42 / 42
42
しおりを挟む私は世界様。
神々を生み出し、世界を生み出す存在。
全ての種となる命が在る。
だからこそ淫魔の能力である活力を分け与える事が出来るし、他にも色々と出来る。
獣人の耳と尻尾があったりね。
抱くと相手の魔力が増えるのは私だからとしかいいようがないけれど、他の種族や神々が使える力が私にもある。
むしろ私が使えるから、みんなも使えるのだと言ってもいい。
「こんな感じ?」
「飲み込めないが、理解はできたよ」
「ありがとう」
そしてあの世界には一冊の本を置いておいた。
浄化する者が現れる本を。
内容は適当に書いた。いつか誰かが実行してくれる時を待てばいいかー。なんて気楽な考えをしながら、眠っていたんだ。
言葉の通り、眠っていた。200年間。
「浄化の早さが異常な事も知ってる?」
「留まるだけで浄化される」という解釈は間違っていない。けれど、「抱かれると浄化される」という解釈もまた違いないのだ。
レンが私を抱いてくれるから、周囲は今まで以上に早く浄化される。
「うん、私を抱くと浄化する速度が早まる」
「なるほど…それで…」
「ちがああああう!レンとはいつだって繋がってたいの!浄化はおまけ!」
「………くすくす、私もだよ」
「んんんんんー!私の伴侶様がかっこいいよー!!!」
「それ以上は」
「嫌!こっちに来たら好きにしていいって言ったもん!だからいっぱい言うの!我慢も限界だよ!」
「我慢……わか、分かった」
「やたー!」
「くすくす、お喋りな妻を見れるのは嬉しいよ。どうして話さなかったんだ?」
「寝起きだったのもあるけどー、なにを話していいのか考えてると、どうしてもテンポが遅れちゃうの」
「ああ…クーパーは何故?」
「知ってるかって?いつかのご褒美にねー、友達を紹介、あ!ビシャカいるでしょ?あの子とー、もう1人、紹介したのー。ちなみにクーパーは国一番の魔法の使い手だよー」
「そうだったのか…」
「別に自己紹介した訳じゃないけどねー?多分、2人から大体は聞いてるんじゃない?」
膝に乗ってちゅーちゅーしながら説明してるけど、怒られない!
それに受け入れてもくれた。
私という存在を。
人間には難しい私の“常識”をきちんと理解しようと話を聞いてくれている。
「今度デートしよ?」
「今では駄目なのか?」
「この世界じゃなくて、他の人間世界だよ。レンには知って欲しいの」
「他の世界………想像できないな」
「しなくていいの!行って感じるの!」
「くすくすっ、これからはそのように話してくれる?とても可愛らしくてもっと聞きたくなる」
「ふわあぁぁっっ…!伴侶様がかっこいいよー!」
「くすくす」
「ご飯食べよー!」
「ああ……クーパーはいいのか?」
「神々が構ってくれてるから大丈夫」
「………ヒナノ」
「うん?」
勇気を出しているようなキリリとしたお顔で私を見つめてる。
「良ければ戻ろう」
「どこに?」
「神様方に挨拶を」
「それを言うなら私の子達に挨拶を…かな?」
「………ふっ、その通りだな」
私を知ろうとしてくれているのが分かる。
努力家で、相手を知り、同じ景色を見てみたいという優しい心根はこんなところでも発揮するんだ。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
宴会場に戻ると、座る場所に立ってみんなを目に映そうとしているのは愛らしい伴侶様。
「突然現れてしまい申し訳ございませんでした。私はヒナノの伴侶であり、人でもあるのです。あなた様方がどうっ、うあっ!」
決意表明?の中、レンに抱きついてるのは女神たち。楽しそうにぎゅぅぎゅぅと抱きしめながらも、しっかりと、体のサイズを測っていくのを見て、そのうちレン宛てに何かが送られてきそうだなぁと思った。
「ヒ、ヒナノっ!」
「うん?」
「な、なにをされてっ、」
「サイズが気になるんだってー」
「サイズ?うあっ!ちょっ!そこまで調べなくても!」
「「「「必要ですわ~、お父様ぁ」」」」
「そ、そうなのですか?うわっ!」
くるくる体を回されて、楽しむ女神たちのおもちゃになりそうだ。
「そこまで」
「「「「はあい…」」」」
不服そうな顔されてもね…レンはもういっぱいいっぱいな顔してますから。休ませたいんですよ。
