異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~

第19話:16階層~レイド頑張ります~

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「いやあああああああ!」

 エンさんが悲鳴をあげながら、走りさってしまった。
 後に残された私は、困ったようにカナタさんを見る。
 彼はちょっと楽しそうだった。

「さあ、ゆっくり追いかけようか?」

 カナタさんがそう言って、さも当然のように前を歩き出したので慌てて付いていく。
 レベルも低く、武器も持たない新人冒険者なのに安心感のある後ろ姿を見て、心の奥に温かいものを感じる。
 エンさんに対する思いとは、全然違うのだけれども。

「そんなに似てるか?」

 カナタさんの言葉に思わず飛び上がりそうになる。
 なんで? 

「えっ? なんで?」

 その思いはそのまま口に出る。

「いや、レイドの俺を見る目は、まるで家族に向けるような親愛を込めた視線に思えたからな。とはいえ、悲しい色も混ざっている……祖父、もしくは父親にでも似てるのかと思ってさ」

 そう、その通りだ。
 カナタさんの出す、この安心感のある空間はまさに父のそれだった。
 私の両親は、冒険者をしていた。
 といっても私が生まれてからは2人とも引退して、父は剣術道場、私が6歳になったら母は冒険者ギルドの裏方に転職していた。
 剣術道場の仕事だけでは、十分な生活は出来ないからと言っていたが、父も母も私を学校に通わせたかったらしい。
 自分達に学があれば、冒険者なんかじゃなくてもっと安定した仕事が出来て、私が生まれる頃にはそれなりの収入を得られていただろうと考えての事らしい。
 2人が冒険者を辞めたのも、死ぬのが怖くなったからだと言っていた。
 私を残して死んだ事を想像し……死に恐怖を感じた時、冒険者として終わったのだと。

 そんな父だが家に帰って来ると、1人で待っているときはあんなに物静かで薄暗く寂しい家が一気に温かいものに変わる。
 そう、父が居てこそ、そこは私にとっての家だった。
 そして、そこに遅れて母が帰って来ると、家の中が一気に明るくなる。
 物静かで、それでいて優しかった父と違い、母は常にしゃべり続けている。
 まるで、私と離れていた時間を取り戻すかのように、あれやこれやと聞いて来て、また自分の事を放し始めるのだ。

 でも彼は結局私を……私達を残して死んだ。
 街の近くに現れたB級指定の魔物……バジリスクとの戦いにおいて、その場に居た子供を庇い毒の牙を受けた。
 すぐに父はバジリスクの蛇の首を跳ね飛ばしたが……そのままその場に倒れ込み、返らぬ人となった。
 運が悪かった。
 私が居た町はそんなに大きなものでは無かった。
 村よりは栄えていたが、収入の殆どを農業に頼っているような町だ。
 町にB級どころか、C級の冒険者も全て出払ってい戦える冒険者が居ないタイミングでの襲撃。
 町の外に居る人たちにも少なくない犠牲は出た。
 父がバジリスクを倒さなければ、町の中にまで入って居たかもしれない。
 町の人たちは父を称え、色々と良くしてくれた。
 でも、そんな父を誇りになんて思えなかった。
 何故! 何故私達を置いて! 勝手に死ぬなんて酷い! 
 10代に入ったころにはそんな事すら思っていた。

 14になったころ、それでもようやく折り合いを付けて、自分でももう忘れようと思っていた。
 そんな時だ……彼が来たのは。
 父が救った子供……
 父を殺した子供……
 自分と同い年だった……
 彼は父の墓前で、必死に祈っていた。
 そんな彼が私は無性に腹立たしく……そしてつい

「あんたが! あんたがあんなとこに居なければ! あんたが、ボケッとしてなければ!」

 彼に向かって! 

「お父さんは死ななくてすんだのに! あんたが死ねばよかったのよ!」

 パンッ! 

