異世界に召喚されて中世欧州っぽい異世界っぽく色々な冒険者と過ごす日本人の更に異世界の魔王の物語

へたまろ

文字の大きさ
33 / 74
第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~ 

第4話:エストの村のゴブリン退治1

しおりを挟む
 エストの村は隣の村といっても、通常徒歩で半日は掛かる。
 基本的には馬車で向かう場所だ……普通ならね? 
 しかし私たちのように、クエストや依頼が目的の場合はその限りではない。
 今回の依頼の報奨金は金貨で1枚だ。
 依頼内容は、ゴブリンの目撃情報が村人から多数寄せられていて、また農地等も被害にあっているとの事。
 それに家畜にまで被害が出始めている。
 牛がすでに2頭ほど行方不明らしい。
 牛の値段が1頭当たりが枝肉で金貨1枚……牛1頭500kg程度として、枝肉で300kg、食べられるのは130kg~140kg程度だ。
 この辺りだと枝肉を各部位に分けて、食用にすぐ使えるように加工するとトータルで金貨1枚と銀貨50枚くらいになるが、村から町に卸す時は枝肉が主流だ。
 そして切り分けた時に出る差額が精肉店の儲けになる。
 全部が完売という訳にはいかないから、その辺を考えて割と値段が跳ね上がる。

 3頭目の被害が出る前になんとかして貰いたいというのが、村の実情だろうね。
 それ故にたかだかゴブリン退治で金貨1枚。
 依頼が達成出来たら結構良い稼ぎのように思えるが……まず馬車を使うとその移動だけで4人で銀貨10枚は取られる。
 さらに村で最低1泊、下手したら2泊以上かかるとなると、村の宿泊施設の相場だと一泊素泊まりで1人当たり銀貨2枚と銅貨50枚で4人一泊でこれまた銀貨が10枚だ。
 勿論素泊まりだから、食事もこちらで用意しないといけない……
 薬草や武具の手入れ……他にも討伐中のその他消耗品が必要となってくる。
 となると、金貨1枚と言えば聞こえはいいが、実質この依頼をスムーズに二日で達成出来たとしても、手元には銀貨50枚残れば恩の字だ。

 となれば馬車なんて到底使う訳にはいかない。
 なので徒歩で移動することになった。

「結構歩いた気がするけど、あとどのくらいかかるの?」
「このまま何事も無ければ4時間くらいかな? 半分は越えてるし」
「よっ! はあ……」

 アレクの答えに思わず膝を付く。
 結構限界に近い。

「どうしたのアリス? 何か落ちてるの?」

 横でカバチが私と同じようにしゃがみ込んで、下を一生懸命見ている。
 こいつの馬鹿っぷりに思わず笑いそうになるが、疲れてそれどころじゃない。

「いや、ちょっと疲れただけ」
「女の子には厳しい距離だね。アレク、ここら辺で少し休憩にしようか?」
「ええ? さっきもそう言って休憩取ったのに……これじゃ、着くころには日が暮れちゃうよ?」

 戦闘職と一緒にしてほしくない。
 例え男だとしても、魔法職にこの距離を歩くのは辛いと思うわ。
 これでも、カバチもアレクも余裕がある訳じゃ無さそうだし。
 実際に、肩で少し息をしているようにも見える。
 たださ……その横でニコニコと私達を見ている少年は話が別だ。
 ここに来るまで周囲をキョロキョロしたり、鳥だリスだ不思議な木の実だと景色を楽しむ余裕さえある。
 最初の2~3時間くらいは、どうせその細い身体じゃ途中でへばるんでしょ? とかって思ってたけど、先に私の方がへばってしまったのは悔しい。

「う~ん、でも無理してヘトヘトの状況で何かに襲われても困るし、体力は常にちょっと余裕を持たせといた方が良いと思うよ?」
「何かってなんだよう……」

 カバチが情けない声を出しているが、たしかこの辺りで危険度の高い魔物と言えば、グレイハウンドの群れか、ラージバットくらい? あとは地味に小型のキラービーが飛んでいるくらいだったと思うけど。

「急に襲われても走って逃げられるくらいの体力を残して置かないとね? 安全マージンは取り過ぎて悪い事は無いんだから」
「はあ、一番元気そうなカナタにそう言われたら、従うしかないか」
「ていうか、なんでカナタはそんなに元気なのさ?」

 アレクがカナタの言葉に従って、適当な切り株に腰を掛けて水筒の水を飲み始める。
 私も這うようにその横に移動して、座ると水筒の水を……って嘘……もう空なの? 
 気が付いたら私の水筒はすでにすっかり軽くなっていて、口に入れてすぐに空っぽになってしまった。
 疲れているけど仕方ない……

「我が魔力を糧に水を生みたまえ【ウォーター】」

 魔法を使って水筒の水を満たす。
 一気に疲れが来るような感覚だ。
 魔法って体力は使わないはずなんだけどね……

「俺だって疲れてるよ?」
「嘘だー! だって、汗もかいてないじゃん!」

 遠くでカナタとカバチが何かを話しているのが聞こえる。
 どうでも良い……少しでも体力を回復させないと。

「なんだ、水が無くなったなら言えば分けてやったのに」
「いや、そしたらアレクのが無くなるじゃん」

 なんだかんだで、リーダー的ポジションに居るだけあって、アレクは意外と細かい気配りが出来る。
 すでに私の荷物の3分の1はアレクの鞄に移している。
 申し訳ない……けど、女の子だししょうがないよね? 
 視線を斜め下に落として、ゆっくりと呼吸を整えているとカナタの靴が視界に入って来る。
 ていうか、こいつ靴無駄に綺麗ね……もしかして、魔法の靴とかなのかな? 
 魔法の靴? はっ! こいつズルしてやがったな! 

