」

 うん、戦闘中に椅子に座って紅茶を飲みながら言うセリフじゃないよね? 
 先ほどの休憩スペースで嗅いだ、良い匂いが周囲を包み込んでいて状況とミスマッチ過ぎるわ! 
 っていうか、いつになったらカナタさんは真面目にやってくれるのでしょうか? 
 もうそろそろ、僕も怒っても良いのではないでしょうか? 

「レイド、交代してあげて」
「はい、先生!」

 だから先生っての止めなさいって! 
 そんな事を考えて居たら、レイドが僕とリビングアーマーの間に割って入る。
 っていうか、速くね? 
 そんなに速かったっけ? 
 そして振り下ろされたハルバードを、左手の手甲で、受け止めただ……と? 
 完全に手甲ごと腕が砕けるかと思ったのだが、ちゃんと彼女の頭の上でハルバードが止まっている。
 そのまま彼女が左手を払うと、リビングアーマーがバランスを崩す。
 ああ、とうとうレイドがそっち側にいっちゃった。
 アーマーリザードを受け止めるカナタさんを、先生と呼ぶだけの事はある。
 っていうか、彼女に何をした! 
 もしかして、僕が居ない間に酷い目に合わされ……ん? 
 なにその剣? 
 刀ってやつじゃないかな? 
 このダンジョンでドロップ……するわけないじゃん! 
 イースタンの人しか作れないやつでしょ? 
 ふと彼女に目をやると腰に、湾曲した鞘を刺していた。
 そしてその独特の鍔と柄の形状は、KATANAって奴ですよね? 

 次の瞬間彼女が抜刀して、大上段から鋭い一撃を振り下ろす。
 流れるような動作から振り下ろされる刀に対して、リビングアーマーが盾を上段に構えて受けようとしたとき……剣筋が波のように揺れる。
 振り下ろされる速度そのままに、盾を躱すように軌道を変えながら一気に刀が振るわれると、リビングアーマーが縦に真っ二つに切り裂かれる。

 えっ? えっ? 
 なにそれ? 
 はっ? 

「刀技! 【抜刀イズナ落とし】!」

 カチッという、鍔鳴りの音が鳴ったと同時にゆっくりとリビングアーマーがその場に崩れ落ちる。
 胸当ての中にあるであろう、核ごと真っ二つに斬ったのか……
 うん、うん? 
 僕って役立たずじゃ? 

「よくやった、流石レイドは凄いなー! 才能の塊みたいなもんだったからな」

 そう言ってチラッとこっちを見るカナタさん。

「まさか、わずか短時間でここまで刀を使いこなすとは」

 さらに続けて言うと、またこっちをチラッと見るカナタさん。

「いえ、この刀が素晴らしいんですよ! この刀が無ければ私だって……」

 そう言ってチラッとこっちを見るレイド。

「使い手が素晴らしいからだ。この調子で使いこなせるようになればもっともっと強くなれるな。ダンジョンを出るころには一端の武士だな」

 チラッ
 チクショォォォォォ! 

「あっ、エンさん!」

 気が付いた、僕は泣きながらその場から逃げ出していた。
 そして、3歩進んで止まる。
 うん……いま、この2人と離れたらすぐにアンデッドの仲間入り確定だもんな。
 感情に流されて動くのは、未熟な冒険者がやる事だ。

「チッ……そのままどこにでも行けばよかったのに」

 チクショォォォォォ! 
 カナタさんの本音ダダ漏れなセリフに、血の涙が流れ落ちてる気がするぜ。

「本当に、カナタさんは素直じゃ無いんですから。これでもカナタさんは、たぶん私達を殺すつもりも、怪我をさせるつもりも無いですよ?」

 なんでレイドまでカナタさんの味方なんだよ! 
 っていうか、体の怪我じゃなくて、心の怪我が既に重症だよ! 
 ふとカナタさんを見たら、悪そうに笑っていた。
 性質の悪い冗談だって分かるけどさ……分かるけど、誰か頑張ってる僕を褒めてくれる人が居たっていいじゃないか! 
 僕って褒めて伸びるタイプなのに……

「人は限界まで追い詰められると、褒めて伸びるタイプも、反抗心で伸びるタイプも等しく急成長するものさ」

 いや……その前に、限界まで追い詰めないで。
 トホホという擬音がピッタリだと思われる溜息を吐いて、すでに歩き始めたカナタさんを追いかける。
 弱い自分が憎い! 
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