 頬がジンジンと痛む。
 ふと横を見上げると、母が立っていた。
 目を真っ赤に充血させ、怒っているような、泣いているような……そんな表情だった。

「あんたは!」

 母がそう言ってさらに手をあげた時……その手にしがみ付いて必死で止めてくれたのは、皮肉にも私が死ねばいいと言った男の子だった。

「本当にごめんなさい……何を言っても意味が無いのは分かってる。だから今日は報告に来たんだよ。僕を救ってくれたおじさんに……自分の逃げ場を無くさない為に……」

 彼は唐突に語りだした。
 自分の夢を……

「僕は……冒険者になります。2人以上の人間を救います……一生を掛けて人を助け続けます。そして、いつか貴方のように……誰かを救って死ねれば、貴方のように死ぬその時まで人を助け続けられる冒険者になります」

 言い切った。
 目指すではなく、なる・・と言い切ったのだ。
 父が死んでから、いつまでも時が止まったままだった私よりよっぽど立派だった。

「それが、君のお父さんが僕を助けてくれた意味になる。助けた人には、僕も助けられたことを話すさ……そして僕のような冒険者が増えれば……君のお父さんはいつか英雄になれるだろ? 僕は無理でも……僕が助けた誰かが英雄になれば、君のお父さんは真の英雄だ! それが……それが、僕に出来る唯一の罪滅ぼしだから」

 私はそんな事を言う彼が、心底憎かった。
 父の死と向き合う事もしなかった私の濁った目よりも、彼の目の方がよっぽど大好きだった父に似た目をしていたからだ。

「勝手にしなさいよ! でも死ぬことは許さない! 一生懸命生きて、人生の全てを掛けた人を助けなさいよ!」

 私の口から勝手に飛び出した言葉。
 なんで、あんなことを言ったのかは分からない。
 けれど、人を助けて死ぬことは美談でもなんでもない。
 残された側だから言えたのかもしれない。
 そして彼の顔を見て、ハッとする。
 彼は泣きながら……そう、泣きながら笑っていた。

「それは大変だ……でも、ありがとう」

 彼はそう言って、頭を深く下げてから出て行った。

「貴方も……ようやく前に歩けそうね」

 その後ろ姿を見ながら母が呟いた。

 ―――――――――
「すまんな、配慮に欠ける言葉だったか?」

 カナタさんに声を掛けられて、私は首を横に振る。
 結局、私も彼と同じ道を選ぶことにしたから。
 そのことを、改めて思い出した。
 母の猛反対を押し切ってまでなった冒険者。
 ようやくそのスタートラインに立っているんだ。
 そう実感できた。

「いえ、私が冒険者になった意味を改めて思い出しました。エンさんのように、ビシバシ鍛えてください!」

 私の言葉に、カナタさんが少し驚いた表情をする。

「知っていたのか?」

 目的までは分からないが、彼はエンさんを育てていた。
 それは傍目から見れば、一目瞭然だった。

「エンの……ようにか?」
「はい!」

 不安そうにこっちを見るカナタさんの言葉に、元気よく返事をする。
 あのくらい追い込まれて鍛えられないと、父や、その後ろを追う彼に追いつく事すら出来ない。
 私よりたった2年早く冒険者になっただけなのに、今となっては英雄候補と呼ばれるようになったB級冒険者の彼のように……

 そして30分後……私は後悔することになる。

 ―――――――――
「カナタさん……もう無理ですよ」
「無理と言えるうちは、まだイケるって事だ! 人間、本当に無理な時は言葉じゃなくて表情で語るものさ」

 いきなりモンスタールームに放り込まれた。
 一応、武器だけは彼が今まで使っていたのより良い物を貸してくれた。
 というか……この武器……切れ味がとんでもない。
 反りのある片刃の剣、確かイースタンの人が好んで使う刀というやつだ。

童子切安綱どうじきりやすつな……ただの鉄で作られた刀だから、使い潰してくれてもいいよ」

 なんて言っていたが、只の鉄でこんな剣を作ってしまうイースタンの人の技術って凄い。
 というか、これを使い潰させる気なのだろうか? 
 すでに30体の魔物を斬っているが、血油も剣を一振りすればすべて飛んでいくし、刃こぼれすらしていない。
 もし、これを使い潰す事が訓練だとすれば、一生かかっても無理な気がする。
 とはいえ、いくら重心のバランスが良く振りやすい剣とはいえ30分も振り続けていたら腕がパンパンだ。
 なのに……

「ほらっ、後ろに飛んで」

 彼に言われて後ろに飛ぶと、目の前をオーガの振るうこん棒がスレスレで通り過ぎていく。

「避けたら斬る!」

 そして、条件反射で剣を振るってしまう……
 激痛が両腕を襲うが、それでも振れるってことはやっぱり無理じゃないって事なんだろうけど。
 心がもう無理です。

 と思ってから15分……本当の限界が来たようだ。
 カナタさんの指示に即座に反応できずに、右肩をアーマーリザードの爪が掠りそうになる。
 寸前で、カナタさんが止めてくれたけど。
 というか、エンさんの時もだけどなんで素手で、あの重量級の攻撃を止められるのかが分からない。

「本当に無理みたいだね……」

 彼はそう言うと、アーマーリザードを魔物の群れに投げ飛ばし、モンスタールームから私を連れて駆け出す。
 そして、向かった先で寝転んで何やら叫んでいるエンさんを発見する。
 1人で天井に向かって

「ふははは、ぶち殺してくれるわ!」

 とか叫んでて怖い。
 なんか、エンさんに比べたら自分の意思で動ける分マシかと思う反面、自動で戦わせられる方が幸せかもとか思ってしまった。
 というか、気配が分かっているから、多分エンさんにも限界が来たのを察知して向かったんだろうけど。

 そしてエンさんに何やら液体を掛けている。
 途端にエンさんが元気になって……

「いやああああああ!」

 また走り去ってしまった。
 そして、こっちを見てにやりとするカナタさん。

「さあ、時間が出来た! 二回戦行ってみよう!」

 彼は私にもその液体を掛ける。
 見事に少しも上がらなかった腕の疲労感が消えてなくなる。
 ポーション? 
 と思ったら、カチッという音が聞こえる。

「モンスタールームの罠踏んじゃった! テヘッ!」

 可愛くない! 
 そして、なんで罠の種類を把握してるんですか! 
 そんな事を考えながらも、景色が歪むのに身を任せる。

 2回目のモンスタールームで、疲労耐性が発現した。
 3回目のモンスタールームで、エンさんが発現させた見切りのスキルが私にも備わった。
 4回目のモンスタールームで、先読みのスキルとが発現し、習得してから成長してなかった身体操作がレベル2になった。
 5回目のモンスタールームで、剣技派生刀レベル1が発現した。
 6回目のモンスタールームで、刀レベル2になり、【遠当て】と刀技の【居合】を習得した。
 7回目のモンスタールームで、始めてモンスタールームのモンスターを殲滅出来た。そして刀レベル3になり、刀技の【抜刀イズナ落とし】と、剣技の【斬撃波】を習得した。
 8回目のモンスタールームで、一歩も動かず遠当てと、斬撃波のみで殲滅し、【抜刀十刃斬】を習得した。
 抜刀十刃斬って凄い……凄く疲れるけど、一度の抜刀で斬撃波を10発も飛ばせる……で余った時間で美味しいご飯を食べた
 どこから出したのか分からない七輪と呼ばれる小さな炭を入れる壺に、金網を乗せて肉をいっぱい食べた。
 幸せ。

 そしてエンさんに合流出来た。
 なんか、凄く強くなったようなつもりでいるみたいだけど、すいません……私より全然弱いと思います。

 ちなみに私のステータスはとんでも無い事になってしまっていた。

 レベル14→33
 HP61→512
 MP0→0
 筋力29→433
 魔力0→0
 体力48→832
 敏捷49→701

 スキル
 剣術レベル2
 身体操作レベル1→3
 俊足
 new
 刀術レベル3
 見切り
 先読み

 剣技:剣の形状をした武器のみ使える。
【バリイ】
【急所突き】
【斬撃波】

 new

 武技:無手、近接武器なら種類問わずに使える。
【遠当て】(リーチの2倍の距離まで攻撃を当てられるよ)

 刀技:刀でしか使えない。
【居合】(鍔鳴りの音が聞こえた時には攻撃が終わっているよ)
【抜刀イズナ落とし】(攻撃の最中に軌道を変えられる縦斬りだよ。肘と肩に負担が大きいから、使い過ぎには気を付けてね)
【抜刀十刃斬】(何故か一振りで10の斬撃が飛んでいくよ……一振りで20倍疲れるけどね)

 俗に平均ステータス4桁突入で、人をやめた領域であるA級冒険者の一歩手前と呼ばれる。
 体力と敏捷が、大分それに近いものになってきているのには驚いた。
 ちなみに体力832と言えば、400km近くを休まずに徒歩で移動出来るくらいだ。
 敏捷が700を越えると、大型のネコ科の動物と同程度の速度は出せる。
 ちなみに、大型のネコ科は敏捷400程度だが4足で走るからね。
 筋力の433は150kg程度のものなら片手で持てるくらいだけど、女の子としてはちょっとね。

 というか、レベルの上昇とステータスの上昇が噛み合っていないのが凄く不思議だ。
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