「レン、ここ」
「あ、ああ、助かったよ」
私の横に座るとほっと息を吐き出した。
「あーん」
「…………あ、あー」
「んふふー!」
「っっ」
そうだ、クーパー呼び戻そう。
「うわあっ!」
どうやら神と遊んで?遊ばれていたらしい。
森の中を浮いて駆けていたのか、髪の毛にはたくさんの葉がついている。
「ふふっ、痛い目には遭わなかった?」
「な、なんとか、というところでしょうか…」
うん、デンジャラスだよね。人間にとっては。力加減が出来る子も少ないし。
2人に目配せすると、未だ恐れ多いという感情はあるんだろうけど、そんな手先で食事を取り、お酒を選んでいく。
その間、肘立てに肘をついていつものように酒をチミチミと飲んでいた。
「我が兄弟よ!おいかけっこは飽きたか!なら飲み比べだな!」
「は、はい!」
きちんと理解してくれたのか、クーパーを兄弟と呼ぶ彼に安心した。
仲良くなってくれたらいいな。
「お父様ぁ」
「は、はい」
「お父様は決まった時間に起きて、どこかへ行って、また決まった時間に眠る人生を送っているのですかぁ?」
「異なる場合もありますが…そうですね。そのような生活を」
「ほらぁ!だから言ったじゃない!人間を制するものは時間だと!」
「まぁぁぁっ…!けれど異なる場合もあるとお父様はおっしゃっておりましたわ!それならば時間が制するだけではないのでは!?」
「な、な、な、な、っっ~~」
「「お父様ぁ!!!」」
「その答えは二人の中で決めなさい。レンを煩わせないで」
「「はあい…ごめんなさい、お父様…お母様…」」
「よ、よろしいのですよ。人間は時間以外にも縛られている事もありますから、時間だけに従い生きている訳でもないのですよ」
「「まぁっ…!お父様はとても素晴らしい先生だわぁ!」」
女神二人の「人間の不思議」はまだまだ続きそうだったから、一番離れた席に座らせておいた。
「構わなくていいんだよ」
「あまりよろしくない事なのですか?」
「ん?なにが?」
「私が神様方とお話する事が、です」
「んーん、でもあの子たち、次から次へと疑問を持ってくるから永遠に続きそうだよ?それでもいいなら戻すけど」
「………話す時間を確保しておきます」
どうやら次も話し合い、というよりは、お勉強会が開かれるらしい。
無理はしないで。と言いたいけれど、この世界の事や私に対するあれこれは無理してでも納得しなくちゃならない事柄ばかりなのだろう。
「ヒナノ?」
「ん?」
その声が気になって顔を上げると、困惑?ちょっと困ったような顔をしながら私を見下ろしてる。
「つまらないですか?」
どうやら私の態度に気になる事があるらしい。
「つまらなくないよ。つまらないのかな?」
「………」
起きて、ここに来て、なんとなしにみんなを眺めながらお酒を煽る毎日の再現をしているというような私の姿形は「つまらなく」見えるらしい。
「おいで」
「!」
ガバッと膝の上に乗ると頭を撫でてくれるから、その心地良さに思わず目を瞑ってしまう。
「同じ毎日は飽きる事もあるかもしれない」
どうやら「飽きている」らしい。私が。
「けれど…新しい事だってたくさんあるんだよ」
そんな私に教えてくれる。
目の前に広がる光景がなにも変わらない日常ではないという事を。
「目に映せば感じ取れるはず」
ボヤけたような視界で眺めていた私に、きちんと目を開けなさいと言うように叱ってくれた。
「うん………ありがとう」
「また一緒に来ましょう、何度でも」
「うん」
その日から度々、天界や別世界に行き、様々な常識を学んだレンはあまり美醜には拘らなくなった。
「最近、怖がられているような気がする」
「魔力が漏れてる」
「魔力……?」
「魔力が増えて、その分漏れてるの、圧?って言えばいいのかな?そういうのを感じ取っちゃうんだよ。人間は」
「そういう……」
「寂しい?」
「………いや、便利でいいと思った」
「んきゃー!伴侶様がまたかっこよくなったー!」
「くすくす、私の伴侶も充分かっこいいよ」
「ふあ…!大好き!」
「ちゅ、私も好きだよ」
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる