異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

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第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~ 

第3話:レイクポートのF級冒険者

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「おはよう……」
「おはよう!」
「うん、おはよう!」

 ちょっと眠い目をこすりながらギルドの前に立っているカバチとアレクに声を掛ける。
 2人がやれやれと言った表情を浮かべているが、カバチにちょっとイラッとしつつも早速ギルドに入るように2人に促す。

「女の子は男の子と違って、朝の支度に時間が掛かるのよ」
「ふーん……そんなもんかねえ」
「アリスの場合は単純に朝が弱いだけじゃないの?」

 カバチが朝一から生意気な事を言い出したので、取りあえずその頭に杖を落とす。

「痛い!」

 恨みがましそうにこっちを見てくるが、先に喧嘩を売って来たのはカバチの方だ。
 私のせいじゃないからね。

「うるさい! まだ眠そうだったから起こしてあげたのよ!」
「眠そうなのはアリスの方じゃん!」
「なにー!」
「はいはい、そのくらいにして早く入らないと、カナタさん居なくなっちゃうよ」

 アレクに宥められつつギルドの門をくぐると、すでに2~3組の冒険者グループが中で依頼書の張りつけられた掲示板を眺めている。
 朝のこの時間はF級冒険者からE級冒険者が結構多くいる。
 ランクの低い依頼というのは少なく、早い者勝ちだからだ。
 私達もカナタを探しつつ、取りあえず掲示板に向かって歩く。
 肝心のカナタを見つける事は出来たが、カウンターで受付嬢と楽しそうに話していたので先に依頼から見る事にした。

「なあ聞いたか?」
「ああ、レイクポートのだろ?」

 依頼書を下から順に見ていると、不意に後ろで2組のパーティが話しているのが耳に入って来る。
 ちなみに依頼は難易度の高いものから順に張り出されていて、下に行くほど難易度が下がっていく。
 勿論報酬も下がっていく。
 基本的には自身のランクの2つ上までの依頼書なら受けられるが、しっかりとした計画書と準備があれば査定次第でその上の依頼を受ける事も出来る。
 出来るが……依頼を受ける事と達成できる事は別問題で、よほどのことが無ければそんな冒険をする馬鹿は居ない。
 それよりも、後ろの人達の会話の内容がかなり気になるものだった。

「なんでもF級冒険者2人とE級冒険者1人のパーティがメルスのダンジョンを攻略したんだろ?」
「そうそう! っていうかさ、出来るもんなの実際?」
「いやいや、無理だろ! 俺もこないだまでレイクポートに居たけどさ、あれD級以上推奨になってるけど制覇となると最低でもC級中堅くらいの実力は要るぞ。D級の先輩も挑んでたけど満身創痍で戻って来て、聞いたら15階層に辿りつくまでに3日かかって食料に不安があったらしく戻って来てた」

 F級冒険者でダンジョン攻略なんて、出来る訳無いじゃん。
 というかさ、メルスのダンジョンって制覇難易度かなり高く無かったっけ? 
 通常のダンジョンでも、F級で攻略しようとする事ですら自殺行為に等しいって、最初の説明で受けるでしょ? 

「じゃあ、準備さえしっかりしてたら?」
「いや、モンスターもアーマーリザードやアンデッド系、スライムも特殊個体がうじゃうじゃ居る上に罠も凶悪、ギルドの査定おかしいだろってぼやいてたぜ」
「じゃあさ、逆にその3人って攻略にどのくらい掛かったの?」
「いや、なんでも二日で戻って来たとか……」
「はあああ? D級冒険者が3日で半分までしか行けないダンジョンを二日で? それ絶対嘘だろ!」

 ああ、これはあれだ噂に尾びれ背びれが付いてるパターンだな。
 ギルドの職員がダンジョン制覇者を自分のギルドから出した時に、色々と鯖を読ませて功績を大きくして自慢するなんてことは結構あるらしいし。

「どうせ、ギルドぐるみでふかしてんだろ?」
「いや、それがマジらしい……実際にその場に居た奴等から聞いたけど、ダンジョン踏破パーティが戻って来る3日前にギルドでもめ事があったらしくてさ……その揉めた奴ってのがその踏破パーティのうちのF級2人だったらしい」
「すげーな……F級なのにギルド内で揉めるわ、ダンジョン攻略するわって色んな意味で注目の新人だな」
「新人も新人、そのうちの1人は揉めた後にギルドに登録して、同時にF級になったらしいからな。まあ、もう1人は万年仮冒険者って呼ばれてた人だから、ある意味ベテランか。期待の大型新人と知識はあるけど才能の無いベテラン冒険者が組んでなんらかしらの科学反応でも起こしたんじゃね?」
「そこにそこそこ実績のあるE級冒険者が加わって、ベテランF級の知識と才能の塊の新人と、そのつなぎのE級冒険者が上手く……って、そんなんんで攻略出来るもんなの?」

 いやいや、それ以前に登録と同時にF級になんてなれるもんなの? 
 昇級依頼の内容を把握してないと無理じゃない? 
 はあ……天才って奴かしらね。
 F級になるのに3ヶ月、それから3ヶ月たっても昇級のしの字も出ない自分達が嫌になってくるわ。

「凄いねー……同じF級なのに、ダンジョン攻略だって」
「ああ、俺達も負けてられねーな」
「もう、負けてるから……F級になって3ヶ月だよ? あっちは3日でメルスのダンジョン攻略で二階級特進だよ? 負けてるから!」

 つい大声を出してしまったため、後ろで話をしていたパーティの人達の視線を集めてしまい、思わず赤面してしまう。
 その場で恥ずかしさのあまり俯く直前に、カウンターで話をしているカナタと目が合った。
 なんで、このタイミングでこっち向くのよ! 

「つってもF級の1人は行方不明……周りは死んだんじゃないかって噂してるけど、当人たちは絶対生きてるって言うし、そもそも実質攻略の要所は全てそいつのお陰だって言い張ってるらしい」
「ああ、哀れだな……仲間の死を覚悟出来て無かったんだろうな。まあ、F級やE級だったら初めての仲間との死別かもしれないし、それだったら信じたくないってのも分かるか……」
「そいつらパーティ名とかあるのか?」
「いや、パーティ名は分からないけどメンバーなら割れてたよ。たしかエンとレイドと、あとは行方不明になったのはカナタって言ってたかな?」
「ブッ!」
『ん? 』

 カナタって名前を聞いた瞬間に思わず吹き出してしまい、再度周囲の視線を集める事になる。
 つーか……いや、そんなわけあるはずが無いか。
 カナタなんてどこにでもある名ま……ねーわ! そんな名前あいつ以外聞いた事無かったわ。
 っていうか、イースタン独特の名前だろうし。

「その行方不明のカナタってが実は生きてる説が結構有力だったりするんだよね」
「はっ? どういうこと?」
「いやカナタってのはイースタンらしくてさ……なんでも『剣と魔法と薬草』の3人がダンジョン内であったらしくて、あの炎舞のエマがカナタなら殺しても死なないと言い張って新人2人の肩を持ったらしい」

 ああ、あの新進気鋭のB級まったなしと名高い人達ね。
 っていうかカナタでイースタンとか……その時点で……いや、他にイースタンの冒険者がレイクポートに居たら同名の可能性は一気に上がるわよね? 