「これ食べる?」

 と思ったら何かを差し出してくる。
 これはクミナの実? 

「そこの木になってたけど、酸味があって美味しいよ? それに体力を少し回復させる効果もあるし」

 そういえば、クミナの実は微力ながら体力回復の効果があるんだっけ? 本当に気休め程度だけど。
 腹いっぱい食べれば多少はマシかもしれないけどね。

「あ、ありがとう」

 というか、なんだかんだ言ってこいつもそんなに悪い奴じゃないのよね。
 アレクやカバチに対する対応を見る限りじゃ、どちらかというと良い奴だし。
 たまに、私に対してのみ冷たい気がするけど……はっ! もしかして好きな子には意地悪したくなっちゃうとかっていう典型的な

「変な事考えてる?」
「考えてません!」

 なんでか知らないけど、たまに心を見透かしたような事を言ってくる。
 色々と気味が悪いような気もしないでも無いけど、まあ概ね良い奴って事で納得しておこう。

「あっ、そうだ水筒貸して?」
「なに、貴方も水が無くなったの? 欲しいなら欲しいって言えばいいのに」

 私はちょっと勝ち誇った感じてカナタに言うと、手に持った水筒を手渡す。
 えっ、でももしカナタがそのままその水筒から水を飲んだら、これって間接キス? って、まあ冒険者やっててそんな事を気にする方がどうかしてると思うけど。
 と思ったら、カナタがちょっと小ばかにした表情でこっちを見ていた。
 もうっ! やっぱり水筒渡すんじゃなかった。

「って、何してるの?」
「ん? この実の果汁を水に混ぜたら、ただの水にも体力回復の効果が移るからね」

 カナタはどこからか出した鞄から、綺麗な布を取り出しそれにクミナの実を包んで水筒の口の上でギュッと絞る。
 てか……その布めっちゃ高そうなんですけど? 
 絹って奴じゃないよね? 
 あーあ、せっかくの純白の布が果汁で紫になってて勿体ない。
 それ落ちるのかな……でもクミナの良い匂いが周囲を包み込んでいて、心地が良い気もする。

「ああ! アリスのだけズルい! カナタ僕にも僕にも!」
「ふふっ、良いよ。はいアリス」

 カバチがカナタに纏わりついておねだりしている。
 こいつって本当にガキよね……

「ありがとう」

 カナタから水筒を受け取って、中の水を少し口に含んでみる。
 ただの水から心地よい爽やかな酸味が感じられ、クミナの良い香りが鼻から抜ける。
 不思議と疲れがかなり取れたような気がする。

「美味しい!」

 折角の余韻を台無しにするような大声がすぐ傍から聞こえる。
 まあ、言うまでもなくカバチなんだけどね。

「痛い!」
「こんなところで大声出したら、魔物が寄って来るでしょ」

 カバチの頭を杖で軽く殴る。
 いつもより、かなり弱く殴ったつもりだが、カバチはやっぱり大声を出した。
 条件反射みたいなものか……黙らせるつもりで叩いたのに逆効果だったようだ。

「ふふっ、今のはアリスが正しいかな?」
「もう、カナタまで! でも、カナタの言う通りだね。ごめん」

 おいっ! 
 私が注意したのに、なんでカナタの言う通りになるのよ! 
 本気でカバチを叩きたい衝動を堪えつつ腰を上げる。
 うん……体が軽くなった気がする。

「おっ、お嬢様もようやく元気になりましたか?」

 そんな私の様子を横目で見ていたアレクが、白々しい事を言ってくる。
 今までお嬢様扱いなんてされたことないし。

「うるさいわね。でも、もう大丈夫よ!」
「うんうん、口も元気になったみたいだし、それじゃあもうひと踏ん張りしましょうか」

 ひと踏ん張りがあと4時間の徒歩移動とか、なんの冗談だと言いたい気がしないでも無いが、結構間で休憩を取ってくれるので助かる。
 割と絶妙なタイミングでカナタが切り出してくれてる事だけは、感謝しないとね。
 にしても、さっきのクミナの実といい、その果汁を水に混ぜる方法といい割と優秀な冒険者なのかもしれない。
 事実3人だけの時よりだいぶ体力や気持ちに余裕をもって動けている気がする。
 それに魔物とのエンカウントも殆ど無いし。
 同じ距離を歩いたはずなのに、休憩中もずっと立ってカバチの相手をしているカナタを見て思わずため息が出る。
 まるで今から出発するかのような爽やかさが、一周回ってイラッとしたのは内緒だ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...