「どうしたの?」

 耳を大きくしながら後ろのパーティの話を盗み聞きしてたら、噂のあいつが話しかけてくる。
 どうやら受付嬢との話が終わったようだ。

「あっ、カナタさん! おはようございます!」

 馬鹿カバチが空気を読まずに思いっきりカナタの名前を呼んで挨拶をする。

「えっ? カナタ?」
「いま、あいつカナタって言ったか?」
「あの男イースタンだよな?」

 途端に周囲がざわつき始める。

「おいおい、ここでもかよ。勘弁してくれよ! さっきまでギルドの受付のねーちゃんに名前の件で絡まれてたってのに……」

 どうやら、カナタという名前とイースタン、それからレイクポート登録のF級冒険者という事で受付で色々と話をしていたのだろう。

「あのね、レイクポートのカナタとやらとは無関係だからさ? いっそ名前変えたいわ! 迷惑な事をしてくれる奴も居たもんだよね?」

 今をときめく英雄を捕まえて迷惑な事呼ばわりとは、割とこいつの神経は図太いのかもしれない……知ってた……昨日から。

「なんの事? それよりもさ! アリスもオッケーだしてくれたよ!」
「ちょっ! 馬鹿カバチ! それじゃ、まるで私だけ嫌がってたみたいじゃない!」
「みたいじゃなくて、そうなんじゃないの?」

 カナタが一見爽やかそうに見えるニヤついた笑みをこっちに向けてくる……
 ついいつもの癖で杖で殴りかかってしまう。
 あっ……カバチじゃ無かった。
 そう思ったのに聞こえて来たのは

「痛い!」

 カバチの声だった。

「なんで僕! ?」

 カバチが不満そうにこっちを睨んでくるが、あれ? 確かにカナタに向かって杖を振るったはずなのに。

「大丈夫ですかカバチさん?」
「ありがとう、カナタさん」

 カナタがカバチの頭をさすっている。
 その手が気持ち良いのかカバチがキラキラとした眩しい笑顔でカナタを見ている。
 単純な奴だ。

「で、アリスも認めてくれたって事は3人について行って良いって事かな?」
「なんでカバチはさん付けで、私は呼び捨てなのよ!」
「さあ? なんとなく?」

 なんかイラッとしたけど、よくよく考えたら出会ったばっかだしね。
 不思議と昔から一緒に居るような気がしてたけど、気のせいだったわ。
 別に呼び捨てでも不快じゃないし……不思議なやつ。

「お前らなにはしゃいでんの?」
「あ、アレクさんおはようございます」
「ああ、カナタさんも来てたんですね!」

 依頼書を一枚剥がして持ってきたアレクにカナタが挨拶をしている、
 というか、アレクもさん付けだし……

「いまカバチさんから聞きましたが、アリスの許可も貰えたみたいですね」

 イラッ! 
 絶対こいつわざとだ! 

「ははは、2人ともすっかり仲良くなったみたいで何より。そうなんですよ、アリスも認めてくれたんでこれからは4人で暫くパーティを組みましょう」
「ええ、自分も一人だと何かと退屈だったんで有り難いです。これからも宜しくお願いします」

 そう言ってカナタがアレクに手を差し出す。

「これからはパーティなんで、敬語は不要ですよ。アレクって呼んでください」
「ふふっ、そういうアレクが敬語だ。じゃあ、今から敬語はやめよう。宜しく頼むよ」

 アレクがカナタの手を取ると、カナタが生意気にも爽やかな事を言ってる。

「カバチもカナタって呼んでね。盾役大変だろうけど宜しくね。出来れば俺も守って貰えると嬉しいかな? 宜しくね」
「ふふっ。同じパーティなんだから当たり前じゃん! こっちこそ宜しくカナタ」

 それからカバチにも手を差し出すと、カバチがその手を取って握手をする。
 うんうん、割と爽やかで良い奴かもしれない。

「という訳だからアリスもな」
「えっ? あ、まあ宜しくしてあげるわ」

 前言撤回。
 なんか私だけ雑じゃない? 
 他の2人には一言あって、宜しくってはっきり言ってたのに……
 なんかモヤモヤしつつも、一応差し出された手は取っておく。
 ここでつんけんどんにしたら、また2人……いや今は増えて3人から冷ややかな視線を受ける事は間違いないしね。

「で、どんな依頼を取ってきたのアレク?」
「うん? 最初はカナタさんの実力も知りたいし、簡単なところでこの街の隣にあるエストの村からの依頼でゴブリン退治だよ?」
「ああ、それなら簡単だし丁度いいわね」

 偉そうに言ってはみたものの、私達が受ける依頼って大体がゴブリン退治なんだけどね。
 まあ、自称無職の実力を見る分にも丁度良いし、取りあえず精々恥を欠かないようにしなさい。
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